2018年6月1日金曜日

<東芝メモリ>前途多難、1日売却 半導体価格下落の恐れも

 東芝は1日、半導体メモリー子会社「東芝メモリ」を米ファンドのベインキャピタルなど「日米韓連合」に総額2兆円で売却する。世界の半導体市場は活況が続いており、今後も東芝メモリには高い成長が期待されている。ただ、ライバルの中韓勢が増産に走れば、市場価格が下落する恐れもあり、前途は楽観できない。

 東芝は米原発事業で巨額損失を抱え、2017年3月期には債務超過に転落。その解消を目指し、17年2月に営業利益の約9割を稼ぐ半導体メモリー事業を「東芝メモリ」として分社化し売却する方針を固めた。各国のライバルメーカーによる争奪戦の結果、同年9月にベインや韓国半導体大手SKハイニックス、米アップル、日本の光学ガラスメーカーHOYAなど取引先を中心とする日米韓連合への売却が決まった。

 東芝も東芝メモリ株式のうち40.2%を保有し、HOYAの分も含めると日本勢が議決権の50.1%を握る。残る49.9%をベインが保有するが、「日本勢が過半を保有することで、国外への技術流出を防ぐ狙いがある」(経済産業省幹部)。SKやアップルは株式に転換できる社債や議決権のない優先株で資金を出す。

 東芝のメモリー事業は、スマートフォンや大量の情報を記憶するデータセンター向けの需要が急増し18年3月期には売上高が約1兆2000億円、営業利益は約4700億円と過去最高を更新。日米韓連合を主導するベインは3年後をめどに東芝メモリを東京証券取引所に上場させる方針で、保有株を売って売却益を得る考えだ。

 好況な市場を背景に今後も高収益が期待される東芝メモリ。しかし課題は山積する。世界トップの韓国サムスン電子や急伸する中国半導体大手などとの激しい競争にさらされており、「開発競争で後手に回るかもしれない」(東芝メモリ関係者)との危機感は根強い。

 一方、メモリー市況が変化した場合、東芝メモリが現在の収益水準を維持できるかも懸念されている。技術開発には多額の投資が必要で18年3月期の投資額は約5700億円に達した。「収益水準を維持できなければ開発投資にも回せなくなる」(東芝関係者)ため、追加出資や融資を確保できるかが生き残りのカギを握る。

 英調査会社IHSマークイットの南川明主席アナリストは「これから量産を始める中国メーカーが供給過多を招き、メモリー価格が値崩れする恐れがある」と予想。その上で「市況の変化に左右されないようDRAM(ディーラム)など別の半導体のライセンス取得が急務」と指摘する。

 ◇キーワード・メモリー市場

 東芝が1987年に発明し世界で初めて量産に成功したNAND型フラッシュメモリー。当初は記憶媒体としてSDカードなどに組み込まれ、近年はスマートフォンなどに使われている。スマホ普及に伴いメモリー需要も急増。英調査会社IHSマークイットによると、2017年の市場規模は金額ベースで前年比40%以上伸びたが、中国メーカーが今後、量産体制に入れば価格下落も予想されている。17年の世界シェアは韓国サムスン電子(38.7%)が首位。2位の東芝メモリ(16.5%)と協業するウエスタン・デジタル(15.2%)を合算してもサムスンには及ばない。東芝メモリは量産体制の強化に向け、四日市工場(三重県)に新製造棟を建設中。

0 件のコメント:

コメントを投稿