かつて地価が上昇を続けたバブル期に跋(ばっ)扈(こ)した地面師。最近は管理能力が低下した高齢資産家が持つ不動産をターゲットに、再び暗躍し始めているという。「土地探し」や「偽造文書作成」など役割分担が決まっており、事件ごとにメンバーが組み替わる地面師グループ。古典的犯行ながら被害は絶えず、警察当局は警戒を強めている。
警視庁はこの1年ほどに少なくとも4つの地面師グループを摘発。しかし、警察当局が立件にこぎ着けたのは氷山の一角にすぎない。地面師にだまされた経験がある都内の不動産業者は「事件は未解決で代金は戻ってこない」と話す。
業者が被害に遭ったのは平成23年春。横浜市の土地を所有する70代の女性と、その息子を名乗る2人が業者の元を訪れた。
親子は税関連の証明書も運転免許証も持っており、業者には実際の土地所有者に見えた。業者は「宅地を造成するのに最適」と考え、1億数千万円で土地を購入。だが、間もなく虚偽だったと判明した。
税関連の証明書に押されていた自治体の長の印鑑、印鑑証明書、運転免許証は、全て偽造されたものだった。"親子"も地面師が土地所有者に成り済ましていたとみられる。
業者に土地を仲介をした男は、後に別事件の詐欺容疑で摘発されたが、この事件についての捜査は進んでいないという。
このところ地面師がターゲットにするのは、高齢者が所有する空き家だ。総務省によると、25年10月時点で全国の住宅のうち、820万戸(約13・5%)が空き家で、そのうち4割近くが管理が行き届かない「放置空き家」だった。
捜査関係者によると、グループは、こうした放置状態の建物や土地であれば高齢の所有者が多く、勝手に名義を変えて転売しても本人が気付かないとみて犯行を繰り返しているという。捜査関係者は「グループは事件ごとに合従連衡を繰り返して詐欺行為を続けており、被害は多いが摘発は追いついていない」と現状に焦りを募らせている。
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