2017年2月1日水曜日

大手企業の「採用したい人材」はこう変わった 「一点追求型」の人材を求めている!

 いよいよ2018年新卒採用の広報活動解禁まであと1カ月となりました。企業の多くは、3月1日にプレエントリー受け付けや企業説明会、エントリーシートの提出依頼などを一斉スタート。6月1日からは面接選考を始めます。スケジュールは昨年同様ですが、企業の採用動向はどう変化しているのでしょうか。今回は、私が日々人事の方々と接し、肌で感じている大手企業の採用動向をお伝えします。

 採用予定者数の多さでは、例年、メガバンクや電機、自動車などのメーカーが上位に並びます。2018年卒もその傾向は大きく変わらないと言えそうです。メーカーも大半が2017年卒並みの採用計画です。特に社員数が数万人規模の大企業では、景気動向にかかわらず採用人数を確保しようと考えています。

 背景にあるのは人口減少に対する危機感。2015年の国勢調査によると、5年前の前回調査に比べ日本の総人口は96万人減。総人口に占める15歳未満の割合は過去最低で12.6%でした。

 日本全体が中長期で人口減少し、特に若い世代が減っていく中で、企業規模を維持していくこと、適切な年齢構成を保っていくことに対して、強烈な危機感があるのです。このため、景気に関係なく企業体力の可能な範囲でなら、採用できるときには積極的に採用していこうと考えています。

 そんな中、採用方法や採用内訳に対しては、見直しの機運も感じられます。これまでの採用方法では採るべき人を見落としているのではないか、という懸念や危機感を人事の方たちは感じているのです。

 特に大企業の人事の方から最近よくお聞きするのが、「多様性」=「バラエティ」という言葉です。母集団のバラエティ化を図り、内定者バラエティを実現することが大きな課題となっているのです。

 バラエティとは何を意味するのでしょう。性別、出身学部・学科などの属性情報のみでなく、興味があることや熱中してきたことなど、経験や興味関心について企業は多様性を追求しています。多様な人に支持・支援されるモノやサービスを生み出すには、生み出す側にも多様な視点が必要だからです。

 かつては総合職で200人というような大枠での考え方が多かったのですが、最近では情報系のテクノロジー人材で少なくとも何人、グローバル対応の人材を何人などと、細分化しています。経営人材や次世代リーダーをどう採用するかも含め、ポートフォリオのように分散して考える企業も出てきました。多様性やバラエティを重視する結果です。

 そして、バラエティに富んだ母集団をつくるため、人事の方が直接、大学やサークルにアプローチするなど、従来からのオンライン・コミュニケーションに加えて、オフラインでの接点も強化されています。

 バラエティとともに求められているのが「イノベーター」です。イノベーターという言葉を聞くと、新しくゼロから1を生み出す起業家を連想するかもしれません。が、既存のビジネスを、今のやり方にこだわらず、着実に小さな変化を起こしながら、大きく変革させる取り組みも含まれているのです。

 大手企業の側も時代の変化に合わせた顧客ニーズの変化に影響を受けます。それに合わせて、既存事業のあり方を疑い、未来に向けて主体的に変革を起こせる人材も当然採用していきたい、と思っているのです。たとえば、学生時代に起業し人脈をつくって自分の看板で勝負をしている学生や、形は違えども主体的なチャレンジを行っている学生は、まさに採用したい人材です。

 しかし、確固とした社風がある企業では、社のスタイルにおさまりそうに見えず早々に不採用になっていたり、入社しても企業風土と合わずにすぐに離職してしまったり、という現実があることも否めません。

 こうした反省もあって、今までの採用方法だけでは通用しない、企業としてもこれまでの殻を破り、選考基準を再検討したり、その後の育成や配置・配属もやり方を変えるしかないという課題意識が高まっているのです。

 インターンシップが注目されているのも、魅力的な就業体験の場を提供することで、既存の採用フレームからは外れてしまいがちな人たちとの出会いを形成したい、との思いがあるからです。

 最近では、本選考においてテクノロジーを活用する企業も増えてきました。人工知能(AI)を使って優秀な学生をピックアップする、あるいは動画面接を取り入れることで文字だけではわからない学生の情報を取得するなど、さまざまな取り組みが広がっています。これも、本当にほしい人材の見極めに失敗したくないという、企業の危機感が大きな背景にあると感じています。

 ただし、最大の課題は、「イノベーション人材って、どんな人材か」を定義するのは難しい、ということです。ここは各社とも、頭を悩ませているところです。

 先日、ある大手コンサルティングファームから、急成長中のITベンチャー企業の採用手法を知りたいと、ご相談を受けました。まったくの異業種であるにもかかわらず、こと採用に関してはライバル関係になりつつあるというのです。内定を出した学生が、その企業を選ぶケースがしばしばある、とのことでした。

 こういったことも考えると、今年の就職活動も昨年に続いて、売り手市場が広がっていると言えるでしょう。学歴によって採用の可能性が高まる傾向は否定しません。

 それでも、学生の皆さんには、自分自身の意外なところが評価される可能性も大いに広がっていることに、ぜひ気づいてほしいと思います。

 たとえば、何かひとつ好きな領域に執着して、誰よりも熱狂的にのめり込んだ経験があることでもよいのです。それがプログラミングの領域でもよいですし、地震の地層について、あるいはキノコの生態についてなど、何か主体的に長い時間をかけて執着して追求してきたものがあれば、それを伝えるのもひとつかもしれません。

 自分自身は、「これはマニアックな領域だから、就活でのアピールにならないかも」と思うようなことでも、とことん取り組んだのであれば、それはぜひ訴えるべきです。

 たとえ、学校や周囲から大きく評価されないことでも、自分の興味関心という強い動機に基づいてある領域を突き詰めることができる、そのために試行錯誤や創意工夫ができることは、大きなアピールになります。実際、平均点の高さではなく、「一点追求型」の人材を5〜10%は意図的に採りたい、という大企業の声も聞こえてきています。

 近頃では理系女子や海外大生、あるいは外国人留学生に、一定の採用ニーズがあることは確かです(これらの人材に採用目標人数を設定している企業も少なくありません)。ただ、求めているバラエティの中身は各社で異なりますし、今年度はどんなバラエティを求めているのかは、外部からはわかりません。

 基本のマナーや礼儀はきちんと守るべきですが、自分で培ってきたものや、何が好きで何ができるのかについては、自分自身を十分訴えてみてください。

 企業は"寄らば大樹の陰"的な発想の学生を求めているわけではありません。大手企業を志望されている学生に伝えたいのは、入社するために自分を型にはめるのではなく、自分の持っているものと相手先企業が評価するものが、たまたま合致すればよいという気構えで、もっと自由にチャレンジしてほしいということです。

 少なくとも、企業には企業の危機感があることを理解してもらえれば、もっと学生のみなさんにとって、自分らしい就活ができるのではないでしょうか。応援しています。

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