中国政府が金融引き締めに動いていることで、同国の銀行は近く資金調達が難しくなるかもしれない。
中国経済と融資の力強い伸びを長年にわたり支えてきた家計の預金が減少している。先月は銀行システムから約1兆2000億元(約19兆4000億円)が流出した。また、企業の預金の伸びも失速しており、預金全体の伸びが鈍化している。
こうした預金流出が中国の銀行にダブルパンチを与えている。安定した資金源を失いつつあるだけでなく、金融引き締めに伴う資金調達コストの増大に見舞われている。
流出した預金の大部分は、預金より金利が高く、急増している投資ファンドに投じられている。中国の電子商取引最大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)傘下のマ蟻金融服務集団(アント・フィナンシャル・サービシズ・グループ)が運用するオンライン・マネー・マーケット・ファンド(MMF)「余額宝」は、世界最大規模のMMFとなっている。運用資産額は1650億ドルに上り、7日間の年換算利回りは4%を超える。
皮肉なことに、余額宝などの投資ファンドは銀行が販売する金融商品への投資で、このような高利回りを実現している。中国政府が2015年に預金金利を自由化した時、銀行はいわゆる譲渡性預金などの投資商品を大量に組成し始めた。これらの短期金融商品の販売額は4月に1800億ドルに達し、前年同月比で60%増加した。最高4〜5%という比較的高い利回りが、余額宝のようなMMFを引き付けている。
しかしその結果、金利が基準金利と同じわずか1.5%の安定的な預金が投資商品に移り、銀行は最高5%の利払いを余儀なくされることになった。しかもこの資金源でさえ枯渇する恐れがある。余額宝は先月、新規投資額に上限を設けた。同ファンドの規模が急拡大していることに不安を感じた規制当局の圧力があったとみられる。
流動性の制約に拍車をかけているのは、銀行システムへの政府預金の減速だ。それでも、銀行は企業・家計向けの融資を増やそうとしている。同システムの預貸率は80%に近づいており、この10年余りで最も高くなっている。
さまざまな資金調達手段の大半でコストが上昇しているため、投資家は銀行が次にどこへ向かうか考えておいた方がいい。
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