インドのモディ首相が通貨改革を進めている。昨年11月に500ルピー札と1000ルピー札を廃止した(法的通貨ではなくなった)。そして、新たに2000ルピー札を発行した。廃止したものより高額な紙幣を発行しているわけで、論考や報道で「高額紙幣の廃止」と言ってるのは違和感がある。 改革の目的は、テロ資金としてパキスタンから入ってくる大量の偽札(400枚に1枚)をはじき出す面もあったが、なんといっても地下経済のあぶり出しである。インドの商取引は現金取引がほとんどで、クレジットカード取引はスキミング等のリスクもあり2%程度のシェアとなっている。
インドで現金取引比率が高いことは、地下経済が蔓延っていることを意味する。現金取引は当局が捕捉できないため、まともに所得税を払っているのは人口の3%程度といわれている。今回の改革で、銀行での紙幣の交換、口座への入金時に当局は資金・財産を捕捉することができる。この効果が大きい。
地下経済が蔓延っているインドでは、貯蓄のうちタンス預金の比率が約半分で、GDPの約4割が地下経済といわれている。ということは、改革によりインドのGDPが今後、一気に大きく(4割か)増加することも予想できる。さらに今年、15に分かれていた異なる税制をまとめ、全国統一物品・サービス税(GST)が導入され、経済もより効率化される。
通貨改革が導入された当初は、そもそもの新紙幣の印刷が間に合っていなかったのと、富裕層だけでなく庶民も財産を捕捉されることを嫌がり、一時的に消費が減り経済は低迷した。しかしその後、紙幣の交換も順調に進み、交換対象であった紙幣合計15兆ルピーのうち12兆ルピーが回収された。残る3兆ルピーは脱税発覚回避のために廃棄されたと考えられる。3月には地方選挙をこなし、4月にはインドのムンバイ証券取引所の株価指数SENSEXが最高値を更新、モディ首相の経済革命は成功したといっていい。
少子高齢化が進む中国、若いインド
現在、最近まで一人っ子政策下にあった中国の人口が13.8億人で第1四半期の成長率が6.9%、ヒンズー教で子だくさんなインドが13.1億人・7%となっており、インドが経済大国として中国を追い抜く日も、それほど遠くないであろう。
最近日本で起きた金銭取引関係のさまざまな事件でもそうだが、現金取引というものはやや怪しい雰囲気が漂う。金は現金取引で最近、トラブルが多いが、現金はマネーロンダリングに利用されることも多い。計画では高額の2000ルピー紙幣は厳格なマネロン管理のために発行する予定ではなかったが、それでは経済が回らないのではないかという懸念から追加発行された。
世界的にもマネロンの観点から、欧州では500ユーロ札が廃止される。米国では日常生活では使われない100ドル札の廃止の可能性も高い。日本でも1万円札の廃止が検討されている。わが国も現金取引が多いが、やはり脱税にも利用されており、現金決済比率を下げようという方向性は2020年東京五輪のためだけではなく、マイナンバーと共に脱税捕捉のためでもあろう。
ITが進んでいるインドではこれを機に、インド決済公社の電子マネー「ル・ペイ」を推進し、電子決済大手の「ペイtm」に至っては取引が3倍にもなっている。しかも、5億人の国民が銀行口座を持っていない。インドならではのITを使った、フィンテック系「決済インフラ」の進化と普及がさらに進む可能性も高い。
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