「(期末に向け)さらに伸び率が鈍化する。成長を加速する材料はないのか」「(比較・購入サイトとしての)優位性が下がってはいないか」——。カカクコムの決算説明会では、アナリストから次々と厳しい質問が飛んだ。
グルメサイト「4強時代」、生き残るのはどこか?
■2ケタ増益でも株価は低迷
2月2日に同社が発表した2017年4〜12月期(第3四半期)決算は、売上高332億円(前年同期比11.7%増)、営業利益154億円(同12.3%増)というもの。高収益企業が多いネット業界の中でも、カカクコムのように2ケタの利益成長を続け、40%台後半という営業利益率を維持する企業は多くない。
にもかかわらず冒頭のような厳しい声が相次いだ理由は、カカクコムが同日、業績予想の見直しを発表したことにある。通期の業績見通しを売上高450億円(従来予想比30億円減額)、営業利益を210億円(同20億円減額)に下方修正したのだ。
これまで右肩上がりに成長してきた同社にとって、業績予想を下方修正するのは、2003年の上場来初めてのこと。これに株価も強く反応し、2015年1月以来の低水準に落ち込んでいる。
下方修正の要因になったのは、売上高の5割近くを占める価格比較サイト「価格.com」の不振だ。PCをはじめとするデジタル機器、家電など、価格.comが得意とする製品群の市場自体が盛り上がらず、サイト掲載店舗からクリック数や販売実績に応じて支払われる手数料収入が減少した。
ここ数年は従来の得意分野に加え、飲料や菓子類、日用品などの消費財分野でカテゴリー強化を図ってきたが、全体を押し上げるまでの規模にはなっていない。採算の良いタイアップ記事などの広告受注も落ち込んだ結果、売上高はわずかだが前年同期を下回り、成長が止まっている。
それでも全体で増益を維持できたのは、売上高の4割強を占めるグルメサイト「食べログ」の好調によるものだ。こちらは飲食店からの広告・課金収入と、有料会員収入に支えられており、いずれも前年同期比で順調に拡大した。
下方修正は何かの予兆なのか?
ただ、食べログもいつ成長の限界に達するかはわからない。グルメサイトの分野では、長年のライバルである「ぐるなび」「ホットペッパーグルメ」に加え、2010年創業のベンチャーが手掛け、実名制のレビューをウリにしている「Retty(レッティ)」など新興勢力も台頭している。
さらに店舗の評価点は食べログにおけるキラーコンテンツといえるが、この点にも懸念材料がある。
2016年秋には、従来飲食店に定額課金サービス(月額2.5万円〜)の一環として提供していたオンライン予約機能を、定額サービスから切り出し、来店人数当たりの従量課金制(夕食は200円/人、昼食は100円/人)に改める「新プラン」を設定、各店への導入を進めた。
■広まった悪評
ところが、ある飲食店の店主が「食べログのオンライン予約を使ってもらわないと検索の優先順位を落とす」と営業担当者に告げられたこと、時を同じくして自身が経営する店舗の評価点(5点満点)が3.0まで下がったことなどをツイッターに投稿、一気に悪評が拡散したのだ。
これに対し会社側は「表示される点数やランキングは、オンライン予約機能を利用しているかどうかに関係ない。点数が下がったのは同時期に全店を対象とするアルゴリズム(点数の算出方法)の変更を行ったため」と説明しているが、現在も事態が完全に沈静化したとはいえない。
今回の騒動は、今のところ業績に大きな影響を与えているわけではないが、こうした問題が続けば、同社の根幹をなす"口コミ"ビジネスが揺らぎかねない。
カカクコムの畑彰之介社長は、「主力の価格.comについては、消費財分野を中心に(スマホ対応も含め)ページの見やすさ、買いやすさをより重視していく施策を始めている」など、対策を説明する。
さらに、こうした事業に次ぐ柱として直近では、航空券やホテルなどを含むパッケージ予約に強みを持つ旅行情報サイト「タイムデザイン」や、賃貸物件検索サイト「スマイティ」など、新たな領域への進出を急いでいる。
ネット業界の超優良児だったカカクコム。主力事業の成長鈍化や信頼性の問題をクリアし、2ケタ成長は続けることができるのか。それとも下方修正は何かの予兆なのか。同社は今、大きな転機を迎えている。
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