2017年7月19日水曜日

円の一人旅、トランプ氏の標的か−米中経済対話後にも

日本にとって、円安はリフレ政策を推し進める原動力となる。問題は、主要な対米貿易黒字国の通貨の中での円の独歩安だ。行き過ぎた可能性のある対ドル、クロス円での円安の調整が市場主導で進まなければ、円安は対米貿易不均衡の原因として米政府の目に改めて留まろう。米国が最も注視する中国との経済対話が終われば、10月の米財務省の為替報告書の公表を待たずに、トランプ米大統領の次の標的は日本となる可能性がある。

?ブルームバーグ米ドル指数−貿易・通貨の流動性でウエート付けをした名目実効為替レート−のドル安傾向にも関わらず、4月中旬から円は対ドルで通貨安となっている。円のウエートが17.94%なのに対し、ユーロ・オフショア人民元・カナダドル・メキシコペソの合計ウエートは56.05%で、これら4通貨が対ドルで上昇しているためだ。

?日本、ユーロ圏、中国、カナダ、メキシコの共通点は対米貿易黒字だ。円の対ドルでの通貨安は米政権に注目される可能性がある。

?円安の要因は二つある。一つは安全(避難)通貨需要による円買いの巻き戻し、もう一つは金融政策の方向性の違いだ。

?仏大統領選でのマクロン氏の勝利による不確実性の低下で、避難通貨として買われた円は売られた。また、日銀が金融緩和を続け長短金利目標を設定する中、米連銀は金利を引き上げ、それと前後して、米国の主要貿易赤字国も金融緩和の縮小あるいは引き締めに向かった。日本との金利差が拡大する中、これらの通貨に対して円は下落した。

?トランプ政権の喫緊の課題は日本ではない。今週初めには北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し交渉の開始にあたり目標リストを公表、米中包括経済対話も米国時間19日から開催される。

?ブルームバーグ・インテリジェンスでは、円の独歩安がトランプ政権の目に留まる可能性があると考えている。日本が、日銀の金融緩和は国内経済に向けての政策であり、G20の合意である通貨安競争の回避に努めていると主張しても、既に米財務省為替報告書の監視リストに入っており、為替操作国に指定されるリスクと隣り合わせだということを再認識する必要があるかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿