2018年10月9日火曜日

昼寝する人は「出来る人」

 世界の国々の中でも、圧倒的に平均睡眠時間が少ないといわれる日本。そうした中で、「昼寝」に注目が集まっている。昼寝を"業務の一環"と推進する企業が現れ、寝具メーカーもチャンスをうかがっている。

 今秋、「秋の快眠フェア」を行った阪急うめだ本店(大阪市北区)。セミナーを行ったり、机にうつぶせする形で寝ることを想定した枕を並べるなど、昼寝に焦点を当てた「仮眠コーナー」を設けたりした。

 「以前は仕事中にうたた寝している人を見かけると『さぼっている』という認識がありましたが、今は違います。むしろ『出来る人』に変わりつつある」と熱く語るのは、阪急うめだ本店寝装品・ファブリック販売部マネジャーの堀克正さん。

 来店者にも好評で、アイシン精機(愛知県刈谷市)の「ファインレボ」、兵庫県三木市の「モグ」などといった枕を実際に手にとり、バーカウンターで仮眠体験をする人も。大阪府吹田市の会社員、岸本かおるさん(61)は「昼は仕事をしているので、なかなか昼寝をすることが難しいですが、意欲的に取り入れてみたいと思いました」。

 大阪市北区の本社で働く約200人の社員を対象に、昼の休憩時間にコーヒーを飲用し、15分間の昼寝を推奨する「カフェインナップ」を昨年11月より行っているのが、ダイドードリンコ。

 これまでにも、休憩時間は消灯していたが、さらに社員がリラックスできるよう、眠りに誘うヒーリングミュージックが午後0時半〜45分までの15分間、流れる。

 カフェインナップは、自販機営業担当の武田剛士さんの発案から生まれたという。「企業に設置されている自動販売機は、福利厚生の一環。自販機のシェアは各社とも飽和状態です。働き方改革や福利厚生の取り組みとして、コーヒー飲料メーカーとして何ができるかを考えたとき、昼寝をわが社が率先して行うことで、生産性向上を伝えられるのではないか、と考えました」(武田さん)

 社員からは、「細かい計算ミスがなくなった」「午後に眠くならないだけではなく、新たな発想がわき起こることもある」と評価する声が上がっているという。

 寝具メーカーなら、自社製品を使って社員に昼寝を勧めることが「製品開発」になる。西川リビング(大阪市中央区)は、今年6月から、昼食後の15分間、自社製品のおひるねピローを使った「昼寝タイム」を実施、肌触りや反発性など、全社員で昼寝用枕の改善に取り組んだ。

 この結果、8月に発売されたのが昼寝専用枕「こねむり」。柴犬をイメージした「ふんわりしばちゃん」、ウサギの「みみちゃん」、筒状の枕に腕が入る「ねんねにゃんこ」など8種類は、愛着がわくような動物がモチーフに。枕としてだけではなく、普段は椅子の腰当てとしても使えるよう、形や反発性も計算されているという。

 米コーネル大の社会心理学者、ジェームズ・マース氏が提唱している昼食後の仮眠法「パワーナップ」には、三つの約束事があるという。

 (1)時間は15分〜20分弱(2)横にならず基本は座ったままで眠る(3)夜の睡眠を邪魔しないように午後3時までに行う−。こうして昼寝をすることで眠気を解消し、集中力や記憶力がアップ。作業効率を向上させると言われている。

 休日に「寝だめ」をしようという人も少なくないと思われるが、睡眠コンサルタントの友野なおさん(38)は「平日の寝不足を解消するために、週末の寝だめで取り返そうと思う人も多いですが、かえって疲れをため込む原因になる」と指摘。やはり、15分間の昼寝を勧める。

 正しい睡眠は、心臓病や認知症のリスクを下げる効果も期待できるという。友野さん自身、20代のときに、睡眠不足によって体調が悪くなり、重度のアトピー性皮膚炎も重なり、苦しんだ経験がある。そのため外出先であっても昼食後は座ったままで目をつむり、仮眠することで睡眠不足解消を図っているという。

 会社での休憩時間中の「昼寝」への注目は高まりそうだ。自身も昼寝を実践しているダイドードリンコ人事総務部の源隆志・シニアマネジャー(51)は「会社から『昼寝していい』といわれると、罪悪感がなくなって寝やすくなった。昼食を終えて前倒しで仕事で取りかかっても、結局はずるずると眠くなる。短時間の昼寝が、仕事にメリハリをつけてくれると思います」。

0 件のコメント:

コメントを投稿