2012年12月18日火曜日

格安航空エアアジア、なぜ苦戦? 設立1年あまりで異例のトップ交代

 赤地のペイントに白抜きで社名をあしらった機体デザインを特徴とする、全日本空輸系の格安航空会社(LCC)、エアアジア・ジャパン(本社・千葉県成田市)。今年、国内・国際線の就航を始め、11月には成田−仁川(韓国・ソウル)線で限定の特別運賃980円の航空券を売り出し、大きな話題となった。

 その新鋭がトップ交代に踏み切る。

 エアアジア・ジャパンは12月17日、同日付で岩片和行代表取締役兼CEO(最高経営責任者)が代表権のない会長に退き、小田切義憲取締役オペレーション部門統括責任者が後任に就く人事を発表した。

国内・国際線の就航を始めたばかり

 エアアジア・ジャパンは全日本空輸(67%出資)とマレーシアのエアアジア(33%)の合弁で昨年8月に会社を設立、今年8月に国内線、同10月に国際線の就航を開始したばかり。まだ産声を上げたばかりともいえ、経営が本格的に軌道に乗っているとは言えない状況でのトップ交代となる。当初10人でスタートした取締役の数も3人減らし、7人にする。

 「今はある意味で停滞感がある。次の成長のステップを確実にする」。同日、東京・霞ヶ関の国土交通省で会見した岩片氏は、トップ交代の理由についてこう語った。岩片氏は「会長という立場で地元の方々の対応や営業上のトップセールスなど対外的な業務に集中する」という。

 異例ともいえるトップ交代。岩片氏は「直接的な理由ではない」と否定するものの、背景には経営の苦戦がありそうだ。

 エアアジアの運賃はLCCの名にたがわず格安だ。たとえば10月から就航した成田−韓国・仁川(ソウル)線では、限定の980円を除いても、片道の価格は6980〜2万9980円と、大手の運賃に比べ半額から3分の1程度の格安水準である。

 鳴り物入りでの参入だったが、当初目標とした搭乗率8割に対して、これまでの平均は65%程度にとどまるという。「シーゾナリティ(季節性)があるため、年間を通してみないと判断がつかない」(岩片氏)とするものの、格安運賃を特徴とするLCCは搭乗率を高めなければ採算が取れない。この搭乗率は当初想定していた以上の苦戦といえるだろう。

ネット販売のみで使い勝手も悪い

 理由はいくつかある。来年1月からトップに就く小田切氏は「販売の仕組みが劣っている」と述べる。エアアジアの航空券はインターネット販売のみで「ウエブサイトの使いやすさなどユーザーフレンドリーな視点に立ったシステム的な改善が必要。決済方法の多様化にも対応する必要がある」(小田切氏)。さらに旅行会社を経由した販売などチャネル拡充も課題だ。

 もう一つ、今後の事業拡大の上で課題となるのが、拠点としている成田空港の使い勝手の悪さだ。岩片氏は以前から、「成田で大幅に便を増やしていく上では、空港のコストが足かせになる。空港側のさらなる努力がないとムリだ」と主張している。

 同空港の施設料は、マレーシアのエアアジアが拠点とするクアラルンプール空港の使用料金よりもかなり割高とされる。コストを徹底的に削り運賃に反映させることで、格安料金を実現するビジネスモデルのLCCにとっては大きな重しだ。さらに成田空港では、周辺住民への配慮から、飛行時間帯が午前6時から午後11時までと限られており、これも足かせとなっている。

 7月就航した日本航空系のLCC、ジェットスター・ジャパンでは、整備に時間がかかるなどの要因で、成田空港に午後11時までに到着できなくなったことによる欠航が多発した。

 小田切氏は、同日の会見で中部国際空港を第2の拠点にすることを検討しているほか、現在の3機体制の拡充や貨物便の参入にも意欲を示した。異例のトップ交代で、新鋭LCCを上昇気流に乗せられるか。新トップには難題が課せられている。

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