米通商代表部(USTR)は3日、米通商法301条に基づく中国の知的財産権侵害に対抗する制裁措置として25%の関税引き上げを行う中国製品の原案を公表した。航空宇宙やIT(情報技術)、半導体、ロボットなどハイテク分野を中心に約1300品目に上り、総額500億ドル(約5.3兆円)。国内手続きを経て5月下旬以降に最終決定する。中国商務省の報道官は世界貿易機関(WTO)に直ちに提訴する意向を表明、近く同規模の報復措置を打ち出す方針を示した。米中間の「貿易戦争」が現実になる可能性が高まっている。
USTRは声明で、中国が2025年にITやロボット、新エネルギー車など先端分野で「製造強国」になる目標を掲げ、「米企業に技術や知的財産権の移転を強要している」と批判。対象品目や規模について「中国により米国が受けた被害に見合うもので、米経済への影響を最小化する」と、正当性を訴えた。
リスト原案にはハイテク機器のほか、医薬品や蓄電池、農業機械、食品加工機械など幅広い製品が盛り込まれた。今後、国内での意見聴取や公聴会を経て、対象から外したり、追加したりすべき品目を決める。意見提出の締め切りを5月22日としており、対中制裁発動はこの後の見通しだ。
中国が先端分野で急速に追い上げる中、トランプ政権は制裁をテコに中国が自国企業に有利な政策を転換するように迫る考え。実際に制裁を発動すれば、中国製品が米国内で値上がりし、米経済に悪影響が及ぶ副作用も懸念されるため、制裁発動まで時間をとり、中国との交渉で市場を開放させる妥協も探る。ただ、中国は2日、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限に対して報復措置を発動しており、先行きは予断を許さない。米国が知的財産権侵害を理由に習近平政権が重視するハイテク製品などを狙い撃ちにした制裁措置を打ち出したことに中国がより強力な報復措置で応酬する可能性もあり、制裁合戦による「貿易戦争」が米経済や世界経済に打撃を及ぼすリスクが高まっている。
0 件のコメント:
コメントを投稿