カンボジアは日本企業の投資に期待
一方で、日本企業はどうであろうか。カンボジア政府は日本企業の投資に期待している。中国への過度の依存を回避すること、技術移転によって産業の多様化を図ることが狙いだ。同政府は国際協力機構(JICA)支援の下、カンボジア開発評議会にジャパンデスクを設けた。日本人を投資相談の担当者に据えるなど、日本企業の誘致に積極的な姿勢を示している。
さらに同政府と日本政府は2007年、投資の自由化、保護及び促進を定めた日本・カンボジア投資協定に署名した。JETROによると、この投資協定において日本は、他のFTA締結国も含めた例外のない最恵国待遇をカンボジアに求めている。さらにこの一環として、日本・カンボジア官民合同会議を設置し、定期的に開催している。日本政府がカンボジア政府にタイして、投資に関する要望を出す機会だ。
また、日ASEAN包括的経済連携協定が2009年、カンボジアに対しても発効した。2026年までに85%の品目で関税を0%にする。
日本企業の進出が始まった
カンボジアにとって日本は憧れの国である。最多額のODA供与国だからだ。リエル紙幣の裏には、日本のODAで架けられた橋の絵が描かれている。日本語で「きずな橋」と呼ばれているものだ。また、日本ブランドのイメージも良く、身近な存在になっている。市中を走る車の8割はトヨタ車だ。
このように、カンボジアは日本企業を受け入れているのだが、日本企業の進出はこれまで非常に限られてきた。カンボジアの投資環境に関する情報が不足していることや、「カンボジア=地雷=危険」のイメージが強すぎることが原因だ。
しかし、日本・カンボジア投資協定、また経済特区の整備が進んだことで風向きが変わりつつある。例えば、プノンペンSEZには、味の素、ミネベア、住友電装が進出した。ヤマハ発動機カンボジアは新工場の設立を予定している。同社は2007年から組立・販売を行っているおり、これを拡大する。
コッコンSEZには矢崎総業が進出。シアヌークビルSEZには王子製紙が進出しており、2013年に生産を開始する予定だ。カンボジア日本人商工会の会員数は、2010年末は50社だったが、2012年には100社を超えた。
消費市場としての魅力が増していることから、イオンがプノンペンにショッピングモールを建設中だ。2014年に開業する。カンボジア初出店の海外ブランド店や国内最大のシネマコンプレックス、最先端の医療設備を持つクリニックが、このモールにテナントとして参加する。駐車場は1756台を収容できる。
イオンは市場の推移を次のように見込んでいる。2012年のカンボジアの小売市場規模は49億ドル、プノンペンは30億ドル(見込み)。これが2020年にはそれぞれ107億ドル、65億ドルとなる。カンボジア全体の世帯月収は400ドル以下だが、プノンペンの周囲5キロ商圏では400ドル以上が78%、1キロ商圏では800ドル以上が75%を占める。
さらに、日本ではパチンコで有名なマルハンが2008年、「マルハンジャパン銀行」をプノンペンに開業した。「カンボジア初の日系商業銀行」だ。カンボジア政府は、100%外資の銀行の進出も認めている。
今回は、カンボジアの外資導入政策と、外資企業の参入動向、漸く活発化してきた日本企業の動向について述べた。次回は、視点を変えたカンボジアへの進出形態や、進出の注意点について伝える。
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