2017年12月8日金曜日

“脱メール依存”に本気なら「チームコラボレーションツール」を検討しよう

 従業員や顧客、パートナーなど各者間のコミュニケーションを合理化し、コラボレーションを促進する手段として「チームコラボレーションツール」を採用している企業は少なくない。最近のチームコラボレーションツールは、グループメッセージングからコンテンツ共有、相手と1対1で向き合うミーティングに至るまで、幅広い分野の機能を備える。生産性の向上やプロジェクトの追跡など、数多くのメリットをもたらす。

組織の規模は問わない

 かつてコミュニケーション手段といえば、ボイスメール(留守番電話)サービス付きの音声電話といった標準的な手段ならともかく、高度な機能を持つシステムを導入するのは大規模なユーザー企業に限られていた。オンプレミス向けの複雑なユニファイドコミュニケーション(UC)製品の場合、その購入、配備、管理に当たって費用が参入障壁となっていた。

 クラウドコンピューティングの普及によって、ユーザー企業間の競争の土台が平準化された。今はごく小規模な企業でも、大企業が使っているものと全く同じチームコラボレーションツールを利用できる。

 大規模企業向けチームコラボレーションツールは一般的に、複数組織の間でシームレスなコミュニケーションを可能にするメッセージング機能を備える。小規模な新興企業であっても、大企業の顧客と同一のチームコラボレーションツールを使用して、一貫した方法でコミュニケーションができる時代になった。規模の異なる企業間で関係を確立したり、コミュニケーションを強化したりする際に、チームコラボレーションツールは非常に大きな役割を果たす。

チームコラボレーションツールとメールとの違い

 従来のコミュニケーション手段と比較した場合に、チームコラボレーションツールの利点が特に目立つ場面がある。例えば複数のチームメンバーが長期的なプロジェクトを受け持っているビジネスユニットにおいて、チームコラボレーションツールのメッセージング機能と、従来のメールを比較するとしよう。

 チームコラボレーションツールのメッセージング機能を使うと、プロジェクトチームのメンバーをいつでもチャットグループに追加したり削除したりできる。グループに追加したメンバーは、そのメンバーの参加前に共有されていた以前のメッセージやリンク、コンテンツなどにアクセスできる。メンバーやグループへの参加時期に関係なく、全員が確実にプロジェクトのコンテンツへアクセスできるようになる。

 チームコラボレーションツールのほとんどは、コンテキスト検索機能を備えている。この機能があると、グループチャットの履歴に含まれているコンテンツを探しやすくなる。

 これまでプロジェクト内での情報共有手段として使われてきたメールでは、2者間の会話に新しい受信者を追加すると、メールスレッドが混乱する場合がある。特定の情報を検索する際に、重複の山の中から探し出さなければならなかったり、逆に探しているコンテンツが欠落していたりすることもある。

 添付ファイルについては、以前送信されたメールには含まれていない可能性がある。そうすると送信者にファイルの再送を要求せざるを得ず、さらなる混乱を招く場合がある。グループメンバーに対してメールを送信する場合、チームメンバーの誰かが「全員に返信」のつもりで1人のメンバーへの「返信」をクリックすると、そのスレッドの輪から、不本意ながら他のメンバーの誰かが外れてしまうこともある。

 複数のチームメンバーとプロジェクト情報をやりとりする場面では、1つ1つの出来事はささいなものでも、こうした要因が組み合わさると大きな障害となる。

チームコラボレーションアプリはコンプライアンスの要件もカバーする

 これまで医療、金融機関、政府機関など一部の業種では、データに関する各業界向けの法制度に準拠していないため、チームコラボレーションツールを採用できない状況が発生していた。幸いなことに、大企業向けのチームコラボレーションツールのベンダーは、データ処理関連の特殊な法制度や仕様への準拠が求められる業種でも、問題なく利用可能にするための取り組みを始めている。

 従来のチームコラボレーションツールは、エンドツーエンドのメッセージ暗号化やデータの可視化、レポート作成、オンプレミスの専用サーバを使った暗号鍵管理など、幾つかの機能が不足していた。現在は、こうした高度なコンプライアンス機能を提供するチームコラボレーションツールが幾つか販売されており、幅広い業種で安心して使用できるようになりつつある。

別拠点のチームメンバーとのコミュニケーションに伴う課題もクラウドで軽減

 本社以外の広範囲に拠点が分散し、従業員が複数のタイムゾーンにまたがって勤務している企業は、クラウドベースのチームコラボレーションツールが有効であることに気付いている。クラウドベースのチームコラボレーションツールは、モバイルデバイスからの利用を中心に据えており、多くの従業員が別拠点に常駐している企業やグローバル企業に適している。

 トラブル対応コールセンターを24時間年中無休で運営している企業を想定しよう。この企業では「フォローザサン」(Follow the Sun)というモデルを採用しているとする。これは24時間体勢で運用するコールセンターを1カ所だけ配置するのではなく、複数のコールセンターを世界各地に点在させ、各コールセンターは通常の勤務時間で、次々と別拠点に引き継ぐことだ。ある拠点の稼働時間が終了した際には、インフライト(仕掛かり中)の障害チケットを次の拠点へと引き継ぐ。

 クラウドベースのチームコラボレーションツールがあれば、障害の情報を受け付けたコールセンターの従業員が、次のシフトの勤務を開始しようとしている拠点のスタッフに、その障害チケットに関する情報を引き継ぐことができる。障害チケットに関する情報は、地理的に分散したチーム間で共有できる。

単一ツールで真のUCを実現

 UCの最終的な目標は、あらゆるコミュニケーションニーズを満たす単一のシステムを組織全体で使用することだ。チームコラボレーションツールは前述の通り、メッセージング、電話会議、ビデオ会議、ソーシャルネットワークなど、幅広い機能を含む。ユーザー企業としては、自社で必要とするコミュニケーション手段を全て包含した製品を見つけることを目標にすべきだ。

 全エンドユーザーが使うチームコラボレーションツールを1種類に絞り込むと、組織は次の2つの主要な効果を実感できる。1つは、会社やIT部門の許可なくIT製品/サービスを業務利用する「シャドーIT」が、コラボレーションに与える影響を軽減できる点だ。基本機能を無料で利用可能にしているチームコラボレーションツールが少なくないことから、各部署がIT部門からの情報提供や支援を受けずに、独自の決定に従ってチームコラボレーションツールを使用する例もある。この傾向は、重要なデータの損失を防ぐのが困難になるという、セキュリティ上の課題につながる。こうしたシャドーITを統制できる見通しが立たない場合、機密情報や知的財産を紛失したり盗まれたりする可能性が高まる。

 もう1つの利点は、全員が同じツールを使用することで、チームコラボレーションツールの効果がますます増大するという事実だ。コミュニケーション手段の統一により、部門間の縦割り志向(サイロ化)を打破し、社内の全員で情報を交換できるようになる。裏を返せば、各部門が独自のチームコラボレーションツールを使用すると、コミュニケーションが分断されたり、データセキュリティの問題が即座に発生したりする可能性がある。企業は最終的に、単一のチームコラボレーションツールが大多数の従業員のニーズを満たすことを保証する必要がある。

 どのような規模の企業であっても、チームコラボレーションツールの購入を正当化する方法は複数存在する。大企業向けツールの場合は一般的に、幅広い要件を満たすために微調整用のオプションを用意している。とはいえ競合よりも圧倒的に優れたチームコラボレーションツールは現時点では存在しないので、今後の選択肢の充実に期待が集まる。

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