2018年7月4日水曜日

日本人は中国の見方が小学生レベル、在日新華僑の忠告

『週刊ダイヤモンド』7月7日号第1特集は「ニッポンの中国人 全解明」です。日本にいる中国人、在日中国人の数は右肩上がりで、現在の在留数は71万人(2017年6月時点。台湾を除く)です。ここに日本国籍を取得した「華人」や不法在留者を含めると、近く在日中国人100万人時代を迎えると見られています。今後、会社や学校、地域社会で、中国人が"隣人"となるケースが増えるはずです。また、変わったのは数だけではありません。中身も多くの日本人が抱くイメージとは、かけ離れつつあります。拡大する在日中国人は、日本の社会や企業にどんな影響を与えるのでしょうか。ここでは、日本で最も成功した新華僑と言われる、CRO(医薬品開発業務受託機関)の国内最大手、EPSホールディングスの厳浩会長のインタビューを掲載します。

EPSホールディングス会長・巌浩氏
げん・こう/1962年中国江蘇省生まれ。天津大学在学中、山梨大学工学部に留学。同修士課程を経て東京大学博士課程に進む。医学統計解析のアルバイトをきっかけに、91年、製薬会社の業務支援を行うEPSを創業。

——日本にいる中国人はどのように変わってきていますか。

 昔の在日華僑は微々たるもので、いわゆる「老華僑」と呼ばれる人たちは5万人程度。中華街で飲食業を中心に営み、生活していました。

 それが�小平の開放政策を境に、様変わりします。私は1981年に来日した典型的な「新華僑」。中央政府の国費留学生として来日しましたが、その後、各省の公的費用留学、さらに80年代後半には私費留学がブームとなり、上海や北京から続々と若者が来日しました。

 そして90年代になると今度は高校を出ていない人たちが卒業証書を偽造するなどして不法入国するようになり、一気に母集団が大きくなった。これが犯罪の増加や華僑に対する悪いイメージを植え付ける原因になったわけです。

 こうした変遷を経て、ようやく今、在日中国人社会は「等身大の中国」になってきました。つまり、料理人だけでも、粒ぞろいの優秀層だけでもなく、悪人ばかりでもない。在日華僑・華人が100万人規模になり、ハイレベル人材からワーカーまで幅広い層がいて、まさしく「中国の縮図」になってきました。

——そうした中で日本人の華僑に対する意識はどうですか。

 日本人は異文化の見方が"小学生レベル"。こうした変化を認識し、旧態依然とした価値観から早く卒業した方がいいと思います。

——日本企業の中国人活用はどのように変わるでしょうか。

 日本企業が中国人を活用する目的は二つあって、一つは現場の労働力。もう一つは中国市場を攻略するための人材です。前者については単純労働を担う外国人の受け入れ拡大政策が示された一方、後者は企業にとって大きな課題です。

 日本には優れた商品や技術があるのに、売るのが下手だといわれて久しいです。これを解決できないまま、日本製品の優位性が絶対的なものではなくなり、特殊な素材などを除いて大半のものは中国でも作れるようになりました。ということは、中国で日本製品を売るには、従来とは異なる新たな戦略を練らなければ勝ち目はない。

 そのためには中国市場に深く入り込んでいける経営者視点を持った人材が不可欠です。普通に考えると日本で言葉や商習慣を学んだ中国人が前線に出るのが適切ですが、日本の大企業は外国の人材を日本人幹部の"随行員"扱いにして、通訳やサポートの仕事ばかり。人材を活用できていない。

——日本企業は世界で戦うスピード感が乏しいともいわれます。

 日本は自前主義。対して中国は春秋戦国時代から合従連衡が当たり前の戦術です。常にパートナーを探して、互いのリソースをうまく活用すればいいという考え方。そのためには机の上では握手しながら、下では蹴り合うのも平気(笑)。生真面目な性質の日本人は、こうした手法は苦手ですよね。

 中国は王朝が栄枯盛衰してきた歴史から、新陳代謝が好まれます。一方、日本は持続性に価値を置く文化。「万世一系の国」ですから。

 例えば毎年3%成長が10年見込める事業と、15%成長が3年見込める事業があったとします。間違いなく日本企業は前者、中国企業は後者を好むでしょう。

——在日中国人と日本人社会の関係は今後どうなるでしょう。

 訪日中国人の急増もあり、華僑・華人企業はどんどんオープンになってきています。この流れは必然的で、より加速するはずです。

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