18日の地震で強い揺れに襲われた大阪大超高圧電子顕微鏡センター(大阪府茨木市)では、1台約23億円する電子顕微鏡2台が損傷し、復旧に1年以上かかる見通しだ。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った世界初の心臓病治療を目指す阪大の研究も遅れが心配されるなど、世界トップクラスの研究が停滞する懸念が出ている。
同センターには、世界最高電圧で厚い試料でも観察できる「300万ボルト超高圧電子顕微鏡」(高さ17メートル)と、原子一つ一つの動きを1秒間に1600回撮影できる「物質・生命科学超高圧電子顕微鏡」(同12メートル)の2台がある。物質や生物の微細構造から放射線で物質が傷つく様子までナノメートル(ナノは10億分の1)サイズで観察できる。
今回の地震では高電圧を発生させる部品が脱落し、精密さが要求される電子加速器が大きくゆがむなど、2台とも致命的な被害を受けた。保田英洋センター長(材料物性工学)は「壊滅状態だ。メーカーや町工場と相談して修理を試みるが、完全復旧には1年以上かかる」と肩を落とす。
一方、同府吹田市の阪大病院は20日夕まで、4階にある施設を立ち入り禁止にした。有害物質を扱う部屋もあり、余震で内部に人が閉じ込められる事態を避けるためだった。
この施設では澤芳樹教授(心臓血管外科)らが、心臓の筋肉細胞をシート状にして重症心臓病患者に移植する臨床研究用のiPS細胞を培養していた。地震で必要な栄養管理が中断し、培養をやり直すことに。年度内を目指す世界初の移植は遅れる可能性がある。
同市の関西大千里山キャンパスでも、4階建て実験棟で最上階の天井裏を通る給水配管が破断し、実験室が水浸しになった。漏電を防ぐため、完全に乾くまで一部の部屋を使用禁止にしている。
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