2018年2月14日水曜日

AI時代に最も求められるスキルは

男女で分かれたAI・ロボット技術への期待度

 日本能率協会が先頃、ビジネスパーソンを対象にAIやロボット技術への期待や不安、AI時代に求められるスキルを聞いた調査結果を公表した。それによると、期待と不安が拮抗しており、求められるスキルとして人間同士の「コミュニケーション力」を挙げる声が目立った。

 「ビジネスパーソン1000人調査/AI・ロボット編」と題したこの調査は、20179月から10月にかけての10日間、全国の2069歳までの正規・非正規雇用の就業者1000人からインターネットを通じて回答を得た。

 まず、AI・ロボット技術への期待については、男女を合わせた全体として、「とても期待している」13.3%と「やや期待している」34.8%の合計が48.1%、「あまり期待していない」39.8%と「まったく期待していない」12.1%の合計が51.9%となり、期待していない人が期待している人をやや上回る結果となった。

 図1が、その性別および年代別の割合を示している。性別でみると、「期待している」と回答した人は、男性が53.0%、女性が42.1%と、10ポイント以上の差が見られた。

 
1 設問:AI・ロボット技術が進むことに対して、どの程度期待しているか(単一回答、出典:日本能率協会「ビジネスパーソン1000人調査/AI・ロボット編」)

 また、年代別でみると、2060代は「期待している」が過半数であるのに対し、304050代は「期待している」が半数に達していないとの結果が明らかになった。

 では、具体的にどのような期待を抱いているのか。仕事面では図2に示すように、「仕事の効率化が進む」が全体で30.7%と最も高く、以下、「省力化・省人化が進む」28.0%、「ヒューマンエラーを解消し、品質が向上する」23.7%などと続いた。

 
2 設問:AI・ロボット技術が進むことに対して、仕事に関して、具体的に期待していること(複数回答、出典:日本能率協会「ビジネスパーソン1000人調査/AI・ロボット編」)

 また、日常生活面では、「自動運転により、移動がより安全で便利になる」が全体で37.8%と4割近くを占め、以下、「家電製品のAI・ロボット化が進み、家事負担が減る」30.1%、「AIによる医療診断、ロボット手術など医療がより発達する」29.8%、「監視カメラと顔照合システムによる犯罪予防や捜査支援が可能になる」26.8%などと続いた。

最も求められるスキルは「コミュニケーション力」

 一方、AI・ロボット技術への不安については全体として、「とても不安に感じる」10.4%と「やや不安に感じる」42.7%の合計が53.1%、「あまり不安を感じない」37.3%と「まったく不安は感じない」9.6%の合計が46.9%となり、不安を感じる人が感じない人を6ポイントほど上回る結果となった。

 図3が、その性別および年代別の割合を示している。性別でみると、「不安に感じる」と回答した人は、男性が49.7%、女性が57.3%と、8ポイント近い差が見られた。

 
3 設問:AI・ロボット技術が進むことに対して、どの程度不安を感じているか(単一回答、出典:日本能率協会「ビジネスパーソン1000人調査/AI・ロボット編」)

 また、年代別でみると、3040代は他の年代に比べて「不安に感じる」割合が高く、とりわけ40代では「とても」と「やや」を合わせて61.7%と、6割を超えた結果が明らかになった。

 では、具体的にどのような不安を抱いているのか。仕事面では図4に示すように、「システムエラーによる事故や混乱が生じる」が全体で35.7%と最も高く、以下、「AIやロボットに自分の仕事を奪われる」27.2%、「投資にお金が掛かる」22.3%などと続いた。

 
4 設問:AI・ロボット技術が進むことに対して、仕事に関して、具体的に不安を感じていること(複数回答、出典:日本能率協会「ビジネスパーソン1000人調査/AI・ロボット編」)

 また、日常生活面では、「人間が退化する」と「失業者が増え、経済が悪化する」がともに全体で34.6%でトップとなり、以下、「人と人の触れ合い・コミュニケーションが減る」29.9%、「AI・ロボットが暴走し、人間の脅威になる」22.7%、「AI・ロボットに監視され、プライバシーがおびやかされる」15.9%などと続いた。

 そして、AI時代においてビジネスパーソンに求められるスキル・能力を聞いたところ、図5に示すように、「コミュニケーション力」が全体で40.7%と最も高く、とくに女性は47.6%と半数近くに上る結果となった。以下、「創造力」30.3%、「ITスキル」24.9%、「協調性」21.3%、「情報収集力」20.0%などと続いた。

 
5 設問:AI時代に、ビジネスパーソンに求められるスキル・能力は何だと思うか(複数回答、出典:日本能率協会「ビジネスパーソン1000人調査/AI・ロボット編」)

 この結果について、日本能率協会の曽根原幹人 理事・KAIKAセンター長は「AI・ロボット技術を有効に活用するには、多様な組織や価値観を調整、説得、取りまとめるといったことが必要となる。AI時代だからこそ、一層コミュニケーション力に磨きをかける必要があるといえる」と語った。

 これからの時代はフィジカル面や情報処理能力において、AI・ロボットが人間をますます上回っていくだろう。ただ、大事なのは人間とAI・ロボットの優劣を競うことではない。図5の結果を踏まえて言うならば、人間ならではのコミュニケーション力や創造力と、AI・ロボットが得意とする正確性を組み合わせながら未来を切り開いていくことにあるのではないか。

 もう1つ述べておきたいのは、こうした調査結果などを通じて、人間にしかできないことは何か、さらに言えば、人間の尊厳とは何かを、考える機会をもっと増やしていくことが大事なのではないか。

 

2018年2月13日火曜日

仮想通貨と金融システム(十字路)

 仮想通貨交換業者コインチェックから580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出したことが話題になっている。仮想通貨は、特定の管理者をおかず、参加者が共同管理するインターネット上のデジタル通貨として注目される。一方、管理・取引インフラの脆弱性や価格変動率の高さなど様々な問題も指摘されている。10年前には存在しなかった仮想貨幣が、暗号化技術の進歩があったにせよ、短期間のうちに存在感を高めている背景はどこにあるのだろうか。

 お金がお金であるゆえんは、「皆がお金として認めるか否か」という受容性にある。2009年に登場した「ビットコイン」を筆頭に、多種多様な仮想通貨が急速に広まったのは決済や送金費用が安い、世界中で両替することなくどこでも使えるといった利便性にある。そして発行上限が限られているため、インフレなど価値が減価しにくい、自国通貨の不安定要因から分離できるといった価値の保全機能、さらには投機的な魅力なども相まって受容範囲が広がってきたといえよう。

 しかし、個人的にはそれだけが理由とは思えない。国の制度の枠組みの中にある従来の金融システムとは全く異なる、自律的で多様なビジネスへの拡張性を秘めた金融インフラを、いわば普通の人たちが共創する取り組みへの期待感が底流にあると推察する。

 政府が信用の裏付けとなって中央銀行が発行する法定通貨が、お金の絶対的地位を築いた時期は、3000年ともいわれるお金の歴史かれみればごくわずかの期間にすぎない。お金は時代によってかたちを変えてきた。この10年の仮想通貨のうねりは、中央集権的に力を持つ者が独占管理する金融システム、その金融が中心的な役割を担う経済システムの変化を示唆する潮目ではないかと感じている。

シェアハウス投資、融資資料の改ざん多発 預金額水増し

 会社員らが投資目的で建てたシェアハウスで約束された賃料が払われなくなった問題で、融資関係資料の改ざんなどの不正が多発していたことがわかった。預金額の水増しなどで信用力を上げ、多額の融資を受けやすくしたとみられる。融資の多くは地方銀行のスルガ銀行(静岡県沼津市)が行っていた。

 問題になったのは、首都圏を中心に急拡大した「シェアハウス投資」。トイレなどが共用のシェアハウスで会社員らが1棟丸ごとオーナーになる。長期の賃料収入を約束する「サブリース」で勧誘され、副収入目当ての会社員らが1棟1億円超を借りて建てる例が多い。不動産業者らは土地紹介や建築請負、入居者募集なども担う。だが、800人超が賃料が払われないトラブルに巻き込まれている。顧客が多い不動産会社スマートデイズ(東京)は1月から約700人への支払いを停止した。多くはスルガ銀でお金を借りていた。

 シェアハウス投資では、不動産会社と提携する数十社の不動産仲介業者が窓口の場合が多い。会社員らは融資を受ける際、仲介業者に預金通帳の写しなどを渡し、銀行との手続きを一任。ところが一部の融資で書類が改ざんされていた。

 預金残高を10倍以上に膨らませたり、業者に多額の頭金を振り込んだりしたように書き換えた例もある。多額の預金や頭金の支払い能力があるように見せかけ、融資を引き出しやすくした可能性がある。

 シェアハウス賃料の支払い停止後、融資返済が厳しくなった会社員らがスルガ銀に返済猶予を求める中で不正が発覚。多くの改ざんは会社員らが知らぬ間に行われていたとみられる。

 仲介業者の一部は朝日新聞の取材に不正の存在を認めた。誰がどのように行ったかは明かしていない。スマートデイズは「金融機関とオーナー間のやり取りは答えられない」という。

 スルガ銀は、シェアハウスへの融資について「収益性不動産投資の新しい形として有望と考えた。具体的な融資額はお答えできない」とし、預金水増しなどは「融資実行後に一部そのような例が判明した」としている。「当社の手続きの不備によるか否かに関わらず許されることではない」とし、現時点で行員が関与した形跡はないとしている。

「35歳限界説」の定説希薄に 転職成功者の年齢、10年前より3歳上昇

 パーソルキャリア(東京都千代田区)は、2017年7〜12月の間に転職サービス「DODA(デューダ)」を利用した約15万人の転職動向をまとめた。

 それによると転職に成功した人の平均年齢は32.1歳で17年上半期と同様の結果になったが、10年前の07年下半期に比べると3歳上昇していることが分かった。

 年齢別の内訳をみると、上半期同様にミドル層の健闘が目立っている。具体的には35〜39歳が10年前に比べ5.1ポイント上昇の13.1%、40歳以上は12.6ポイント増の15.5%だった。

 一昔前までは、35歳以上になると転職が難しくなる「35歳限界説」があったが、こうした"常識"は希薄になりつつあるようだ。

 その理由の一つについて、DODAの大浦征也編集長は「10年前には存在しなかった技術や企業構造の急速な変化により、経験に基づいた実績重視の即戦力採用や、管理職経験の有無にとらわれないミドル層の採用など、従来の採用案件とは異なるケースが増えているため」と指摘している。

2018年2月6日火曜日

携帯電話の電磁波で雄ラットに腫瘍、米機関が関連性報告

携帯電話が発する強度の電磁波によりラットの心臓周辺の組織に腫瘍が発生したとする予備リポートを米国立環境衛生科学研究所の米国国家毒性プログラム(NTP)がまとめ、2日に公表した。

ただ腫瘍の発生が認められたのは雄で、同様に電磁波を浴びせた雌などには腫瘍ができなかったという。

NTPや米食品医薬品局(FDA)の研究者は、研究結果がヒトには当てはまらない可能性があるとした。

研究によると、携帯電話による強度の電磁波を浴びせた雄ラット約6%が心臓周辺の神経細胞に腫瘍発生が見られたという。

Samsung、半導体製品売上でIntelを抜き世界トップに

昨年5月に「Samsungが半導体売上でIntelを抜き世界一になる可能性」という話があったが、ガートナーの調査で実際にSamsungが半導体売上でIntelを抜いたことが明らかになった。

Samsungの2017年の半導体部門の総売上高は698億ドル。いっぽうIntelは627億ドルだった。Intelは現在でもコンピュータ向けプロセッサで90%のシェアを持つものの、2017年の売上の伸びは6%と停滞している。一方でSamsungはメモリ関連製品の売り上げを順調に伸ばしたとのこと。

2018年2月2日金曜日

中国の人気仮想通貨が落とす影ビットコインに下落リスク

1月31日、テザーを発行する企業に不正の疑いがあるとして米商品先物取引委員会(CFTC)が調査していると伝わった。海外メディアによれば、CFTCは仮想通貨テザーを発行する企業(企業名=テザー)と仮想通貨取引所大手のビットフィネックスに対し、2017年12月6日に召喚状を送付したという。両社はともに香港に拠点があり、経営者は同じだ。
テザーに関してはこれまでも多くの疑惑や不祥事があった。17年4月には銀行との関係が絶たれ、一時的に出金ができなくなった。同11月には外部からハッキング攻撃を受けて3000万ドル強(約31億円)が盗まれた。最近では監査会社との関係を解消していたことが指摘され、内部管理体制も疑問視されていた。
CFTCが調査しているとされるのが、テザー社が十分な資産を持っていない可能性だ。テザー社は仮想通貨テザーを保有する投資家から換金要請があれば、同額のドルを送付しなければならない。1月31日時点で仮想通貨テザーは約22億ドル(約2400億円)相当が発行されており、理論上は同程度のドルを持っている必要がある。万が一、不足していれば換金要請に応えることができないため、投資家は損失を被る。
日本ではさほどなじみはないが、中国では仮想通貨テザーはビットコイン同様に人気がある。その理由を探ると、中国の投資家が他の仮想通貨を売買するのに欠かせないツールになっていることが分かった。
中国政府は資本流出を防ぐため、海外送金や外貨両替に対する規制を繰り返し強化してきた。その一環で、中国政府は17年秋に国内の仮想通貨取引所を閉鎖した。中国の投資家が仮想通貨を売買するには海外の取引所を使わざるを得なくなった。
ただ、海外取引所の利用も簡単ではない。そこで生み出されたのがテザーを使った「抜け道」だ。仮想通貨に詳しい大和総研の矢作大祐氏によると、香港や韓国の取引所で一旦テザーを買い、それをビットコインなどに替えれば、当局の目を盗んで他の仮想通貨が売買できるという。テザーはレートが米ドルに固定されているため価格変動が小さく、投機性が小さいとして当局からにらまれにくい。取引方法も個人と取引所との相対取引を用い、記録が残らない手段が取られているようだ。
「テザーのほとんどは、抜け道のための売買」。香港の仮想通貨取引所を運営するゲートコインの事業責任者、トーマス・グラックスマン氏はこう証言する。同社はテザーを取り扱っていないが、一部の取引所は抜け道の売買を受け付けているという。16年末に700万ドル程度だったテザーの発行量は今や30倍超に増えた。数々の問題を抱えながらも発行を続けられたのは、中国の投資家の売買ニーズがあったからだ。
チャイナマネーが仮想通貨市場に流入するために、仮想通貨テザーは今や欠かせないインフラになっているようだ。カリフォルニア大学のニコラル・ウェーバー研究員は「ビットコインには1日に1億ドルの資金がテザー経由で流入している可能性がある」と分析する。
中国政府が規制を強化して以降、ビットコインの人民元建ての取引は縮小を続けている。情報サイトのコインヒルズによると、17年秋までは2割程度だった人民元建て取引が、現在はゼロになっている。だが、それはあくまで表向き。実際には仮想通貨テザーに姿を変え、人民元は今も市場に流入し続けているわけだ。
CFTCによる調査でテザー社が十分な資産を保有していないと明らかになれば、仮想通貨テザーの信認は失墜し、投資家は売買に使わなくなる。そうなれば人民元の抜け道も絶たれてしまう。ウェーバー氏は「(そうなれば)仮想通貨は大暴落する」と警告している。
ビットコインは1月31日未明に節目となる1万ドルを約1週間ぶりに割り込んだ。コインチェック以上の危機に投資家は備え始めている。