2018年2月13日火曜日

仮想通貨と金融システム(十字路)

 仮想通貨交換業者コインチェックから580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出したことが話題になっている。仮想通貨は、特定の管理者をおかず、参加者が共同管理するインターネット上のデジタル通貨として注目される。一方、管理・取引インフラの脆弱性や価格変動率の高さなど様々な問題も指摘されている。10年前には存在しなかった仮想貨幣が、暗号化技術の進歩があったにせよ、短期間のうちに存在感を高めている背景はどこにあるのだろうか。

 お金がお金であるゆえんは、「皆がお金として認めるか否か」という受容性にある。2009年に登場した「ビットコイン」を筆頭に、多種多様な仮想通貨が急速に広まったのは決済や送金費用が安い、世界中で両替することなくどこでも使えるといった利便性にある。そして発行上限が限られているため、インフレなど価値が減価しにくい、自国通貨の不安定要因から分離できるといった価値の保全機能、さらには投機的な魅力なども相まって受容範囲が広がってきたといえよう。

 しかし、個人的にはそれだけが理由とは思えない。国の制度の枠組みの中にある従来の金融システムとは全く異なる、自律的で多様なビジネスへの拡張性を秘めた金融インフラを、いわば普通の人たちが共創する取り組みへの期待感が底流にあると推察する。

 政府が信用の裏付けとなって中央銀行が発行する法定通貨が、お金の絶対的地位を築いた時期は、3000年ともいわれるお金の歴史かれみればごくわずかの期間にすぎない。お金は時代によってかたちを変えてきた。この10年の仮想通貨のうねりは、中央集権的に力を持つ者が独占管理する金融システム、その金融が中心的な役割を担う経済システムの変化を示唆する潮目ではないかと感じている。

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