中国は23日、米国からの鉄鋼や豚肉などの輸入品30億ドル(約3100億円)相当に相互関税を課す計画を発表した。この数時間前、トランプ大統領は中国製品を対象とした制裁関税賦課を命じる大統領令に署名した。
中国商務省は23日の声明で、米国からの豚肉輸入に対しては25%、鋼鉄パイプと果物、ワインには15%の関税を計画していると表明。米国に対し世界貿易機関(WTO)の枠組みで法的措置を取る計画だとし、米国に対話を通じた通商問題の解決を求めた。
トランプ大統領は大統領令でライトハイザー米通商代表部(USTR)代表に少なくとも500億ドル相当の中国製品への関税賦課を指示した。USTRは関税引き上げ対象リストを15日以内に取りまとめる。これを受け、ダウ工業株30種平均は724.42ドル(2.9%)安の23957.89ドルと、この6週間で最大の下げとなった。
国際通貨基金(IMF)で中国部門の責任者を務め、現在は米コーネル大学で教授を務めるエスワール・プラサド氏は中国の相互関税計画発表について、「これは中国側の開戦の一手であり、米国が関税を課せば、中国政府が相応な報復とみなす措置を招くことになるというシグナルだ」と指摘。「中国は一部商品の米輸出企業に多大な経済的損失をもたらすことができるし、米製造業者への供給網を断って打撃を与えるなど、公然、非公然を問わずさまざまな措置を取ることができる」と説明した。
USTRが公表したファクトシートによれば、米国は中国の政策が米経済に及ぼした打撃への代償として、一部の中国製品に25%の関税を課す。提案する対象製品リストには航空宇宙や情報・通信技術、機械が含まれる見通しで、USTRはリストを向こう「数日」中に公表する予定という。
トランプ氏はまた、米国が戦略的と判断するテクノロジー保護を目的に、中国企業の対米投資への新たな制限を60日以内に提案するようムニューシン米財務長官に指示した。ホワイトハウスのシニア経済アドバイザー、エベレット・アイゼンスタット氏が明らかにした。
トランプ大統領は「ここまでたどり着くのに長い時間を要した」とした上で、関税は最大600億ドルの製品に影響を及ぼす可能性があると発言。中国によって「知的財産権が著しく侵害される状況が続いており」、貿易への影響は年間で数千億ドルに達すると指摘した。
トランプ大統領はホワイトハウスで署名する際に、「多数のうちの第1弾だ」と記者団に語った。
米シンクタンク、大西洋評議会の米中関係専門家、ロバート・マニング氏は、中国の当初の反応は多くの人が恐れているほどは強くないかもしれないが、対立は容易にエスカレートしかねないと指摘。「恐らく中国の反応は交渉を通じて打開策を探そうとする控えめなものになるだろう。関係が険悪化した場合、最終手段に訴えるのではないかと私は懸念している」とした上で、最終手段とは「数千億ドル」相当の米国債売却であり、そうなれば市場は暴落し、米金利は上昇するだろうと述べた。
中国商務省は米中両国に「害をもたらす」措置を講じないよう米国に警告を発してきた。同省はウェブサイトに掲載した発表文で、このような一方的で保護主義的な措置に中国は強く反対し、自国の利益を断固として守るため、「あらゆる必要な措置」を取るだろうと表明した。
元中国商務省次官で、現在は中国国際経済交流センター副理事の魏建国氏は、「トランプ大統領が本当に大統領令に署名するなら、対中貿易戦争の宣戦布告だと述べ、「中国は貿易戦争を恐れていないし、避けようとしないだろう。われわれには自動車輸入、大豆、航空機、半導体の分野で、反撃できる多くの手段がある。トランプ大統領はこれが極めて悪いアイデアであり、勝者はおらず、両国にとって良い結果は出ないと知るべきだ」と指摘した。
トランプ政権は今回の措置を米中関係における大きな転換点と位置付けている。USTRは過去7カ月にわたり、1974年米通商法301条に基づいて中国による米国の知的財産権侵害についての調査を進めてきた。
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