大病院を除いて、一般診療所に電子カルテが広く普及しないのはなぜか。
最大の理由は、導入にかかるコストの高さだといわれている。そして導入以降も、メンテナンスやアップデート、サーバーが故障した際の修理代などがかさんでいき、結果費用対効果に合わないというのだ。そもそもが、設置型電子カルテは、セキュリティーや運用保守への意識が高いものであり、そのぶんコストも高かった。
また、電子カルテによる作業の効率化などのメリットは理解できているものの、紙カルテから切り替える際に、診療の混乱や入力作業の手間があるのではといった懸念も挙がっているという。
以上が基本的な部分だが、ここからはクラウド電子カルテに詳しいクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。最新トレンドをぜひチェックしてほしい。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の�(はい)代表による監修も受けている。
スウェーデン、デンマーク、イギリス、オランダでは、すべての開業医が電子カルテを使用しています。フランス、アメリカの導入率は約70%に達しています。一方、日本の診療所における電子カルテの導入率は約35%と言われています。医療者にも患者にも大きなメリットがあるはずの電子カルテが、全体の3分の1の診療所でしか使われていないのはなぜでしょうか?
2013年にメドピア社が行なったアンケート調査によると、電子カルテ未導入の医療機関の42%が「コストが高い」ことを理由に挙げています。つまり「電子カルテは使いたいが、高すぎるから導入できない」というのが、多くの方が持っている感覚のようです。私は、この「コスト」という言葉には2つの意味があると捉えています。1つは「絶対額」としてのコストで、もう1つは「費用対効果」という意味でのコストです。いわゆる「コスパ」ですね。
電子カルテと同じく高額な費用のかかる医療機器は、使うたびに収入を得られますが(例えば、心電図を1回計測すると1300円の収入となります)、電子カルテはどれだけ使っても1円の収入にもなりません。この点が「電子カルテ導入はコストに見合わない」と言われる所以なのでしょう。紙でもできる「記録」「保存」をデジタル化しただけの電子カルテでは、これ以上の導入が見込めないのかもしれません。
クラウド時代の電子カルテは「コスパを高めるため」に「紙カルテではできないことができる」が1つのキーワードになると考えています。前回挙げたような「医療者と患者さんをつなぐ機能」や「蓄積したデータを分析する機能」、「AIを活用して診療を支援する機能」など、デジタル化をしたからこそ実現できる機能が、今後の電子カルテの必須機能になってくると思われます。
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