2012年12月12日水曜日

カンボジア進出

積極的な外資導入政策
 積極的な外資導入政策は1994年にさかのぼる。王政復活とともに成立した新政府は、壊滅的な状況にあった国内産業基盤を補うため、1993年に投資法を制定。法人税などで事業主を優遇する政策をとった。
 これ以前、カンボジアでは、親ベトナムのカンボジア人民革命党と、反ベトナムの連合3派——ポル・ポト派、クメール人民民族解放戦線、フンシンペック党(王党派)——との間で内戦が続いていた。これが産業基盤を破壊した。4派がパリ和平協定を結んだのが1991年。1993年に国連の監視下で民主選挙を実施。フンシンペック党が勝利し、1993年に王制が復活した。同時に新憲法も発布している。
 法人税の優遇は、例えば「外資100%会社設立の認可」「外国への自由な外貨送金」「法人税20%」といった内容だ。大方の国が規制している販売サービス分野にも外資企業が進出可能にした。さらに、一定の条件を満たして適格投資プロジェクト(QIP)の認可を受ければ「最長9年間の法人税免除」「生産設備の輸入関税免除」などの税制優遇措置も受けられる。ベトナムなど他のメコン諸国と比べて、企業にとって非常に有利な条件となっている。
(出所)ジェトロセンサー(2012年3月号)、及びJETROホームページを基にデロイト トーマツ コンサルティング(DTC)作成
 カンボジア政府は2005年に経済特別区(SEZ)を導入した。SEZに進出した企業は、QIPの優遇を受けられるほか、付加価値税10%が免除される。SEZには経済特区管理事務所があり、輸出入手続きのワンストップサービスを提供している。
 現在カンボジア政府が承認しているSEZは22ヶ所。このうち7ヶ所が既に入居可能だ。特に、プノンペン郊外のプノンペンSEZ、ベトナム国境のSEZ(台湾資本のマンハッタンSEZ及び地場資本のタイセン・バベットSEZ)、タイ国境のコッコンSEZ、カンボジア唯一の港湾都市シアヌークビルにあるシアヌークビルSEZへの企業進出が目立つ。
 カンボジア政府はこれらの政策をてこに産業を多様化、高度化すべく力を入れているところだ。前回で見たように、縫製業の成長は著しい。しかし、縫製業に偏っており、産業全体の成長は十分とは言えない。
進出著しい中国、韓国企業
 カンボジアへの国別投資動向を見てみよう。投資誘致及び許認可の窓口となるカンボジア開発評議会(CDC)の資料によると、1994年から2011年9月までの投資累積額は中国がトップだ。
国別投資動向(1994-2011年9月までの累積額)
出所;カンボジア開発評議会
 前回、紹介した通り、中国企業による縫製業への進出が著しい。加えて、水力発電や鉱物資源開発、観光業などへの投資も多い。東南アジアの他の国々と同様、カンボジアにも多くの華人が存在(70万人といわれる)している。彼らが中国企業との橋渡しとなっている。
 中国の後に、韓国、マレーシア、イギリス、米国が続く。韓国企業の存在感は大きい。特に電気機器において顕著で、サムスン電子、LG電子の広告を町中で多く見かける。また、街では日本料理屋よりも韓国料理店の方が多い印象を受ける。さらに、ソウルからプノンペンまでアシアナ航空の直行便が運航している。韓国の李明博大統領は、以前カンボジアのフン・セン首相の特別経済顧問だった。
 

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