2017年1月24日火曜日

トランプ相場がこれ以上続かない理由とは

 オバマ政権下での驚くほどの強気相場の後、トランプ政権下でさらなる大幅な株価上昇が難しいであろうことは当然とも言える。その主な理由は、オバマ政権発足時には市場が低迷し、株価が割安になっていたことがあげられる。しかし、全体的な経済情勢と企業利益のあり方の変化も、その理由のひとつだと言えるだろう。

 バラク・オバマ大統領の就任初日から任期最終日の前日(1月19日)までに、S&P500種株価指数は166%も上昇した。オバマ氏が就任した当初、S&P500指数の予想PER(株価収益率)は11倍だったが、今では17倍になっている。ドットコム・バブル当時の28倍ほどではないが、それでも割高だろう。

 また米国株の時価総額は2008年の時点で対国内総生産(GDP)比85%だったが、2016年末時点では推計169%に膨らんだ。1999年末に記録した177%にも迫る水準だ。市場の今後の動向を判断するためにも、投資家はこの数字も頭に入れておくべきだろう。

 市場の動向を国の経済情勢と比較するのは重要だ。これによって過去8年間にわたるGDPの上昇分が労働者などではなく、企業側にどれだけ多く流れ込んだかを知ることができる。

 オバマ政権の8年間で企業はコスト削減に務め、賃金上昇は漸進的なものにとどめ、新たな設備投資も積極的には行わなかった。その傾向は失業率が低下し、労働需給のひっ迫で賃金が上昇してくる最近まで変わらなかった。

 賃金上昇は、米国経済の成長分が企業利益より労働者に多く配分されることを意味する。人件費が上昇すれば企業は生産拠点を海外に移すか、国内での製造に輸入部品を使うなどして対応してきた。しかしドナルド・トランプ大統領が就任した今、それは難しくなりそうだ。

 そのため、企業が手にする経済の取り分が今後より大きくなるとは考えにくい。どちらかと言えば、それは小さくなると言えるだろう。株価が対GDP比でさらに上昇を続けることは可能だが、そうなればバリュエーションはドットコム・バブルの水準を大幅に上回ることになる。

 トランプ政権下で株式市場が大幅に上昇し続けるためには、大幅な経済成長が必要だ。そうすれば企業の利益も増える。ただそれでも経済全体に対する企業利益の割合は変わらないままか下がることになる。トランプ氏は経済成長を実現させるとしているが、試練は今始まったばかりだ。

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