2018年6月23日土曜日

記録の関連付けは扁桃体のエングラム細胞が担っている


富山大学の研究グループが、シナプス特異性によって記憶のアイデンティティ(個々の記憶がそれぞれ異なるものとして認識されること)が保たれていることをマウス実験で明らかにしたと発表した(科学技術振興機構の発表朝日新聞Science誌掲載論文)。

独立した記憶同士が関連付けられて新しい記憶が形成されることはすでに知られているが、こういった相互作用が起きても個々の記憶のアイデンティティが保たれている原理については今まで不明だった。

研究グループはマウスを用いた実験で、アニソマイシン投与によるタンパク質合成の阻害によって部分的な健忘が、タットベクリンとアニソマイシンの投与によって完全な健忘が引き起こされることを確認。完全な健忘状態では扁桃体のエングラムが消失しているしていることも確認したという。

また、7kHzのブザーの音を流した上で電気ショックを与え、音と電気ショックの関連付け記憶を形成させた後、5時間後または24時間後に今度は2kHzの音を流した上で電気ショックを与えると、5時間後の場合は2kHzのブザー音に対する反応が増大したという。これは2つの記憶の間に相互作用が形成されたことを示しており、それぞれの固体に対して記憶を担うエングラム細胞集団を調べたところ、5時間後に2kHzのブザー音+ショックを与えた固体では、24時間後に与えた固体と比べてエングラム細胞の共有率が高くなっていることが分かったという。このことから、記憶の相互作用は扁桃体に存在するエングラム細胞の共有化によって行われていると判断できるとのこと。

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