2018年11月27日火曜日

LINE---急伸、中国テンセントとの提携が伝わる

LINE<3938>は急伸。中国ネットサービス大手のテンセントと提携、2019年から訪日中国人客にスマホ決済サービスを提供すると報じられている。小売りや外食の店舗に専用端末を置けば「ウィーチャットペイ」が使えるようになる。訪日客を呼び込みたい中小店舗の囲い込みが狙いとなる。テンセントのユーザー数は8億人とされており、アリババなども上回る。「LINEペイ」の導入も進んでいくとの見方が優勢に。

2018年11月22日木曜日

ルノー・日産・三菱連合は崩壊に向かう公算大

 11月19日の月曜日。日産のカルロス・ゴーン会長と、グレッグ・ケリー代表取締役が東京地検特捜部によって逮捕された。速報を見た瞬間、「まさか、何かの間違いでは」と思ったほど、寝耳に水の逮捕劇だった。

 ただ、逮捕日直前の週末くらいから、東京地検に妙な動きがあるという情報はキャッチしていた。地方から続々と応援部隊が集結しているというのだ。こういうときにはただでさえ口の堅い検察関係者も一層堅く口を閉じ、内部から情報が漏れてくることはまずない。「近々、何か大きな案件に取り掛かろうとしているのか」と推測はしていたが、その矛先がまさか日産に向いていたとは想像していなかった。

針の穴に糸を通すような立件手法
 カルロス・ゴーンとグレッグ・ケリー。百戦錬磨の経営者と弁護士出身のビジネスエリートである2人に、一切の動きを悟られないように、東京地検特捜部は相当慎重な捜査と内部調査を重ねてきたのだろう。

 逮捕のタイミングもそのことをよく表している。海外に出ていた2人が、月曜日にプライベートジェットで帰国したところを見計らって地検が接触し、事情を聞くという段取りを踏んでいる。ゴーン、ケリー両氏に悟られないようにすることを何よりも最優先させた捜査だったと言えるだろう。

 ただし、立件の仕方を見ていると、針の穴に糸を通すような、かなり難しいやり方をしている。

 今回、ゴーン氏らの行為で問題視されているのは所得の過少申告だ。過少申告なら本来は所得税法違反、つまり「脱税」で立件するのが一番オーソドックスなやり方だ。だが、最初の段階でそれはできなかった。というのも今回の件については、国税が先に動いて検察が受けたという案件ではない。入り口から逮捕まで特捜部主導でやっている。日産社内からの内部告発を受けて、日産サイドの全面協力を得て情報を提供してもらって特捜部が立件したわけだ。

 その過程の中で司法取引が行われ、実際に「所得隠し」の実務を担当した日産社内の社員・役員に関しては、刑事的責任を問わないということを前提に情報を出してもらってきた。

 その捜査の中で、最も確実に立件でき、事件の入り口として最も適当だと判断されたのが、有価証券報告書虚偽記載という「金融商品取引法違反」だったのだろう。

 もちろんこれは全くの"別件逮捕"というわけではないが、あくまでも形式的な犯罪だ。

 つまり、もしも「意図的に所得を隠していた」ということであれば「脱税」による所得税法違反だし、「本来受け取るべきでない報酬であるにも関わらず受け取った」ということであれば、会社に損害を与えたということで「特別背任」による商法違反も成り立つ。場合によっては「横領」という形にもなる。

 いずれにしても本来なら、脱税や特別背任、横領などを問うべき案件なのだが、今回東京地検は、「まずはやり易い金商法違反でとりあえず身柄を確保し、取り調べをしかりやって解明していこう」という方針を立てて、形式犯のところから入ったのだ。

 全容解明のためには、今後の捜査で「本人たちがどの程度の意識をもってやったのか」というところをどこまで詰められるかが焦点になる。

ゴーン氏の刑事責任を追及せざるを得なかった事情
 逮捕容疑の中身をもう少し詳しく見てみよう。

 ゴーン氏の報酬として総計でおよそ50憶円、有価証券報告書で過少に記載されていた、ということであるのだが、報道を見て、もしかしたら一般の新聞読者やテレビの視聴者の中には、キャッシュ、あるいはキャッシュに近い株券や債券がゴーン氏の懐に入ったと思っている人もいるかもしれない。

 そうではない。日産が、オランダに設立した子会社に投資資金として回ってきたお金を使って、事実上、ゴーン氏専用の邸宅を、レバノン、ブラジル、オランダ、フランスの4か所で購入していて、それをもっぱらゴーン会長及びそのファミリーが利用していた。日産の金でゴーン会長の邸宅を買ったわけだから、事実上、ゴーン会長に対する形を変えた報酬ということになる。

 報道ベースではまだ判然としていないが、これらの物件の所有者が誰になっているのかも一つの焦点になる。日産の金で購入した邸宅をゴーン氏にあげたということになれば、その購入額が丸ごと報酬になる。あるいは物件の所有名義が日産になっていれば、利用した期間に応じ、本来払うべきだった賃料の合計が報酬となる。

 いずれにしても、購入資金なのか賃料なのか、その合計がマックスで50億円ほどになるということだ。その額が有価証券報告書に記載されていなかったということであり、ゴーン氏の懐や銀行口座に50憶円ほどのキャッシュが転がり込んだ、というわけではない。

 そういった意味では、日産側の「被害額」はまだ正確には確定していないと言える。脱税は金額の確定がないと立件できない。特別背任も、会社が被った損害額が確定しないと立件できない。横領も同様だ。つまりいずれにしてもそうした犯罪を立件するためには金額の確定が必要となってくる。それゆえに入り口の段階では、その種の犯罪を逮捕容疑にするのは難しかったのだろう。

 ところが有価証券報告書の虚偽記載は、記載された内容に間違いがあったら立件できる。だから特捜部はここを入り口に定めたのだ。

 先ほど、「針の穴に糸を通すような立件の仕方だ」と書いたのはそのためだ。ゴーン氏が会社を私物化したことはまず間違いないので「無理筋な事件だ」とは言わないが、少々危うい罪の問い方をしているのは間違いない。

 そうまでしてゴーン会長の刑事責任を追及しなければならなかった理由が日産、あるいは東京地検にはあるはずだ。

ルノー・日産・三菱連合は崩壊へ!?
 恐らく日産の経営陣の多くは、ルノーによる日産統合を画策している上、会社の私物化・専横が目に余るようになったゴーン氏を何とか排除したいと考えていた。しかし、取締役会で解任動議を提案するという「クーデター」を起こしても、仮に万一それが成功しても、何らかの逆襲を食らう恐れもあった。そこで、ウルトラCを狙って、捜査当局の協力を仰いでゴーン排除に動いたというのが今回の一件の本質ではないかと筆者は睨んでいる。言うなれば、特捜部を巻き込んだクーデター劇だ。

 もちろんゴーン氏側に何も問題がなければ検察が動くこともなかったろうが、「会社私物化」の明確な証拠がそこにあった。検察としても、日産側に協力する大義名分が立つという判断が下されたのだろう。

 今後の捜査についても触れておこう。入り口としては金融商品取引法違反から行くにしても、いずれは脱税、あるいは特別背任、横領というところでの立件を目指していくはずだ。

 これまでのセオリーを踏まえて予測するならば、金融商品取引法違反で捜査をし、次に特別背任あるいは横領について捜査し、そこで不正に得た報酬の金額が確定できれば、「それは報酬に当たるのだから本来は納税しなければならなかった。あなたは脱税しています」ということで、最後は脱税事件として立件することになるだろう。

 本来の目的ではない形で子会社が使われた、会社のお金が半ば私物化された、その状況を隠蔽しようとしてグレッグ・ケリーが日産社員に強い指示を与えていた、ということがこれまで報道されている。これらが事実認定されれば、恐らく裁判官の心証は真っ黒になる。ゴーン、ケリーの両氏が刑事罰を免れることは、現時点では極めて難しいと言わざるを得ない。

 残された最大の問題は、ルノーと日産の関係がどうなって行くか、だ。ルノー、日産、三菱自動車のような企業連合の場合、普通だったら持ち株会社を設立し、その下に3社がぶら下がるという形をとることが多い。持ち株会社が、傘下企業間のアライアンスや経営資源の適正配分、事業再編のハンドリングをするほうが効率的だからだ。

 ところがルノー・日産・三菱自動車の3社連合では、そういった組織的な司令塔がない。人的な司令塔としてゴーン氏が3社の会長を兼ねるという形で束ねていた。「ルノー・日産・三菱アライアンス」というパートナーシップもあるが、これとて代表はゴーン氏だ。つまり3社連合はゴーン氏が一人でまとめ上げていた連合体なのだ。

 その人物が逮捕され、経営の表舞台から消えてしまった。新たに3社の会長を兼務するような人物が出てくるだろうか。その可能性は極めて低いと言わざるを得ない。

 ルノーは日産の大株主であるから、「ルノーから新しい会長を派遣します」という申し出があるかもしれないが、経営規模ではルノーを上回る日産が、唯々諾々とルノーの要求に応えるとも思えない。3社連合は瓦解の方向に向かう可能性高いと思う。

 果たして日産の西川廣人社長はルノーとどう渡り合うのか。クーデター劇の第二幕はもう始まっている。

2018年11月19日月曜日

楽天はKDDI回線借りてスタートの「勝算」

 2019年10月に携帯電話事業者として新規参入する楽天は、KDDIと提携し、東名阪の都市部以外はKDDIからネットワークを借りてスタートする。果たして楽天の「勝算」は。
 ◇ギブアンドテイクの関係

 一方でKDDIは、楽天から決済サービスの「楽天ペイ」などの店舗網を使って、QRコード決済の「auペイ」を開始。楽天が培った物流基盤にも相乗りして、KDDIが展開している物販サービスの「ワウマ」の配送を強化する。

 新規携帯電話事業者として参入する楽天だが、もともと、サービス開始当初は、他社のネットワークを借りる予定だった。全国にネットワークを張り巡らせるには時間がかかるためで、過去にも、イー・アクセス(現ソフトバンク)が携帯電話事業者として新規参入した際には、都市部以外でNTTドコモのネットワークを借りていた。

 ただ、新規参入事業者への貸し出しは制度として義務化されておらず、各社ともビジネスとしてネットワークを提供している。この場合、ローミングされた分だけ、楽天からKDDIへの支払いが発生する。そのため、自前のネットワークが少ないと、ローミング料で利用者から得た収益が失われてしまう格好になる。

 楽天とKDDIの提携がおもしろいのは、逆に楽天側からも、KDDIに決済や物流の基盤を提供しているところにある。一方的にローミング料金を支払うわけではなくなり、KDDIからも対価を得られるため、ローミング料をある程度相殺できる。結果として、楽天にとっては、コストを抑えられるのがメリットだ。

 ◇LTEメインで相性がいい

 ネットワークの観点でも、楽天とKDDIは相性がいい。KDDIのスマホは、高速通信規格のLTEだけに対応している機種が多く、世代が一つ前の第3世代のネットワークに対応しなくても十分な通信エリアが構築されている。LTEだけでサービスを始める楽天にとって、利用しやすい環境だったというわけだ。

 一方でKDDIは、通信の上に乗せるサービスを強化していたところだ。ただ、QRコードを使った決済サービスはドコモやソフトバンクに出遅れており、物販サービスのワウマも、楽天やアマゾン、ヤフーといった競合とは渡り合える規模になっていない。

 これがソフトバンクだと、楽天側から決済基盤や物流網を借りるメリットが少ないため、楽天は一方的にローミング料を払う構図になる。サービス分野では楽天とヤフーが競合しているため、提携先としてはふさわしくなかったはずだ。格安スマホ事業者として参入していた楽天に回線を貸していたドコモとは手を組めそうだが、通信事業者で競合する会社との提携には難色を示していた。当面の全国ネットワークが必要な楽天と、決済、物販を強化したいKDDI双方の思惑が一致した結果といえるだろう。

 ◇料金は「まだ決まっていない」

 もっとも、楽天も東名阪は当初から自前のネットワークを整備しなければならない。特に都市部や建物が多く、地下鉄網も張り巡らされているため、こうしたエリアまで整備しようとすると、権利者との交渉に時間がかかる。

 楽天は「数百人体制で、基地局設置に向け、物件を保有している方に連絡を取り始めている」(山田善久副社長)というが、開始当初にどこまで電波がきっちり入るのかは不透明な部分が多い。

 また楽天は、ドコモなどからネットワークを借りる、格安スマホの楽天モバイルに近い料金を提供するとしているが、具体的な金額は「まだ決まっていない」(同)。既存大手3社には政府からの値下げ要請が強まるなか、ここに楽天がどう対抗していくのかは未知数といえる。

2018年11月13日火曜日

Firefox、Amazon.comなどでチェックした商品の値下げを知らせる「Price Wise」のテスト機能

 Mozillaは11月12日、Webブラウザ「Firefox」の未公開機能テストプログラム「Firefox Test Pilot」で、チェックした商品が値下げされると通知する「Price Wise」機能を公開した。

 対応するのは米国のAmazon、Best Buy、eBay、Home Depot、Walmartのオンラインショップだ。テストに参加するとツールバーにドルマークのアイコンが追加される。各オンラインショップで気になる商品のページを開いた状態でこのドルアイコンをクリックすると、そのページがリストに追加される。

Price Wiseのリストに商品を追加
 その商品の価格がページ上で変更されると、アイコンに[!]が表示され、アイコンを開くと幾ら値下げされたかが分かる。リスト上の商品をクリックすると商品ページが開くので、すぐに購入できる。

値下げ通知
 Mozillaはまた、Firefoxで開いているタブをメールで送る機能「Email Tabs」もTest Pilotに追加した。このテストに参加すると、ツールバーにPCとメールのアイコンが追加される。これをクリックすると開いているタブのリストが表示されるので、そこで送信したいタブを選び、コピーするあるいはメールするを選ぶ。現在対応するメーラーは米GoogleのGmailだけだが、将来的には他のメーラーにも対応していく計画だ(筆者がやってみたところ、「Email Tabs を有効化できませんでした。また後で試してください。」と表示されてしまった)。

2018年11月7日水曜日

ドコモの利益回復前倒しできるよう支援=料金値下げでNTT社長

NTT<9432.T>の澤田純社長は6日の会見で、NTTドコモ<9437.T>が携帯電話料金の値下げで来期減益を見込んでいることについて、持ち株会社として支援していく姿勢を示した。

澤田社長は「ドコモは2023年度には現状利益水準に戻すと言っているので、持ち株としては支援して(利益回復を)前倒しするようにしないといけない」と説明。「例えばグローバル調達会社にドコモが参画しやすいようにしたり、ドコモと他社でコストがかかっているプロセスをまとめることで効率化したり、色々な支援策を検討していく」と語った。

携帯電話料金の値下げをめぐっては、KDDI(au)<9433.T>とソフトバンクも検討しているが、増益基調は維持したい考えだ。

澤田社長は「減益しないで値下げをするという話は、あまり値下げしないということとほぼ同じだ」と語った。

2018年11月6日火曜日

巨大ITの規制、政府強化へ データ集中・市場独占懸念

 政府は米グーグルや米アマゾンなど、「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業への規制を強化する。個人情報や知的財産などのデータがこうした企業に集中して市場の寡占が進み、公正な競争環境をゆがめかねないためだ。欧州連合(EU)などの規制強化の動きと歩調を合わせる。

 7月から議論を進めてきた経済産業省や公正取引委員会などの検討会が5日、中間論点整理案を公表した。年内に最終案をとりまとめ、年明けから具体的な規制方法の検討に入る。

 検索やSNS、ネットショッピングなどのサービスを展開するIT企業は「プラットフォーマー」と呼ばれる。このうち、グーグルと米アップルに加え、米フェイスブックとアマゾンの4社はその頭文字を取って「GAFA(ガーファ)」とされる。こうした企業はこれまで、個人や事業者の取引を生む場を提供しているにすぎないとして、日本では規制の対象とみなされていなかったが、検索サービスやネット通販が普及するにつれ、個人の検索履歴や買い物履歴などのデータが集中し、市場の寡占も進んだ。

 一方で集めた情報をどう取り扱っているかが不透明なまま、ほかの企業が不利な取引を強いられるなど、不公正な条件にさらされているとの懸念も出てきた。

 そこで政府はプラットフォーマーに対し、企業との取引条件などの開示を義務づけることを検討。データを独占して市場をゆがめていないか、専門家を集めた監視組織の設置も議論の対象とする。

 プラットフォーマーが企業を買収する場合、公取委は買収相手の企業が持つ情報も加味し、個人情報や特許などのデータがどの程度、集積するかを審査対象に加えることも検討する。

 先行するEUは今年4月に専門の監視組織を発足させ、プラットフォーマーの規制案も公表している。

米国中間選挙…トランプ共和党が勝ったら「米中の未来」はこうなる

中間選挙後の対中政策
アメリカ時間の11月6日、中間選挙が行われ、ドナルド・トランプ大統領の約2年間の政権運営が問われることになる。それとともに、今後アメリカがアジアをどうしていくつもりなのか、特に中国との「新冷戦」を本格的に進めていくつもりなのかが、われわれアジアに生きる人々にとっては最も気になるところである。

そうしたことはもちろん、中間選挙でのトランプ共和党の勝敗次第で変わってくるだろう。

2年前の大番狂わせの大統領選と同様のトランプ勝利、すなわち上院も下院も共和党が制した場合、トランプ大統領の再選が見えてくる。そうなると、トランプ大統領は強権を手にすることになり、政策に余裕ができてくる。

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この場合、今月下旬にブエノスアイレスで開かれるG20(主要国・地域)首脳会議の際に行われる米中首脳会談で、中国側が大幅な譲歩案を提示し、いわばトランプ大統領に頭を下げる形で、貿易戦争を終結させようとするのではないか。トランプ政権が8年政権になると思えば、中国は強気に出られないからだ。

逆に、上院も下院もトランプ共和党が過半数を占められず敗北した場合、トランプ大統領はレイムダック化し、2年後の再選はおぼつかなくなる。そうなれば、中国の方がアメリカに強気に出やすい立場になる。中国としては、トランプ政権に対しては毅然と構えておき、次の政権に備えるということだ。

一番難しいのが、トランプ大統領が1勝1敗となる、すなわち上院は共和党が過半数を占め、下院は民主党が過半数を占めるケースである。その場合、トランプ大統領としては、2年後の再選を目指す芽はあるが、もう一波乱起こして成果を得ないといけない。そのため、中国に対しては、いま以上に強硬になっていく可能性が高い。

だが中国としても、2年後にトランプ大統領が再選するかどうか不明なわけだから、民主党にも片足を突っ込むことになり、トランプ政権に大きく妥協する必要はないと考える。そのため、今月末の米中首脳会談では、そこそこの譲歩案を示し、アメリカの中国攻撃が小休止するくらいの処置を取るのではないか。

いずれにしても、中間選挙後のトランプ政権の対中政策を見る時、当面の注目点は、ジェームズ・マティス国防長官の去就だと私は考えている。

トランプ政権内の意見対立
過去2年近くの波乱と混乱に満ちたトランプ政権にあって、「政権の良心」と言えたのが、マティス国防長官だった。トランプ政権が発足した翌月の昨年2月に来日し、安倍晋三首相や稲田朋美防衛相(当時)と会談したが、常に正論を吐くこの独身主義者の振る舞いは、日本に安心感を与えたものだ。

周知のように昨年は、アメリカと北朝鮮が一触即発となった一年だったが、米朝戦争やアメリカ軍による北朝鮮空爆という「有事」を回避できたのは、マティス長官の「存在感」が大きかった。マティス長官は一貫して、アメリカによる北朝鮮への武力行使は時期尚早であるとして、逸る大統領や周辺の強硬派に「待った」をかけ続けた。有事になれば、在韓米軍や在韓アメリカ人に多大な犠牲が出る可能性が高まるからだ。

「圧力はよいが戦争はよくない」――マティス国防長官の対北朝鮮政策は、最終的にはトランプ大統領の意見と一致した。

何事も利害得失で判断するトランプ大統領は、北朝鮮と戦争すれば必勝は間違いないが、アメリカ人の犠牲が多く出れば、中間選挙に敗れ、再選も不可能になることを悟ったのだ。

そもそも米朝は国交さえないので、北朝鮮にいくら制裁をかけても、アメリカ経済とは関係ない。要はトランプ流に言えば、北朝鮮との争いは「利益を生むビジネス」ではなかったのだ。

そういうわけでトランプ政権は、今年に入って「仮想敵国」を、北朝鮮から中国に移し替えた。

この方針転換は、マティス国防長官、ジョン・ケリー大統領首席補佐官、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長らの軍閥、マイク・ペンス副大統領、ジョン・ボルトン大統領安保担当補佐官らの外交強硬派、ロバート・ライトハイザーUSTR(米通商代表部)やウィルバー・ロス商務長官らの通商強硬派、そしてキルステン・ニールセン国土安全保障長官やクリストファー・レイFBI長官ら国内安保強硬派たちに、一致して受け入れられた。

軍閥は中国軍の拡大路線に憂慮し、外交強硬派は中国の覇権取りを警戒し、通商強硬派は中国経済の急速な発展を畏れ、国内安保派は中国の技術覇権を阻止しようとしていたからだ。さらに言えば、かつてヒラリー・クリントン候補を支持した民主党エスタブリッシュメントのグループも、中国の覇権取りを押さえ込みたいという点で、中国には強硬だ。

こうした「風」を受けて、トランプ大統領は今年3月22日、中国との貿易戦争の「宣戦布告」を行った。それに対して、中国も強く受けて立った。

それから半年以上を経て中間選挙を迎えた現在、これらトランプ政権内の一群の対中強硬派たちは、一枚岩とは言えなくなってきている。簡述すれば、さらに中国を叩いて貶めるべきだと考える過激なグループと、これ以上、中国との対立が激化すると、アメリカも思わぬしっぺ返しを喰らう恐れがあると警告する穏健なグループとに分かれ、意見対立が起こっているのだ。

その後者の代表格が、マティス国防長官というわけである。

米中両軍が激突するとしたら
9月5日付『ワシントン・ポスト』は、「ホワイトハウスはジム・マティスの潜在的な交替を検討中」という記事を報じた。ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が出版するトランプ大統領の暴露本の中で、マティス国防長官がトランプ大統領のことを、「理解力は小学5年生か6年生並み」と評したとする責任を取らされるという内容だ。

9月15日には『ニューヨークタイムズ』も、同様の辞任観測記事を流した。

これに対し、マティス長官は9月18日、国防総省で、「それらの報道を真剣に受け止める気はない。就任以来、いくたびもそういう噂が立ち、消えては次の噂が報じられた」と述べ、辞任報道を打ち消した。

だが、10月14日に放送されたCBSの報道番組『60分』で、インタビューを受けたトランプ大統領自身が、マティス国防長官の辞任説を問われて、こう答えたのだ。

「彼が辞任する可能性はある。もしも真実が知りたいというなら言うが、彼は民主党員のようだと私は思っている」

この発言は、中間選挙まで1ヵ月を切って、大統領自らが、国防長官を公の場で侮辱したに等しかった。この時、トランプ大統領は、「2日前にマティス長官とランチを共にした」とも語っている。

これは推測だが、マティス長官は、9月30日の南シナ海での米中艦艇の一触即発事件を受けて、「これ以上、中国に強硬に出ては危険だ」と、大統領に「直談判」に及んだのではなかったか。もしくはトランプ大統領に呼びつけられ、「あの時、なぜわが方が引いたのだ?」と問われて、そのような発言をして大統領と口論になったのかもしれない。

先月のこのコラムで詳述したように、10月1日、アメリカ軍は、「前日の9月30日に、南シナ海で駆逐艦『ディケーター』が『航行の自由作戦』を実施中、中国人民解放軍のミサイル駆逐艦(『蘭州』)が、海域から離れるよう警告し、41mの距離まで異常接近してきた」と発表した。これに対し10月2日、中国国防部も強く反論した。

「アメリカ軍の蛮行は航行の自由の名のもとに、法を飛び越えて沿岸国の主権と安全を脅かし、地域の平和と安定を損なうものであり、中国は決然と反対する。中国の軍隊は、防衛の職責を堅実に履行し、今後とも一切の必要な措置を取り、国家の主権と安全を決然と死守し、地域の平和と安定を決然と維持・保護していく」

近未来に米中両軍が激突するとしたら、それは南シナ海、台湾海域、尖閣諸島海域の3ヵ所のうちいずれかしか考えにくい。そのうち南シナ海が、最も危険な水域となってきたことを世界に知らしめた「事件」だった。


「米中共存」か、「米中新冷戦」か
もしも中間選挙の後にマティス国防長官が辞任した場合、おそらく「マティス派」のケリー大統領首席補佐官、ダンフォード統合参謀本部議長の二人も連座して辞めることになるだろう。そうなると、トランプ政権の対中強硬策に歯止めが利かなくなる。

トランプ政権がいま以上に強硬策に出るようになると、習近平政権も同様に、いま以上に強硬策に出ざるを得なくなる。なぜなら、前の江沢民政権(鄧小平時代も含む)は「韜光養晦」(目立たぬよう実力を蓄える)を標榜し、胡錦濤政権は「求同存異」(同じものを求めながらも異なるものが存在する)をスローガンに掲げていた。

ところが、いまの習近平政権のスローガンは、「中華民族の偉大なる復興」「強国、強軍の夢」である。普段は勇ましく拳を振り上げている習近平政権がアメリカに弱気に出たなら、8954万中国共産党の内部で求心力を失い、同時に13億9000万国民の失望を買うだろう。

そして最も不信感を露わにするのは、200万人民解放軍ではないか。

習近平が軍を統括する党中央軍事委員会主席に就任して丸6年が経つが、その間、習近平主席は、徹底して軍内の利権やビジネスなどを排除し、大胆な機構改編を断行した。そうした大ナタを振るい、「軍人には戦争中と戦争準備中の二つの状態しかない!」と発破をかけることによって、自己に軍権を集中させてきた。そんな習主席が、アメリカに対して弱腰だということになれば、軍内部での求心力は急速に薄れていくに違いないからだ。

つまり、中間選挙を経たトランプ政権が、対中強硬策のレベルを引き上げた場合、習近平政権もまた、対米強硬策のレベルを引き上げざるを得ないということだ。

具体的には例えば、2012年に尖閣諸島を国有化した日本に対して行い、2016年にTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備を決めた韓国に対して行ったような、中国国内におけるアメリカ企業の締め出しである。GM、ボーイング、アップル(iPhone)、スターバックス、マクドナルド、ディズニー……。中国国内で儲けているアメリカ企業は多数あるが、それらを締め出していく。

そうなると、これは確かに「米中新冷戦」である。最後に、中国がアメリカ国債を売り払うところまで行ったなら、もはや世界は、軍事的にも経済的にも大混乱であり、まさに「悪夢のシナリオ」である。

それでは中間選挙後に、「米中共存」となるのか、それともやはり、「米中新冷戦」となるのか。

私は、それは結局のところ、トランプ政権次第だと思う。なぜなら習近平政権には選択の余地が少ないが、トランプ政権は比較的フリーハンドだからだ。

習近平政権は国内の民主化を進める気はなく、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義」を強化するだろう。そして対外的には、「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)や「新型の大国関係」(米中による太平洋二分割)を推し進めようとする。

「一帯一路」の公式ホームページでは、すでに関係国を121ヵ国まで増やしている。日本とアメリカは含まれていないが、韓国は入っているし、アメリカ大陸の国々にまで広げている。

さらに、アジアの周辺諸国や発展途上国に、「中国模式」(チャイニーズ・スタンダード)を拡散させようとするだろう。中国のように、政治は社会主義の一党独裁、経済は市場経済という方式であっても、十分に経済発展していけるということを示して、「仲間」を増やそうという戦略だ。まるで20世紀のソ連のようだが、ソ連と違って「経済の成功例」を引っさげているだけに、説得力がある。

つまり、習近平政権は今後とも、アメリカがトランプ政権だろうが、他の政権に代わろうが、「中国模式」を進めていくのである。だからそれを受容するか、拒絶して対抗するかは、ひとえにアメリカ側の選択ということになる。


日本へのラブコール
もちろん習近平政権としても、ただやみくもに「中国模式」を貫いていくわけではない。最近の特徴としては、周辺諸国への「微笑外交」を強めていることだ。特に、アメリカの東アジア地域における最大の同盟国であり、世界第3の経済大国である日本を取り込もうという姿勢が顕著である。

安倍首相の訪中については先週のこのコラムで述べたが、中国の有力経済紙『第一財経日報』(11月4日付)は、「魏建国:中日"第三方市场協力"は"一带一路"に限らない」という長文の記事を載せた。

元商務部副部長の魏建国・中国国際経済交流センター副理事長は、今回の安倍首相の訪中時の「裏方の仕掛け人」と言われるキーパーソンだ。魏副理事長の主張の要旨は、次の通りである。

「今回の中日第三方市場協力の意義は重大だ。それは日本が、『一帯一路』というカギとなる問題で、アメリカと袂を分かっただけでなく、将来の中国と他国との協力の一つの規範となるものだ。

中日はこれから、文化・環境・都市計画・養老・健康・医薬などの分野で、さらに『第三方市場』での協力を行うことになるだろう。今回の安倍首相の訪中は、中日の今後40年の貿易関係が、競争から協調になり、互いの長所を補い合い、互いの利益と共勝に変わることを意味する。加えて、中日が手を携えて自由貿易を推進し、一国主義や保護貿易主義に反対していくことを示した。今後は、日本がAIIB(アジアインフラ投資銀行)に加入することもあり得るだろう。

習近平主席が『新シルクロード経済ベルト』と『21世紀海上シルクロード』の建設協力を提起して以降、日本最古参の軍需工業企業であるIHIの社長が、真っ先に私のところへ来て、日本も参加できないだろうかと聞いてきた。その後、私が推進した一連の活動の中で、日本の企業経営者たちが積極的に発言したのは、『走出去』(中国企業の対外進出)に対する強烈な協力願望だった。

現在、伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産などは、中国企業といかに『一帯一路』の関係国家地域でインフラ建設や農業、加工製造業、新エネルギーなど多分野で協力できるかという研究を強化している。

それは、中国とその他の国が、第三国の市場を共同開拓することの先例ともなる。例えば、中国とフランスが、イギリスのヒンクリー原発を共同開発するプロジェクトや、中国とアメリカがギニアでアルミニウムとバナジウムの資源開発を行うといったプロジェクトなどだ。

これらの協力は個々のプロジェクトに過ぎないが、今後行っていく『第三方』は、『一帯一路』の関係国ばかりでなく、さらに広範な市場と地域を含んでいる。10月26日に、中日双方がサインして以降、すでにフランス、ドイツなどの国の関係者が私のところへやって来て、詳細な研究を行っている。彼らは日本が先鞭をつけたと見ているのだ。

これらのプロジェクトは、『企業主体、市場操作、政府引率、互信互利』の原則を尊重しなければいけない。そしてすべての具体的状況を公開し、一部の国際学者たちの『一帯一路』のプロジェクトの透明度、資金源、投資の回収などへの関心に応えたものになっている。

今回の中日の第三方市場での協力の覚書は、今後の事業のためのプラットフォームであり、中国国際貿易促進委員会とJETROが企業を牽引して行ったプロジェクトである。その他、中日は共にエネルギーの需要が大きい国であり、石油や石化産品の輸入時に、人民元決済ができるようにする。中日が将来、国際的な銀行団を組み、第三方市場を共同開発した場合、さらに信用と利便性が増すだろう。

中日は手を携えて、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)を年内に妥結させるだけでなく、中日韓自由貿易協定(3ヵ国で世界貿易の4割を占める)も推進していく。もしも日本が、TPP11という枠組みを超えてもよいというなら、中国はおそらく完全にそれに乗っていけるだろう。世界第2と第3の経済大国が手を携えれば、この地域の協定の範囲と質が広がり、さらにレベルアップした自由貿易協定となるだろう」

これまでは考えられもしなかった日本へのラブコールである。ちなみにこの記事には、下記の補足説明もついていた。

・今年1月~8月の日中貿易額は2141億ドルに達し、前年同期比11.2%アップで、過去7年の下降線を変えるものである。
・1月~8月の日本企業の中国での新規進出は529社に上り、前年比40%以上アップ。投資額も28.2億ドルで、前年同期比38.3%アップした。
・中国国際輸入博覧会(上海で11月5日~10日に開催)で、579社の日本企業が参加し、世界最多。日本企業のブースの総面積は1万8888㎡に達する。

この説明の最後にあるように、中国はアメリカの中間選挙にぶつけて、中国国際輸入博覧会を開催した。初日の5日午前中には、北京から駆けつけた習近平主席が、基調演説を行った。

「中国は主導的に輸入を拡大していく。単なる計画ではなく、世界に向かって、未来に向かって共同で発展していくことを遠謀深慮し、促進するのだ。中国は将来にわたって、国内消費を順調に伸ばしていくものと見られ、またそれに向けて有効な政策措置を積極的に取っていく。国民の収入が増加し、消費能力が高まり、中間層や富裕層の消費を伸ばしていく。国内市場の潜在力を引き続き開放し、輸入の余地を拡大していく。

中国は将来的にさらに関税を下げ、通関の利便化のレベルを上げ、輸入にかかるコストを削減し、国際ECなどの新業態、新モデルの発展を加速させていく。中国には13億人以上の大市場があり、中国は真剣に各国に市場を開放していく。中国国際輸入博覧会は毎年開催するばかりか、そのレベルと効果を年々引き上げていく」

まさに、中間選挙に必死になっている太平洋の向こうのトランプ大統領を意識したメッセージだった。米中貿易戦争が中国側に不利なのは事実だが、中国もただでは転ばないというわけだ。

徴用工、日本単独で国際司法裁提訴へ 韓国の不当性周知 駐韓大使は召還せず

 政府は5日、韓国の元徴用工をめぐる訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる確定判決を出した問題で、韓国政府が賠償金の肩代わりを行う立法措置などを取らない限り、国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針を固めた。また、裁判手続きに関する韓国側との交渉、折衝などが必要なため、長嶺安政駐韓大使の召還は行わない。

 ICJで裁判を開くには原則として紛争当事国の同意が必要で、手続きには(1)相手国の同意を経て共同付託する(2)単独で提訴した上で相手国の同意を得る−という2つの方法がある。政府は韓国から事前に同意を得るのは難しいことから単独提訴に踏み切る。

 その場合も韓国の同意は得られないとみられ、裁判自体は成立しない可能性が高い。だが、韓国に同意しない理由を説明する義務が発生するため、政府は「韓国の異常性を世界に知らしめることができる」と判断した。

 河野太郎外相は既に、徴用工問題が1965(昭和40)年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」としていることや、判決が国際法に照らしていかに不当かを英文にまとめ、在外公館を通じて各国政府やマスコミに周知させるよう指示している。

 政府は今回の判決だけでなく、2015(平成27)年の慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意に対する韓国側の不履行など、度重なる韓国の不誠実な対応についてもアピールする機会とする考えだ。

 政府は今回の判決は日韓基本条約の基盤を崩壊させかねない問題だと重視しており、政府高官は「今回は徹底的にやる」と語る。韓国側が現在、「韓国政府内でいろいろと判決への対応を検討している」と釈明しているため当面は対応を見守るが、外務省幹部は「おそらく韓国は有効な措置は取れないだろう」とみている。

 この問題をめぐり、安倍晋三首相は1日の衆院予算委員会で、「国際裁判も含めあらゆる選択肢を視野に入れて毅然(きぜん)として対応していく」と述べていた。

2018年11月5日月曜日

カーシェア進む多様化 定額制や個人間でポルシェ貸し借り 自動運転時代にらむ

 自動車の「マイカー」文化に変化の兆しが出ている。カーシェアリングなど「利用」に主眼を置いたサービスが人気となる中、トヨタ自動車は月額定額制で複数の車種に乗れる「KINTO(キント)」を発表。個人間カーシェアなど、サービスの多様化が進む。将来は自動運転技術を活用した移動サービスの巨大市場が生まれる可能性が高く、各社の取り組みはその"布石"でもある。

 来年初めの開始を予定するキントは車両、税金、保険、メンテナンスなどの料金を一体化。車を購入・所有する煩雑さをなくして利用を促す。価格や取り扱い車種は未定。孫悟空が乗る筋斗雲(きんとうん)が名称の由来で、「必要な時にすぐに現れ、思いのままに移動できる」(豊田章男社長)サービスを目指す。

 また、カーシェアを年内に東京都内で試験的に始め、来年中に本格的に立ち上げる。全国の販売店が抱える数万台の試乗車の多くは週末以外使われておらず、有効活用する狙い。長田准(じゅん)常務役員は「車が好きな方に気軽に乗っていただきトヨタファンを増やしたい」と強調する。

 日産自動車もカーシェアを展開するが、トヨタとは異なる戦略を選んだ。電気自動車(EV)と、独自のハイブリッド技術「eパワー」搭載車に限定したサービス「eシェアモビ」を今年1月から実施。得意とする電動車の良さを知ってもらうのが狙いだ。登録会員は現在約4500人と、半年前からほぼ倍増。星野朝子専務執行役員は「電気による走りのよさや操作の楽しさが高く評価されており、日産ブランドを押し上げている」と話す。^

 多くのカーシェアでは企業が提供した車を使うが、ディー・エヌ・エー(DeNA)が展開する「Anyca(エニカ)」はユニークだ。車を貸したい人と借りたい人のニーズをインターネットで結びつける。9月末現在で約700車種6000台の車が登録されており、人気上位はBMWやポルシェなどの高級輸入車。トラブルの不安がつきまとうが、借りた人は1日単位で保険に加入するシステムで、車の傷を確認し、修理を支援するなどの機能も充実させた。事業責任者の馬場光氏は、「最先端の人は所有から利用に動き始めている」と指摘する。

 各社がサービス実施でノウハウの蓄積やデータ収集を進めるのは、自動運転時代の到来に備える意味もある。トヨタはソフトバンクと提携し、開発中の自動運転EV「イーパレット」を移動サービスの基盤として新市場の主導権を握る構えだ。トヨタは、「地元をよく知る販売店にサービス展開を考えてもらう」(長田氏)と、全国約5000店の販売店の知見を活用する方針だ。

Q&A ドコモ値下げ「分離プラン」とは?

 NTTドコモが来春、通信料金を2〜4割値下げすると表明した。携帯電話料金をめぐる疑問をQ&Aにまとめた。

 Q ドコモが値下げの軸にする「分離プラン」って何

 A 携帯電話端末の購入代金と毎月の通信料金を区別した料金プラン。消費者は、インターネットを利用するためのデータ容量や定額通話などのサービスの利用料が、自分の生活に合っているか分かりやすくなる。その結果、消費者に選ばれようと、価格競争の活性化やサービスの向上が見込めるとされている。

 Q なぜ、今の料金は分かりにくいの

 A 米アップルのiPhone(アイフォーン)など高額な端末販売を優先するため、一定期間契約を結ぶことを前提に、高額な購入代金を割り引く端末と通信のセット販売が主力だからだ。端末によって割引額が異なるほか、家族で複数台購入するとさらに割引が適用されるなど、条件もさまざまでますます複雑になっている

 Q 月々の支払いが割り引かれるのであれば、従来プランでもいいのでは

 A 端末割引の原資を携帯電話大手は通信料金でまかなっている。そのため、端末を買い替えない長期利用者は、通信料金が高止まりし、恩恵を受けていない。端末割引を受けたいのであれば、定期的に機種変更しなければならない。

 Q 分離プランを既に導入している会社もある

 A 大手3社とも導入しているが、選べる端末が限定的だったり、他社への乗り換えや他の料金プランへの変更が難しかったりと、使い勝手はよくない。

 Q 結局、料金は安くなるの

 A 通信料金が下がる分、端末の購入代金は上がる。端末割引は現在、2年縛りや4年縛りといわれる期間拘束契約が前提だが、政府から見直しを求められている。今後、端末割引をどう携帯各社が手当てするかが重要で、支払総額がどうなるかは各社の具体的な料金プラン次第だ。端末価格は上昇しており、家計の負担が重くなる可能性もある。ただ、端末の機能向上が頭打ちで買い替えサイクルが長くなっていることや、政府も中古端末の流通を促しており、端末割引が減ることの影響は限定的になる可能性もある。自分に合った料金プランを選択することが重要だ。

2018年11月2日金曜日

クレジットカードにもIoT化の波、SIM+ディスプレイ内蔵の超高性能クレカ「Wallet Card」

 現金以外の決済手段として、身近な存在であるクレジットカード。日本全体での利用額も増えつつあるが、最近ではこのクレジットカードに"IoT化"の波がやってきている。

 2018年10月、ソフトバンクが米Dynamicsと次世代型クレジットカードの日本展開について協業を検討していると発表した。Dynamicsが開発しているカードには、三井住友カードが採用を発表したパスコード機能付きのクレジットカードなどがあるが、今回の協業で主役になるのは、SIMカードを内蔵し、双方向通信が可能な「Wallet Card」だ。

 通信機能を搭載したことで、さまざまなデータをクレジットカード内に保存できる。1枚のカードにデビットカードやキャッシュカードなど、さまざまな機能を持たせられる他、データをダウンロードするだけで、すぐにカードが使えるようになるという。

 「カードを紛失してしまった場合、これまではカード会社に電話などで連絡し、利用停止の手続きを行うのが一般的でしたが、Wallet Cardならば、連絡を受けてすぐに遠隔操作でカード内に入っている情報を消去できます」(ソフトバンク コマース&サービス コンシューマー事業本部 IoT事業推進本部 事業開発室 鈴木礼子さん)

 カードの右下部分には、E Ink(電子ペーパー)ディスプレイを内蔵しており、ディスプレイ上部にあるボタンで、表示を切り替えられる。Dynamicsによると、100種類以上の画面を切り替えられるということで、カード情報以外にも、QRコードやクーポンといったデータを表示させる利用方法も模索しているそうだ。

 実際にサンプルのカードを触ってみたが、ボタンを押してからディスプレイの表示が切り替わるまでには5秒から10秒ほどかかった。これを早いとみるか遅いとみるかは、個人の感覚によるかもしれないが、5種類も入れれば端から端まで移動するのに1分ほどかかる計算だ。メインに使う機能を2〜3種類ほど決めておき、それ以外はサブとして使うくらいがちょうどいいかもしれない。

 ディスプレイを表示させるために、バッテリーを内蔵しているが、それによってカードの重さが大きく変わるということはない。「消費電力が低いため、クレジットカードの有効期限(3〜5年)までは持つことを想定している」(鈴木さん)とのことだが、万が一の際には、決済の瞬間に充電する仕組みも備えているようだ。

超高性能クレカ、いつごろ日本で出回る?
 今回の協業では、ソフトバンクがSIMカードを中心とした通信とネットワークのサポートを、ソフトバンク コマース&サービス(C&S)が企画やマーケティング、販売を担当する予定だ。2018年1月に米国ラスベガス行われたCES(Consumer Electronics Show)で、ソフトバンクの担当者がDynamicsのブースを訪れたことが、協業検討のきっかけだったという。

 Wallet Cardの採用事例はまだほとんどなく、世界中で見てもドバイのEmirates NBD銀行が2019年に導入を予定しているくらい。これからソフトバンク C&Sが国内企業に営業をかけていくとのことだが、鈴木さんによれば、既に興味を示している金融機関は複数出てきているそうだ。

 「Fintechのトレンドもありますし、危機感を抱いている金融機関は少なくありません。特に銀行の場合、キャッシュカードとクレジットカード、デビットカードと複数のカードを1つにまとめられるメリットは大きいと思います。その他にも複数のポイントカードを1つにまとめられるような動きも出てくると面白いですね」(鈴木さん)

 実際、このWallet Cardはいつごろ日本で出回るのだろうか。鈴木さんは「2019年中には日本国内で展開したい」と意気込むが、クライアントごとのカスタマイズもあるため、案件化してから、開発に半年ほどかかる見込みだという。早いタイミングで話がまとまれば、2019年中にお披露目……という可能性もあるかもしれない。

日本車両株がストップ安 事業に不安、投げ売り

 2日午前の東京株式市場で、日本車両製造(名古屋市)の株価が急落し、一時は値幅制限いっぱいのストップ安価格2463円まで下げた。前日終値比500円安い。

 18人が死亡した台湾の特急列車脱線事故に関し、同社は1日、配線の一部が未接続のまま車両を出荷していたことを明らかにした。事故との因果関係を否定したが、市場では「今後の列車製造事業に不安を感じた投資家が同社株を投げ売りした」(大手証券)という。

 東京証券取引所では各銘柄に1営業日当たりの値幅を価格帯に応じて設定。日本車両製造株は前日終値比で上下に500円の幅が設定されていた。

2018年10月31日水曜日

ドコモが2─4割の値下げを表明、最大4000億円還元へ

NTTドコモ <9437.T>は31日、現行の料金プランを見直し、2019年4─6月期に2─4割程度の値下げを行うと発表した。1年当たり最大4000億円規模の顧客還元となる。通信料金を巡っては、菅義偉官房長官が高すぎると繰り返し批判しており、ドコモをはじめ大手3社は対応を迫られていた。新プランを導入することで、政府の値下げ要請に応える。

吉澤和弘社長は会見で「シンプルでわかりやすい料金プランに、大胆な見直しを行う」と語った。

仮想通貨ビットコイン誕生から10年、波乱の道のり

 仮想通貨ビットコイン(bitcoin)は、2008年10月31日に誕生した。あれから10年が経過したが世界初の仮想通貨は今でも、複雑な金融システムの最先端にあり、市場関係者や投資家は用心深く見守っている状況だ。

 ビットコインは、世界金融危機のさなかに登場した。サトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)と名乗る人物によって書かれた論文が、ビットコインのビジョンを伝えたのがきっかけとなった。

 1ビットコイン当たりの価値はほぼゼロからスタートした。しかし今では、約6400ドル(約72万円)にまで上昇している。論文を要約すると、ビットコインは、「純粋なP2P(ピア・ツー・ピア)電子マネーによって、金融機関を通さずに、直接的に互いのオンライン取引を可能にする」ものだ。

 ビットコインは、ブロックチェーンとして知られる分散型台帳システムを通じて運用されている。

 2008年9月、米証券大手リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)が経営破綻したことが、仮想通貨の拡大に寄与した。2011年にフランス初のビットコイン取引所を創設したピエール・ノワザ(Pierre Noizat)氏は、リーマンの破綻は、「少数のエリート銀行家が作った金融の規則を全ての人に課す」という伝統的な金融システムの信用を失墜させる出来事だった、と指摘する。

 誕生から数年間は、ビットコインが一般の人に広く知られることはなく、一部の愛好家やマネーロンダリング(資金洗浄)の手段を探していた犯罪者の注意を引いただけだった。

 2013年に1ビットコインの価格が初めて1000ドル(約11万3000円)を超えると、金融機関の関係者らが注目し始めた。

 欧州中央銀行(European Central Bank)はビットコインを、投資詐欺の一手法である「ポンジ・スキーム(Ponzi scheme)」と呼び、相手にしなかったが、当時の米連邦準備制度理事会議長ベン・バーナンキ(Ben Bernanke)氏は、その可能性を評価していた。


■大荒れの道のり
 2014年初め、仮想通貨は誕生以来最大の危機に直面した。一時はビットコイン取引の約80%を担っていたマウントゴックス(Mt. Gox)が、ハッキングの被害を受けたのだ。

 事件により急落したビットコインの価格は、2017年初めまで戻らなかった。

 しかし、ノワザ氏によると、この事件で一気に流れが変わったという。何かと物議をかもすビットコインではあったが、ブルームバーグ(Bloomberg)のデータによると、その価格は2017年末には1万9500ドル(約220万円)まで一気に上昇した。

 仮想通貨専門のウェブサイト「コインマーケットキャップ(Coinmarketcap)」によると、この時、ビットコインの時価総額は3000億ドル(約34兆円)を上回ったとされる。

 バブル崩壊前の2018年1月までに、仮想通貨全体の時価総額は8000億ドル(約90兆円)を超えた。

 仮想通貨のアナリスト、ボブ・マクダウォール(Bob McDowall)氏はAFPの取材に、仮想通貨のコンセプトは相当進化したが、これはひとえにビットコインの功績とも言えると述べ、これまでに約2000種類の仮想通貨が誕生したことにも触れた。「それは技術的、経済的なイノベーションを超えた。一部の人にとってはもはや宗教的でもある」

 仮想通貨ファンド、スイスボーグ(Swissborg)の共同創設者Anthony Lesoismier氏も、「実際の革命は哲学的レベルで起きている」とコメントしている。

 だが、経済学者のヌリエル・ルビーニ(Nouriel Roubini)氏は、仮想通貨が中央集権化されていないというのは神話にすぎないと指摘する。同氏は、「そのシステムは北朝鮮よりも中央集権化されている。マイニング(採掘)と取引所は中央集権化され、デベロッパーも中央集権化された独裁者たちだ」とツイッター(Twitter)に投稿したメッセージで持論を述べた。


■既存の金融システムの一部にも
 ビットコインの初期のアイデアは決済を容易にすることだったが、それよりも価値の保存のため手段、さらにはその変動性の大きさから投機手段として主に利用されていると専門家の多くはみている。

 米証券取引委員会(SEC)は、ビットコインが投資対象に含まれる上場投資信託「ビットコインETF」の上場申請を承認するかどうか現在、検討している。もしSECが申請を認めれば、ビットコインは、これまで避けようとしていた既存の金融システムの一部に取り込まれてしまうことになる。

 それでもLesoismier氏は、一般の人の関心を引き、信頼を得るためには、「短期間でいくつかの橋を渡らなければならない」と話し、ビットコインに対しては、理想と現実が入り混じっているとのスタンスであることを明らかにした

深圳の「薬の自販機&遠隔診療機」が凄すぎる 中国のIT進化は伝統産業にも浸透している

 中国におけるイノベーションといえば、HUAWEI・テンセントといった電子機器メーカーやネット通販のアリババなど、ITサービスを展開する企業が思い浮かぶことが多いだろう。

 しかし、実際の「中国イノベーション」は、IT業界だけではなく、伝統的な産業にまで浸透している。

 特に深圳におけるイノベーションのスピードはとてつもなく速い。5か月前のゴールデンウィーク時期に続き、今年9月末も深圳に行ってみたが、またいろいろ新サービスが登場し、古いものが去っていたという感覚がある。その中で、もっとも進歩を感じたのは、薬の自販機と遠隔診療機の合体版との「出会い」だった。

 中国では、キャッシュレス社会が急速に進歩するなど、イノベーションが盛んである主な理由として、以前のコラムでリープフロッグ型発展と顧客視点のデザイン・シンキングを筆者は指摘した。

 今回は伝統的な産業である漢方薬メーカーのイノベーションを例にして、中国でイノベーションが盛んである別の要因として、「インターネットプラス」と「垂直統合志向」を説明したい。

「薬ひょうたん」って何?
 深圳のとある住宅地で見かけた大型の「自販機」に目がとまった。

 左側の「康美スマート薬房」は、市販の漢方薬、養生(身体の状態を整える)効果があるお茶、風邪薬、のど飴などが置いてある自販機で普通にどこにでも見かけるものだ。

 が、右側の「薬ひょうたん(昔の中国では薬をひょうたんで貯蔵することが多かったので、ひょうたんは薬を連想しやすい)」のタッチパネルを見ると、いろいろ機能が書いている。

 「スピーディーな薬購入」「漢方薬薬煎代行」「処方箋購入予約」「オンライン診療」「薬受取り」などである。

 この「自販機」を手掛けたのは、「康美(カンメイ)薬業」だ。この名前を知る日本人はほとんどいないかもしれないが、中国の漢方薬業界では大手だ。

 1997年に創業し2001年上海証券取引所に上場した。当初、西洋医薬の製造も取り組んだが、漢方薬の将来性を見込み、最近は漢方薬に重点を置いている。

 生薬の栽培、病院、地方の「康美健康城」(康美の病院、リハビリセンター、漢方薬展示センター、学校などがあるスマート医療、総合的な健康を目指す地域)、生薬の取引所から養生レストラン(中国の養生思想にもとづいた食材でメニューを作る)まで、幅広くビジネスを展開しており、中国の国内初といわれる漢方医療の全過程を実現できるプラットフォームを開発した。

 康美薬業の2017年の純利益は41億元(約681億円)で、日本漢方薬メーカー大手・ツムラ(2018年3月期は145億円)の約4倍だ。薬の自販機の機能は分かりやすいが、「薬ひょうたん」は何なのかわかりにくい。

 そこで、康美薬業を訪問した。

 「薬ひょうたん」は、実は遠隔診療機だった。

 具体的には、日本のマイナンバーカードに相当する身分証明書を挿入すると、対応可能な医師のリストが表示される。医師を選ぶと、オンラインでその医師とビデオ通話になる。自分の症状を言い、医師に診察してもらい、処方箋を出してもらう(「薬ひょうたん」が印刷する)。

 隣の自販機に在庫がある薬であれば、そのまま薬が出てくる。自販機にない薬や煎じる漢方薬の場合、オーダーがそのまま工場まで送信され、患者の指定するところに届けられる仕組みだ。これは前述のプラットフォームにより実現されている。康美薬業は、「夜間急病の人や医療環境が未発達な地域にいる人に、すぐにでも医師に診てもらえるように、このシステムを研究開発した」という。

漢方薬メーカーっていちばん古臭いはずなのに
 漢方薬は中国語で「中薬」と呼ばれ、中国では人々の日常生活に浸透している。2016年の中薬生産総額は8,653.4億元(約14.7兆円)に達している。全薬品生産総額でみれば中薬だけで3分の1も占めている。 

 中国政府は、「健康中国2030」計画を2016年8月に発表し、高齢社会、健康寿命伸長のため、中薬を推進している。中国人の多くは、西洋薬は副作用が多く、身体への負担が多いと思っており、身体の内から健康を補助してくれる中薬を好む。

 いちばんの難題は、飲みにくさだ。日本の漢方薬は、粉末や錠剤が多く、水ですぐに飲める。

 一方で、中国の場合、市販の中薬もあるが、それよりも、漢方医(中医)に診てもらい、個人個人の体質、症状、気候に合わせた中薬の処方箋をもらう方が好まれている。

 そのために薬剤を煎じる必要がある。火加減が難しく、時間もかかり、匂いも強く、持ち歩きも不便という欠点があった。

ITサービス企業に変身した漢方薬メーカー
 今回深圳で視察した「康美薬業」はこの古臭いイメージを覆す。IT技術を使い、医療資源の格差が激しい中国にとって夢のような「薬局+遠隔診療」システムを作り出したのである。康美薬業は、中国の「インターネットプラス」をうまく取り込んだ好例だ。

 「インターネットプラス」というのは、2015年3月に中国・李克強首相が提出した政策で、新しいインターネット技術である「移動互聯網(モバイルインターネット)」、「雲計算(クラウドコンピューティング)」、「大数据(ビッグデータ)」、「物聯網(モノのインターネット)」などを、既存産業に結びつけることである。

 「インターネット+医療」、「インターネット+物流」、「インターネット+金融」など、従来の産業の新たな発展の推進を目指すことである。それが最も伝統的とみられる中薬業界にも活用されている。

 「中医に診てもらい、生薬をもらい、自宅で面倒くさい煎じること」をせず、もっと簡単に中医に診てもらいたい、もっと簡単に効果がある中薬を飲みたい、出張先にも薬が届けて欲しいといったユーザーニーズに答えようと、インターネットを駆使し、現在のITサービス企業に匹敵するほど伝統産業を発展させた。

 現システムであれば、生薬の産地確認はQRコードで可能であり、煎じる中薬の処方が来たら、電子煎薬鍋で煎じる火加減、時間をコントロールする。飲みやすくするよう、錠剤化も可能になった。

 康美の生薬取引所では、オンラインもオフラインも康美pay(アリペイのような電子決済)が使え、小規模生産者に康美payの融資も行われている。また、経済が未発達な地域だと薬を買うのも大変だが、患者が紙ベースの処方箋を「薬ひょうたん」でスキャンするだけで、オーダーでき、宅配の依頼もできる……。

 康美のもう1つの特徴は、バリューチェーンの川上から川下までをほぼ自社で管理する垂直統合を目指していることだ。良品計画、ユニクロ、アップルなどと同じである。

 近年、多くの企業が水平分業を進め、「バリューチェーンのこのステージに集中し1番になろう」という「ステージ特化志向」が強い。一方、中国企業は、どちらかと言えば、「垂直統合志向」、川上から川下まで事業範囲を広げ、関係分野はすべて自分の分野とすることで、大企業となることを好む。

 これは、中国の社会環境に関係ある。中国の場合、地域で風土と慣習が違うため、標準・規則の格差が激しい。また、他の会社との取引はリスクが高い。そこで、垂直統合を進めることが多い。これにより、品質管理の徹底やビッグデータの活用も期待できるし、バリューチェーンの各部分の課題を迅速に把握でき、改善しやすい。

 康美は、川上の生薬栽培を管理することやオンライン取引所を所有することにより、価格と生産量を見ながら、農家への指導を行い、適切な時期に作付けさせることで、需給のバランスを取りつつ市場を安定化できる。病院を所有することにより、患者のビッグデータの活用、ニーズ把握ができ、次のビジネスにつながる。

 薬の生産だけではなく、個人データと疲労レベルを診断してからマッサージモードを設定するスマートマッサージチェア、前述の「スマート薬房」、健康食品、レストランなど患者と多面的にコンタクトを持つことで、便利さを認識させ、一般消費者市場でもブランド力向上が期待できる。

 つまり、「ここに入ったら一生の健康のことをおまかせください」という勢いだ。

日本の伝統的産業も見習う点は多いはず
 康美を代表とした中国の伝統的産業のメーカーは、競争の激しい中国で生き残るため、懸命に進化している。国の「インターネットプラス」政策を背景に、今までできなかったこと、前例はないが今ならできることに積極的にチャレンジしている。

 また、マーケティング・マイオピア(近視眼的マーケティング)に陥らず、消費者の根本ニーズに立ち返り、関連業界に進出しようとする姿勢もよく見かける。

 日本の伝統的企業は中国では非常に尊敬されているが、時代遅れ、または「もっとインターネット等を活用したら良いのに」と思われるところもある。

 日本企業は、伝統、自社の「芯(コア)」を守りながら、新たな発展を目指していくのが、今後の課題だと思う。中国企業の例が参考になればと願う。

姜尚中「日本にとってもトルコ情勢は対岸の火事ではない」

 トルコと米国との関係が抜き差しならない状況に陥っています。それによってトルコの通貨リラが急落しました。

 一方でトルコは、イランと蜜月関係を築いています。そもそもイランとトルコはイスラム教でも宗派の違いがあり、オスマントルコ帝国とサファビー朝ペルシアの時代から、ずっと天敵のような間柄でした。しかしシリア問題が絡み、さらにはロシアがトルコとイランの"ある種"のサポーターとなりつつあることから、新しい枢軸が完成されかねないという現実が迫っているのです。

 さらに深刻な問題なのはトルコの対応次第でヨーロッパ、特にEUに危機が訪れるということです。シリア難民をなんとかコントロールしているのはトルコです。わかりやすくいうとヨーロッパ側がトルコにお金を出して、難民が直接ヨーロッパの国々に来られないようにしているのです。もしもトルコが担う「防波堤」としての役割が崩れると、難民がヨーロッパに押し寄せてくることになります。今後、今以上に国際情勢が悪くなれば、トルコが難民問題を交渉材料にする可能性もゼロではないでしょう。

 EUの多くの国では、主要政党の主張が右寄りか左寄りかにかかわらず、難民を排除したり、流入を制限したりする流れが強まっています。そんな中、スペインは難民を数多く受け入れています。スペインはトルコ向け債権をEU諸国の中で最も多く抱えていますから、今後トルコの財政が悪化してその債権が焦げついたら、大きな経済的打撃は避けられません。さらに、トルコのコントロールが外れて難民が押し寄せた場合、経済的打撃と相まって、難民に比較的寛容なスペインでも極右政党が台頭し、反移民、反難民感情が噴出するかもしれません。

 新興国の通貨暴落は、日本にも飛び火する可能性があります。また、トルコやイランはこれまで親日国でしたが、日本がこのまま米国との関係ばかりを優先させ続けていると、今後両国との関係が悪化するおそれもあるでしょう。日本にとってもトルコ情勢は対岸の火事ではないのです。そういうことも含めて、私たちはトルコ問題を注視していかなければなりません。

姜尚中「『一国二制度』の要求が沖縄から出てくる可能性はある」

 史上最多得票で当選した玉城デニー沖縄県知事。県政が始動し、「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票」の審議が始まりました。

 玉城氏が大勝した背景には、沖縄の人たちの意識が私たちが思う以上に先を行っているという現実があります。数年前に私が基調講演をした沖縄のシンポジウムでは、「沖縄の経済にとって、基地が撤去された場合のほうが大きなプラスになる」「沖縄は東アジアの要石として、経済的にかなりのポテンシャルがある」という具体的なビジョンが示されていました。「オール沖縄」という言葉の裏には、基地問題にノーというだけではなく、保守系を含めた地元経済もしっかりと関わっています。今なお「沖縄=基地依存経済」と考えている本土側と、認識の落差が埋まっていないのです。

 辺野古の問題はいわば、沖縄県内での基地たらいまわしによって問題の目先を変える「基地ロンダリング」です。このようなことをやり続ける限り、沖縄の経済的自立や未来に向けたビジョンというのは永久に閉ざされます。

 前出のシンポジウムは、県政のブレーン役を務める人たちや大学の研究者らが、欧州のいわゆる自治州や地域独立運動について研究発表する場でもありました。これらの考えは、今はまだ沖縄のマジョリティーではないのかもしれません。しかし、政府との対立が抜き差しならない状況になったときに、玉城氏が言及した「一国二制度」もしくは自治州というような要求が、沖縄から出てくる可能性は十分にあります。

 沖縄県知事選は単なる地方選挙にとどまらず、東アジア、日米関係、米中関係も含めた大きな安全保障や国際秩序とリンクせずにはいられません。たとえば、もし今後の米朝交渉で在韓米軍が縮小することになれば、在日米軍にも多大な影響があるでしょう。

 政府と沖縄の対立を、第三者的に、物見遊山気分で見てはいられないということを国民は自覚するべきです。政府は少なくとも、沖縄との妥協点を探る姿勢をみせていかなくてはいけません。それが果たして、現政権に可能なのでしょうか。

姜尚中が解説、安倍政権が「消費税増税を断念できない理由」

 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

 先送りされていた消費税の増税が来年10月に決まりました。8%から10%への引き上げは過去に2度も延期になっていましたから、この決定はまさに「三度目の正直」です。

 しかし、客観的にみれば過去の延期の時よりも今回のほうが、増税が難しくなりそうな雲行きです。日米間の貿易交渉の行方や激化する米中の貿易摩擦、中国経済の減速感や新興国の通貨不安、中東情勢の流動化や英国のEU離脱交渉の不透明感など、不確実な事態が世界経済に暗い影を投じ、ここのところ株価は激しくアップダウンしています。来年以降、世界経済は大きく落ち込む可能性があります。

 2度目の消費税増税の延期が決まったのは、2016年6月でした。この時の延期の理由は、「リーマン・ショック級の経済的な不況が懸念される」というものですが、当時の景況感から見れば、それほどの経済的な危機が迫っていたとは言えませんでした。そう思うと、消費税率引き上げの延期は、牽強付会(けんきょうふかい)だったと言えます。

 16年の段階では、経済危機は杞憂で済みましたが、今回はそうはいかない可能性があります。まるで、2年前の消費増税延期の理由が今になって生きているかのような状況です。そんな時に消費税率10%への引き上げとなれば、より負担感が高まり、消費がかなり冷え込んでしまうかもしれません。

 それでも消費税増税を断念できない理由が安倍政権にはありました。増税を断念すれば、25年度のプライマリーバランスの黒字化は、ほぼ絶望的です。そうなれば日本の財政再建に対する信任が揺らぎますから、安倍晋三首相は消費税の引き上げは100%すると断言し、駆け込み需要と反動減を抑えるための経済対策などをまとめるように指示せざるをえなかったのではないでしょうか。

 しかしいくら国際公約とは言え、実際に景気の落ち込みが予想されるとき、果たして消費税率の引き上げができるのかどうか。そこが安倍政権のジレンマになりそうです。参院選や地方選挙、さらに憲法改正の問題も絡んで、もう一度消費増税引き延ばしの是非を問う総選挙もないとは言えないかもしれません。

2018年10月30日火曜日

Tポイントで投資 CCCマーケティングとSBI証券が新会社

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループのCCCマーケティングと、SBI証券は1030日、金融事業を展開する新会社「SBIネオモバイル証券」を設立したと発表した。取引に応じてTポイントを付与し、「Tポイント」で金融商品が購入できる「Tポイント投資」も提供する計画だ。2019年春の営業開始を予定している。

 若年層をメインターゲットに、スマートフォンだけで完結できる金融サービスを提供する考えだ。国内株の取り扱いや、自動で資産運用を行う「ロボアドバイザー」を提供するとしている。Tカードとひも付いた購買データを活用し、 ビッグデータ解析に基づいた投資情報サービスの提供も検討する。

 資本金・資本準備金は30億円。

 

中国:自動車市場の刺激策を検討、乗用車販売減少に対応−関係者

  中国は対米貿易摩擦で打撃を受けている自動車業界を支援するため、減税を検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

  検討を巡るブルームバーグの報道を受け、自動車株は上昇した。自動車各社は成長を中国市場に頼る度合いを高めており、独フォルクスワーゲン(VW)は昨年、中国での販売が全販売台数の4割近くを占めた。VW株は一時6.9%高と取引時間中としては2016年7月以来の大幅高となった。米株式市場ではフォード・モーターとゼネラル・モーターズ(GM)、ドイツ市場ではBMWとダイムラーが買われた。

  中国の経済計画策定のトップ機関は自動車購入税を現行の10%から5%へ引き下げることを提案している。情報が公開されていないとして匿名を条件に述べた関係者によると、排気量1.6リットル以下の乗用車が対象。中国国家発展改革委員会(発改委)は計画を提出したがまだ決定はされていないという。

  バンクハウス・メツラーのアナリスト、ユルゲン・ピーパー氏は、「これは朗報であり、市場が待ち望んでいたメッセージであることは間違いない」と述べた。
  
  発改委にファクスでコメントを求めたがこれまでのところ返答はない。

オフショア人民元下落、対中追加関税報道で=NY市場

終盤のニューヨーク外為市場は、中国のオフショア人民元CNH=が一時、6.9757元まで下落した。来月の米中首脳会談で貿易戦争を緩和できなければ、米国が12月初めまでに残るすべての中国からの輸入品に関税を課すと公表する準備を進めていると、ブルームバーグが伝え材料視された。

ドルは対ユーロでやや上昇し、先週付けた10週ぶり高値付近で推移した。ドイツのメルケル首相が、キリスト教民主同盟(CDU)党首再選を目指さないと伝わった。

この日公表された米消費支出指標が堅調で、ドルは他の主要通貨に対し上げ幅を拡大した。

ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツの首席市場ストラテジストは、メルケル氏の動向について「ユーロの政治的な支援材料として明らかにプラスでない」と話した。国内基盤がぜい弱なら、英国の欧州連合(EU)離脱やイタリアの財政危機に対応するEUを主導する余力が限られる可能性を指摘する。

ユーロは対ドルEUR=で0.14%安。同ストラテジストはユーロ安について深読みしないよう注意を促した。「メルケル氏はなお(ドイツ)首相で、欧州理事会入りの可能性もある」と語った。

主要6通貨バスケットに対するドル指数.DXYは0.24%高の96.594。前週末に付けた10週ぶり高値をわずかに下回った。ドルは対円JPY=で0.38%上昇し、前週下落分の一部を取り戻した。

モルガン・スタンレーのストラテジストらはメモで「ドルが下落するには安全資産としての魅力を失うか、米指標が控えめな内容となる必要がある」と話した。

米商務省が発表した9月の個人消費支出(季節調整済み)は前月比0.4%増と、7カ月連続で増加した。


米連邦準備理事会(FRB)は12月、追加利上げに踏み切るとみられている。

英ポンドはやや下落した。ハモンド財務相が、政府がEUと離脱条件などで合意できれば、長らく掲げてきた財政緊縮策を終了させる方針を示した。

ドル/円 NY午後4時 112.38/112.39

始値 112.22

高値 112.55

安値 112.19

ユーロ/ドル NY午後4時 1.1384/1.1386

始値 1.1394

高値 1.1416

安値 1.1368

携帯大手3社、料金値下げ検討 政府意向で、19年度にも

 NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社が携帯電話の料金プランを2019年度にも値下げする検討を始めたことが29日、分かった。値下げを強く求める政府の意向に沿った形となる。ドコモは31日の18年9月中間決算発表と併せ、値下げの方向性を示す。スマートフォンの端末代金と通信料金を切り離す「分離プラン」の拡充が柱となる見通しで、通信料金の低減を図る。

 ドコモが現在提供している分離プランは対象端末が限られており、対象端末の拡大や中古端末への適用を検討する。

2018年10月29日月曜日

日立化成 揺らぐ信頼、半導体も 顧客に捏造数値提出

 化学大手、日立化成で、産業用鉛蓄電池の品質検査データ捏造(ねつぞう)に続き、半導体材料分野でも検査不正の疑いが浮上した。複数部門での不正が明確になれば、同社の信頼失墜は避けられない。昨年から大手製造業で品質に関する不正が相次いでおり、日本の「ものづくり」への信頼は揺らぐばかりだ。

 同社は今年6月、ビルや工場、原子力発電所などの非常用電源として使われる蓄電池について、品質検査のデータを捏造する不正があったと発表した。顧客と取り決めた検査方法とは別の独自の手法で検査し、顧客に提出する資料には捏造した数値を記入していた。2011年4月〜18年6月、約500社に約6万台を納入。「品質や安全性に問題はない」(同社)としている。

 この際、設置したのが外部の弁護士らでつくる特別調査委員会だ。原因究明などを進めているが、当初2〜3カ月をメドとしていた報告書はいまだ公表されていない。調査の過程で、新たな不正が見つかった可能性がある。

 今回の不正疑惑について、日立化成から連絡を受けた半導体メーカーは「取引先と決めた検査方法と異なる方法だったと見られる」としている。性能については「問題はなさそう」としているが、日立化成は半導体材料分野で業界上位の製品も多いだけに、半導体産業全体に影響が広がる可能性もある。

 日立化成は「調査結果の報告を受けた後、速やかに公表する」とコメントした。6月には明確化していなかった経営責任も、問われることになりそうだ。

 親会社の日立製作所は中西宏明会長が経団連会長を務める。昨秋以降、発覚した品質不正は、神戸製鋼所や三菱マテリアル、東レなどの素材メーカーから、日産自動車やSUBARUなど自動車メーカーまで名門企業が多い。最近では油圧機器メーカーKYBや川金ホールディングス(HD)による免震・制振装置の検査データ改ざんが見つかった。現場のコンプライアンス(法令順守)意識の低さや、品質管理を経営課題ととらえていない経営トップの認識の甘さなどが共通している。

首相の「3原則」波紋 外務省「使っていない」

(1)競争から協調(2)互いに脅威とならず(3)自由で公正な貿易
 安倍晋三首相は26日、中国の習近平国家主席との北京での会談で、今後の日中関係について「競争から協調へ」「パートナーであり、互いに脅威とならない」「自由で公正な貿易体制の発展」を提起した。会談後、首相はこれを「三つの原則」と発信したが、同行筋は「三つの原則という言い方はしていない」と公式に否定。中国側の説明にも「3原則」の言葉はない。首相が外務省とすり合わせずに会談の成果としてアピールした可能性がある。

中国経済の減速、10月に再び悪化−先行指標が示唆

米国との貿易摩擦が激化し中国の政策当局が企業支援策を強化した10月に、中国の経済成長は引き続き減速したことがブルームバーグ・エコノミクスが集計した業況と市場心理に関する先行指標に示されている。

  企業経営者や投資家のムードを安定させる政府の取り組みはまだ功を奏していない。

  今年10−12月(第4四半期)の中国経済の動向は注目を集める見通しで、政府が債務をさらに急増させることなく安定した成長ペースを維持できるかどうかが焦点となりそうだ。7−9月(第3四半期)の中国経済は減速したものの、貿易戦争の影響の多くはまだ指標に反映されていない。

  ブルームバーグのアジア担当チーフエコノミスト、舒暢氏は「経済状況は国内・国外の両面で軟化し続けていることが先行指標に示されている」と指摘。「景況感は極めて低調で、小規模の民間企業の間では特にそうだ。景気支援策は輸出や消費、投資という成長のあらゆる側面に拡大し続けると予想される」と述べた。

  10月の中国経済に関する最初の公式統計は31日午前に公表予定の製造業とサービス業の購買部担当者指数(PMI)だ。ブルームバーグの集計データによると、製造業PMIは若干低下すると見込まれているが、建設やサービス業を含む非製造業PMIは前月比横ばいが予想されている。国家統計局の製造業PMIは9月に7カ月ぶりの低水準を付けていた。

ドコモ来年度値下げへ、端末・通信代の分離拡大

 NTTドコモが、携帯電話の料金プランを抜本的に見直し、来年度から値下げする方向で検討していることが28日、分かった。スマートフォンの端末代と通信料金を分ける「分離プラン」の拡大が柱となる。政府から料金の高止まりに対する批判が出る中、ドコモとしての対応策を打ち出す。

 関係者によると具体的な値下げ幅は、収益減とのバランスを考慮して慎重に詰めている。菅官房長官は、携帯電話の通信料金について「4割程度下げる余地がある」と発言している。平均でこの水準の値下げを実現するのは難しいとの考えに傾いているが、利用者が値下げの恩恵を実感できる水準を検討している。減収分は、金融決済事業などの成長分野で補う方針だ。

埼玉の中堅ゼネコン「破産」が波紋を呼ぶ理由

 「うち(の会社も)含めて、連鎖倒産する可能性があるんです」「1億2000万円の借金ですよ、耐えられますか」「(経営陣は)家売ってないでしょ。工事会社は身を削っているんですよ」

 10月4日、東京都内のある貸し会議室は怒りと悲哀にあふれていた。議題の中心にいるのは、この3日前に民事再生手続きを申し立てたゼネコン。取引先が一同に介し、今後の対応を経営陣や代理人弁護士に追及した。

 倒産したのは、さいたま市に本社を構える中堅ゼネコンの「エム・テック」。負債総額は253億円。建設やリース会社を中心に債権者が887名いる。10月初旬にはJASDAQ上場の暁飯島工業や麻生フオームクリートが貸倒引当金を計上したほか、メインバンクである東和銀行も民事再生申立書に約23億円もの債権を提出している。

 「5日後に手形が落ちる。このままでは不渡りになる」。会場では下請け会社からの悲痛な叫びがこだました。

■我が世の春から一気に転落

 エム・テックは強化コンクリート工事を祖業とし、近年は不振の建設会社を買収したり、東日本大震災に伴う復興工事を相次いで受注したりするなど、急成長を遂げて業界内で話題の会社だった。2017年7月期の単体売上高は244億円と、5年前に比べて約1.5倍に増えた。

 好景気の波に乗り、破竹の勢いで業績を伸ばしていた同社だが、昨年末から立て続けに不祥事に見舞われた。

 発端は昨年12月に発覚した建機販売・リース会社「PRO EARTH(プロアース)」の破たんだ。エム・テックは約10億円の筆頭債権者だったが、本来であればゼネコンはリース会社に代金を支払う債務者であるはず。プロアースで循環取引などの不正を取り沙汰される中、エム・テックが債権を有することに対して「金融機関から不信の目を向けられ、融資姿勢が厳しくなった」(エム・テックの向山照愛社長)。

 さらに今年3月には無許可で港湾工事を行ったとして、東京地検が同社と従業員を起訴。これを受けて全国200以上の自治体から指名停止を食らい、受注寸前だった工事も取り消しとなった。同社の事業内訳を見ると、公共機関からの発注がほとんどの土木や強化コンクリート工事が6割を占める。公共工事からの排除は、会社の息の根が止まることに等しかった。

 こうした状況の中、資金繰りは急速に悪化した。「今年に入ってから、現金から手形へ支払い条件を変更できないかと打診された」(下請け業者)。途中で元東証一部上場の冨士工から合計15億円の出資を受けるも改善には至らず、倒産に至った。

■破産で発注者に契約解除の通知

 ここまでだけなら、一つのゼネコンの倒産劇で終わるはずだった。だが、10月22日、事態は急変する。民事再生スキームが行き詰まり、破産手続へと移行したのだ。再生に向けたスポンサーが見つからなかったためだ。

 当初は冨士工がスポンサーとして有望視されていたが、「15億円の出資に応じたのは、トップ同士にお付き合いがあったから。それ以上の支援を検討したことはない」(同社)。他社にも支援を仰いだが、スポンサーのなり手は見つからなかった。

 事業を継続しつつ会社を再建する民事再生であれば、スケジュールの遅延はあれど工事が中止になることはない。だが、破産となれば会社が清算され、工事を行うゼネコンがいなくなる。

 今月1日時点でエム・テックは全国の現場88カ所に約300億円もの工事を抱えていたが、22日に発注者に対して契約解除の通知を発した。そこで懸念されるのが、東京五輪の競技施設工事の行方だ。

 同社はカヌー・スラローム会場の管理棟建設と、有明テニスの森公園の屋外テニスコート改修工事を行っていた。「民事再生手続き申立て後も工事を続ける意向を示したので、再開を待っていた。今後は別の業者への発注を含めて、対応を検討している」(東京都オリンピック・パラリンピック施設整備課)。現場は建設途中のまま放置されており、工事予定表は破産した22日を最後に更新されていない。有明テニスの森公園の現場事務所の電話番号はすでに使われていなかった。

 取り切れないほど仕事があり、採算が良い工事を選別できるほど好況に沸くはずの建設業。そんな中での倒産は業界にどんな教訓を遺したのか。

 エム・テックを破産に追い込んだ要因の1つは、コンプライアンス(法令遵守)の軽視だ。

 たとえば、指名停止につながった港湾工事。同社は2016年12月に東京都から橋の撤去工事を受注した。港湾工事では工事によって船の往来が阻害されるため、工事の日程や時間帯は許可制になる。2017年4月から6月末まで工事の許可が下りたものの、同社は許可更新を怠り、7月に入っても工事を行っていた。さらに日の出から日没までという条件を破り、深夜まで工事を続けるなど違反が重なった。

■東北の支店を次々に閉鎖

 もう1つは、エムテックの急成長を支えた、東日本大震災の復興工事の収束だ。破たん時点でも宮城県発注の工事を契約総額で80億円も抱えていたように、同社は東北地方での工事に注力していた。

 同社の業績を見ても復興工事への依存は明らかだ。2012年7月期に4億円だった営業利益は、2015年7月期には19億円まで増加した。だが、その後の営業利益は震災前の水準に逆戻りしている。

 好採算の復興工事が収束し、採算性の劣る工事にシフトしていったことで、「貧乏暇無し」の状態に陥った。取引のあった東北地方の測量会社社長は「ここ数年は東北地方の支店を次々に閉鎖し、営業地域を南下していった」と話す。

 債権者説明会会場から出てきた下請業者の社長は「支払い遅延が起きていたとは聞いていたが、まさか潰れるとは」と肩を落とす。今回の倒産劇は自業自得か、はたまた建設業の異変をさえずるカナリアか。

2018年10月26日金曜日

対中ODA、戦後最大級の失敗 古森義久

 日本政府が中国への政府開発援助(ODA)の終わりを宣言した。40年近く合計3兆6千億円の公費の投入は日本になにをもたらしたのか。その軌跡を総括すると、戦後の日本の対外政策でも最大級の失敗といえる全体像が浮かびあがる。日本側の意図とその結果との断層があまりに巨大なのだ。

 1998年秋に産経新聞初代中国総局長として北京に赴任して、日本の対中政策の最大支柱だったODA供与の中国側の実態を知ったときはショックだった。日本側が官民あげて日中友好への祈りをもこめて供した巨額の血税はなんの認知もされていなかったからだ。

 日本からの経済援助は中国側の官営メディアは一切、伝えない。だから一般国民もまったく知らない。北京国際空港ビル、北京地下鉄2号線、南京母子保健センターなど、みな日本からの巨額のODAで建設されたのに開設式の祝辞や碑文にも日本の名はなかった。

 日本から中国への経済援助は実はODAだけではなかった。旧大蔵省と輸出入銀行から「資源ローン」などという名称で公的資金が中国に供されていた。その総額は99年までに3兆3千億円と、その時点でODA総額を越えていた。だから中国への援助総額は実際には7兆円だったのだ。

 対中ODAの目的は出発点の79年の大平正芳首相は「日中友好」を強調した。その後、ODA総額が大幅に増えた88年当時の竹下登首相は「中国人民の心へのアピールが主目的」と明言した。だが人民は日本からのODAを知らないから心に伝わるはずがない。

 中国政府がODAのために対日友好を増した証拠は皆無である。逆にODAがさらに巨額になった90年代をみても、「抗日」の名の下に日本への敵意を自国民にあおる共産党政権の宣伝や教育は激しかった。

 日本側からみての対中ODAの成否は政府の「ODA大綱」に照らし合わせれば明白となる。大綱は日本のODAが「軍事用途への回避」とくに相手国の「軍事支出、大量破壊兵器、ミサイルの動向に注意」、そして「民主化の促進」「人権や自由の保障」に合致することを規定していた。だが対中ODAはこのすべてに違反した。

 軍事面では単に日本からの資金が中国政府に軍拡の余裕を与えただけでなく、日本の援助でできた空港や鉄道、高速道路の軍事的価値の高さを中国軍幹部は堂々と論文で発表していた。チベットへの光ファイバー建設は軍隊が直接に利用していた。同じく日本のODAで完備した福建省の鉄道網は台湾への攻撃態勢をとる部隊の頻繁な移動に使われた。台湾の李登輝総統から直接に「日本の対中援助では福建省の鉄道建設だけは止めてほしかった」と訴えられたことは忘れ難い。

 日本のODAが中国の民主化や人権尊重に配慮しなかったことも明白だった。ODA大綱では民主主義や人権を弾圧する国には援助を与えないはずだったのだ。中国の非民主的体質はいまのウイグル人弾圧をみるだけでも実証される。

だから対中ODAとは日本政府が自ら決めた対外援助政策を無視しての超法規のような措置だった。日本政府は中国を特別に優遇した。中国の国家開発5カ年計画に合わせ、5年一括、中国側が求めるプロジェクトへの巨大な金額を与えてきた。中国には自国を強く豊かにするための有益な資金だった。

 その中国がいまや国際規範に背を向けて覇権を広げ、日本の領土をも脅かす異形の強大国家となったのだ。日本の対中ODAはそんな覇権志向強国の出現に寄与したのである。

なぜいま中国向けODAを終了したか—日本政府にとっての一石二鳥

 少なくとも政府レベルで日中関係が改善しつつあるこのタイミングで中国向けの政府開発援助(ODA)を終了させることは、中国に「思い知らせる」ことが目的ではなく、むしろ日本政府は国内の反中感情を満足させつつ、中国政府との協力を軌道に乗せる手段として、この決定に踏み切ったとみられる。

反中世論の満足

 1025日に訪中した安倍首相は、中国向けODAが「歴史的使命を終えた」として、終了する方針を打ち出した。首相訪中直前に明らかになったこの方針は、多くの日本人にとって「遅きに失した」ものかもしれないが、それでも「もはや日本よりGDPが大きく、これまでの経緯からしても、まして中国が軍拡を推し進めていることからも、援助しないのが当たり前」といった反応がネット上には目立ち、総じて肯定的に受け止められているようにみえる。

 日本政府がこういった世論の支持を期待していたことは疑いない。だとすれば、政府の方針は反中世論を味方につける国内政治上のプラスポイントとなる。

 ただし、中国の経済大国化や軍拡、さらにこれまでの日中関係があったとしても、単に「思い知らせる」ためだけにODAを終了させるなら、尖閣問題の表面化から安倍首相の靖国参拝に至る、日中関係が極度に悪化していた2010年代前半の段階で、その決定をしていてもおかしくなかったはずだ。

 まして、いくら国民の約8が中国に親近感を抱いていなくとも、日本政府がただ反中世論に傾いてODAを終了させたとも思えない。そこには以下のポイントがある。

·         いま日本が対中ODAを終了させても、中国にダメージはほとんどない。

·         それどころか、対中ODAを終了させても外交関係にダメージがないタイミングで、この決定は行われた。

·         さらに、対中ODAを終了することは中国の満足感を引き出す効果がある。

中国にダメージはない

 まず、日本が対中ODAの終了は中国にほとんどダメージがない。日本の対中ODAは、既に大幅に削減されていたからである

 1979年にスタートした日本の対中ODAは、1990年代の後半に転機を迎えた。当時、軍拡を進める中国の艦船が日本の排他的経済水域で勝手に調査をするなどしたこともあり、日本の対中感情が悪化。内閣府の世論調査では、中国に「親しみを感じる(「どちらかというと」を含む)」という回答は1980年に78.6パーセントだったが、1996年には48.4パーセントにまで落ち込んで「親しみを感じない(「どちらかというと」を含む)」と同率となり、その後も下落し続けた。

 この背景のもと、それまで対中ODAの中心だった、鉄道建設や港湾整備などの大規模プロジェクトをローンを組んで行う「有償資金協力(円借款)」が2000年をピークに急激に減少し、2008年を最後に終了した。

 その後、日本の対中ODAは、職業訓練など、相手に返済義務はないが一件あたりの金額がより小規模の無償援助のみ行われてきた。

 しかし、それも2015年段階で15144万ドル(約150億円)と、現在の中国からみて必ずしも大きな金額ではない。

 さらに、中国は過去の円借款の返済を続けているため、2008年以降は日本から中国に渡る金額より、その逆の方がはるかに多くなっている。

 したがって、対中ODAの終了は、中国にとってほぼ全くダメージがない。

なぜこのタイミングか

 それでは、なぜ日本政府は対中ODAを終了させたのか。

 ここにきて日中関係は、少なくとも政府レベルでは改善しつつある。2017年12に日本政府が中国政府の推し進める「一帯一路」構想に部分的ながら協力する方針を打ち出したことは、その象徴だ。

 なぜ、このタイミングなのか。逆にいえば、なぜ今まで続けてきたのか。

 ここで重要なことは、これまでの対中ODAには、世論レベルで悪化し続ける両国の関係をかろうじてつなぎ止める役割があったことだ

 日本の対中感情が悪化し始めた1990年代の末には既に、自民党のなかで対中ODA見直しの要求が出始めていた。そのなかには、当時まだ中堅議員だった安倍晋三氏もいた。

 しかし、これと並行して、両国の経済関係は深化し続けた。2000年当時、日本の中国(香港を除く)への輸出額は約303億ドル、輸入額は551億ドルだったが、2010年にはそれぞれ1496億ドル、1533億ドルにまで成長し、中国は最大の貿易相手国となった(IMF, Direction of Trade Statistics)。

 この背景のもと、両国でお互いへの反感が募ったとしても、日本政府には中国政府との外交関係を維持する必要があり、ODAは文化交流などとともに、その数少ない手段となっていた。

 その裏返しで、日中関係が改善しつつあるいま対中ODAを終了させることは、「もはやODAがなくても中国とのパイプに心配はいらない」という日本政府の自信を示す。言い換えると、「少なくとも政府レベルでの両国関係が最悪期を脱した」と判断したからこそ、日本政府は対中ODAを終了できたといえる。

中国政府の満足感を引き出す

 そのうえ、対中ODAの終了は、中国政府の満足感を引き出すものでもある。ODA終了で、日本が中国を「大国」として承認することになるからである。

 日本が円借款を終了させた2008年は、中国で北京オリンピックが開催された年だった。これは国内、特に自民党から突き上げられ続けてきた外務省にとっても、中国政府に「中国は名実ともに大国となったのだから、もう大規模なODAは必要ないでしょう」と言いやすいタイミングだった。これに対して、中国側から取り立てて否定的な反応はなかった。

 今回の場合、日本政府はODA終了と入れ違いに、中国政府と開発プロジェクトに関して協議する「開発協力対話」を立ち上げ、アフリカをはじめとする第三国への支援で連携を図る考えだ。その第一号は、タイでの高速鉄道建設になるとみられる。

 

 中国政府がタイ東部で進める、450億ドル以上の規模になるとみられるこのプロジェクトに、日本政府は300億ドル以上の円借款、14億ドルの無償資金協力、16億ドルの技術協力を提供する意志を既に示している。

 これはインフラ輸出を加速させたい日本政府にとってチャンス拡大を意味するが、同時に中国政府にとっては日本から「対等なパートナー」としての認知を公式に得るものである。アメリカのトランプ政権との対立が深刻化する中国にとって、日本との関係が再び重要性を増すなか、「対等のパートナー」と位置づけられることには大きな意味がある。

 そのため、中国政府もむしろ対中ODA終了を肯定的に評価しており、国内メディアに日本のODAが中国の発展に貢献したことを重視して報じるよう指示している。政府がメディアの論調まで指示することの是非はともかく、ここで重要なことは、中国政府が「貢献者」と日本を表現した点だ。

 

 日中関係が悪化しつつあった2000年、中国大使を務めていた谷野作太郎氏は中国政府に「『日本の援助が中国の経済発展に役立った』と中国側は日本人に言うべき」と伝え、これに対して楊文昌外務次官(当時)が「日本の円借款が中国の経済建設に果たした役割を高く評価する」と述べた。しかし、自民党内では「『援助』といわず『資金協力』、『円借款』という言葉ばかり使った」、「『感謝』が表明されなかった」(産経新聞、2000328日)と批判が噴出し、日中関係がさらに悪化する原因の一つとなった。

 「感謝されなかった」と不満を呈することへの賛否はさておき、18年前と比べて今回の中国政府に肯定的な態度が目立つことは確かで、そこには中国政府の対日関係のシフトとともに、日本政府の提案に対する満足感をもうかがえるのである。

内政と外交の一石二鳥

 だとすれば、政府は対中ODA終了によって、国内の反中世論の支持を得ながら、同時に「これまでと違う関係を築く」というメッセージを送って中国政府の満足感を引き出す決定をしたことになる。このねじれた方針の対象になっているという意味で、強い反中感情に基づいて今回の決定を支持する人の多くは、一周回って中国政府と同じ立場に立っているともいえる。

 いずれにせよ、これによって(何度もいうが政府レベルで)日中関係が新たな段階に入りつつあることは間違いなく、トランプ政権の暴走によってアメリカ主導の国際秩序が根底から揺らぐなか、さまざまなリスクヘッジが不可欠であることに鑑みれば、妥当な決定といえる。ただし、中国のペースに合わせ過ぎないこともまた必要であるため、日本政府に微妙なかじ取りが求められることには変化がないといえるだろう。

 

ビットコインは衰退? リップルやイーサリアムなどが追い抜くか

 現時点で仮想通貨の中で最も世間に認知され、取引量が多いとされるビットコインだが、ドバイに拠点を置く金融アドバイザリー企業「deVere Group」の創設者であるナイジェル・グリーンCEO(最高経営責任者)は、これからの10年でビットコインの仮想通貨産業における影響力や支配力は劇的に弱まっていくとの見解を示した。CCNが報じた。

 「仮想通貨がさまざまな分野で活用されるようになるにつれ、官民問わずさらに多くの企業が新しい仮想通貨を発行するようになる」(グリーンCEO)とし、仮想通貨の競争激化に伴いビットコインのマーケットシェアは縮小すると予測する。

 一方で、その他の仮想通貨については今後盛り上がりを見せるといい、市場規模はさらに20兆ドルほど拡大する見込みだ。

 特に、既存の銀行や金融機関との連携を狙う仮想通貨リップルは、今後数年でビットコインの地位を揺るがす脅威になる可能性があるとみる。イーサリアムについても「イーサリアムが提供するスマートコントラクトの採用率が高まっている」と指摘。より良い技術や機能、課題に対する適切なソリューションを採用しているかが今後の鍵になるという。

 グリーンCEOは「個人・機関投資家の資金が仮想通貨に流入することは明らかであり、ビットコインが誕生から20周年を迎えるころには仮想通貨市場は見違えるほど巨大になっている」と語った。

ソフトバンテク---急落でストップ安

ソフトバンテク<4726>は急落でストップ安。前日に上半期の決算を発表、営業利益は10.1億円で前年同期比40.8%の大幅増益となった。ただ、7-9月期は5.6億円で同10.5%の減益に転じている。クラウドソリューションにおける一部不採算案件の発生なども響いたとみられる。第1四半期決算発表後に株価が大きく上昇していたこともあって、やや期待外れとの見方が優勢になっているもよう。

2018年10月25日木曜日

3年後、糖尿病になる? AIが予測、HPで公開

 あなたが3年後に糖尿病になるリスクは? データを入力すると危険度がわかる予測ツールを、国立国際医療研究センターが開発し、24日からホームページ(https://www.ncgm.go.jp/riskscore/)で公開を始めた。

 ツールは、30〜59歳のこれまで糖尿病と診断されたことのない人が対象。約3万人の健康診断データをもとに、AI(人工知能)を使って開発した。身長や体重、血圧などを入力すると、3年後の糖尿病発症リスクや、同性・同年代の平均との比較結果がわかる。血液検査のデータを加えると、より精度の高い予測ができる。

 国内には、糖尿病が強く疑われる約1千万人に加え、糖尿病の可能性が否定できない人も約1千万人いる。健康診断などで異常が見つかる前にリスクを評価し、「予備群」だと分かれば運動や食事、禁煙などの対策をとることで、病気になるリスクを下げることが出来る。

 同センターの溝上哲也・疫学・予防研究部長は「自分のリスクを知ってもらうことで、生活習慣の改善を促したい」と話している。糖尿病対策などについても同センターのホームページ(http://dmic.ncgm.go.jp/)で紹介している。

平均株価が一時700円超の大幅下落 NYの急落受け

 東京株式市場の日経平均株価はニューヨークダウが600ドル以上、下落した流れを受けて寄り付きから400円以上、値下がりして始まりました。その後、急速に下げ幅を拡大して一時、700円以上、下落しました。現在は24日に比べ、688円安い2万1402円で取引されています。

千趣会が大規模リストラへ=星野社長、辞任で調整

 カタログ通販大手の千趣会が、業績低迷を受けて大規模なリストラを行う方針を固めたことが24日、分かった。希望退職の募集に加え、大阪本社(大阪市)の売却や拠点集約を検討。業績不振の責任を取って、星野裕幸社長が辞任する方向で調整に入っている。

 早ければ週内にも発表する。千趣会は同日、「業績改善に向けてさまざまな可能性を検討しているが、決定している事実はない」とのコメントを発表した。

 同社は1955年設立。女性向けカタログ「ベルメゾン」で知られるが、アマゾンなどインターネット通販が攻勢を強める中、ネット対応が後手に回り、顧客を奪われていた。2017年12月期の連結純損益が110億円の大幅赤字に転落し、今年4月にはJ・フロントリテイリングとの資本・業務提携も解消。昨年11月に募集した希望退職には、予定の3倍近い134人が応募した。 

2018年10月24日水曜日

少子高齢化 2030年は人手不足は現在の5倍以上

 少子高齢化がさらに進む2030年に、人手不足が現在の5倍以上にあたる644万人に拡大するという調査結果が発表されました。

 民間シンクタンク「パーソル研究所」と中央大学が総務省の労働力調査などから将来の労働力不足を予測したところ、2020年には384万人、2030年には644万人と人手不足が拡大するということです。特に深刻になるのは、サービス業で400万人、医療・福祉業で187万人が不足するとみられています。人手不足の解消には、働く女性や高齢者、外国人を増やすことに加えてAI(人工知能)やロボットが人の代わりに仕事をする必要があると提言しています。

2018年10月19日金曜日

中国人観光客が日本の商業施設に踊る「祝・国慶節」に抱く違和感

 10月1日の国慶節は中華人民共和国が建国された日であり、中国の国民の祝日だ。ところが、この祝日を中国の国民以上に歓迎する動きがある。それは日本の商業施設だ。都心の主な商業施設には「祝・国慶節」の広告物が掲げられ、訪日中国人観光客の間で"話題"になっている。

 情報が瞬時に伝播する中国の通信アプリ「ウィーチャット」では、国慶節の休日に、日本語に訳すと「爆笑!国慶節で中国人観光客にこびへつらう日本の商業施設」というタイトルで、話題が拡散された。その中身は、「国慶節」の看板を掲げる日本の商業施設の画像を集め、その"滑稽さ"を辛辣に皮肉ったものだった。

 都心の商業施設のエントランスや陳列棚、地方では空港の到着ゲートに「祝・国慶節」と印刷された掲示物が掲げられるさまに、投稿者は「これは本当に日本だろうか?」とつぶやき、「自分が来たのはニセの日本じゃないか?」と疑問を挟む。それに続くのは、「多くの中国人観光客は、これに呆然とする」という文言だ。そして、皮肉は延々と続く。

「最近、日本は災害が多い。経済の振興に一生懸命なんだ…日本の百貨店は銀聯カードの宣伝を掲げ、国慶節の特別優待キャンペーンをプッシュする」

「ドラッグストアも命がけだ。ここ数年、中国の記念日を取り入れての展開だ。バイトの中国人留学生は『中国人観光客の爆買いがなかったら店はやっていけない』という。『最低でも(売り上げの)50〜60%は中国人観光客に依存している』とも。どうりで中国人観光客を追いかけるはずだ。

 中には『国慶節』特別仕様の詰め合わせセットもある。家電量販店もこの機会を絶対逃せないと必死だ。(中略)多くの中国人観光客は不思議に思っている、ここは日本なのに、なぜ中国の売り場に行ったかのような感じになるのか…(後略)」

なぜ日本人が中国の国慶節を祝うのか?
 一見するとなんだか馬鹿にされているかのような文章だが、ここは冷静に受け止めたいところだ。実は筆者も、何人かの中国人から「日本でも国慶節を祝うのか?」と尋ねられたことがあるからだ。彼らは「日本には自国の建国記念日があるにもかかわらず、他国の記念日を祝うのはおかしい」と思っている節がある。

 日本の商業施設からすれば「一緒にお祝いしましょう」の、いわば軽い善意の気持ち程度かもしれないが、中国では考えられない光景だというのだ。だから、「なるほど、これはそうまでして物を売りたいがためにあえて取っている手段なのだな」と深読みしてしまう。

 そもそも、建国記念日に相当する日を持つ国の多くは、旧植民地からの独立記念日をその日に当てている。中国の場合は、国共内戦を経て祖国が統一され、1949年10月1日に行った建国の式典が国慶節となったが、その数年前には日本と中国は戦火を交えている。

 建国時、中国の世論は日本に対し厳しいものだったことを思えば、日本人が「祝・国慶節」の広告物を掲示することに違和感を持たれても不思議ではないし、中国人のための国慶節を日本でも祝っているという"不思議さ"をして、「日本は相当な商業主義だ」と勘繰られても、やむを得ないのである。

 さらに筆者は、中国人の友人から「日本の建国記念日も同じように消費が活発になるのか?」と尋ねられたが、回答に詰まってしまった。日本の建国記念日を置き去りにし、「国慶節」には敏感に反応する今の日本の商業施設が「節操がない」と思われても致し方ない。

ここはニセの日本なのか?
「ここはニセの日本なのか?」と思われても無理はない。いや、むしろ日本の生活者こそ、あの商業広告に違和感を抱いているのではないかと思うくらいだ。インバウンドも走り出しの頃は、まさかここまで「簡体字広告」が町のいたるところに露出するとは想像もしなかった。

 百貨店が"中国人観光客による消費"を最も期待していることは、外壁にかかる懸垂幕を観れば一目瞭然だ。売り場も "中国人好み"を感じさせるつくりになった。家電量販店やドラッグストアの店頭に立つのは中国人スタッフであり、店内の案内も中国語表記や赤い飾りつけが目立つ。確かにこの投稿者が指摘するとおり、「ここは中国か?」と思ってしまう。

 ちなみに90年代の中国はまだまだ貧しかったが、北京でも上海でも、その売り場は決して外国人観光客にへつらったものではなかった。

 中国でも人気ブランドに成長した都内のあるショップでは、ベテランの中国人社員が日頃から感じる疑問をこう明かした。

「詰め合わせセットにして『8』がつく数字で価格を設定するのは、中国人観光客向けインバウンドの売り方の典型です。インバウンドも初期の頃は『中国人好みの売り方』を熱心に研究しましたが、最近はこうした売り方に違和感を覚えるようになりました。"中国人好み"の売り場づくりを追求しすぎるのは、やっぱり違うんじゃないかと……」

 長年インバウンドに取り組んできた宿泊施設の経営者にもコメントを求めた。「歓迎ムードを演出して消費を促すのは当たり前のこと」としつつも、「本来ならば、観光客のためにわざわざ演出するのではなく、"日本のありのまま"を見てもらうことのほうがずっと価値があると思う」と本音を語った。

 かつて日本に観光に来たことがある中国人と、通信アプリの「ウィーチャット」でつながった。その女性は「カラクリはわかっている」と言いたいのだろう、即座にこう打ち返してきた。

「我覚得〓們日本老百姓有点不喜歓我們去,但是〓們政府要我們去(日本の市民は私たちが日本に行くことをあまり好んではいないようだけど、日本の政府は私たちに来てもらいたいんだよね/〓の文字は『にんべん+〈「欠」の「人」に代えて「小」〉』)」

 これは日本政府が掲げる「外国人観光客・年間4000万人計画」に向けられた、中国人観光客の冷めた目線だと思ってもいい。

 二言目には観光消費しか言わない日本政府と、中国人観光客を見れば「消費」しか発想しない商業施設が、一部の中国人観光客をシラけさせているのだ。

 昨年、筆者は『インバウンドの罠』という本を出版したが、サブタイトルに「脱『観光消費』の時代」を掲げた。「消費、消費」で観光客を追い回す現状を目の当たりにすると、このままでは、あるべきインバウンドが歪んでしまうのではないかと心配になる。

2018年10月18日木曜日

ロンドン主要駅が大混乱=日立の試験車が原因か

英ロンドン中心部の主要駅パディントン駅で17日、電気系統の障害で多くの列車が遅延・運行休止となり、立ち往生した乗客らで一時大混乱となった。トラブルは英南西部の他の駅でも発生。鉄道運行会社によると、前夜にロンドンと南西部ブリストルの間で試験運転を行った日立製作所製の最新車両が約500メートルにわたって架線を損傷したのが原因とみられるという。

日立の広報担当者は「何年も同じルートで試験を成功させており、原因特定のために徹底的で包括的、綿密な調査を始めた」との声明を発表した。 

中国発改委、53億ドルの鉄道プロジェクトを承認

中国国家発展改革委員会(発改委)は17日、中国東部で368億元(53億ドル)規模の高速鉄道プロジェクトを承認したと発表した。

承認されたのは、上海と江蘇省蘇州市、浙江省湖州を結ぶ鉄道を建設するプロジェクト。

中国では、経済成長が鈍化する中で政策担当者らがインフレ支出を加速させており、いったん中止となったプロジェクトの再始動や新たな鉄道プロジェクトの承認が再開されている。

ガソリン、160円に迫る 7週連続の値上がり

 経済産業省資源エネルギー庁が17日発表した15日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は、9日時点の前回調査と比べて2円10銭高い159円60銭と、160円の大台に迫った。灯油は18リットル(一般的なタンク1個分)当たり36円高い1787円だった。いずれも7週連続の値上がり。

 ガソリンは160円10銭を付けた2014年11月4日以来、約3年11カ月ぶりの水準。調査した石油情報センターによると、米国の対イラン制裁など中東情勢への不安感や為替相場の円安ドル高が影響した。来週は値下がりを予想している。

米国株は下落、FOMC議事要旨受け金利上昇懸念強まる

米国株式市場は下落。同日午後に公表された9月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨からは、当局者が金利は今後も上昇することでおおむね一致したことが明らかになり、前週の株価急落を招いた金利上昇懸念が強まった。

議事要旨の発表後、S&P500はプラス圏とマイナス圏を激しく行き来した。

議事要旨では「出席者全員が、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標引き上げによって金融政策を段階的に引き締めるアプローチが適切との見解で一致した」とした。

コモンウェルス・フィナンシャル・ネットワークの最高投資責任者、ブラッド・マクミラン氏は「9月のFOMCは市場の予想よりタカ派的だったという印象だ」と述べた。また、FRBがタカ派色を強めるとの見方が、米中貿易摩擦から住宅市場軟化、企業の業績見通しまで様々な不透明感を巡る株式投資家の懸念をさらに強めていると指摘した。

議事要旨発表前も、9月の住宅着工件数が市場予想を下回ったことを受けて相場は不安定な展開だった。

S&Pの主要11セクターのうちプラス圏で引けたのは金融株(.SPSY)など4セクターのみで、素材株(.SPLRCM)の下げが目立った。

住宅着工統計を嫌気してホーム・デポ(HD.N)は4.3%下落。フィラデルフィア住宅指数(.HGX)は1.87%安となった。

一方、ネットフリックス(NFLX.O)は5.3%上昇。前日引け後に発表した第3・四半期決算で契約者数の伸びが市場予想を上回ったことを好感した。

ユナイテッド航空も5.95%高。第3・四半期の利益が予想を上回ったほか、通期の業績予想を再び引き上げた。他の航空株もこれに連れ高した。

ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を1.70対1の比率で上回った。ナスダックでも1.39対1で値下がり銘柄数が多かった。

米取引所の合算出来高は70億8000万株。直近20営業日の平均は79億株。

終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

ダウ工業株30種 25706.68 -91.74 -0.36 25705.8 25810. 25479. (.DJI)

7 09 16

前営業日終値 25798.42

ナスダック総合 7642.70 -2.79 -0.04 7669.26 7670.5 7563.0 (.IXIC)

0 9

前営業日終値 7645.49

S&P総合500種 2809.21 -0.71 -0.03 2811.67 2816.9 2781.8 (.SPX)

4 1

前営業日終値 2809.92

ダウ輸送株20種 10683.82 -61.03 -0.57 (.DJT)

ダウ公共株15種 733.53 -1.44 -0.20 (.DJU)

フィラデルフィア半導体 1277.31 -5.64 -0.44 (.SOX)

VIX指数 17.35 -0.27 -1.53 (.VIX)

米国株は下落、FOMC議事要旨受け金利上昇懸念強まるc REUTERS 米国株は下落、FOMC議事要旨受け金利上昇懸念強まる
S&P一般消費財 874.58 -6.07 -0.69 (.SPLRCD)

S&P素材 339.10 -2.83 -0.83 (.SPLRCM)

S&P工業 628.93 -4.25 -0.67 (.SPLRCI)

S&P主要消費財 550.82 +2.64 +0.48 (.SPLRCS)

S&P金融 447.95 +4.04 +0.91 (.SPSY)

S&P不動産 194.82 -0.46 -0.23 (.SPLRCRE

C)

S&Pエネルギー 537.01 -3.76 -0.69 (.SPNY)

S&Pヘルスケア 1081.37 +5.12 +0.48 (.SPXHC)

S&P通信サービス 155.81 +0.80 +0.51 (.SPLRCL)

S&P情報技術 1253.79 -5.95 -0.47 (.SPLRCT)

S&P公益事業 272.47 -0.42 -0.15 (.SPLRCU)

NYSE出来高 8.27億株 (.AD.N)

シカゴ日経先物12月限 ドル建て 22900 + 10 大阪比 (0#NK:)

シカゴ日経先物12月限 円建て 22870 - 20 大阪比 (0#NIY:)

(ロイターデータに基づく暫定値です。前日比が一致しない場合があります)

インド「新幹線」事業、始動から1年−土地取得進まず遅延の恐れも

インドで初めてとなる高速鉄道プロジェクトの始動から1年。日本の新幹線方式を採用されたこの計画のスピードは、今のところ通勤電車並みだ。

  国家高速鉄道公社(NHSRCL)によれば、高速鉄道建設で必要な土地1400ヘクタール(約14平方キロメートル)のうち、これまでに取得できたのはわずか0.9ヘクタール。モディ首相によるインフラ整備事業の目玉である1兆800億ルピー(約1兆6500億円)規模の高速鉄道計画だが、土地を提供する見返りとして受け取る補償に不満を持つ農民の抵抗に直面している。

  インド金融の中心地ムンバイと経済の拠点であるアーメダバードの316マイル(約509キロメートル)を結ぶ高速鉄道は、165年を超える歴史を持つアジア最古の鉄道網を運営するインド鉄道にとって大きな飛躍となるが、今の土地取得ペースでは2023年という完成目標が達成できない恐れがある。だが、政府はさらに1年の完成前倒しを図りたいとも表明している。

  オーストラリア国立大学のラグベンドラ・ジャ教授(経済学)は「インドでは土地取得を巡り問題が頻繁に起き、多くのプロジェクトが遅れる。こうした事例を数多く目にしており、それついて疑う余地はない」と述べる。

  モディ首相の伝記執筆者で政治アナリストのニランジャン・ムコパディヤイ氏は高速鉄道計画について、「非常にハイレベルで極めて目立ち、宣伝効果も大きいだけに、もし住民らが抗議活動を始めれば、何事もよどみなく実行できる人物としてのモディ首相のイメージを損ねることになる」と指摘する。

  高速鉄道事業で影響を受けた農民のグループはグジャラート高等裁判所に訴えを起こしており、政府側に対して11月22日の審理で説明するよう求めている。裁判所文書はまた、官民パートナーシップ事業向けに農地を取得できるとする政府の権限にも農民側が疑問を呈していることを示している。

  新幹線技術が輸出に成功したケースはまれだ。数年にわたる国際的なマーケティング活動を経てJR東日本や日立製作所、川崎重工業などの日本勢が、中国中車やドイツのシーメンス、カナダのボンバルディアに競り勝った。

  車両は時速350キロで走行できるように設計されているが、最大速度は時速320キロを予定。ムンバイ・アーメダバード間は現在の約7時間から2時間程度で結ばれることになる。大半は高架上の運行となるものの、アラビア海の海底7キロを含めた21キロのトンネルも建設される。

2018年10月15日月曜日

日立、米GEと小型原発「SMR」共同開発へ

 日立製作所が米ゼネラル・エレクトリック(GE)と共同で、新型の原子力発電所の開発に乗り出すことがわかった。次世代炉として米国などで開発が進む小型モジュール炉(SMR)と呼ばれるタイプで、2030年代の実用化を目指す。東京電力福島第一原発事故の後、停滞する国内の原発事業の活性化につながる可能性もある。

 日立の子会社とGEの子会社が、年内にもSMRの共同開発について覚書を交わす。日立とGEは戦後、原子力分野で協力関係を築いてきた。SMRでも連合を組む。日立は原子炉の小型化に向けた研究に長年取り組んでおり、GEとの提携ではまず、開発に必要な実験データの共有などを進める見通しだ。

 ただ、開発に成功しても、現時点では、日本国内の原発の新増設は難しい。このため、日立は国内工場で製造した新型原発を海外へ輸出することを想定している。

 SMRは世界でまだ商業運転された例はないが、建設費は、1兆円程度かかる従来の原発の10分の1程度に抑制できるとみられている。

2018年10月11日木曜日

〔米株式〕NYダウ急落、831ドル安=金利高や貿易摩擦に懸念(10日)

10日のニューヨーク株式相場は、高止まりする米長期金利や世界的な貿易摩擦の悪影響に懸念が広がり、急落した。優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日終値比831.83ドル安の2万5598.74ドル(暫定値)と、史上3番目の下げ幅で終了。ハイテク株中心のナスダック総合指数は同315.97ポイント安の7422.05で引けた。

日経平均 大幅下落、午前終値は914円安

 10日のニューヨーク株式市場で株価が大幅に下がったことを受け、東京市場でも株価が大きく下落しています。東証アローズからの報告です。

 11日の日経平均株価は取引開始直後から、ほぼ全ての銘柄の株が売られる展開となりました。アメリカで株価が大きく下落したことや、為替市場で1ドル=112円台前半まで円高が進んでいることが要因です。

 株価の下げ幅は一時900円を超え、結局、午前は前日より914円安い2万2591円で取引を終えています。市場関係者は「久しぶりの大幅下落に市場が動揺し、冷静さを欠いた売りが広がっている」と分析しています。

 今のところ、一時的な調整で終わるとの見方が優勢ですが、「これが世界同時株安の入り口にならないか」と、市場には緊張感が漂っています。

外国人労働者、永住も可能に…熟練技能を条件

 外国人労働者の受け入れ拡大に向け、政府が来年4月の導入を目指す新制度の全容が10日、判明した。新たな在留資格「特定技能」(仮称)を2種類設け、熟練した技能を持つと認定された外国人労働者には日本での永住を事実上、認めることが柱だ。今月召集の臨時国会に出入国管理法と法務省設置法の改正案を提出する。

 政府は少子高齢化に伴う深刻な人手不足に対応するため、外国人労働者の受け入れ拡大を検討している。12日にも開く関係閣僚会議で、関連法案の骨子を提示する。

 骨子では、特定の分野について「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つと認めた外国人労働者に、新たな資格「特定技能1号」を与えるとした。3年間の技能実習を終えるか、日本語と技能の試験の両方に合格すれば資格を得られる。在留期間は最長5年で、家族の帯同は認めない。技能実習生(在留期間最長5年)がこの資格を取得した場合、日本で最長10年間働けるようになる。

2018年10月10日水曜日

世界の金融安定リスク拡大、貿易摩擦激化なら急速悪化も=IMF

2008年の世界的な金融危機後の10年間で各国当局は金融安定を強化したものの、緩和的な金融状況が高水準の債務や「過大評価された」資産価値に絡む潜在的な問題の蓄積につながっているとも指摘した。

また、将来の銀行救済を回避することを目的とした破綻処理の枠組みはほとんど試されていない状態だと警鐘を鳴らした。

IMFは「世界の金融安定に対する目先のリスクが幾分拡大した」とし、「市場参加者は総じて、金融状況の急速な引き締まりのリスクに無関心のようだ」との見解を示した。

IMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長は会見で、金融システムに対する潜在的なショックはさまざまな形で現れる可能性があると指摘。予想を上回るインフレ率が金利の大幅上昇を引き起こす場合や、英国による「無秩序な」欧州連合(EU)離脱を例に挙げた。

そのようなショックの影響の大きさは非金融部門の債務の蓄積や資産価格の高止まりといった脆弱性が決定要因になるとした上で、「脆弱性の蓄積と資産価格の下落の相互作用によってマクロ経済活動に対して悪影響が生じる可能性がある」とした。

また、中国当局が債務の伸びを抑制する措置を講じているにもかかわらず、同国で近年に債務が急速に膨らんでいることは懸念材料だと述べた。

IMFの報告書は、一部の主要国では経済成長がピークに達したように見える一方、先進国と新興国の格差は広がっているとも指摘。

米国の金融正常化やドル高に加え、貿易を巡る緊張の高まりは既に新興国に影響を及ぼし始めているとした。

このほか、金融安定に対する目先のリスクとして、英国が条件などで合意しないままEUを離脱する可能性や、高水準の債務を抱える一部ユーロ加盟国の財政政策を巡る懸念の再燃などを挙げた。

また、各国当局は金融危機後に導入した措置を維持し、市場の流動性監視を強化すると同時に、景気後退に備えて銀行の自己資本基準を引き上げる必要があると強調。「金融規制改革を完了する必要があり、改革の巻き戻しは回避すべきだ」と訴えた。

データ誤送信はメリルリンチ日本証券

 東京証券取引所で9日朝に起きたシステム障害で、原因となった大量の電子データの誤送信はメリルリンチ日本証券によるものだったことが関係者への取材で分かった。

2018年10月9日火曜日

世界規模で「赤色」不足のなぜ?

 全世界で"赤色"が不足している。代表例は自動車用テールランプの赤だ。中国の環境規制強化により2018年春から現地の染料原料メーカーが相次ぎ操業停止となり、特に赤色の供給不足が長期化している。染料を使う化学メーカー間では代替調達の動きも出始めた。問題の根本は生産の中国一極集中にあり、サプライチェーンの構造的欠陥が図らずもあぶり出された。

 染料世界大手の独ランクセスは6月から赤色など一部製品のフォースマジュール(不可抗力による供給制限)を継続している。法令違反を調べる中国政府の環境査察により、染料産業が集積する江蘇省や山東省で原料・中間体メーカーを含む工業団地の操業停止や閉鎖、移転命令が続出。その結果、ドイツでの染料製造に大きな支障を来している。

 独ランクセスが得意とする染料はポリカーボネートやアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂に着色する。車用テールランプのほか、飲料用ペットボトルや玩具など最終用途は幅広い。樹脂を手がける日系化学メーカーなどは現状在庫で対応しているものの、代替調達の検討に入った。ただ、新たに顧客の認証取得が必要で時間がかかる。

 16—17年から目に見えて強化された中国の環境査察は工業団地に入居する1社の違反で、団地全体が"連帯責任"で操業停止となるほどの厳しさだ。今回に関しても「その原料メーカーは悪いことをしていないが、工業団地内で他社が違反して全部駄目になった」(日系化学メーカー幹部)といわれる。

 問題をより深刻化しているのはサプライチェーンの隠れた脆弱(ぜいじゃく)性だ。「原料は世界でもほとんど中国でつくっている」(業界関係者)とみられ、欧州や日本で採算の合わない材料生産が中国へ次々移転した末の惨事だ。

 「中国の自動車メーカーも騒ぎ出すから、早晩解決するはずだ」(化学大手幹部)との楽観論も少なくない。確かに複数の原料メーカーが操業を再開したことで、独ランクセスも9月に黄色と緑色、青紫色3製品の供給制限を解除した。状況は好転しつつある。

 一方で、悲観論もある。11月上旬に上海で「中国国際輸入博覧会」が開催される。習近平国家主席の肝いりとされる一大行事だ。会期の前後は上海周辺に工場の操業規制をかけるとみられ、隣の江蘇省なども影響は避けられない。

 テールランプメーカーなど川下業界では今のところ大きな問題にはなっていない模様。ただ、今後さらに染料の供給不足が長期化するようなら、世界の自動車産業は深刻な被害を受けるかもしれない。

前場の日経平均は大幅続落、下げ幅一時300円超 中国株警戒

前場の東京株式市場で、日経平均株価は前営業日比218円81銭安の2万3564円91銭となり大幅続落した。国内連休中に為替が円高に振れたほか、中国景気の先行きに対する警戒感が強まったことを受け、取引時間中としては9月18日以来、3週ぶりの安値を付けた。ただ急落後の中国株が下げ止まりの兆しをみせると買い戻しが入り、前引けにかけて下げ幅を縮小した。

TOPIXは前営業日比1.25%安で午前の取引を終了した。セクター別では不動産、陸運、建設を除く30業種が値下がりし、鉱業、輸送用機器、電気機器の下げが目立った。

中国人民銀行が景気支援策として預金準備率の引き下げを発表したにもかかわらず、国慶節の連休明けとなる8日の中国株式市場は大幅安となった。9日の東京市場では中国株の動向への警戒感が広がり、景気敏感セクターを中心に売りが膨らんだ。

みずほ証券シニアテクニカルアナリストの三浦豊氏は「中国株は今までも下がっており、その流れが続いている印象もあるが、米半導体関連が売りに押されている。日本株は週末のSQ(特別清算指数)算出に向け短期調整となりそう」とみる。

東京証券取引所によると、この日は現物の売買システム「アローヘッド」にある仮想サーバの一部で障害が発生。一部の証券会社で株式取引ができない状況となったが、東証1部の前場の売買代金は1兆3929億円となり、全体相場への影響は軽微となった。

東証1部の騰落数は、値上がり375銘柄に対し、値下がりが1681銘柄、変わらずが53銘柄だった。

米中外相が会談、非難の応酬 貿易や安保、両国の関係悪化鮮明

 中国を訪問したポンペオ米国務長官と王毅国務委員兼外相は8日、北京で会談した。ポンペオ氏が中国の通商政策や内政干渉、南シナ海での軍事拠点化を念頭に「強い懸念」を表明したのに対し、王氏は「中国の核心的利益を損なう誤った言動を直ちにやめるよう要求する」と抗議した。貿易や安全保障政策を巡る両国関係の悪化が鮮明になった。

 ペンス米副大統領は今月4日の演説で中国が11月の米中間選挙に介入しているなどと非難し、中国は猛反発している。王氏は、北朝鮮対応を巡る米中協力は「健全で安定した両国関係」が前提になるとけん制した。

東証で株式システムに障害 大手が相次ぎ注文を停止

 東京証券取引所は9日、売買システムの一部でシステム障害が起きたと発表した。東証と証券会社を結ぶ回線の一部に不具合が生じた。証券会社が売買注文の受け付けを停止するなど、取引に影響が出ている。

 東証によると、午前7時半ごろ、4回線のうち1回線が接続できない状態になった。ほかの3回線を利用すれば取引できるが、うまく移行できない証券会社もある。東証が原因を調べている。

 SMBC日興証券は、東証のシステムと接続できず、店頭とネットでの株式の売買ができない状態になっている。売買や取り消し注文は受け付け、システム復旧後、注文時の価格で約定する。野村証券は「一部の株式注文で取引所への執行ができていない」と発表。注文の成立や訂正、取り消し結果の反映が遅れているという。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、全ての現物株と信用取引の受け付けを停止している。みずほ証券でもネットでの株式の注文ができず、店舗やコールセンター経由で注文を受け付けている。大和証券でもネットで午前8〜9時に行われた注文の訂正や取り消しが一部の銘柄でできなかった。午前9時以降はネットと店舗ともに復旧しているという。ネット証券大手のSBI証券や楽天証券は、通常通り売買できているという。

「開発の丸投げやめて」 疲弊するAIベンダーの静かな怒りと、依頼主に“最低限”望むこと

 「AI(人工知能)は触ったことないし、プログラムも書けません。でも社長が"AIをやれ"って言うので何とかしてください」——こんな困ったオジサンたちを、ユーモアたっぷりの愛と皮肉で表現する人物をご存じでしょうか。

 その名は「マスクド・アナライズ」さん。正体は一切不明でソーシャル上のアイコンは覆面マスクと、一見イロモノ系アカウントに見えますが、Twitterでの発言は多くの人たちから「あるある」「共感する」と絶賛され、ときには何千回、何万回とRTやいいねされています。

 それもそのはず。普段の仕事では「AIを作ってほしいという相談から、導入後の改善まで請け負い、お客さまに合わせてAI開発、データ分析、IoT導入と結構幅広くやっている」とのこと。発言に信ぴょう性や具体性があって当然です。

 冒頭のようなむちゃぶりをしてくるオジサンに向けて、痛いところを突いて地味にダメージを与えるような発言を続けるマスクドさん。「各方面からいろいろ言われますけど」と笑う一方で、言わなきゃいけないことを誰かが言わないといけないという使命感も持っているそうです。

 そんなマスクドさんに、現場の最前線に立ち続けるからこそ分かるAI開発現場のリアルな現状をざっくばらんに語っていただきました。その覆面を通し、AI開発の今をどのように見ているのでしょうか。

「AI開発には時間も金もかかる」と分かり、急速にAIブームが覚めている説
 今ではさまざまな企業がAIをビジネスに活用しようと動いていますが、AIブームはまだ過熱しているのでしょうか。

 「AIブームは一時期すごく過熱しましたが、2018年の春ぐらいには落ち着きました。会社で突然偉い人からAI導入を指示されたものの、何をどう取り組めばいいのか分からず、途方に暮れる担当者が弊社のようなAIベンチャーに電話してあれこれ相談してくることを、私は「いきなり!AI」と呼んでいます。そういう「いきなり!AI」は減ってきて、ある程度AIについて分かっている人や、既にAI導入に取り組んでいる人からの相談が増えています」(マスクドさん)

 そう語るマスクドさんは、5年ほど前からAI開発に携わっているそうです。当時、ディープラーニングを研究する東京大学・松尾豊さんの著書「人工知能は人間を超えるか」が大きな話題となり、AIブームが勃興していました。

 ところが、当時から大忙しというわけではなかったそうです。

 「13年ごろのAIは、自社でビッグデータを持つ大企業だけのものでした。16年〜17年ぐらいからブームが過熱し始め、業種・規模問わず"いきなり!AI"だらけになっていきます。恐らく大手のSIer(※)なら見積もりで数億円になってしまうから、小さいベンチャーなら安上がりと思って連絡しているのでは? って感じの人たちが非常に多かった。深くは突っ込みませんけど」と、マスクドさんは当時の苦い思い出を振り返ります。

※SIer…システムインテグレーションを行う業者。情報システム構築の際、企画・設計から開発、運用サポートなどを一括で請け負う

 では、なぜ「いきなり!AI」は減ってきたのでしょうか。

 「企業でAIを活用するには、時間もお金もかかるんです。単にツールを入れれば済む話でもない。SIerに何度も問い合わせるうちに、その辺の感覚が分かってきたのでしょう」

 AIを作るための現実をまざまざと見せつけられて撤退する企業が多い中、「17年ぐらいになると、AI開発を内製化する会社と外注する会社の二極化が始まった」とマスクドさんは指摘します。

 「デジタル広告やアプリゲームを作っている企業は、15年〜16年にはお問い合わせが減っていきました。内製化に舵を切ったのでしょう。一方で16年以降、製造業などこれまでデータ分析からは縁が遠かった企業の問い合わせが増えています」

 マスクドさんは「製造業との取引」もあり、その体験談をnote上でも発表されています(参考:「発掘!モノMONO大辞典!」)。

 製造業は日本の古き良きお家芸ですが、AIやデータとは縁遠いイメージも付きまといます。実際、マスクドさんは「製造業は保守的な所がある。前例主義でやっているので、導入事例や実績が大事にされ、社内のチームでうまくいったツールなら使う、といった具合です」と説明します。

 AI開発を内製化する企業と、外注する企業の二極化が進んでいるという話がありましたが、この「内製化」も怪しい所があります。

 「Kaggle(※)を推奨しています!」「Google I/O(※)にエンジニアを行かせています!」という意識も技術力も高い意欲的な企業がある一方で、Pythonを使える人材を無理やり集めて「弊社はAIができます!」と手を上げているSIer企業もいます。この二極化が進んでいるというのがマスクドさんの意見です。

※Kaggle…データ分析や機械学習のさまざまなコンペに参加できる米国発のプラットフォーム
※Google I/O…Googleが米国で毎年開催する開発者向け会議

 AI開発に携わりたいと考えている人は「意識も技術力も高い企業」に入社したいはずですが、どうすれば技術力の高さを見極められるのでしょうか。実際、内製化をうたっていても肝心のアルゴリズムは外注していて、エンジニアもよく分からないまま作業しているという例を聞いたことがあります。

 マスクドさんも「正直、そういう会社もあると思う」と主張します。

 「僕も同業他社の動向が気になるのでチェックするんですけど、本当に自社でやってるのか? と疑いたくなる会社が多い。しかし、見極めるのは難しい。外注する立場になって、ちゃんとAIを作れる企業に頼みたいと思ったとしても、正直どこを見れば良いか分からないです。もう、ほとんど運任せの状態になってます」

 結局、地道だけど人材の育成に取り組むしかないというのがマスクドさんの結論です。このような、AI開発の外注がほとんど運任せになっている様子を、ソーシャルゲームの「ガチャ」に例えたnote「社会人のための「AIガチャ」入門」は、ソーシャル上でかなり話題になりました。

 既にデータサイエンティストの育成が始まっている会社であれば問題ないでしょうが、ゼロから始めるベンチャー企業は「相当辛い」。なぜなら、データサイエンスについて正しく評価できる人も評価する方法もないからです。「中小企業だとデータや予算が限られるので、すぐ行き詰まってしまう」のが現実のようです。

 AI開発をめぐる「残念な状況」は、なぜ起こるのでしょうか。少し歴史をさかのぼると、ビッグデータ、DMP(※)、ERP(※)など、「全ての問題を解決する魔法の機械と、うまくいかないシステム導入」という歴史は常に繰り返されてきました。

※DMP…Data Management Platformの略。企業が持つ顧客データやマーケティングデータなどを統合的に管理し、マーケティング活動全体を最適化するためのプラットフォーム
※ERP…Enterprise Resources Planningの略。日本語では、「統合基幹業務システム」や「統合業務パッケージ」などと呼ばれている

 マスクドさんは「システムに人が合わせるのか、あるいは人の業務にシステムを合わせるか。そうした考え方の違いなんです」と主張します。

 「システムがパッケージ化されていても、業務フローに合わせてカスタマイズしたいという声は根強くあります。しかし、それには限度がありますし、何億円も追加投資しないといけない。AIも同じで、人がやっていた作業をAIで再現したいという依頼はどこかで無理が生じる。人に合わせてシステムを開発しようとすると、残念な結果になってしまうんです」

 なぜ「人に合わせたシステム開発」が横行するのでしょうか? 本来は仕事のプロセス自体をAIで置き換える必要があるはずですが、実際は「現場の業務知識が欠落した状態でAI導入を進めないといけない」現状があるようです。

 製造業の例を見てみましょう。

 いきなり工場で使うセンサーの専門的な説明をされても、AIベンダー側はすぐに理解できません。業務知識については深い理解があるけれどAIが分からない依頼者、AIには詳しいが業務知識が欠落しているAIベンダーの間に溝があるのです。そのため、仕事のプロセス自体をAIで置き換えることができず、業務フローに合わせてシステムをカスタマイズするような結果になってしまうのです。

 「理想は、業務知識が分かっている現場の人と、AIに詳しくてなおかつ現場の人とコミュニケーションが取れる人がタッグを組んで、最適な仕組みを導入できれば最高です。ですが、そういう取り組みはイケてる内製化成功企業でしかできていません。そもそも、現場一筋30年の熟練者と、ロジカルにプログラミングする人はうまくかみ合わないんですよね」

 こうした問題を解消するために、発注側のエンジニアで「AIを勉強してみよう」と考える人はいるのでしょうか。マスクドさんは「新しいものを取り組んで向上心がある人は、大手メーカーではなくベンチャー企業に行くのではないでしょうか」と述べます。

 「意欲がある人が上申しても、保守的かつ大きな組織では意見が通りにくい。そうすると諦めて別の会社に行ってしまう。私のソーシャル上の知り合いで、からあげさんという方が書かれた『ディープラーニングおじさん』というブログ記事が大変バズりました。あれが理想形ではあるものの、本当にまれという印象です」

 確かに、自分自身に置き換えて考えてみると、45歳や50歳になって今までの知識が全く通用しない領域をゼロベースから勉強できるかと言われれば疑問です。しかし、マスクドさんは「勉強し続ける気概、情熱が大事だ」と強調します。

 「覚えないといけないことは山ほどあります。今はPythonが主流ですが、この先に新しい言語や技術が出てくるかもしれない。常にアップデートし続けないと生き残れないでしょう」

 米国や中国の勢いに押され、「AI後進国」ともされる日本。マスクドさんは、先進国入りするためには「内製化を進めるべき」と考えます。

 「自分のビジネスでAIがどう役に立つかを想像できるだけでも話は変わります。全員がコードを書ける必要はないんです。向き不向きはありますから。そうした努力をしないまま、とりあえずベンダーに丸投げするアウトソーシングはやめた方がいい。70年代の基幹システムやオフコンの頃から「ITが分からない」という人たちの丸投げ根性が、今もずっと続いています。その丸投げ先としてSIerさんが居続けるのも本来は問題です。これは、いよいよ産業構造の話になってしまいます。

 まずは、ITに関する知識のアップデートが大切です。全ての人が技術書や論文を読むべきとは思いません。でも、ある程度の知識は身に付けてほしい」

 「例えば松本さんの書かれた「誤解だらけの人工知能」を読めば、現時点でAIが人間より優れている面や得意分野が限られていると十分に分かります。自分で調べた限りでは、社会人が読むべきAI本はそこまで多くない。noteでも「社会人に役立つ人工知能本三冊しかない説」をまとめましたが、書店で売っている本を読むだけでも違います。

昼寝する人は「出来る人」

 世界の国々の中でも、圧倒的に平均睡眠時間が少ないといわれる日本。そうした中で、「昼寝」に注目が集まっている。昼寝を"業務の一環"と推進する企業が現れ、寝具メーカーもチャンスをうかがっている。

 今秋、「秋の快眠フェア」を行った阪急うめだ本店(大阪市北区)。セミナーを行ったり、机にうつぶせする形で寝ることを想定した枕を並べるなど、昼寝に焦点を当てた「仮眠コーナー」を設けたりした。

 「以前は仕事中にうたた寝している人を見かけると『さぼっている』という認識がありましたが、今は違います。むしろ『出来る人』に変わりつつある」と熱く語るのは、阪急うめだ本店寝装品・ファブリック販売部マネジャーの堀克正さん。

 来店者にも好評で、アイシン精機(愛知県刈谷市)の「ファインレボ」、兵庫県三木市の「モグ」などといった枕を実際に手にとり、バーカウンターで仮眠体験をする人も。大阪府吹田市の会社員、岸本かおるさん(61)は「昼は仕事をしているので、なかなか昼寝をすることが難しいですが、意欲的に取り入れてみたいと思いました」。

 大阪市北区の本社で働く約200人の社員を対象に、昼の休憩時間にコーヒーを飲用し、15分間の昼寝を推奨する「カフェインナップ」を昨年11月より行っているのが、ダイドードリンコ。

 これまでにも、休憩時間は消灯していたが、さらに社員がリラックスできるよう、眠りに誘うヒーリングミュージックが午後0時半〜45分までの15分間、流れる。

 カフェインナップは、自販機営業担当の武田剛士さんの発案から生まれたという。「企業に設置されている自動販売機は、福利厚生の一環。自販機のシェアは各社とも飽和状態です。働き方改革や福利厚生の取り組みとして、コーヒー飲料メーカーとして何ができるかを考えたとき、昼寝をわが社が率先して行うことで、生産性向上を伝えられるのではないか、と考えました」(武田さん)

 社員からは、「細かい計算ミスがなくなった」「午後に眠くならないだけではなく、新たな発想がわき起こることもある」と評価する声が上がっているという。

 寝具メーカーなら、自社製品を使って社員に昼寝を勧めることが「製品開発」になる。西川リビング(大阪市中央区)は、今年6月から、昼食後の15分間、自社製品のおひるねピローを使った「昼寝タイム」を実施、肌触りや反発性など、全社員で昼寝用枕の改善に取り組んだ。

 この結果、8月に発売されたのが昼寝専用枕「こねむり」。柴犬をイメージした「ふんわりしばちゃん」、ウサギの「みみちゃん」、筒状の枕に腕が入る「ねんねにゃんこ」など8種類は、愛着がわくような動物がモチーフに。枕としてだけではなく、普段は椅子の腰当てとしても使えるよう、形や反発性も計算されているという。

 米コーネル大の社会心理学者、ジェームズ・マース氏が提唱している昼食後の仮眠法「パワーナップ」には、三つの約束事があるという。

 (1)時間は15分〜20分弱(2)横にならず基本は座ったままで眠る(3)夜の睡眠を邪魔しないように午後3時までに行う−。こうして昼寝をすることで眠気を解消し、集中力や記憶力がアップ。作業効率を向上させると言われている。

 休日に「寝だめ」をしようという人も少なくないと思われるが、睡眠コンサルタントの友野なおさん(38)は「平日の寝不足を解消するために、週末の寝だめで取り返そうと思う人も多いですが、かえって疲れをため込む原因になる」と指摘。やはり、15分間の昼寝を勧める。

 正しい睡眠は、心臓病や認知症のリスクを下げる効果も期待できるという。友野さん自身、20代のときに、睡眠不足によって体調が悪くなり、重度のアトピー性皮膚炎も重なり、苦しんだ経験がある。そのため外出先であっても昼食後は座ったままで目をつむり、仮眠することで睡眠不足解消を図っているという。

 会社での休憩時間中の「昼寝」への注目は高まりそうだ。自身も昼寝を実践しているダイドードリンコ人事総務部の源隆志・シニアマネジャー(51)は「会社から『昼寝していい』といわれると、罪悪感がなくなって寝やすくなった。昼食を終えて前倒しで仕事で取りかかっても、結局はずるずると眠くなる。短時間の昼寝が、仕事にメリハリをつけてくれると思います」。

2018年10月5日金曜日

「この給料じゃ生活できない!」アジアの優秀人材はもう日本を選ばない

「私も帰国しようかな。このまま日本で働き続けるか、悩んでいるんです」

 朱麗さん(女性、仮名)は新卒採用で都内の有名大手企業に入社した上海出身の元留学生だ。「日本企業は要求が厳しい」と聞いてはいたが、入社後は順風満帆。過大なノルマも残業もほとんどない上に、上司も人格者で人間関係もいい。自らも「こんな恵まれた職場環境なんてないと思う」と喜んでいた。だが、朱さんの喜びは長続きしなかった。

 つい先日、朱さんは上海に一時帰国したときに幼なじみの友人宅を訪問した。友人は夫婦で上海の外資系企業で働いており、その裕福さはマンションの立地や室内の家具からも見て取れた。さらに友人宅には、中国の内陸部出身の「アイさん」がひとりいた。アイさんとはいわゆる「お手伝いさん」のことで、家事の一切をこなしてくれる貴重な働き手であり、共働き家庭には欠かすことのできない存在である。

 ここ数年、上海では「アイさん争奪戦」が激化していることを知っていた朱さんだが、友人からアイさんの月給を聞かされてわが耳を疑った。

「え、月に2万元も渡しているの? それって私の給料よりいいじゃない!」

 1元を16円で換算すると32万円だ。しかも、アイさんの仕事は、朝7時の食料品の買い物以外は「何をして過ごしてもいい」というもの。掃除、洗濯などの家事への要求はほとんどない。高額を支払う理由は、このアイさんには専門学校卒という学歴があるためだ。ゆくゆくは生まれてくる子どもの家庭教師として囲い込んでいるらしい。

 ちなみに筆者も上海在住時にアイさんにお世話になったことがあるが、90年代後半は月500元(当時約8000円前後)でも、この仕事を喜んで引き受けてくれたものだった。

 こんなに楽な仕事でもらえる「32万円の給料」は、朱さんに大きな衝撃を与えた。だが、それにも増す衝撃は、「32万円の給料」を払える幼なじみの財力だった。

 同じ土地の出身で、同じ年齢、語学能力も専門スキルも大きく差がないふたりの女性だが、収入の格差はあまりにも大きい。

「日本企業の給与水準は高くはないと覚悟はしていたけど、格差の大きさに正直混乱しています」と朱さんは言い、こう続けた。

「日本は政策で海外からの優秀な人材を獲得しようとしているけど、この給与水準では人材も集まらないのでは……」

初任給40万円の中国企業
 顧佳さん(女性・仮名)もまた大学院留学を経て、最近日本の金融業界に就職をしたひとりだ。大学時代には日本語を徹底的に身につけたが、さらなるスキルアップのために、アフターファイブはビジネス英語を学んだ。顧さんはその語学学校で、日本に拠点を置く中国企業に派遣された中国人駐在員と出会った。

「その中国人は、中国屈指の大学で理系に進んだ女性でした。数年前に中国の大手通信機器メーカーに就職して、当時、2万5000元の初任給をもらっていたと言いました」

 深センに拠点を置くこの企業は、2017年の「深セン企業トップ10」(売上高、税収、純利益などの総合力評価)で第2位の有名メーカーだ。2万5000元といえば日本円で約40万円だが、その初任給が物語るのは、「本気の人材獲得」だ。

 その金額に顧さんの気持ちが揺らいだことは、察するにあまりある。だが、顧さんが指摘したのは、次のようなことだった。

「優れた人材は、いい給料でよりよい企業に就職していきます。こうした企業は欧米系の企業だったり、中国企業だったりするわけです。逆に言えば、日本企業に就職するのは、"残っている人材"だと言えませんか?」

20万円の給料では何も消費できない
 中国人のみならず、ベトナム人からも疑問の声が上がる。昨今、日本ではベトナム出身のエンジニアが引く手あまただ。日本企業への「派遣」というルートを経て日本で就労するケースが増えている。だが、在日ベトナム人の間では、「現在の相場の賃金では、いつまで派遣に応じられるかわからない」とする懸念の声が上がっている。

 1年間の日本語学習を経て日本の大学院に進学後、日本で起業したベトナム出身のグエン・ホアン・ロンさん(男性・仮名)は、中越ビジネスのマッチングを行っている。そのグエンさんがこう話す。

「ベトナム人材を『派遣』という形で企業に送り込んだ場合、ベトナム人エンジニアの月給の相場は額面で約20万円です。今でこそ、ベトナムやバングラデシュのエンジニアはこの金額を提示されれば喜んで日本に来るでしょうが、それも一時的だと考えます。そもそも、月給20万円をもらっても日本では何も『消費』することができないのですから」

 税引き後、手元に残るのは十数万円足らず。そこから家賃や光熱費を引いたら数万円しか残らない。その生活環境は想像以上にカツカツで、とてもじゃないが日本では「欲しいものを手に入れる」という豊かな消費生活には至らないというわけだ。

 しかも、働く環境はさらにプレッシャーが大きい。「きつい、賃金安い、危険はないが残業がある」——これがベトナム人エンジニアの日本の労働環境に対する率直な印象だ。「ひとたび日本の企業に入れば、"一生入力だけ行うプログラマー"で終わってしまう」(グエンさん)という危惧も抱えている。

日本では生きていけない
 冒頭で紹介した朱さんは、「近年、中国への帰国を選択する友人が少なくない」と明かす。日本の大学を出たとはいえ、日本で就職をせずに帰国するのは、「日本の給与水準では生きていけない」からだと朱さんは断言する。

 それでも日本で頑張っている中国人がいるとすれば、「それは、日本人の夫を持つなどして、家計的にも比較的ゆとりのある世帯だから」と朱さんは説明する。

 一昨年、都内である記者懇談会があった。「日本は働きたい国ですか」というテーマで、日本の大学を卒業した複数のアジア人が登壇した。筆者は、中央アジア出身の元女子留学生に「日本はお金を稼げる国だと思いますか」と質問した。

 彼女は「いい質問ですね!」と反応しながらも、はっきりとした回答を避けた。おそらく主催者側の体面を慮ってのことだったのだろうが、振り返ればあのときの答えはやはり「ノー」だったのではないだろうか。

 外国人の働き手が増える昨今だが、これを「日本に魅力があるからだ」と解釈するのは、いささか早計のようだ。

トヨタとソフトバンク、危機感が溶かした「水と油」

トヨタ自動車<7203.T>とソフトバンクの2大企業が、モビリティサービスの構築に向けて初めて本格的に手を組んだ。

巨大プラットフォーマー狙うソフトバンク、トヨタ提携で新たな布石

自動車は「コモディティ(単なる商品)」になると言ってはばからないソフトバンクグループ<9984.T>の孫正義社長。「愛車」と呼んでその価値にこだわるトヨタの豊田章男社長。「水と油」にも例えられる両社が歩み寄った背景には、大きく変化する自動車業界での生き残りを目指す豊田社長の危機感があった。

<筆頭株主はすべてソフトバンク>

「未来の種を見抜く先見性、目利きの力がある」——。ソフトバンクについて、豊田社長は4日の提携会見でこう評価し、トヨタの未来に「必要不可欠な会社になっていた」と指摘した。世界のトヨタにそこまで言わしめた孫社長は「王者中の王者が気軽に心を開いてくれた」と応じた。

「愛車」という表現を多用する豊田社長は、今日の会見でも「数ある工業製品のなかで『愛』がつくのは車だけ。どんなAI(人工知能)が搭載されても、移動手段としてだけではなく、エモーショナルな存在であり続けることにこだわりたい」と付け加え、未来のモビリティ社会に馳せる自らの思いを披露した。

今年1月に「車をつくる会社」から、移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティ・カンパニー」への転換をめざすと宣言したトヨタ。その布石を打つため、世界の配車サービス大手に対する出資や提携に次々と動いてきた。

トヨタは2016年に米ウーバーに出資したほか、今年1月、商用電気自動車(EV)「イーパレット」の展開でもウーバー、中国の滴滴出行などとも提携。今年6月には東南アジア最大手のグラブに出資した。

しかし、提携した各社はすべてソフトバンクが筆頭株主になっている。ソフトバンクとの歩み寄りなしに自社の未来図を描きにくいという現実がトヨタの前に立ちふさがっていた。

トヨタの友山茂樹副社長によると、今回の提携はトヨタからソフトバンクに声をかけ、「両社の若者が中心となり、半年前から検討を進めてきた」。「交通事故をゼロにしたい」という将来ビジョンが両社共通だったという。

提携を持ちかけた経緯をみると、新市場の展開力に悩むトヨタの焦りもにじむ。会見のライブ中継を視聴していた他の自動車メーカー幹部からは「トヨタ以外の自動車メーカーとソフトバンクが深い仲になる前に、少しでも距離を縮め、仲間に取り込んでおこうという印象だった」との声もあった。

一方のソフトバンク。今年5月、自社の投資ファンドを通じて米ゼネラル・モーターズ(GM)<GM.N>傘下の自動運転車部門GMクルーズに出資し、最終的に約2割の株式を握ると発表しており、16年からはホンダ<7267.T>ともAI(人工知能)分野の共同研究で協力している。ソフトバンクにとって、トヨタは同サービス分野での数ある提携先のひとつに過ぎない。

<ソフトバンクに主導権との見方も>

自動車業界には、両社が18年度中に設立する共同出資会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」の出資比率にも驚きが広がった。トヨタが49.75%、ソフトバンクが50.25%。わずか0.5%だが、ソフトバンクのほうが多かったためだ。

SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは「通信ビジネスのノウハウを活かすことになるので、ソフトバンクが主導権を握ってもおかしくはないが、これまでのトヨタを考えると相手に主導権を渡したのは驚きだ」という。

「自動車はひとつの部品に過ぎない。むしろプラットフォームのほうがより大きな価値を持つ」。今年2月の決算会見でこう強調してきた孫社長。今日の会見では、未来の車は「半導体の塊になる」とし、「自動車のリアルな世界から歩いてきたトヨタといよいよ交わるときがきた。時代が両社を引き合わせた」と自らの戦略が新たな局面に来たことを強調した。

2018年10月2日火曜日

日経平均、連日のバブル崩壊後高値更新 円安で企業業績に期待

東京株式市場で日経平均は続伸。連日で取引時間中のバブル崩壊後高値を更新した。ドル/円が113円後半とドル高/円安方向に振れ、企業業績への期待感が出ている。終値ベースでも今年1月23日のバブル崩壊後高値を上回り、26年10カ月ぶりの高値を付けた。

TOPIXは小幅続伸。セクター別では鉱業、卸売、繊維などが堅調に推移。半面、陸運、空運、非鉄金属などが軟調だった。

朝方発表された9月日銀短観は大企業・製造業の景況感が3四半期連続で悪化したものの、2018年度の想定為替レートは107.40円と実勢よりも円高水準だった。企業業績の上方修正への期待も徐々に高まっている。

国内投資家は短期的な過熱感を警戒している向きが多く、取引の主体は海外勢との見方が出ている。年初からの売り方の買い戻しに加え、「海外のリスク・パリティ・ファンドがポートフォリオの調整で日本株の組み入れ比率を上げる方向で動いているのではないか」(東洋証券のストラテジスト、大塚竜太氏)との指摘もあった。

日経平均は指数寄与度の高い値がさ株が堅調に推移。ファーストリテイリング(9983.T)が1銘柄で約34円、ファナック(6954.T)が約11円、東京エレクトロン(8035.T)が約13円、それぞれ指数を押し上げる要因となった。

米国防長官、米中関係「悪化していない」 安保協議中止受け

マティス米国防長官は1日、米中関係が悪化しているとはみていないとの見解を示した。米政府高官は9月30日、中国が10月に予定されていたマティス米国防長官との安全保障に関する協議を中止したと明らかにした。新たな日程については不明。

マティス氏は記者団に「国同士の関係は緊張することもあるが、ニューヨークでの先週の協議などに基づくと、関係が悪化していると思わない」とし、関係を維持していく考えを示した。

中国艦、米イージス艦に異常接近 南シナ海で、米は批判

 米イージス駆逐艦が9月30日に中国が実効支配する南シナ海・南沙(スプラトリー)諸島付近を航行した際、中国軍駆逐艦が米駆逐艦の船首から45ヤード(約41メートル)以内の距離まで異常接近したことが分かった。

 米太平洋艦隊が1日、朝日新聞の取材に明らかにした。米駆逐艦は航行の自由作戦中だった。米太平洋艦隊は「危険であり、未熟な操縦」と批判している。

 米太平洋艦隊のクリステンセン副報道官によると、米イージス駆逐艦ディケーターが9月30日午前8時半ごろ(現地時間)、南シナ海のガベン礁付近を航行中、中国軍駆逐艦が接近。中国軍駆逐艦はディケーターに対し、そのエリアを離れるように警告を発しながら、攻撃的な操縦を繰り返した。ディケーターが衝突回避の操縦をしたとき、船首から中国軍駆逐艦の距離は45ヤード以内だったという。

 米CNNによると、ディケーターは同日、ガベン礁などスプラトリー諸島の12カイリ(約22キロ)以内を航行していたという。

中国で騒動拡大 ネット金融破綻で抗議…拘束者も

 中国各地でネット金融の被害を訴える人たちの一斉抗議活動が呼び掛けられました。参加者が連行されるなど騒動が拡大しています。

 中国では「P2P」という投資総額が日本円で20兆円を超えるともいわれるネット金融の経営破綻が相次いでいます。そのため、出資金の返還を求める利用者たちが中国全土で一斉に抗議活動を呼び掛けて、上海の中心部では解散を命じる警察と衝突して次々と連行される騒ぎとなりました。北京でも抗議活動が予定されていて、集合場所に配置された警察官が訪れた人たちに職務質問を繰り返していました。北京では8月にも国営テレビ局の前などで抗議が行われていて、警戒が一層強まっています。

2018年9月25日火曜日

専門学校留学生100人超、在留認められず退学

 大阪市内の観光系専門学校で、4月に入学したベトナム人留学生ら100人以上が大阪入国管理局に在留資格の更新を認められず、今夏、退学になっていたことがわかった。学校は昨年から、定員を大幅超過して留学生を入学させているとして大阪府から是正を求められていたが、応じておらず、入国管理局も悪質と判断したとみられる。学生は9割以上が外国人で、府は、授業料収入を目的にずさんな運営をしていたとみて、留学生の受け入れ抑制を指導した。
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 退学させられた留学生は別の専門学校に再入学し、在留資格が認められたケースもあるが、数十人が帰国を余儀なくされたという。一部のベトナム人が学校側に慰謝料などを求め、近く大阪地裁に提訴する。
 学校は天王寺区の「日中文化芸術専門学校」で2015年に開校。学費は年約80万円で、中国語の「観光・通訳ガイド」など2年間のコースがある。

関税エスカレート警戒=25%に上がれば大打撃-米経済

 中国の知的財産権侵害に対抗したトランプ米政権による第3弾の制裁関税の対象は、家電や家具、食料品など広範な品目に及ぶ。関税引き上げに伴うコスト上昇が価格に転嫁されれば、米国の消費者にとって負担増となる。年末商戦に配慮し、当初の関税率を10%にとどめたが、中国との対立が解けず、来年1月1日に25%に上げられれば、個人消費の低迷など米経済に大きな打撃となりそうだ。


 「間もなく米国の消費者は、表示価格が上がり、家計が苦しくなったと気付くだろう」。全米小売業協会(NRF)のシェイ会長は、米政権による第3弾の制裁発動をこう非難する。NRFは関税が10%上乗せされることで、家具の小売価格が2%、旅行用品が4.8%上がると予想。小売業経営者協会(RILA)は、ガスグリルや旅行かばん、マットレスなどは輸入の8割以上を中国に依存し、代替品の確保が難しいと訴える。

 追加関税が当初10%に抑えられ、米経済全体に対する短期的な影響は「軽微」との見方もある。米金融大手バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、10%の関税引き上げによる米家計の可処分所得の減少は0.12%にとどまると試算。ただ、上げ幅が25%に拡大すれば「米企業への打撃は大きく、投資計画の凍結などの大きなショックを招く」と警告する。

 ウォルマートなど小売り大手は、年末商戦のための商品調達をほぼ終えたとされるが、「貿易戦争」の長期化は今後、供給網の変更など企業に戦略の見直しを迫る。北米で約1万5000店舗を展開するディスカウントストア大手ダラー・ツリーのフィルビン最高経営責任者(CEO)は「仕入れ先を中国から変更する供給網の再構築には2~4年かかり、消費者はその間、不利益を被る」と困惑している。

“変態セブン”が生まれた背景に、地獄のドミナント戦略

 最初に耳にしたとき、変態が7人いるのかと勘違いした人も多いのではないか。

 栃木県内のセブン-イレブン(以下、セブン)で、破天荒すぎる言動を繰り返していたオーナー店長に、地域の方たちが付けた「変態セブン」という斬新なあだ名のことだ。

 この一度聞いたら忘れられないパワーワードが登場したきっかけは、女性客に対して、ズボンのチャックから指を出し、みだらな言葉を繰り返す動画が公開され、マスコミの取材が現地に殺到したことだ。

 その中では、耳を疑うような証言も出ている。

 今から7~8年前、ミニスカートを着用していた女性が買い物をしていたところ、オーナー店長が細長いパンを自分の下半身に当てて、「ねえ、僕と遊んでよ。遊びたいからミニスカート履いてるんでしょ」とそのパンを女性の膝に押し当ててきた。そこで、この女性の夫がセブン本部に苦情を申し立てたところ、オーナー店長は「謹慎」に追い込まれたという。つまり、セブン本部としても、変態セブンのことをかなり以前から認識していたのだ。

 セブンには「一人あたり7、8店舗を担当し、オーナー様と綿密なコミュニケーション」(同社Webサイト)をとるオペレーション・フィールド・カウンセラー(以下OFC)という店舗経営相談員がいるのだが、なぜこの問題を放置していたのかという疑問もある。

 ただ、個人的には、今回の問題は「オーナーとOFCを叩いて終了」という話ではない気もしている。

なぜ変態セブンはあそこまで狂ってしまったのか。なぜOFCは彼を放置していたのか。これらの謎をつきつめていくと、ある組織的な「病」が見えてくるからだ。

 それは、「ドミナント戦略」だ。

●セブンの戦略がオーナーたちを追い詰める

 ドミナント戦略とは、特定地域に出店を集中させて商圏内を独占状態にすることだ。ブランドの認知度と顧客のロイヤルティーが高まることに加え、配送面や店舗管理面にもメリットがあって、これを進めれば地域内の勢力図をオセロゲームのように一気に塗り替えることができる。セブンの出店戦略の根幹をなすものだ。

 実際、セブンの公式Webサイトの「店舗検索」を見ると、今回問題となった店舗から2キロ強の圏内には、10店舗がひしめきあっている。もっとも近い店舗は直線で700メートルほどだ。ちなみに、同じ圏内でファミリーマートは3店舗、ローソンは4店舗しかない。

 確かに、そのドミなんちゃらのせいなのか、ウチの近所でもセブンがたくさんできているけれど、それが変態セブンとは何も関係ないだろと首をかしげる人もいるだろうが、まったく関係ないとは言い難い。

 このドミナント戦略が、セブンオーナーたちを経済的にも、精神的にも限界に追いつめているのではないかという指摘があるからだ。

 日本フランチャイズチェーン協会によれば、コンビニの店舗数は2016年末時点で5万4501店(前年比2.8%増)。この10年で約1万4000店増えている。こんな厳しい競争環境の中で、隣近所にポコポコとセブンが建設されていけば、「共倒れ」のリスクが増すのは言うまでもない。たたでさえ、廃棄弁当が店の負担となる「コンビニ会計」で苦しんでいるところにダブルパンチとなっている。

 また、同地域で同じ店ができれば労働力の奪い合いになるのは自明の理だろう。バイトが確保できなければ、経営者なのにブラック企業の一兵卒のように、心身が壊れるまで働き続けなくてはいけないのだ。

●終わりの見えない闘いの中で

 そこへ加えてこのドミナント戦略が、オーナーたちにとって恐ろしいのは、ライバルの出店も加速させることだ。商圏を独占しようというセブンの動きを、ライバルもただ指をくわえて見ているわけにはいかない。よく競合コンビニが仲良く並んでいる風景を見かけると思うが、あれはドミナントに「くさび」を打ち込んでいるのだ。

 FC本部からすれば店舗は「陣取りゲーム」の「駒」のようなものなので、どこかでドミナントの動きがあれば、そこへわっと敵味方の「駒」が集められる。結果、光に寄せ集められる虫のように、ライバル店やセブンオーナー仲間が一堂に介して、誰が生き残れるかというコテコテのレッドオーシャンが繰り広げられるというわけだ。

 このような"ドミナント地獄"にハマって、心身ともに疲弊しているセブンオーナーは少なくない。そして、動画での、あの能天気そうな立ち振る舞いとまったく結びつかないが、変態セブンも人知れずこの地獄の中でおびえ、悩んでいた可能性があるのだ。

 先ほど、件の店舗の2キロ強圏内には10のセブンがひしめき合っていると述べたが、実はここまで増えてきたのはこの数年のことだ。まず16年2月、直線で700メートルほどの場所に新規店舗がオープン。ほどなく、変態セブンの店舗もリニューアルオープン。翌17年8月には直線でおよそ1.7キロのところにも新規店舗ができている。

 このようにセブンが商圏を圧倒しようという動きがあれば、ライバルも当然動く。昨年5月には店からおよそ200メートルのところにファミリーマートが出店。今年1月には約500メートル離れたロケーションにローソンがオープンしている。

 つまり、変態セブンは2年半前くらいから、セブンとライバルが織りなす「ドミナント地獄の真っ只中に放り込まれていた」状況だったのだ。

 コンビニオーナーが最も恐れるのは、隣近所にコンビニがオープンすることだというのは言うまでもない。しかも、ライバルだけではなく、「仲間」まで自分のテリトリーを侵しにやって来るのだ。変態セブンが、人知れず孤独と恐怖に襲われていたのは間違いない。

 だから、チャックから指を出したり、わいせつな言葉を投げかけたりするのは大目に見ろ、などと言いたい訳ではない。この終わりの見えない闘いの中で、オーナー店長は「モラル」や「善悪の判断」が壊れてしまったのではないか、という可能性を申し上げているのだ。

●コンビニのフランチャイズシステムのひずみ

 分かりやすいのが、大阪府のファミリーマート2店舗かけ持ちで、1日15時間労働をして亡くなった男性の遺族が、本部と店舗オーナーに損害賠償を求めて訴えた事件だ。16年に和解が成立したが、注目すべきはこのブラック環境に追いやられた男性のため、店の手伝いをした妻と長女のこの言葉だ。

 「時間に追われて仕事をして、寝たと思ったらまた仕事。思考できなくなった」(産経WEST 2016年12月29日)

 24時間の「便利さ」を当たり前のように提供し、さらに質の高い接客までが求められるコンビニで、本気でそれを実現しようと思ったら、やらなくてはいけない仕事は際限がない。そんなハードワークが人手不足でブラック化すれば、人間が「壊れる」のは当然なのだ。

 ならば、わずか2年あまりで隣近所に次々とコンビニができて、心身共に追いつめられたオーナー店長が、常軌を逸した「奇行」に走ることがあってもおかしくないのではないか。

 このようなドミナント地獄に象徴される、コンビニのフランチャイズシステムのひずみが、そこで働く者たちの人間性を崩壊させることは、何も筆者だけが言っていることではなく、さまざまな元オーナーやFC本部にお勤めだった方たちも認めていることだ。

 例えば、土屋トカチ監督の『コンビニの秘密 ―便利で快適な暮らしの裏で』というドキュメンタリー映画がある。タイトルの通りに、我々が享受している「便利さ」が何を犠牲にして成り立っているのかが非常によく分かる内容なのだが、そこで興味深いのは、作品中に大手コンビニの法務部に勤めていた男性が登場し、フランチャイズシステムについてこんなことをおっしゃっていることだ。

なぜ変態セブンは誕生したのか(写真提供:ゲッティイメージズ)© ITmedia ビジネスオンライン なぜ変態セブンは誕生したのか(写真提供:ゲッティイメージズ)
 「一言で言うと、奴隷制度とか、人身御供システム」

 どきつい表現だと思うが、実は見事に本質を突いていることが、先ほどのファミマのケースをみれば分かる。

 8カ月で4日しか休みがもらえずなくなった男性は、幾度となくオーナーや本部に自分の窮状を訴えていたが、返ってきたのはこんな血も涙もない対応だった。

 『オーナーは「自分は病身なのにこんなに働いている。もっと頑張れ」ととりつく島もなく、本部から派遣されるスーパーバイザーも改善策を講じなかったという』(同上)

●組織やビジネスモデルの危機

 なぜこんなことが平気でできたのかというと、彼らが男性のことを無意識に「奴隷以下」の扱いしていたからだ。FC本部やエリアマネージャーにとって、コンビニオーナーは「頑張れ、頑張れ」と尻を叩く「奴隷」である。ならば、その下で働く従業員がどんな存在だったのかは説明の必要もあるまい。

 このようにフランチャイズシステムを「奴隷制度」だと捉えると、変態セブンが長年放置されてきたことも説明がつく。本部にとってセブンオーナーという「奴隷」に求めるのは、ドミナント戦略の「駒」として自分の持ち場をしっかりと死守してくれることだ。それさえやってくれていれば、「奇行」や「セクハラ」のクレームが多少あっても、それほど大きな問題ではなかったのではないか。

 企業の危機にアドバイスをするという仕事柄、変態セブンのようにモラルが壊れてしまった人や、その類の話はよく耳にすることが多い。これまでの経験では、こういう人が現場に登場するときは、組織やビジネスモデルが退っ引きならない危機が迫っているという印象だ。

 例えば、かつて隆盛を極めたサラ金大手・武富士では崩壊直前、現場の人間が債務者リストを持ち出すというモラルハザートが横行した。最近でも「宅配クライシス」と大騒ぎになる前は、佐川急便のドライバーが突然ブチ切れて、運んでいた荷物を執拗(しつよう)に蹴り飛ばす衝撃映像が流れた。

 組織やビジネスモデルの危機は、現場の壊れっぷりから分かるものなのだ。

 セブンも少し前、店員が女性客に対して「温めますか?」と聞いたところ、「うん」と答えたことが態度が悪いと激高し、「お願いしますとか言うのが当たり前だろうが」と説教をする動画が公開され、大きな話題となった。

 それはお店の人をわざと怒らせておもしろ動画をあげる風潮が、みたいなことを言う人もいる。確かにそういうくだらないことをする人たちがいるのも事実だが、コンビニの現場が危機的状況にあることは、業界の一角をなすファミマの澤田貴司社長も認めている。

●「壊滅的な危機の前兆」と捉えるべき

 就任前、アルバイト従業員と同じように現場に入って、実際に働いた澤田社長はこんなことをおっしゃっている。

 「痛感したのが、現場の負担が危機的なまでに高まっている現実です。もう染み渡るように分かりますよね。特に人手不足は本当に深刻です」(日経ビジネス 2017年11月7日)

 コンビニ業界における現場の負担が危機的な状況が高まる中で現れた変態セブン。これを「世の中にはとんでもないバカがいたね」という話で済ませるのか、それとも「壊滅的な危機の前兆」と捉えるべきか。

 第2、第3の変態セブンが登場する日も、そう遠くないのではないか。