2017年6月5日月曜日

日本株は割安か、真の水準は「1万7500円」の見方も

日本株は海外株と比べて割安と言われる。予想PER(株価収益率)は米ダウ(.DJI)が17倍、日経平均(.N225)は14倍だ。しかし、算出方法に違いがあることは意外と知られていない。

株価と同じ方式で算出した予想1株利益を用いた場合、PERはダウと同水準の17倍、日経平均のフェアバリューは1万7500円になるとの試算もある。

<異なる算出方法>

PERは分子の株価を分母の1株利益で割って算出されるが、日経平均のPERで一般的な「加重平均ベース」は、分母と分子で算出方法に「違い」がある。

分子である株価は、構成する225銘柄について、みなし額面が50円となるように株価を調整したうえで、全銘柄の調整後の株価を合計する。これを除数(現在は26.301)で割った値が日経平均となる。

一方、日本経済新聞社によると、分母の1株利益は225社の時価総額の合計を、225社の利益(同新聞社の予想値)の合計で割って算出される。

日経平均の株価はファーストリテイリング(9983.T)(ウエートは約7%)など値がさ株の影響を受けやすくなるが、1株利益は、トヨタ(7203.T)など時価総額上位の企業の影響が出やすくなる。

米ダウ(.DJI)の場合、指数算出時に日経平均のような銘柄ごとの額面調整はない。PERは「30社の株価の合計を30社のEPS(1株利益)の合計で割ることで求められるのが一般的」(銀行系証券)とされている。

<PERは17倍との試算も>

日経平均が2万円台を回復した6月2日時点での「加重平均ベース」の予想PERは14.39倍。トムソン・ロイターのデータによると、ダウの予想PERは足元で17.44倍となっている。日経平均の割安感は大きくみえる。

しかし、ミョウジョウ・アセット・マネジメントCEOの菊池真氏の試算によると、指数の算出と同様に、個々の企業の予想1株利益(企業側の利益予想がない場合は四季報のデータで代用)について、額面調整を行ったうえで合計し、これを除数で割ると、5月25日時点の日経平均の予想1株利益は約1163円になるという。

この予想1株利益を、同日の日経平均終値で割って算出した予想PERは17.04倍。6月2日終値で算出すると、17.35倍となる。割安感は後退するどころか、ほぼダウと同水準だ。

菊池氏は「指数は変形単純平均にもかかわらず、PERやEPSが時価総額ベースで算出されるのはどう考えてもおかしい。1400円のEPSには信ぴょう性がない」と指摘。「東証1部の予想PERが15倍と仮定し、試算したEPS1163円を掛ければ、日経平均は1万7500円近辺が妥当な水準」と話す。

トムソン・ロイターのデータでは、日経平均の予想PERは足元で17.62倍。ダウの予想PERをわずかに上回っている。

<個別企業の特殊要因も>

低PERの「秘密」は、他にもある。個別企業による特殊要因だ。

日経平均の予想1株利益は5月16日に63円上昇したが、その前日には東芝(6502.T)が監査手続きの完了していない暫定的な業績見通しを発表。最終損益は17年3月期が9500億円の赤字の見通しに対し、18年3月期は500億円の黒字転換を見込み、その分が1株利益を押し上げる要因となったとされる。分母となる1株利益が大きくなれば、PERは低下する。

日本経済新聞社公表ベースでの日経平均の予想1株利益は、安川電機(6506.T)が本決算を発表した4月20日時点で1191円。1カ月あまりで約18%増加したが、市場では「東芝の押し上げ効果が50円程度はある」(準大手証券)との見方もある。

業績予想を開示しないソフトバンクグループ(9984.T)の存在も、225社全体の業績のモメンタムを分かりにくくしている。トムソン・ロイターの集計では、今期純利益に対するアナリスト16人の予想の最小値は5700億円。最大値は9680億円で、その差額は約4000億円と大きい。

日経平均は2万円を回復したが、ドル/円(JPY=)は110円近辺で推移を続けている。輸出企業は今期の想定為替レートを110円に設定したところが多い。円高リスクが意識される中、企業業績のモメンタムが分かりにくくなっており、株価の見通しに影を落としている。

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