ネット上で取引される仮想通貨の代表格、ビットコインをめぐり朝鮮半島が思わぬ注目を集めている。韓国でビットコインが爆騰。相場崩壊時の危険性が指摘されるようになってきた。若者らも取引に熱中し、ギャンブルの様相を呈しているとの見方があり、韓国当局も規制に乗り出した。一方、米国からテロ支援国家再指定を受け、北朝鮮がビットコインを狙ったハッカー行為の動きを強めるとの懸念が浮上している。ビットコインは国際情勢に新たな波乱を呼ぶのか。
ビットコイン爆騰の背景
韓国政府は昨年12月、ビットコインなどの仮想通貨取引の規制に本格的に乗り出した。投機的な取引の過熱防止が狙い。未成年や韓国に在住していない人の取引を禁止するのが対策の柱だ。取引規制に踏み込んだのは、それだけ仮想通貨の取引が大きな社会問題になっているからだ。
その背景にはさまざまな観測がある。
一つがITスキルが高く、投資にも熱心な韓国のお国柄。超低金利で、資産運用先が乏しい中、一攫千金が得られるビットコインに魅せられる人は多い。
中央日報(日本語電子版)は1年に満たない投資で、働いて稼いだ貯蓄を上回る収益を上げた会社員がいることを紹介。巨大な収入を得る人が出現し、それを追いかけるように投資を始める人が続く「同調現象」が起きているとの専門家の意見を伝えた。
取引価格は国際相場よりも最大2割増しで、韓国通貨ウォンによるビットコイン取引が世界で20%を占めたことがあり、あまりの過熱ぶりから、ビットコイン取引の爆心地になったとブルームバーグは報じた。
もう一つが中国からのブラックマネーの流入だ。
中国当局は仮想通貨を介したマネーロンダリング(資金洗浄)を警戒して、大手仮想通貨取引所のビットコイン取引を停止。その影響で中国マネーが韓国のビットコイン市場に飛んできているとの見方だ。一般的に規制がゆるく、値上がりが期待できる市場は裏カジノや詐欺商法などで得られた資金の洗浄にはうってつけだ。
北朝鮮、サイバー攻撃か
こうした中、仮想通貨市場で警戒対象になってきたのが北朝鮮だ。
韓国の仮想通貨取引所で起きた昨年のビットコインの"盗難"や取引会員の個人情報流出は、北朝鮮によるハッキング攻撃によるものとみられている。
朝鮮日報(日本語電子版)によると、昨年4月、9月に盗まれたビットコインの被害額は76億ウォン(約8億円)にのぼり、現在の価値なら900億ウォンになると報じた。そのうえで、サイバー攻撃への防備が十分でないため北朝鮮にとって「完全なカモ」になっていると指摘した。
米国は北朝鮮にテロ支援国家に再指定。経済制裁が一段と厳しくなるのは必至で、韓国を標的したビットコインのさらなる盗掘の動きが懸念されている。仮想通貨の匿名性を悪用して、ビットコインを海外でドルなどに交換。資金が核開発などにも回っているのではないかとの疑惑も浮上している。
投資利益が北朝鮮のハッカーに盗まれ、軍事費の一部に当たられているとするなら、サイバー攻撃対策は極めて重要な安全保障上の問題だ。
仮想通貨をめぐっては、昨年12月、米取引所大手のCMEグループによる先物取引開始を材料に急騰。しかし、規制強化の動きを敬遠され、その後は急落。不安定な値動きが目立ち始めた。韓国政府は、仮想通貨取引所の閉鎖を可能にする法律の制定の検討に入るという。実名取引制の導入やオンラインでの広告規制も強化する方向だ。
ただ急激な規制強化は膨張した相場を崩壊させるリスクになりかねない。一方、ゆるやかな規制にとどまれば、問題の先送りになり、爆薬を増やす結果になる恐れがある。過熱する仮想通貨取引を韓国はどうコントロールし、軟着陸させるのか。世界が注目している。
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