中国で「インターネット+(プラス)」が進められている。製造業をはじめとする従来産業の競争力を、インターネットや先端技術で高めようという政策だ。
これを加速させるドライバーのひとつとして、AI領域が活況な投資対象となっており、AI界のユニコーン企業(未上場で時価総額が10億ドル=約1000億円を超えるスタートアップ企業)の輩出を目指す投資企業から熱視線が送られている。
過去1年で68億元(約1088億円)をAI領域に投資している中国の動きは早く、すでに投資先の選択と集中の動きも始まっている。データバンク企業「企名方社」が発表した「2017年AI産業マップ」(2017年3月)によると、現在、中国国内のAI系企業は約1000社で、その半数がすでに資金調達に成功しているという。
2016年に限れば約284社が資金調達に成功しているが、その約80%がシリーズA以下で1000万元(約1億6000万円)が多く、まだ未成熟な産業であった。しかし2017年3月時点での資金調達件数は36件に上るうえ、その半数が1000万元(約1億6000万円)超え、すでに1億元(約16億円)超えの案件も登場。さらなる大型調達による事業拡大、産業成長への期待も高まっている。また、大手企業もスタートアップが持つコアな技術に高い関心を寄せ始めており、買収案件も増えていくことが予想されている。
大型調達を成功させた企業には、顔認識技術を軸にセキュリティ、高度金融サービス、高度交通システム等によるソリューションを提供する「北京深醒科技社」、音声言語ビッグデータ分析を軸に音声認識システム開発を行う「中訳語通科技社」、運転補助及び自動運転システム開発を行う「縱目科技社」がある。
自動走行分野は縱目科技社以外にも大型資金調達が相次いでおり、中国企業として先頭を走る百度(バイドゥ)を筆頭に最も注目されている領域となっている。百度が進め、マイクロソフト含め数社が参画を発表している自動運転システム開発プロジェクト「アポロ計画」と、グーグル陣営との勝負からも目が離せそうにない。
中国市場の特異性
グーグルの元グローバル副社長兼中華エリア総裁を務め、現在投資・インキュベーションを行う創新工場董事長・李開復氏は次のように話している。
「これからの10年、最もユニコーン企業を生み出すのはAI領域だろう。そして中国市場は特殊なため、中国企業が高い優位性を持つことになる。人工知能開発はロケットやインターネットセキュリティ開発のような長年の積み重ねを必ずしも必要とせず、高い数学力やコンピューターへの理解があれば半年のトレーニングで同領域のエンジニアとして価値が出せる分野だ」
「また、人工知能産業を牽引していくのは向学心のある若い人材が多く、論文発表や応用事例が多い国であり、人工知能関連論文の43%の執筆者が中国人であることからも中国にはそのポテンシャルがあると言える」
一方、中国の特殊な市場性についてはこう説明している。
「中国は伝統的企業の非人工知能技術がとても弱く、代替が容易。さらに、社会の個人情報取扱への敏感度が低く、インターネット産業のように外資企業の参入が難しいことが中国の人工知能開発企業には追い風になっている」
現在、人工知能関連の特許数において、世界を牽引するアメリカを猛追する中国。同分野への投資金額ではまだアメリカの7分の1程度ではあるが世界第2位となっている。若く向上心に溢れる人材、市場の特殊性、スピードがかけ合わさり、国家政策にも組み込まれたことで、中国のAI産業には今後さらなる投資が見込まれている。その存在感も、年々高まっていくはずだ。
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