強い毒を持ち、人が刺されると死に至ることもあるという南米原産の「ヒアリ」が5月26日、国内で初めて兵庫県尼崎市内で発見された。ヒアリは米国や中国、オーストラリアなどへ侵入して定着し、死者も出ている。ヒアリとはどんなアリなのか。もし刺されたら、どう対処すればいいのか。環境省や専門家に取材した。
−どんなアリ?
「赤茶色の小型のアリで、腹部は黒っぽい赤色。体長は2・5〜6ミリと、ばらつきがある。攻撃性が強く、漢字では『火蟻』と記し、刺されるとやけどのような激しい痛みが起きるという。体質によっては急性アレルギー反応を起こすため、環境省などは『米国ではこれまでに多くの死者が出ている』と警戒している。人体にとって危険な生物として特定外来生物に指定されている」
−国内で発見された経緯は?
「尼崎市南部で5月26日、中国広州市の南沙港から貨物船で運ばれたコンテナ1個(長さ約12メートル)の中から発見された。環境省外来生物対策室によると『確認できただけで数百匹以上。卵や幼虫、さなぎもいた。コロニー(集団)をつくっていた』。家電製品が入っていたコンテナだった」
「貨物船は同15日に南沙港を出港し、同20日、コンテナは神戸・ポートアイランドに陸揚げされ、同25日まで保管されていた。神戸から車両で尼崎市南部まで運び、同26日に積み荷を取り出す際に、アリのコロニーが見つかった。通関業者が近畿地方環境事務所に報告し、アリのサンプル検査をすることに。その後、神戸市東灘区に陸送し、6月1〜5日に業者がアリを死滅させた後、9日、ヒアリと確定した」
−ヒアリがコンテナの外に広がった可能性は?
「環境省は『ヒアリが見つかった貨物が日本に到着してから消毒までの間に、周辺地域に侵入してしまった可能性も否定できない』とする。このため、コンテナが一時的に置かれていた神戸市内2カ所と尼崎市南部の1カ所の周辺に、アリ専用の捕獲トラップを置く緊急対応を取っている。しかし、そもそも、過去に届いたコンテナにヒアリが付着していて気付いていない可能性や、今後、同じように付着してくるリスクもある、として広く注意を呼び掛けている」
−もし刺されたら、どんな症状が出るのか?
「ヒアリの毒への反応は人によって大きく異なり、軽度から重度まである=表。重度の場合、刺されて数分から数十分の間に声がかれ、息苦しさや激しい動悸、めまいなどを起こすことがあり、昏睡状態になって、生命の危険も伴う。ヒアリの毒には、ハチの毒との共通成分があり、ハチ毒アレルギーを持つ人は特に注意が必要だ」
−ヒアリに刺されたら?
「20〜30分程度、安静にし、体調の変化がないか注意する=表。人によっては容体が急変することがあり、その場合は病院ですぐに治療が必要だ。また、ヒアリを発見したときは、素手で触らないのが大事。熱湯をかけて駆除する方法もあるが、まずは近畿地方環境事務所野生生物課や保健所、警察へ連絡をしてほしい」
同事務所TEL06・4792・0706
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関西福祉大(赤穂市)の勝田吉彰教授(56)=渡航医学=の話 ヒアリは、ネズミや爬虫類などの小さな動物なら集団で食い殺してしまうほど攻撃的。人が毒針で刺されれば、スズメバチに刺されたような痛みが走り、ハチの毒などにアレルギーがある人は特に注意が必要だ。既に台湾での定着が確認されており、今後も入ってくる恐れは十分にある。アリ塚を作ってすみ着くまでに早期発見、早期駆除する必要があり、決して油断はできない。
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