2018年6月21日木曜日

中国、輸入制限以外で想定される対米報復シナリオ

トランプ米大統領が年間2000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税を課す方針を表明し、米中貿易紛争は一段と激化した。米国が15日に500億ドル相当の中国製品に25%の追加関税を課す制裁の発動を決めた際に、中国は即座に同規模の米国製品への制裁関税を発表した。

しかし米統計によると中国は昨年の米国からの輸入が1298億9000万ドルと2000億ドルをかなり下回っており、今回は報復として米国と同じ規模で輸入関税を課すことは不可能だ。

中国が取り得る輸入制限以外の対米報復の手段を探った。

●輸入検査の厳格化

米国製品の輸入検査を厳しくしたり、米国製品や米国企業に対して新規制を適用するかもしれない。特定のセクターで事業免許の取得が難しくなる可能性もある。

業界関係者が5月に語ったところによると、米国産の豚肉や自動車、リンゴなどの輸入で、これまで無作為に行われていた検査が厳格化された。中国側からは単に検査手続き上のことだと説明があったという。フェイスブックやアルファベット傘下のグーグルは数年前から中国での製品販売を制限されている。

業界関係者からは、中国が米国製品に対してこうした措置を取れば、欧州や日本、中国国内などの企業に有利に働くとの声が出ている。

●M&Aの阻止

米企業の絡むM&A案件について中国当局から承認を得るのが難しくなるかもしれない。中国は米半導体大手クアルコムによるオランダ半導体大手NXPセミコンダクターズの買収計画をまだ承認していない。

●通貨安誘導

人民元の対ドル相場をより低めに誘導し、米国製品を割高に、中国製品を割安にすることは可能。

ただ、中国当局には2015年の人民元切り下げが資本流出を引き起こし、対応に苦慮した記憶がまだ残っており、こうした政策には慎重だとみるエコノミストもいる。

●米国債の売却

中国は大量に保有する米国債を売却する事態もあり得る。中国の米国債保有残高は3月時点で1兆1880億ドル相当と2017年10月以来の高水準に達している。

もっとも米国債は中国が売却すれば価格が下落し、中国も保有資産の価値が減るため、中国政府は米国債の売却を望まないとの見方もある。中国にとっては、自らの首を絞める恐れがある市場の混乱を招く危険は冒さず、個別の米企業への態度を厳しくする公算が大きい。

●米国製品の不買運動

中国の消費者の間で米国製品の不買運動も発生するかもしれない。中国では昨年、韓国が米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を認めたことへの反発が広がり、韓国製品のボイコットが起きた。

中国から米国への旅行者が減ることもあり得る。米国を訪れる中国人は年300万人程度。

●禁輸措置

極端な対応策として米国製品の輸入を禁止するという手もある。中国がこうした措置を取れば米中二国間の通商関係は著しく損なわれ、世界貿易に大きな混乱をもたらすだろう。

米国は1950─72年にかけて中国製品の輸入を禁止していた。

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