2017年6月9日金曜日

世銀が指摘する「世界経済の4つのリスク」

 世界経済は過去7年で最も速いペースで成長している可能性がある。だが、世界銀行は依然として雲行きが怪しいと懸念しているようだ。

 世銀が4日発表した報告書「世界経済見通し」の執筆責任者、アイハン・コーゼ氏は「景気回復は進行している。だがそれは脆弱で、ダウンサイドリスクが引き続き優勢だ」と述べた。

 今回の世界経済見通しで指摘された潜在的な脅威は以下の通りだ。

<新興国の影響>

 中国、ブラジル、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、トルコの主要新興7カ国(E7)は、世界の経済成長にとって最も大きな原動力だ。先進7カ国(G7)は、国内総生産(GDP)だけをみるとE7を上回っているが、世界の経済成長への寄与度はE7の方が大きい。

 コーゼ氏は「以前は、G7の経済が健全である限りそれなりの成長率を達成できた。だが今は、E7が極めて大きな力を持っている」と指摘した。

 これは世界経済の構造における基本的な変化で、世界にとって恩恵にも打撃にもなり得る。

 明るい面では、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)が苦境にあっても、新興諸国が世界経済の成長に寄与することができる。世銀は来年の新興国と発展途上国の成長率を4.5%と予想している。昨年の成長率は3.5%だった。

 一方、これらの国々が大きな打撃を与える可能性もある。中国では借り入れの急増が大きなリスクとなっている。ブラジル、南アフリカ共和国、トルコは、政治と財政赤字の問題で苦しんでいる。

<政治的な不確実性>

 コーゼ氏は「市場は政治に関わるリスクを過小評価しているかもしれない」と言う。

 世銀は、政治的な不確実性はすでに高まっていると指摘。また、不確実性がさらに高まれば「市場の信頼感が低下して投資が減り、金融市場に不安感をもたらす恐れがある」との見方を示した。

 つまり、米国、中国、あるいは新興国の政策に変化が生じた場合、投資家は急きょポートフォリオの再検討を迫られ、株式、債券、為替相場が大きく変動する可能性がある。

<貿易戦争>

 貿易自由化は、犠牲者が出ないわけではないが、世界経済の成長を後押ししてきた。世銀は、貿易戦争は世界経済全体に損害を与えることになると警鐘を鳴らしている。

 世銀は、貿易自由化は過去数十年にわたり世界の成長率を約1ポイント押し上げたと推計している。「貿易の規制が拡大すれば、脆弱な貿易の回復を妨げ、これまでの自由化の取り組みの成果が損なわれかねない」とした。

 特にドナルド・トランプ米政権を名指しし、ホワイトハウスが報復的な行動の引き金を引き、米国と貿易相手国の双方に打撃を与える恐れがあると指摘した。

<債務比率の上昇>

 多くの発展途上国は、歴史的に低水準の金利を活用して新規投資を拡大してきた。だが予想を下回る経済成長率と資源価格の下落により、世界で債務問題を巡るリスクが相次いで浮上した。最も注目されているのは中国だが、問題はもっと広範に及んでいる。新興国の半分以上で政府債務残高の対GDP比が10ポイント上昇し、3分の1で財政収支の対GDP比が5ポイント余り悪化した。

 世銀は、今は世界の経済成長が比較的緩やかだとした上で、困難に直面する前に、予算、税制、債務管理の総点検をすべきだと指摘した。

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