2017年12月26日火曜日

ビットコイン下げ止まらず、最高値から30%安水準−休日で売り先行

  仮想通貨で最大のビットコインはクリスマスの祝日にかけて続落した。2万ドルの大台を突破できなかったことを契機とした下落基調に歯止めを掛けられずにいる。先週は4日続落していた。

  ビットコインはニューヨーク時間25日午後4時8分(日本時間26日午前6時8分)時点で前週末比3.8%安の1万3703ドルとなった。ブルームバーグがまとめた価格に基づけば、これは過去最高値1万9511ドルを30%下回る水準。他の米市場はクリスマス休日でほとんどが休場。

  オンラインブローカー、イートロ(テルアビブ)のシニアマーケットアナリストのマティ・グリーンスパン氏は、最近の仮想通貨の上昇があまりにも急激だったため、投資家がクリスマスのホリデーシーズン入りで資金を引き揚げる傾向にあると説明した。

  ビットコインが週日に5日連続の下げとなったのは前回が9月で、その前は7月。これまでは数日続落の後、反発するケースが多かった。

  一方、イーサリアムは上昇し、前週末比約5%高の717ドル。

  ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、マイク・マクグローン氏は24日公表のコメントで、ブロックチェーンをベースとした新生の仮想通貨は急速に主流のファイナンスに入りつつあるが、イーサリアムのような第二世代のデジタルコインの幾つかの方がビットコインよりも前途が明るいと指摘した。

2017年12月22日金曜日

ビットコインはバブル「遅かれ早かれはじける」

 インターネット上でやり取りする仮想通貨の代表格「ビットコイン」を巡り、取引所を運営するビットバンクの広末紀之社長と、京大の岩下直行教授が21日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、現状や先行きについて議論した。

 今年初めに10万円程度だった1ビットコインの価格が200万円前後まで急騰したことについて、広末氏は「業界関係者も驚きだ。新しい技術を受け入れられる若者や、資産運用(の対象)として年配の人が買っている」と話した。

 岩下氏は「株には理論価格があるが、ビットコインは基本的に(理論価格が)ゼロで、バブルと言える。あしたとは思っていないが、遅かれ早かれはじけるだろう」と述べた。

2017年12月20日水曜日

楽天とビックカメラが合弁会社、実店舗・設置サービス・配送・商品開発などで連携

楽天とビックカメラは合弁会社を設立し、2018年4月から家電分野を中心としたネット通販を始める。12月19日付で新会社設立などの基本合意書を締結した。

ビックカメラは現在、「楽天市場」に「ビックカメラ楽天市場店」を出店している。新会社は「ビックカメラ楽天市場店」の基盤を引き継ぎながら新たに「楽天ビック」として「楽天市場」に出店する。

楽天によると、今回の合弁設立を主軸とした協業の目的は、「価格競争力の強化」「配送関連サービスの充実」「OtoO関連サービスの充実」の3点があげられるという。

□ 価格競争力の強化

ビックカメラならではの競争力のある価格と幅広い品ぞろえに加え、独自商品の開発も検討。「楽天ビック」やビックカメラグループで販売する。

家電の設置といった役務サービスも展開する方針。楽天によると、「大型家電の設置を依頼したい」「店頭で実物を確認しながら専門スタッフにメンテナンスや使い方の相談をしたい」といった家電EC特有のニーズも高まっているという。

楽天とビックカメラのノウハウなどを融合し、スムーズな設置工事を依頼できるサイトを実現しするとしている。

□ 配送関連サービスの充実

配送面でも協業する。ビックカメラは現在、千葉県船橋市にネット通販向けの物流拠点を構えている。ビックカメラの物流インフラを活用し、当日配送などの展開を検討。物流面における協業深化も視野に入れ、物流・配送の効率化、付加価値の高いサービス提供を推進するとした。

□ OtoO関連サービスの充実

オンラインとオフラインの連動も強化する。「楽天ビック」のサイト上でビックカメラの実店舗における商品在庫の確認、「楽天ビック」で購入した商品をビックカメラの実店舗で受け取ることのできるサービスの提供もめざす。

ビックカメラの実店舗で「楽天スーパーポイントが貯まる・使える」ようにするなど、顧客満足度の向上につなげるとした。


■ ビックカメラのEC売上高は729億円

ビックカメラの2017年8月期連結業績におけるグループのEC売上高は、前期比5.3%増の729億円。EC化率は同0.3ポイント上昇して9.2%。

グループのEC売上高はビックカメラ、コジマ、ソフマップなどの合計。ブランド別の成長率はビックカメラが同12.6%増、コジマは同8.3%増だった。

ビックカメラグループはインターネット通販関連の中期計画として「オムニチャネル強化」「品揃えの拡充」「配送品質の向上」を掲げている。前期はグループのECシステムを統合したほか、物流拠点の再配置などを実施した。

家計の金融資産1845兆円、過去最高を更新 企業の現預金も最大

日銀が20日に発表した2017年7─9月期の資金循環統計によると、家計が保有する金融資産残高は9月末時点で前年比4.7%増の1845兆円となり、過去最高を更新した。株高・円安を受けて株式などの時価評価額が上昇したほか、投資信託や保険に資金が流入している。企業が保有する現金・預金も259兆円で過去最高となった。

家計の金融資産が過去最高を更新するのは2四半期連続。保有の過半を占める現金・預金が943兆円と同2.8%増加したことに加え、前年と比較した株高・円安で保有資産の時価評価額が上昇したことも残高を押し上げた。

株式は同22.1%増の198兆円と2007年6月末以来の高水準。取引自体は売り越しとなったが、株価上昇による時価評価の上昇が大きく寄与した。投信は同16.3%増の104兆円、保険・年金・定型保証は同1.2%増の521兆円といずれも過去最高となった。投信や保険には新規資金も流入している。

仮想通貨「ライトコイン」の価格が急上昇している理由

アルトコインの代表格である「ライトコイン(Litecoin)」の価格が急騰している。CoinMarketCapによると、12月12日時点での価格は290.99ドルと、この1年で4000%も上昇した。多くの投資家は、ビットコインの高騰が影響しているのか、またバブルがいつか崩壊するのか疑問に思っている。

ビットコイン以外の仮想通貨を総称してアルトコインと呼ぶが、その先駆けであるライトコインはビットコインをベースにしており、元グーグルのエンジニアでコインベースのエンジニアリング責任者を務めたチャーリー・リーが、仮想通貨の分散投資を可能にするために開発した。ビットコインとの最大の違いは、ブロック生成時間(取引の承認時間)を10分から2.5分に短縮したことだ。

「このことはトレーダーにはあまり関係ないが、ハードウェアを使ってビットコインネットワークでマイニングを行っているマイナーは、ライトコインに乗り換えることができない。このため、大規模なマイニング業者が参入せず、非中央集権性が一層強化された。ライトコインはブロックサイズが大きく、コイン流通量も多いため、より安価で迅速に取引きを行うことができる」とインベストピアには記載されている。

Coindeskによると、ライトコインは取引時間が短いことで、より多くの取引量に対応することができるという。ビットコインがライトコインと同じスケールの取引きを行おうとしたら、コードのアップデートが必要になるという。

ライトコインは、ブロックサイズが大きい一方で、「孤立ブロック」が多くなるという。Coindeskには次のようにも記載されている。「ビットコインとライトコインのハッシュパワーが同じだった場合、ライトコインの方がブロック生成時間が短いため、理論上は二重支払い攻撃のリスクが低減される」

CBOE(シカゴ・オプション取引所)は12月10日、ビットコインの先物取引を開始した。この影響を受け、他の仮想通貨の価格も軒並み上昇した。今後もビットコインの価格が上昇を続ければ、ライトコインやイーサリアムも値上がりする可能性が高い。ライトコインは他の仮想通貨に比べて取引きスピードが速く、手数料も安い。また、知名度が比較的低いためか、論争の的になっておらず、投資家にとってはより良い選択肢かもしれない。

最近、チャーリー・リーによるビットコインの高騰に関するコメントが多くのメディアで取り上げられ、リーの知名度が向上したこともライトコインの価格上昇につながっているのかもしれない。

韓国の仮想通貨取引所ユービット、ハッキング攻撃受け破産申請へ

韓国の仮想通貨取引所ユービットは19日、取引所を閉鎖するとともに破産を申請すると発表した。同取引所は今年に入って2度目となるハッキング攻撃を受けたばかり。

韓国紙が16日に報じたところによると、ユービットが4月に被害に遭った1度目のハッキング攻撃について、韓国の情報機関は北朝鮮が関与したとみている。この攻撃では約4000ビットコインが盗まれた。

韓国の仮想通貨取引所ユービット、ハッキング攻撃受け破産申請へc REUTERS 韓国の仮想通貨取引所ユービット、ハッキング攻撃受け破産申請へ
ユービットはウェブサイト上で、現地時間19日午前4時35分にハッキング攻撃を受け、総資産の17%相当を失ったと発表。具体的な損失額については明らかにしていないが、全ての顧客の仮想通貨資産は評価額が75%に引き下げられると説明。取引は既に停止していると付け加えた。

韓国の仮想通貨市場では、取引所のビッサムがシェアの約7割を握っており、ユービットの取引所としての規模は比較的小さい。

2017年12月19日火曜日

中国Vivoが世界初「画面埋め込み型指紋センサー」スマホ発売へ

米「Synaptics」と中国のスマホメーカー「Vivo」が12月12日、ディスプレイ埋め込み型の指紋センサーを共同で発表した。Synapticsはスマホのディスプレイに指紋センサーを組み込むことに成功し、既に量産が可能だという。

画面埋め込み型の指紋センサーはこれまで多くのメーカーが開発にトライしてきたが、この技術により今後のスマホ市場が大きく変わる可能性がある。

Synapticsのセンサー「Clear ID FS9500」はOLEDディスプレイに組み込み可能。Clear IDは指紋認証の際に認証エリアが点灯し、認証を終えると見えなくなる仕様となっている。この認証方法のメリットは、ユーザーがわざわざ端末下部や背面の指紋認証ボタンに触れずとも、スマホのアンロックが可能になることだ。

また、iPhone Xの顔認証のように画面の上部に専用のエリアを設け、センサーを設置する必要がなくなる。SynapticsはCMOSイメージセンサー技術で、ディスプレイを通して指紋を認証することを可能にした。ディスプレイの下にセンサーがあるため、指が濡れていても認証可能という強みもある。また、Face IDの約2倍の認証スピードを持ち、製造コストもFace IDの2分の1から3分の1程度だとSynapticsは述べている。

筆者がVivoの開発中のテスト端末を使用した実感としては、Clear IDは非常にスムーズに動作した。ただし、現時点ではClear IDを搭載したVivo端末は右側面のボタンを押してセンサーを起動させる必要があり、実際の製品では違った形式になることを期待している。Synapticsによると、同社はClear IDを搭載したモバイル端末が2018年に7000万台出荷されることを見込んでいるという。

Clear IDの技術は現在のスマホの技術的及びデザイン的制限を取り払うものになる。このテクノロジーが次世代のサムスンやアップル、LG等のスマホに搭載される日が楽しみだ。また、この技術を最初に製品に組み込むのが、中国のVivoであることも非常に興味深い。

2017年12月14日木曜日

楽天、第4の携帯キャリアに名乗り 参入検討は「事実」

 楽天は12月14日、同社が携帯キャリア事業に参入する方針だと伝えた同日付の一部報道について「携帯キャリア事業への参入を検討しているのは事実」と認めるコメントを出した。

 同日付の日本経済新聞やNHKニュースなどは、総務省が2018年1月にも新たに割り当てる電波について、楽天が取得を申請する方針を固め、2025年までに最大6000億円を投じて基地局などを整備する——などと伝えた。参入が決まれば、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに次ぐ国内第4のキャリアが誕生することになる。

 楽天は報道について14日、コメントを発表した。報道内容について「当社から発表したものではない」としながらも、「携帯キャリア事業への参入について検討していることは事実」と認めた。

 楽天は2014年、NTTドコモの回線を利用するMVNOに参入し、「楽天モバイル」をスタート。今年9月にはプラスワン・マーケティングからMVNO事業を買収するなど、MVNO事業を強化している。

 総務省は、4G携帯向けに1.7GHz帯と3.4GHz帯の追加割り当てを行う方針で、既にドコモが割り当て申請を検討すると発表している。

元日銀・中原伸之氏、日本経済「来年後半は危険」

 千葉「正論」懇話会(会長=千葉滋胤・千葉商工会議所顧問)の第61回講演会が13日、千葉市美浜区のホテルニューオータニ幕張で開かれ、元日本銀行審議委員の中原伸之氏が「内外の政治経済情勢について」と題して講演した。

 中原氏は、米国の原油先物価格の「バックワーデーション(逆ざや)」が起きているとして、「世界の景気は半年先から危なくなる。景気循環の上昇局面も来年のどこかで終わるのではないか」と予測した。

 また、平成以降の日本の経済状況に関して「世界の経済大国から転落している。ただし生活の質は良くなり、安定した」と分析。中国経済のバブル崩壊懸念や北朝鮮の脅威が日本の経済に与える悪影響について「特に来年の後半は危険だ。先行きを慎重に見ている」と不安視した。

2017年12月13日水曜日

オープンIoTからIoSへ、モノからコトへ

 EE Times Japan、MONOist、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの産業向け5メディアは2017年12月4日、都内でセミナー「MONOist IoT Forum in 東京」を開催した。東京での開催は2016年に続いて2回目となる*)。

オープンAPIであらゆるものを連携

 特別講演に登壇した東洋大学INIAD(情報連携学部)の学部長を務める坂村健氏は、「オープンIoTからIoSへ」をテーマに、IoT(モノのインターネット)の先にあるIoS(サービスのインターネット)に向けた取り組みなどについて講演した。

 冒頭に坂村氏が紹介したのは、中国における「シェアリングエコノミー」への取り組みである。これは、インターネットを介して、企業や個人などが持つ資産やノウハウについて貸し借りをするシステムである。新たなシェアリングサービスが、続々と登場する中で、自転車のシェアリングをする「Mobike」などの事例を紹介した。このサービスの特長として、クラウドを最大限に活用していることや、シェアリングに適した独自の車体設計を行っている点を強調した。

 シェアリングエコノミーが急速に拡大する背景には、中国で急速に普及するモバイル決済システムがあると指摘する。「アリペイ(Alipay)」や「ウィーチャット(WeChat)ペイメント」に代表される、QRコードを使ったモバイル決済システムが、中国で日常化しているという。銀行口座などの裏付けがなくても、身分証番号だけでアカウントを持つことができる。利用者に対するインセンティブなども、クラウド側のプログラムを変更することで対応でき、サービスの改善などを迅速に行える。

 このためには、「API(Application Program Interface)を解放し、自動連携することが重要だ」と坂村氏は指摘する。その一例として配車サービス「Uber」を紹介した。スマートフォンにワンタッチするだけで迎えの車を手配できるシステムである。「APIの先にいるのはモノや人や組織であり、これらがインターネットでつながることが重要だ。さまざまなオープンAPIの連携がIoSとなる」と坂村氏は述べた。

 これ以外にもオープンAPI連携の事例として、ドイツにおける産業政策「インダストリー4.0」、官民が保有するデータをオープンにして活用するための「官民データ活用推進基本法」の施行、などを紹介した。また、公共交通オープンデータ協議会(ODPT)、オープン&ビッグデータ活用地方創生推進機構(VLED)などについても、その活動概況を紹介した。最後に、「文芸理融合」を掲げるINIADの教育方針や、学部創設の狙いなどを語った。

「モノ作りだけではないコト作り」へ

 特別講演として登壇した、ジャパンディスプレイ(JDI)でマーケティング&イノベーション戦略統括部 執行役員CMOを務める伊藤嘉明氏は、「第2の創業を迎えたジャパンディスプレイのIoTへのアプローチ」と題して、新たなビジネスモデルによる成長戦略について講演を行った。

 伊藤氏は2017年10月にJDIのCMOに就任した。かつては家電機器メーカーの立て直しに携わったこともある。伊藤氏は冒頭、日本の企業に警鐘を鳴らした。伊藤氏は別の企業に在籍していた当時、2年前のドイツのエレクトロニクスショー「IFA」において、IoTを搭載した冷蔵庫のコンセプトモデルを発表した。

 2017年のIFAでは、IoTを搭載した同様の冷蔵庫が、中国や韓国企業から具体的な商品として発表された。ところがこの場で日本企業からは1社も発表されなかった、と指摘する。「日本企業は、IoTに必要な技術を開発することでは先行している。それを具体的な製品に落とし込んでいくプロセスに大きな課題がある」と伊藤氏は話す。

 高い技術力を持ち、有力な顧客を抱えるJDIにも同様なことがいえるという。そこで伊藤氏は、既存のビジネス領域にとどまることなく、新たなビジネス領域の拡大にも取り組む。その背景には、IoTの浸透によるディスプレイの用途拡大がある。同時にディスプレイ単体から入出力デバイスへと進化させるためのビジネス戦略がある。

 例えば、スマートフォンや車載、デジカメ、医療機器向けなどはこれまで手掛けてきた領域である。これらの用途に加えて、棚札や指紋認証対応のスマートカード、ウェアラブル機器、サイネージ装置などの領域にもビジネスを拡大したいという。指紋センサー、高精細でフレキシブルなディスプレイ、極めて透明度が高いディスプレイ、などがその中核技術、製品となる。必要に応じて、高い技術力を持つ世界の企業とアライアンスを結びつつ、ディスプレイを利用した新たなビジネスモデルを構築したい考えである。

 もう1つ伊藤氏が強調したのが、「モノ作りだけではないコト作り」である。これまでのようにモノを作って販売する「トランザクションビジネス」ではなく、利用期間に応じて料金を支払う(あるいは受け取る)「サブスクリプションビジネス」形態への移行である。一例として、冷蔵庫のドア開閉などを遠隔地からチェックすることで、居住者の活動状態などが分かる「見守りサービス」などの事例を挙げた。

 この他、自動運転車とディスプレイの役割についても述べた。ヒューマンマシンインタフェースとして、大画面で超ワイド化、形状や曲面の自由度が高いディスプレイ、死角をなくす透明ディスプレイ、センサー技術との組み合わせなど、さまざまな技術の進化に対応できる入出力デバイスを提供する考えである。

 「MONOist IoT Forum in 東京」では基調講演や特別講演の他、モノ作り業界に特化したIoTの最新トレンドについて、具体的な事例などを紹介するセッションも実施した。その様子をダイジェストで紹介する。

IoT活用で何を期待するのか

 日立システムズは、「日立システムズIoTビジネスへの取り組み」をテーマに、導入支援からデータ収集、セキュリティ対策まで、同社が提案するIoTソリューションの活用事例を紹介した。

 日立システムズの産業・流通フィールドサービス事業グループ産業・流通インフラサービス事業部で副事業部長を務める前田貴嗣氏は、ドイツのインダストリー4.0を始め、米国や日本におけるIoT関連への取り組みに触れ、工場などにおける導入成果を紹介した。

 こうした中で同社は、顧客のIoT導入に対してさまざまな支援サービスを用意している。例えば、「フェーズ1」として、IoT活用シナリオの提案や、IoT導入支援パックの提供などを行う。この中にはトライアルの実施や、事前の想定値とトライアル結果に基づくギャップ検証なども含まれるという。さらに、「フェーズ2」として、工場内のアナログデータをデジタル化する業務代行サービスなどを用意している。「顧客はまず、IoTを活用して何をしたいのかを明確にすることが重要だ」と述べた。

緊密となるIoTとエッジコンピューティング

 ウインドリバーは、「エッジ/フォグコンピューティングで広がる新たな世界と実現に必要な技術」をテーマに、エッジコンピューティングの実現に必要な基盤技術と、フォグコンピューティングの実現による新たな世界について、デモ機などを用意して具体的に紹介した。

 ウインドリバーの営業本部IoT事業開発部で部長を務める石川健氏は、「エッジコンピューティング市場は2018年もさらなる成長が見込まれている。フォグコンピューティングはPAから普及する」と話す。

 日本における2017年のIoT市場について石川氏は、「AI・機械学習とIoTがとても緊密な関係になっている。また、エッジコンピューティングによるリアルタイム解析の市場が形成されつつある」と分析する。

 エッジコンピューティングやフォグコンピューティングの必要性や、導入するメリットなどについても触れた。例えば、エッジコンピューティングを活用するメリットとして、「工場内の生産設備をリアルタイムに制御できパフォーマンスが向上」「クラウドへ送信するデータ量を減らし通信コストの節減につながる」「オープンプラットフォームを導入することで外部製のソフトウェアが活用できる」などのメリットを挙げた。一方で、ソフトウェアのデバッグ、システム検証の工数が増大するといった課題も指摘した。

リスクベースのアプローチへシフトするセキュリティ対策

 ラピッドセブン・ジャパンは、「IoTの脆弱(ぜいじゃく)性と対策−Rapid7の取り組み」をテーマに、脆弱性の現状や同社が提供するサービスを紹介した。

 ラピッドセブン・ジャパンの執行役社長を務める牛込秀樹氏は、「セキュリティ対策は、これまでの防御ベースから、迅速な検知と対応を行うリスクベースのアプローチへとシフトする。そのためには脆弱性を認識すること(可視化)が重要」と話す。

 IoTセキュリティの特長として、「脅威や攻撃、被害の範囲が広い」「長期利用するIoT機器が多い」「用途によってはセキュリティ対策に限界がある」「IoT機器の接続先を事前に想定することが難しい」ことなどを挙げた。

 こうした中で同社は、IoTセキュリティサービスとして、自動車と運輸、家電、医療、監視カメラなどの領域に向けて、「IoTペネトレーションテスト」や「プロトコルテスト」などを提供している。講演では、監視カメラや携帯型医療機器、デジタル玩具、Bluetooth搭載機器、車載機器、照明器具などの具体的な製品を挙げ、サービス事例を紹介した。

潮目が変わる、イメージセンサー市場

 IHS Markitは、「5Gで花開くセンサー&イメージング市場〜ポスト・スマホカメラ時代の戦略〜」をテーマに、産業用途や自動運転/ドローン用途など、イメージセンサーの新たな市場についての予測などを紹介した。

 IHS Markit日本支社テクノロジー・メディア・テレコム部門の李根秀氏は、「スマートフォン向けで需要が拡大したイメージセンサー市場だが、5年以内に潮目が変わる。現在、踊り場を迎えている」と話す。その理由として、「通信環境が5Gに移行することで映像に対する要求が変わる」ことや、「車載システムや産業機器、医療機器など、新たな用途で需要が拡大する」ことなどを挙げた。

 車載カメラ市場は、2016年に5000万台を超えた。2020年に1億台規模となり、2022年には1億5000万台に達する見通しだという。車1台当たり10台のカメラが搭載されるとの予測もある。カメラ投入率は携帯電話機、スマートフォンのそれと同じスピードで推移しているという。自動運転に対応するための前方監視用カメラもこれから需要が増えると予測している。

 この他、農業や資源探査に用いるプロ用ドローン向けや、食品検査や部品検査などに用いるマシンビジョン向け、任意の波長を検出できるマルチスペクトルカメラ向けなど、新たな用途のイメージセンサーに注目。これらの市場予測などを紹介した。

2017年12月8日金曜日

“脱メール依存”に本気なら「チームコラボレーションツール」を検討しよう

 従業員や顧客、パートナーなど各者間のコミュニケーションを合理化し、コラボレーションを促進する手段として「チームコラボレーションツール」を採用している企業は少なくない。最近のチームコラボレーションツールは、グループメッセージングからコンテンツ共有、相手と1対1で向き合うミーティングに至るまで、幅広い分野の機能を備える。生産性の向上やプロジェクトの追跡など、数多くのメリットをもたらす。

組織の規模は問わない

 かつてコミュニケーション手段といえば、ボイスメール(留守番電話)サービス付きの音声電話といった標準的な手段ならともかく、高度な機能を持つシステムを導入するのは大規模なユーザー企業に限られていた。オンプレミス向けの複雑なユニファイドコミュニケーション(UC)製品の場合、その購入、配備、管理に当たって費用が参入障壁となっていた。

 クラウドコンピューティングの普及によって、ユーザー企業間の競争の土台が平準化された。今はごく小規模な企業でも、大企業が使っているものと全く同じチームコラボレーションツールを利用できる。

 大規模企業向けチームコラボレーションツールは一般的に、複数組織の間でシームレスなコミュニケーションを可能にするメッセージング機能を備える。小規模な新興企業であっても、大企業の顧客と同一のチームコラボレーションツールを使用して、一貫した方法でコミュニケーションができる時代になった。規模の異なる企業間で関係を確立したり、コミュニケーションを強化したりする際に、チームコラボレーションツールは非常に大きな役割を果たす。

チームコラボレーションツールとメールとの違い

 従来のコミュニケーション手段と比較した場合に、チームコラボレーションツールの利点が特に目立つ場面がある。例えば複数のチームメンバーが長期的なプロジェクトを受け持っているビジネスユニットにおいて、チームコラボレーションツールのメッセージング機能と、従来のメールを比較するとしよう。

 チームコラボレーションツールのメッセージング機能を使うと、プロジェクトチームのメンバーをいつでもチャットグループに追加したり削除したりできる。グループに追加したメンバーは、そのメンバーの参加前に共有されていた以前のメッセージやリンク、コンテンツなどにアクセスできる。メンバーやグループへの参加時期に関係なく、全員が確実にプロジェクトのコンテンツへアクセスできるようになる。

 チームコラボレーションツールのほとんどは、コンテキスト検索機能を備えている。この機能があると、グループチャットの履歴に含まれているコンテンツを探しやすくなる。

 これまでプロジェクト内での情報共有手段として使われてきたメールでは、2者間の会話に新しい受信者を追加すると、メールスレッドが混乱する場合がある。特定の情報を検索する際に、重複の山の中から探し出さなければならなかったり、逆に探しているコンテンツが欠落していたりすることもある。

 添付ファイルについては、以前送信されたメールには含まれていない可能性がある。そうすると送信者にファイルの再送を要求せざるを得ず、さらなる混乱を招く場合がある。グループメンバーに対してメールを送信する場合、チームメンバーの誰かが「全員に返信」のつもりで1人のメンバーへの「返信」をクリックすると、そのスレッドの輪から、不本意ながら他のメンバーの誰かが外れてしまうこともある。

 複数のチームメンバーとプロジェクト情報をやりとりする場面では、1つ1つの出来事はささいなものでも、こうした要因が組み合わさると大きな障害となる。

チームコラボレーションアプリはコンプライアンスの要件もカバーする

 これまで医療、金融機関、政府機関など一部の業種では、データに関する各業界向けの法制度に準拠していないため、チームコラボレーションツールを採用できない状況が発生していた。幸いなことに、大企業向けのチームコラボレーションツールのベンダーは、データ処理関連の特殊な法制度や仕様への準拠が求められる業種でも、問題なく利用可能にするための取り組みを始めている。

 従来のチームコラボレーションツールは、エンドツーエンドのメッセージ暗号化やデータの可視化、レポート作成、オンプレミスの専用サーバを使った暗号鍵管理など、幾つかの機能が不足していた。現在は、こうした高度なコンプライアンス機能を提供するチームコラボレーションツールが幾つか販売されており、幅広い業種で安心して使用できるようになりつつある。

別拠点のチームメンバーとのコミュニケーションに伴う課題もクラウドで軽減

 本社以外の広範囲に拠点が分散し、従業員が複数のタイムゾーンにまたがって勤務している企業は、クラウドベースのチームコラボレーションツールが有効であることに気付いている。クラウドベースのチームコラボレーションツールは、モバイルデバイスからの利用を中心に据えており、多くの従業員が別拠点に常駐している企業やグローバル企業に適している。

 トラブル対応コールセンターを24時間年中無休で運営している企業を想定しよう。この企業では「フォローザサン」(Follow the Sun)というモデルを採用しているとする。これは24時間体勢で運用するコールセンターを1カ所だけ配置するのではなく、複数のコールセンターを世界各地に点在させ、各コールセンターは通常の勤務時間で、次々と別拠点に引き継ぐことだ。ある拠点の稼働時間が終了した際には、インフライト(仕掛かり中)の障害チケットを次の拠点へと引き継ぐ。

 クラウドベースのチームコラボレーションツールがあれば、障害の情報を受け付けたコールセンターの従業員が、次のシフトの勤務を開始しようとしている拠点のスタッフに、その障害チケットに関する情報を引き継ぐことができる。障害チケットに関する情報は、地理的に分散したチーム間で共有できる。

単一ツールで真のUCを実現

 UCの最終的な目標は、あらゆるコミュニケーションニーズを満たす単一のシステムを組織全体で使用することだ。チームコラボレーションツールは前述の通り、メッセージング、電話会議、ビデオ会議、ソーシャルネットワークなど、幅広い機能を含む。ユーザー企業としては、自社で必要とするコミュニケーション手段を全て包含した製品を見つけることを目標にすべきだ。

 全エンドユーザーが使うチームコラボレーションツールを1種類に絞り込むと、組織は次の2つの主要な効果を実感できる。1つは、会社やIT部門の許可なくIT製品/サービスを業務利用する「シャドーIT」が、コラボレーションに与える影響を軽減できる点だ。基本機能を無料で利用可能にしているチームコラボレーションツールが少なくないことから、各部署がIT部門からの情報提供や支援を受けずに、独自の決定に従ってチームコラボレーションツールを使用する例もある。この傾向は、重要なデータの損失を防ぐのが困難になるという、セキュリティ上の課題につながる。こうしたシャドーITを統制できる見通しが立たない場合、機密情報や知的財産を紛失したり盗まれたりする可能性が高まる。

 もう1つの利点は、全員が同じツールを使用することで、チームコラボレーションツールの効果がますます増大するという事実だ。コミュニケーション手段の統一により、部門間の縦割り志向(サイロ化)を打破し、社内の全員で情報を交換できるようになる。裏を返せば、各部門が独自のチームコラボレーションツールを使用すると、コミュニケーションが分断されたり、データセキュリティの問題が即座に発生したりする可能性がある。企業は最終的に、単一のチームコラボレーションツールが大多数の従業員のニーズを満たすことを保証する必要がある。

 どのような規模の企業であっても、チームコラボレーションツールの購入を正当化する方法は複数存在する。大企業向けツールの場合は一般的に、幅広い要件を満たすために微調整用のオプションを用意している。とはいえ競合よりも圧倒的に優れたチームコラボレーションツールは現時点では存在しないので、今後の選択肢の充実に期待が集まる。

2017年12月5日火曜日

自動化が2030年までに奪う雇用、日米で1億超える可能性

人工知能(AI)とロボットの関連技術は近年、大きく進歩している。そのもたらす容赦ない変化は2030年までに、米国のおよそ7300万人の雇用を奪う可能性がある。

米マッキンゼーの調査部門、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートが先ごろ発表した報告書によると、政府や財界のリーダーらが雇用の創出に向けた具体策を講じた場合には、米国で雇用を奪われる人はおよそ3900万になると見られる。つまり、たとえ自動化が進んだとしても、こうした雇用の損失は生産性の向上や経済の成長、その他の要因によって一部を相殺することが可能だということだ。

ただ、いずれにしても、完全雇用の維持は難しい課題になるだろう。経済と労働市場はどちらも、競争力を維持するために全面的な見直しが必要となる。それまで従事していたのと同様の別の仕事に移行することができる米国の労働者は、約2000万人と見られている。

米国を含め先進国では、労働者の多くが新たなスキルを身に付けるか、全く新たな分野での訓練を受ける必要に迫られるだろう。そうした労働者の割合は2030年には、米国とドイツでそれぞれ3分の1程度、日本ではおよそ半数になると見られる。さらに、自動化が最も急速に進むことになった場合には中国とインドでも多くの雇用が奪われ、同年までに仕事を失う人はそれぞれ、2億3600万人、1億2000万人に上る可能性がある。

現在予想される将来の環境の下で最も自動化の影響を受けやすいのは、機械オペレーターやファストフード店での調理といった単純労働になるとされている。一方、影響が及ばない職種を予想するのはより難しいが、経営者やエンジニア、科学者、教師、配管工などが挙げられている。

自動化が最も急速に進んだ場合、以下の6か国では2030年までに次のとおりの雇用が失われると見られる。

・中国:2億3600万

・インド:1億2000万

・米国:7300万

・日本:3000万

・メキシコ:1800万

・ドイツ:1700万