2017年2月1日水曜日

大東建託、「受注高23%減」でも超強気の理由 賃貸アパートブームは続く?それとも失速?

 賃貸住宅事業を手掛ける大東建託が絶好調だ。1月27日に発表した2016年4〜12月期の連結決算は、売上高が前年同期比5.3%増の1兆1054億円、営業利益が同21.0%増の1061億円と、ともに同期として過去最高を記録した。残り3カ月を待たずに、利益面ではすでに前期(2016年3月期)の実績を超えてしまった。

平均受注単価は9485万円
 絶好調の要因は言うまでもなく、賃貸アパートの建設が増えているためだ。4〜12月の賃貸住宅の完成工事高は3.2%増。件数の増加だけでなく、平均の受注単価が9485万円と前年同期比で404万円も増えたことも大きい。3階建て以上の中層階アパートの割合が増えたことが要因だ。

 さらに建設費の値上げが浸透する一方で、労務費が想定ほど上昇しなかったため、工事採算が大きく改善した。完成工事利益率は31.8%と、前年同期比で2.4ポイントも向上している。

 自社が建設したアパートを一括借り上げして、大家に変わって管理する不動産事業も好調だ。物件数に伴い斡旋件数が順調に増加。管理物件の入居率(居住用の家賃ベース)は、96.2%と高い率をキープしている。

 経営管理本部長である川合秀司常務は「(アパートの空室率上昇など)ネガティブな報道がされることで、懸念する顧客がいることも確か。だが、相続税対策、資産活用ニーズは途切れない。まだまだ需要は多い」と、強気姿勢を崩さない。「そもそもわれわれは人口動態を勘案しつつ物件を建てているので問題はない」という見解だ。住宅金融支援機構を含めた金融機関の融資姿勢も変わっておらず、「金融機関は(大東建託の)支店に窓口を設け、アパートローン相談会を開催するほど積極的」(河合常務)と、変化のなさをアピールする。

 ただ気になることもある。金融庁が地方銀行を中心として、急増しているアパートローンの実態調査に乗り出しているということだ。

 日本銀行によれば、2016年9月末の国内銀行のアパートローン残高は前年比5%弱増の22兆円に達し、過去最高だった2015年末の21兆円をさらに上回っている。日銀が公表したさくらレポートには「相対的に魅力の乏しい物件を中心に、空室率の上昇や家賃の下落がみられる」と、バブルの再燃を懸念する文字がみられるようになった。

 そうした中、今回の決算発表で市場関係者が一様に注目したのは、同社の10〜12月の受注高が急減していたことだった。日銀のバブルの懸念と歩を合わせるかのように、前年同期比で23%も減少した。

 ただ、会社側はここでも強気の姿勢を崩さない。失速の原因について、河合常務は「飛び込み営業の力が低下したため」という。一聞しただけではよく意味がわからないが、からくりはこうだ。

午前中の2時間は新規開拓に集中
 現在、建設工事の受注は、2016年4〜12月期で6割強がリピート客で占められる。営業員がリピート客を中心に営業をするという易きに流れた結果、新規顧客の開拓がおろそかになっているというのだ。

 そこで2016年10月から社長の陣頭指揮の下、営業力強化に乗り出した。営業員は毎日、午前中の2時間は新規開拓だけに集中する。ただ、飛び込み営業で新規客を増やすには時間がかかる。10〜12月は新規顧客開拓に力を注いできた結果、受注が失速したようにみえる、というわけだ。

 河合常務は「わが社は社長の号令一下で一挙に動く社風を持つ。社長がやると言ったら、みな動く。2017年度内にも新規顧客受注件数を5割にもっていけると思う」と、失速は一時的な現象で終わるとする。

 受注工事残高は昨年12月末で前年同期比5.4%増の8730億円と潤沢にあり、しばらくはこれを消化するだけで増益は可能。問題はこの1〜3月期の受注が本当に回復するのかだ。賃貸アパートブームの今後を占う意味でも、重要なポイントとなりそうだ。

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