2018年6月19日火曜日

転職に失敗した40代 みんなが口にする3つの「失言」

 40代のミドルともなれば、すでに転職を経験されていたり、自社の中で異動や昇進、ときには出向などの経験を積むなど、キャリア形成についてしっかりした見識をお持ちの方がほとんどです。ところが、いざ転職の面接に臨むと等しく陥るワナ、皆さんが共通して口にしてしまう失言の3大ワードがあるのです。それは「転職動機」「退職理由」「志望度」について。いったいどんな失言をしてしまうのでしょうか。

■転職動機を聞かれ、「年収」「肩書」を答える

 失言その1は「転職動機」についてです。

 某中堅メーカー勤務、40代の営業部長Aさんは、商材は異なるものの営業先が重なる企業の法人営業部門責任者の求人にエントリーし、無事に書類選考を通過、人事部長との面接に進みました。その企業の報酬条件はなかなかよいもので、求人情報を見ると、現職よりも100万~200万円アップする可能性がありそうです。

 Aさんは面接で、まず事前に提出してある職務経歴書の内容について確認があった上で、「それでAさんは今回、どうして転職をお考えなのですか」と聞かれました。

 「はい、やはり年収と肩書を上げ、キャリアアップしたいと考えています」

 「……そうですか」

 心なしか人事部長の表情が曇ったような気がしましたが、そのままいくつかの質問を受け面接は終了。1週間後に間に入っていた転職エージェント経由で、「ご縁がなかった」旨の連絡を受けました。

 転職動機を尋ねられて、「年収」「肩書」と答える方は、ミドル世代でも非常に多いようです。何がいけないのでしょうか。

 もちろん、より多くの収入が欲しい、より大きな権限が欲しいと望むこと自体は悪いことでもおかしなことでもありません。しかし、この「年収」や「肩書」は、あくまでも結果であり、手段です。私自身は日々、マネジメント層の方々とお会いし転職相談を受けていますが、彼らがよく口にする「より経営に近い仕事に就きたい」も同じです。

 40代の転職失敗者は、結果や手段にこだわる発言に終始し、そもそもの「仕事の目的・テーマ・貢献姿勢」が欠如してしまっていることが多いのです。「キャリアアップ」「◯◯を学ばせてもらえる」も、20代の若手ならいざ知らず、40代が口にするのはかなりイケていません。

 要するに、これらの共通項はすべて「転職希望者であるあなたが欲しいもの」、逆に言えば企業側が提供するものであって、あなたが企業に提供するものではありません。

 相手先企業はあなたに「年収」「肩書」「キャリアアップ」「◯◯が学べる場」「より経営に近い仕事」を提供するのは構わないけれども、そんなあなたはいったい我が社にどのような貢献をしてくださるのか。当然、採用側の経営者や人事はそう思うわけです。

 念のため繰り返しますが、年収や肩書、キャリアアップなどを求めてはいけないわけではありません。当然そうしたことが「結果として」手に入らなければ、やりがいも成長もありませんから、転職の動機もないでしょうし、次の会社で働くモチベーションが湧くはずがないですよね。

 しかし、まず先に応募先企業に提供すべきものは、あなたの仕事力やテーマ、貢献可能性です。それが先方に魅力的で、価値あるものとすれば、その見返りとしてやりがいと責任のある職務、相応の年収が付いてくるのです。

■退職理由を聞かれ、現職批判を繰り広げる

 失言その2は「退職理由」について。

 退職理由を尋ねられ、「現職企業の経営者や上司のやり方が間違っている(自分の考えと合わない、違和感があるなど)」ということを、とうとうと語る40代も非常に多くいらっしゃいます。

 もちろん、それなりの立場であるが故に、自社の内情が見えたり、場合によっては経営者のかなりディープなネガティブ情報に接したり。

 それに対して忖度(そんたく)せざるを得ないようなことに直面し、「自分が正しいと思うことをねじ曲げて仕事をするのはいかがなものか」、あるいはそれらが企業としてのコンプライアンスに抵触しているような状況から、「このまま関わり続けること自体が自身の今後のキャリア上もリスクの大きいことになりそうだ」など、悩むのは当然のことでしょう。

 こうした事態に陥ったので転職したいという実情は、私も多く見てきましたし、それが事実であれば当然、遠慮なく現職から早期脱出すべきと考え、全力で新天地のご紹介を支援させていただいています。

 ただ、この「現職企業がおかしい」「自分の考えと合わない」「違和感がある」といった退職理由の場合、次のようなことについてちょっと確認していただきたいのです。

●間違っているのはあなたのほうかもしれません

 現場の限られた視界からは正しく見えたり当たり前と思ったりしていることが、経営レベルの視界から見ると「それはまずい」「全体からみたらやるべきではない」というケースは決して少なくありません。ご自身の視座についていま一度確認してみてもよいでしょう。

●起きている状況は分かった。そのことについて社長や経営陣、上司に相談や提案、意見したか

 40代の方々が、仮に会社の間違った判断や行動があったとしても、黙って見過ごしたのでは困ります。会社や部署のことを考えれば、改善改革の提案をできてこそ、有能なミドル。実際、転職面談などでこういったことが現職で起きているとお聞きした際に、「社長や上司と相談してみましたか」と問うと、かなり多くの割合で「いえ、まだ話をしていません」と。

 転職活動を始める前に、まずは現職で対応してみたほうがよいですよね。こうしたケースで、何割かの方々が改めて社長や上司に相談や提案をしてみたところ、ちゃんと理解され、受け入れられて良い方向に向かい、現職に踏みとどまることになりました。

●うちに来ても、同じことを言うんじゃないの

 面接でこういう話をしたとき、特に社長が面接相手のときは確実に頭の中でこう思っています。「なんだ、この人、現職で社長や上司には言わずに、ここで不満をただ言っている。ということは、うちに来ても、いずれ同じようなことを思って、俺には言わずに、外で言い回るようになるんだろうな」と。採用結果は言わずもがな、ですよね。

■志望度を聞かれ、漠然と「興味あります」と答える

 失言その3は「応募企業に対する志望度」についてです。

 一次面接から最終面接に進み、それを終えるまで、応募企業側から(間に人材エージェントが入っている場合は担当者を経由して)、折々に、その会社に対する志望度を聞かれるでしょう。その際に、漠然と「大丈夫です」「興味あります」と答える人もまた、非常に多いのです。

  総論的にしか答えない(答えられない)ということは、相手は「当社にさほどの興味はないのだろうな」「深く掘り下げて理解する力に疑問があるな」と思います。「興味なさそう=我が社にコミットしてもらうことを期待しにくい」「深く掘り下げない=業務理解力や職務遂行力に不安を感じる」という判断となります。

 いずれにしても40代ミドルの即戦力採用で、こうした人を最終的に採用することはまずありません。

 「転職動機」「退職理由」「志望度」の3大失言ワードは、いずれも決してご本人には悪気や悪意はないものばかりです。しかし、だからこそ案外気づかず、面接の場で失態を犯し、せっかくのご縁を逸することになる――。読者の皆さまは、ぜひこんなワナにはまることなく、良縁を獲得していただけるよう願っています。

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