日本マイクロソフトは2018年6月20日、教育分野向けの新施策を発表した。文部科学省が発表した「新学習指導要領」の実践を目指す全国の小中高等学校を対象に、ICT環境構築や同社の学校向けアプリケーション群「Microsoft 365 Education」や「Windows 10」対応端末を使った授業を支援する。また、教員の勤務時間を可視化できるツールの運用を通じて、今後より多くの学習内容を取り扱うことになる教員の業務負担軽減に取り組む。
同社は、「今教育を受ける子どもたちが大人になって職場で活躍するために必要な能力」として、「議論しあう力」「協働しあう力」「疑問を残さない思考性」「創造性」「好奇心」「計算論的思考」の6つからなる「Future-ready skills(フューチャー レディ スキルズ)」を発表し、日本の教育関係者が現場での教育目標として使えるFuture-ready skillsの「ルーブリック(レベル別の段階的な指標)」を公開した。
6月20日に行われた記者説明会で、日本マイクロソフトの文教営業統括本部を率いる中井陽子氏は「さまざまな価値観や背景を持つ人が一緒に働くのが当たり前になり、スマートフォンなどの端末を使って一度にさまざまな情報が手に入る時代、そうした技術を柔軟に役立て、多様性の中で自分独自の能力をいち早く見つけられることがカギになる」と語った。
同社の教育分野向け施策の柱になるMicrosoft 365 Educationは、「Microsoft Words」や「Microsoft PowerPoint」の他、コラボレーションツール「Microsoft Teams」や「Skype」「Windows Mixed Reality」「Minecraft for Windows 10」などを使え、リアルタイムのコミュニケーションを使った授業を支える仕組みだ。日本マイクロソフトは、こうしたツールを教育現場で活用する方法を記した冊子『できる2020年教育改革 基本編 Microsoft 365 Education対応』を無料配布する。
同社は、2018年2月から一般財団法人日本視聴覚教育協会が全国の学校におけるICT教育環境の充実を目的に開始した「スキップモデル校プロジェクト」に協力企業として参加。全国から参加する8つの自治体に、ルーブリック活用のためのICT環境を貸し出している。
こうした自治体の1つである北海道から参加した、道立教育研究所の北村善春所長は、「人口減少が進む北海道で、地域に貢献する人材の育成に取り組みたい」と話し、今後取り組むICT活用や地域と連携した教育方針を紹介した。例えば、北海道上川郡清水町にある清水高校では、スキップモデル校の1つとして、ルーブリックを活用した指導内容の向上や人材育成方法の検証、クラウドを活用した教員の業務効率化に取り組むという。
「北海道では、人口減少が進む中、地域に貢献する人材をどう育成するかが課題だ。地域や学校の課題はそれぞれ異なるため、ルーブリックはあくまで参考であり、与えられた課題をただこなすだけでは学校や地域の成長にならない。実際には、教育関係者と自治体が、現実的な課題や目的を反映した具体的な指導内容を共同で作り上げ、その結果を検証していく過程が重要になるだろう」(北村氏)
日本マイクロソフトは今後、同社製品を使う全世界の教員が情報をやりとりできるネットワークや、各ツール活用に向けた研修プログラムを備えた「Microsoft Innovative Education Programs」などを通して、同プロジェクトに参加する自治体や学校をより増やしていく狙いだ。一部の学校では、こうしたネットワークを通じて日本と国外の学校が連携した授業なども始まっているという。
同社のパブリックセクター事業本部長を務める佐藤知成氏は「Windowsは、自治体や学校で使われるOSとして、シェアが圧倒的に大きい。(日本マイクロソフトが)積極的に教育向け施策を進めることで、次世代の人材育成に貢献したい」と話した。
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