中国政府による廃プラの輸入停止措置発動以来、金輝でも約400人いた従業員のうち、250人を一時解雇した。ただし、マレーシアでは新たに600人を採用している。マレーシア工場は、ほぼ完全に中国の機器やテクノロジーを使って設立された。
中国プラスチック廃棄物協会(CSPA)によれば、中国のリサイクル事業者のうち、東南アジアに専門スタッフや設備、廃棄物サプライチェーンを移転させた事業者は、全体の3分の1に当たる1000社を超えるという。金輝もその1つだ。
移転に伴う総投資額は約100億元(約1665億円)に上ると推定されているが、CSPAはその内訳を明らかにしていない。
中国が、プラスチックを含む24種類の廃棄物輸入を停止すると決めたのは昨年7月。経済の近代化を図るとともに、河川の流れを妨げたり、都市周辺に広がるゴミ廃棄場に未処理のまま放置されたりする国内廃棄物増大に対処する取組みの一環だ。
ただでさえ国内の廃棄物問題に頭を悩ませていた東南アジア諸国も、廃棄物輸入が増大する中で、中国と同じ問題に取り組まざるを得なくなっている。
中国による輸入停止措置は世界的なサプライチェーンの混乱を招いている。これまでは、主として欧州や米国からのプラスチック廃棄物700万トン以上が、毎年中国の港湾に運び込まれていたからだ。
従来の供給を閉ざされてしまった中国のリサイクル業者は、米国や英国といった国々からの廃棄物輸入を受けられる国外拠点に、処理能力400万トン相当の設備を新設・操業していると、CSPAのWang Wang会長は指摘する。それでも、リサイクル用の廃プラ供給は約600─800万トン減少しており、これを相殺するにはまだ不十分だ。
「CSPA加盟企業に関する限り、まだ十分な原料が得られないという状況だ」とWang会長は語る。
国内廃棄物の利用拡大に向けた、リサイクル業者による取り組みの進捗は遅れている。CSPAのデータによれば、国内供給される廃プラに切り替えることができたのは、国内事業者の5%にすぎない。
「輸入原料の扱いと国内原料の扱いは経路が非常に異なっており、切り替えには時間がかかる」と金輝のホー会長は語る。
政府による停止措置が突然だったため、業界が十分対応できる時間の余裕がなく、通常は小規模な違法事業者が処理する国内廃棄物の扱いを、大規模化や標準化するために必要な政策も、中国ではまだ準備されていないと、リサイクル業者は現況の厳しさを説明する。
輸入原料が最善の選択だと考える事者は、マレーシアやタイといった国に移転することで、処理済みの輸入廃プラを、より品質の高い形で中国に供給できると考えた。だが、そうした出荷は遅れがちだ。
輸入されるペレットが基準を厳密に満たしているか、低品質の廃プラを密輸するためにコンテナが使われていないか、確認するために税関の貨物検査ははるかに厳しくなった、とホー会長は指摘する。
規制拡大の懸念
廃プラの輸出先を東南アジア諸国へシフトすることで、欧州企業にとっては、中国の輸入停止措置が招いた混乱は、ある程度緩和された。
「依然としてかなりの量を輸出しているが、輸出先はこれまでと違う」と語るのは、英国プラスチック事業者連盟のリサイクル部会を率いるドジャー・ベイナム氏だ。
だが、タイやベトナムといった国々に廃プラが蓄積されるなかで、中国のリサイクル事業者はさらなるリスクに直面している。
「廃棄物を引き受けることを、どの国も望んでいない。われわれの業界では、こうした国々も独自の制約を設けるのではないかと懸念している」と中国駐在の海外リサイクル会社幹部は語った。
CSPAによれば、タイは規制強化と輸入関税引き上げを進めており、中国が投資した輸入事者がすでに1社閉鎖を余儀なくされた。マレーシアも5月中旬、新規の輸入許可申請を一時的に停止している。
金輝のホー会長会長は、環境への関心が高まるなかで、東南アジア全域で輸入規制が厳しくなる恐れがあると警鐘を鳴らす。
「中国がこの種の輸入を再開することはありえない」と同会長は言う。「(東南アジアも)国際標準に近づき、規制が厳しくなるだろう」
中国の輸入停止や他の国々による規制強化で、最終的には、廃棄物を排出する国が、自国でリサイクルの取組みを強化するよう迫られる可能性がある、と英プラスチック事業者連盟のベイナム氏は語る。
「皮肉なことに、こうした取り組みに勢いを与えてきたのは、英国のような先進経済ではなく、中国だった。英国はこれまで、リサイクル戦略という点では、免罪符を与えられて安穏としていた」と彼は言う。 「先進国、特に英国は一歩踏み出すべき時が来た」
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