2017年7月24日月曜日

<労働時間実態調査>時間減らしたくても仕事が終わらず

 高所得の専門職を労働時間の規制や残業代支払いの対象から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)が現実味を帯びてくる中、人材育成支援「リクルートマネジメントソリューションズ」(本社・東京)が、若手正社員を対象に労働時間の実態を調査した。高プロは「時間ではなく成果に応じて賃金が支払われる成果型労働制」をうたい、上手に活用すれば長時間労働の是正につながるとされている。だが、調査結果から働き方の自由度が高くても労働時間を短くできない実態が浮き彫りになった。【中村かさね/統合デジタル取材センター】

◇際立つ若手の男性正社員の長時間労働

 調査は今年3月、従業員300人以上の企業に週5日以上勤める20、30代の正社員の男女を対象にインターネット上で実施し、528人から有効回答を得た。

 時間外労働を含めた1カ月当たりの平均労働時間が200時間を超えたのは女性の18・5%に対し男性では42・4%と、男性の長時間労働の常態化が目立った。政府が進める働き方改革関連法案でも、残業時間を原則「月45時間、年間360時間以下」としており、男性の4割がこれを超えて働いていることを意味する。月平均240時間以上と過労死ライン(時間外労働が月80時間以上)を超える男性も12・9%に上った。

◇働き方が自由でも長時間労働は変わらず

 調査から、月平均200時間以上働く人は労働時間が短い人よりも働き方の自由度が高く、時間ではなく成果で評価されている人が多いことも分かった。

 さらに、月平均200時間以上働く人の7割は、労働時間を「もっと短い方が望ましい」と考えながら、長時間労働に縛られている実態も明らかになった。

 「短い方が望ましい」と回答した人に短くできない理由(複数回答可)を聞くと、「仕事量が多い」(72・2%)▽「突発的な予定が入ったり、相手の都合に左右されたりする」(55・7%)▽「締め切りや納期にゆとりがない」(43・5%)▽「達成すべきノルマや目標の水準が高い」(34・8%)−−などが挙がった。

 自己裁量の余地がある働き方をしていても、求められる仕事量が多く、実際には長時間働かなければ成果を上げられない、という実態が浮き彫りになった形だ。

 調査を担当した佐藤裕子研究員は「20、30代は『時間ではなく成果で評価してほしい』『働き方の自由度を高めたい』という志向が高いが、実際には希望がかなっても労働時間は短くなるわけではなさそうだ」とみる。

 一方、月平均200時間以上働く人でも、労働時間について「今と同じでよい」「もっと長い方が望ましい」と考える人もいる。理由で最も多かったのは「今の給与水準を維持したいから」だった。

 経済協力開発機構(OECD)のデータによれば日本の労働時間は1980年代後半をピークに減少傾向にあり、国際的に突出して労働時間が長いとは言えない。ただ佐藤さんは「非正規社員や女性の短時間労働などが増えたために全体を押し下げているだけで、男性のフルタイム正社員の労働時間は以前と変わっていない」と指摘する。

◇「仕事」にドライな20、30代

 とはいえ、労働に対する意識が変わりつつあることも調査から分かった。

 労働についての姿勢について聞くと、「打ち込める仕事であれば、仕事中心の生活になることもいとわない」が18・7%にとどまる一方、仕事を生活の手段とみる「自分にとって『働く』とは、主に生計を維持するための営利的な活動である」が59・1%に達した。仕事よりプライベートを優先させる「仕事以外の生活を充実させたいので仕事はほどほどにしたい」も38・6%に上った。

 佐藤さんは「実際に話を聞くと『長時間労働はかっこ悪い』『会社と関わる時間が長いことは変化の激しい時代にリスクにつながる』という声もありました」と話す。

 こうした発想に沿うように、設問で「周囲より早く退社する人を見ると、仕事に対するやる気がないと感じる」は1割に満たなかった。仕事に対し冷めた考えを持っている若者は想像以上に多い。

◇「働き方改革」問われるのは仕事量の削減

 政府の働き方改革は、労働時間の上限規制や高プロの法制化を目指している。だが、高プロには「定額働かせ放題」「残業代ゼロ法案」などの批判も上がる。

 佐藤さんは「労働時間の上限を法律でしっかり規制し、企業が仕事量を適切に管理しなければ健康を害する人が増えるかもしれない」と警鐘を鳴らす。ただ、その一方で「高プロの考え方自体は、今の若者の志向とマッチする。多様な働き方の選択肢を増やす意味では働きやすくなる人もいるはずだ」と語る。

 ただし、企業が個人の仕事量をきちんと管理するのは難しい。

 調査では、労働時間に関するコミュニケーションを通して仕事への意欲が下がった経験も聞いた。「上司が残業を減らせと言いながら業務量の調整をまったくしない」「仕事内容を聞きもしないで、とにかく早く帰れと言われた」−−など「不適切な残業禁止・削減命令」により意欲が下がったという回答が最も多く集まった。

 「働き方改革」の柱となる長時間労働の是正は、次世代を担う働き手の意識、法規制の道筋ともに土壌が整いつつある。次のステージは、仕事量の調節や効率よく働ける環境整備など、企業ごとの取り組み内容が問われることになりそうだ。

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