なくなったのではない。大切なものを、手に入れたのだ。
『イライラしない人の63の習慣』
リーダーとして、大事なメンタル力は、イライラしない力です。一流のリーダーは、どんな事態であっても、眉一つ動かしません。二流のリーダーは、ささいなことでも、イライラしています。
イライラする原因は、「自分が今まで持っていたものがなくなるのではないか」という喪失感です。何かが手に入る時は、別にイライラはありません。あったと思ったものがなくなる、来たと思ったタクシーがとられるという喪失感でイライラするのです。
人生において、なくなるものは一つもありません。全ては交換です。なくなるのではなく、もっといいもの、もっと大切なものが手に入るのです。
例えば、モノがなくなる、恋人がいなくなる、仕事がなくなる、肉親が亡くなる……、そういう時は、必ず新しい何かが入ってきます。それはモノ、ヒト、カネに限りません。そのものがなくなることによって、何かを学びます。
それも大切な何かが入ってくるということです。自分が持っているものがなくなって、もっといいものが来た時に、イライラはなくなって、ニコニコになるのです。イライラするのは、なくなっただけで、次のものがまだ入ってこない時です。
例えば、恋人にフラれてワンワン泣いていた女性が、もっといい彼と巡り合うと、突然、「別れてよかった」と言い始めます。さっきまで泣いていた人はどこに行ったのかという話です。その人自身には、何の変化もないのです。もっといい恋人があらわれたなら、分かりやすいです。
大切なものが手に入っても、気付かないことがあるのです。なくなったものばかり見て、手に入っているものを見ないからです。人間は、自分の手に入っているものは、あえてフォーカスして見ようとしません。「あれがなくなった」とか「あの人が去った」とかいうところばかり見るのです。
なくなった時には、必ず交換で何かが手に入っています。まずは、それに気付くことです。そうすれば、イライラはなくなります。まだ手に入っていなくても、間もなくそれはやって来ます。
例えば、来月、海外旅行に行く人がいます。まだ「海外旅行」自体は起こっていません。それでもイライラしないのは、ワクワクしているからです。ところが、まだ連絡が来ないということにはイライラします。まだ起こっていない出来事にイライラするか、ワクワクするかは、その人自身が判断することなのです。手に入れたものに気付くことで、イライラは消えるのです。
神様になろうとすると、イライラする。神様の手伝いをすると、イライラしない。
まじめなリーダーほど、イライラします。いいリーダーじゃないから、イライラしないのではありません。いい人かどうかは、イライラするかどうかとは、関係のない話です。イライラする人ほど、まじめで、一生懸命で、いい人です。
まじめで、一生懸命で、いい人になるとイライラしなくなるかというと、そんなことはないのです。「ちゃんとしなさい」と言われて、ちゃんとしていてもイライラはなくなりません。むしろ、ちゃんとしようと思えば思うほど、イライラします。
それが完璧主義です。完璧主義の人は、究極、神様になろうとしています。あれもこれも、これもあれも、全部しようとしているのです。「私はこんなに一生懸命、部下を育てようとしているのに、ちっとも分かってくれない」と言いますが、部下からは「大きなお世話です。それはパワハラですよ」と言われてしまいます。
よかれと思ってしていることが受け入れられないと、ますますイライラします。それは神様になろうとしているからです。イライラしないためには、神様になろうとするのではなく、神様の手伝いをしようと思えばいいのです。
手伝いをしている時、人間はイライラしません。自分より上の完璧な人の手伝いをするのだから、自分が完璧でなくてもいいからです。
「これくらいできれば御の字」と考えられるのです。「○○できれば御の字」という昔ながらの言い方で、イライラを防ぐことができます。イライラする人には「○○できれば御の字」という発想がありません。「まだこれができていないし」「もっとこれもできたはずだし」と言うのです。
教祖になるか、伝道者になるかの分かれ目です。100%の完璧主義者は教祖を目指しています。教祖と伝道者は、どちらも同じように信じています。ただし、教祖は自分が完璧だと思っています。伝道者は、職人さんです。職人さんは、完璧は不可能であることを知っています。
ここからまた、
(1)完璧は不可能だから、一生懸命しなくていい
(2)完璧は不可能でも、限りなく100%を目指そう
という2通りに分かれます。
100%を目指し、昨日より今日、今日より明日を少しでもよくしようと考えるのが、プロのリーダーなのです。神様の手伝いをしようと考えると、イライラはなくなるのです。
イライラは、うしろめたさから生まれる。
イライラして、「私は正しくて、上司は間違っている」「私は正しくて、お客さまが間違っている」というふうに考える人はリーダーではありません。イライラするのは、自分の中に、どこか後ろめたいことがあるからです。その後ろめたさをカバーするために、イライラすることでごまかそうとしているところがあるのです。
例えば、ビジネススクールの授業でも、宿題をちゃんとしてきて、今日の授業の準備をしてきている人は落ちついています。宿題をしてきていない人の方がイライラして、ちょっとしたことでキレやすいのです。本来、キレていいのは、ちゃんと準備をしてきた人です。「私はこんなに授業の準備をしているのに、みんなはなんだ」と怒るなら、分かります。
実際は逆です。準備してきた人はイライラしません。準備が足りない人は、「準備の足りなさをツッコまれたらどうしよう」→「準備が足りないのは、自分も分かっている」→「何であの時、準備しなかったんだろう」→「でも、忙しかったから仕方ない」→「でも、それは言い訳だよね」……と、自分の中でクヨクヨして、ヘトヘトになった状態でイライラするのです。
イライラは、体や脳を使っている時ではなく、気を使っている時に起こります。気を使うと、ムダなエネルギーを消耗します。疲れ切った状態で、訳も分からずイライラするのです。
イライラしている人は、自分がどうしてイライラしているのか、分かりません。さらには、イライラしている自分にも気付きません。まわりから「何をイライラしているの」と言われるから、「イライラなんかしていないよ!」と、余計にイライラするのです。
イライラをなくすためには、準備をすることです。あらゆる仕事に準備があります。準備をすれば、余裕を持てます。余裕がなくなると、イライラするのです。余裕を生み出すために、準備をするのが、一流のリーダーなのです。
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