2017年2月1日水曜日

通貨安誘導と日本批判 トランプ氏

 トランプ米大統領は31日、ホワイトハウスでの製薬会社幹部との会合で「中国や日本が市場で何年も通貨安誘導を繰り広げ、米国はばかをみている」と述べ、中国と同列で日本の為替政策を厳しく批判した。トランプ氏が大統領就任後に日本の通貨政策に言及するのは初めてで、2月10日の日米首脳会談でも圧力をかける可能性がある。

 トランプ大統領は31日の会合で、米国の貿易赤字に懸念を示し「他国は資金供給(money supply)と通貨安誘導で有利な立場にある」と主張。円安・ドル高相場は日本の通貨安誘導が原因だと決めつけた。トランプ氏が言及した「資金供給」が具体的に何を指すのか不明だが、日銀の量的緩和政策などを念頭に置いている可能性もある。

 トランプ氏は選挙戦中に日本を「通貨安誘導だ」と批判してきたが、大統領就任後は円相場に直接言及してこなかった。2月10日の日米首脳会談では、米国が多額の貿易赤字を抱える不均衡問題が議題となる見込みだ。トランプ氏は「日本との自動車貿易は不公平だ」と主張してきたが、批判の矛先は日本の通貨政策にも向かい始めた。

 日本は2011年以降、円高是正を目的とした円売り介入をしておらず「通貨安誘導はしていない」との立場だ。ただ、安倍政権の発足後、日銀の大規模な量的緩和政策に影響されて円相場は円安・ドル高方向に動いてきた。トランプ氏の「円安誘導」が日銀の金融緩和を指すのであれば、日本のデフレ脱却シナリオにまで影響しかねない。

 主要7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)の首脳や通貨当局は、通貨安誘導の回避で一致している。為替相場は米連邦準備理事会(FRB)や日銀、欧州中央銀行(ECB)などの金融政策に左右されるが、金融緩和による通貨安は自国経済の調整という位置づけで黙認されてきた。米国も08年の金融危機後の量的緩和で、ドル安が続いた経緯がある。

 基軸通貨ドルを抱える米国の大統領が、他国の通貨政策を批判すれば、市場への影響は極めて大きい。トランプ氏は中国の人民元政策も「通貨安誘導」と批判したが、中国は為替介入が常態化しており、市場経済を重んじてきた日本とは事情が異なる。

 トランプ氏は米国の貿易赤字に強い不満を示し、貿易相手国との2国間協議で解消を目指す考えを強調している。「米国第一主義」は自国産業を守る保護貿易主義に極めて近く、金融市場には「トランプ氏はいずれ円安相場をけん制するのではないか」との懸念があった。

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