2018年10月31日水曜日

姜尚中「『一国二制度』の要求が沖縄から出てくる可能性はある」

 史上最多得票で当選した玉城デニー沖縄県知事。県政が始動し、「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票」の審議が始まりました。

 玉城氏が大勝した背景には、沖縄の人たちの意識が私たちが思う以上に先を行っているという現実があります。数年前に私が基調講演をした沖縄のシンポジウムでは、「沖縄の経済にとって、基地が撤去された場合のほうが大きなプラスになる」「沖縄は東アジアの要石として、経済的にかなりのポテンシャルがある」という具体的なビジョンが示されていました。「オール沖縄」という言葉の裏には、基地問題にノーというだけではなく、保守系を含めた地元経済もしっかりと関わっています。今なお「沖縄=基地依存経済」と考えている本土側と、認識の落差が埋まっていないのです。

 辺野古の問題はいわば、沖縄県内での基地たらいまわしによって問題の目先を変える「基地ロンダリング」です。このようなことをやり続ける限り、沖縄の経済的自立や未来に向けたビジョンというのは永久に閉ざされます。

 前出のシンポジウムは、県政のブレーン役を務める人たちや大学の研究者らが、欧州のいわゆる自治州や地域独立運動について研究発表する場でもありました。これらの考えは、今はまだ沖縄のマジョリティーではないのかもしれません。しかし、政府との対立が抜き差しならない状況になったときに、玉城氏が言及した「一国二制度」もしくは自治州というような要求が、沖縄から出てくる可能性は十分にあります。

 沖縄県知事選は単なる地方選挙にとどまらず、東アジア、日米関係、米中関係も含めた大きな安全保障や国際秩序とリンクせずにはいられません。たとえば、もし今後の米朝交渉で在韓米軍が縮小することになれば、在日米軍にも多大な影響があるでしょう。

 政府と沖縄の対立を、第三者的に、物見遊山気分で見てはいられないということを国民は自覚するべきです。政府は少なくとも、沖縄との妥協点を探る姿勢をみせていかなくてはいけません。それが果たして、現政権に可能なのでしょうか。

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