2017年6月20日火曜日

世界初…音速10倍で衝突、スペースデブリ(宇宙ごみ)対策に「光」 阪大など国際研究班、破壊現象を原子レベルで可視化

 壊れた人工衛星の破片など宇宙ゴミ(スペースデブリ)が軌道上を周回し、有人宇宙船などとの衝突が危惧され、国際的な監視や防除の取り組みが行われている。なにしろ、10センチ以上のデブリが2万5千個も確認されている。それが音速(秒速約340メートル)に近い拳銃の弾丸の初速の10倍前後の秒速数キロという超高速でぶつかってくるのだから、弾丸を撃ち込まれるより威力があり、ひとたまりもない。このため、人工衛星、宇宙船などの材料や構造について安全を確保する研究が進められているが、これだけの超高速での衝突で材料がどのように変化して破壊されるかを詳細に観察することは、非常に短時間で起きる現象だけに困難だった。

 大阪大学大学院工学研究科の尾崎典雅准教授、ブルーノ・アルベルタッツイ研究員(現・仏エコールポリテクニーク)、兒玉了祐教授と、理化学研究所など日仏英露の国際研究グループは、理化学研究所放射光科学総合研究センターのX線自由電子レーザー施設「SACLA」を使い、秒速5キロメートルもの超高速衝突の際に材料が破断的に破壊していく様子を原子レベルで観察することに世界で初めて成功した。これで、破壊されるときにかかる力などの特性を定量的に調べることもできる。航空機の安全性を高める材料や構造の設計、爆発の危険がある場所の設計にも役立ちそうだ。この成果は米国科学振興協会のオンライン科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載された。

 超高速で物体が材料に衝突した場合、衝撃波が材料の内部を伝わって、衝突した面(表面)よりも、むしろ反対側の面(裏面)に大きな損傷が見られるという特徴的な破壊の現象が生じる。

 研究グループは、高出力のパワーレーザーを金属の箔(はく)に集光して照射し、材料内部に衝撃波を起こす「パワーレーザーショック超高圧法」という手法と、物質を原子レベルの大きさで、その瞬時の動きを観察できる「X線自由電子レーザー」を使った。まず、「超高圧法」で材料内部に衝撃波を起こし、その裏面に現れる破壊現象を見るため、フェムト秒(千兆分の1秒)の「X線自由電子レーザー」を照射して観察。ピコ秒(1兆分の1秒)の間隔で時間をずらして繰り返し照射し「X線回折イメージング」という方法で作った画像を順番につなげて連続画像を得ることにより、材料が原子レベルで変化する様子がわかった。

 尾崎准教授は「超高速衝突時の動的な破壊の開始や進展のようすをミクロな視点で観察できることを実証しました。宇宙ステーションや航空機などの安全性向上や、耐久性が高い新材料の開発の促進につなげていきたい」と話している。

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