2018年10月10日水曜日

世界の金融安定リスク拡大、貿易摩擦激化なら急速悪化も=IMF

2008年の世界的な金融危機後の10年間で各国当局は金融安定を強化したものの、緩和的な金融状況が高水準の債務や「過大評価された」資産価値に絡む潜在的な問題の蓄積につながっているとも指摘した。

また、将来の銀行救済を回避することを目的とした破綻処理の枠組みはほとんど試されていない状態だと警鐘を鳴らした。

IMFは「世界の金融安定に対する目先のリスクが幾分拡大した」とし、「市場参加者は総じて、金融状況の急速な引き締まりのリスクに無関心のようだ」との見解を示した。

IMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長は会見で、金融システムに対する潜在的なショックはさまざまな形で現れる可能性があると指摘。予想を上回るインフレ率が金利の大幅上昇を引き起こす場合や、英国による「無秩序な」欧州連合(EU)離脱を例に挙げた。

そのようなショックの影響の大きさは非金融部門の債務の蓄積や資産価格の高止まりといった脆弱性が決定要因になるとした上で、「脆弱性の蓄積と資産価格の下落の相互作用によってマクロ経済活動に対して悪影響が生じる可能性がある」とした。

また、中国当局が債務の伸びを抑制する措置を講じているにもかかわらず、同国で近年に債務が急速に膨らんでいることは懸念材料だと述べた。

IMFの報告書は、一部の主要国では経済成長がピークに達したように見える一方、先進国と新興国の格差は広がっているとも指摘。

米国の金融正常化やドル高に加え、貿易を巡る緊張の高まりは既に新興国に影響を及ぼし始めているとした。

このほか、金融安定に対する目先のリスクとして、英国が条件などで合意しないままEUを離脱する可能性や、高水準の債務を抱える一部ユーロ加盟国の財政政策を巡る懸念の再燃などを挙げた。

また、各国当局は金融危機後に導入した措置を維持し、市場の流動性監視を強化すると同時に、景気後退に備えて銀行の自己資本基準を引き上げる必要があると強調。「金融規制改革を完了する必要があり、改革の巻き戻しは回避すべきだ」と訴えた。

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