2018年4月4日水曜日

「昇進したら吐き気が…」うつ状態になる“4月病”が増えている

 転勤、転職、昇進、異動、妻の仕事復帰、子供の進学……。春先は仕事環境や生活環境が大きく変化する時期。こうした公私の環境変化に対応すべく努力をするもののストレスをため込んでしまい、その反動で連休明けころから無気力状態に陥ってしまうのが5月病だ。うつ病予備軍ともいわれる5月病だが、最近その症状は多様化&前倒しになっていると産業医の大室正志氏は分析する。

「ギリギリ終身雇用制度に守られて逃げ切れる上の世代と違って、アラフォー以下の世代にとっては、意に染まない異動や、転職してみたけれど思った職場と違っていたといった状況に直面したときに、我慢して現在の職場にすがりつくメリットが減ってきているのだと思います。実際に会社を辞めるかどうかは別として『ここで我慢したところで会社が今後の人生を保証してくれるわけではないんだから』と割り切っている人がほとんど。だから、合わないと思った時点でパソコンを強制シャットダウンするがごとく無気力になったり、体が仕事を拒否してうつ状態になってしまう。5月病と違ってタメがない、4月病とでも言うべき人が増えているんですよ」

 また、「うつに対する理解に世代間格差のあることが、さらにストレスに拍車をかける」と指摘するのは人事・戦略コンサルタントの松本利明氏。

「休みのときは元気だけど、仕事をしようとするとうつ状態になってしまう『新型うつ』が数年前から注目され、うつも人によって症状はさまざまだという理解が広まりつつありますが、アラフィフ以降の世代は『仕事環境の変化がきっかけで落ち込んでいるなんて単なる甘え』『休みの日は元気なら、仮病』という理解の人がほとんど。ただのわがままな怠け者というレッテルを貼られてしまうこともしばしばです」

◆めでたい昇進だったはずが吐き気と頭痛が止まらない

 プログラマーとしてシステム開発会社に勤務する太田典弘さん(仮名・36歳)が原因不明の体調不良に襲われたのは、4月にマネジャー職に昇進した直後だった。

「もともと人とかかわるのが嫌だからプログラマーという職業を選んだのに、まさか人を束ねる立場になるとは思っていませんでした。まあでも、何事も経験だと思って人事を受け入れたのですが……」

 昇進後1週間もすると、会社に行こうとしたときに吐き気や頭痛が止まらなくなり、這うようにして会社の前まで行くものの、どうしても会社のある12階まで上がれなくなってしまったという。

「病院に行ったらうつ状態と診断されました。しばらくは自宅作業で様子を見ようということになったのですが、ツイッターで同僚が『昇進早々病欠するヤツとかありえない』と自分の悪口を書いているのを見てしまった。貯金もあったし、正直プログラミングの技術があれば食っていける自信はあったので、有休を消化して、連休明けには会社を辞めることにしました。昇進さえなければ働きやすい職場だったんですけどね……」

 現在は同業他社に転職して現場のプログラマーとして快適に働いているという。

「理不尽な異動や降格と違って、昇進となると、周囲からしてみればめでたい話。それが原因で体調を崩してしまうと、本人にとっては深刻でも理解を得づらいんですよね。でも、管理職への昇進をきっかけにうつ状態になる人は結構多いんです」(前出の松本氏)

 前出の大室氏も指摘する。

「管理職としての教育を受けていなかったり、明らかに不向きな人が、専門職として出世していくというキャリアコースが多くの日本企業では確立されていないんです。また、現在の管理職の多くはいわゆるプレーイング・マネジャー。現場仕事にアイデンティティがある人はどうしても自分の裁量でプレーイングのほうに重点を置きがちですが、部下からしてみれば『細かいことにやたら口出ししてくる割に、肝心なことを仕切れないダメ上司』。現場のプライドを捨てきれないせいで部下の信頼を失い、孤独感を深めてしまうんです」

 うつが重症化する前に、太田さんのように合わない仕事にはさっさと見切りをつけてしまうのが有効な対策なのかもしれない。

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