中古マンションを購入して「リノベーション」しようかなと思っている方が最近多いようですね。 さくら事務所にも、リフォーム工事チェックの問い合わせが本当に増えました。
リノベーションの定義は特に決まってはいませんが、主に、内装や給排水管類まで、コンクリート躯体以外の専有部分の全てを交換するスケルトンリフォーム(フルリフォーム)工事を指すことが多いでしょう。
フルスケルトンリフォームの一番のメリットは、今とは異なる建築技術・材料であったものを新しいものに取替え、性能を維持または向上させられること。
従前の部屋よりも性能を上げられた!というものの例には、外壁断熱施工などが挙げられるでしょう。
それに加えてもうひとつ、こんなところの性能を少し上げてみるというのはいかがでしょうか。
排水たて管の遮音対策です。
『排水たて管』とは、上階(真上のお部屋だけじゃありませんよ)からの排水を全て合流させて下水道まで流すために設けられた「縦系統の管」。
マンションによっては、共用廊下のメーターボックスの中に入っていることもありますが、日本のマンションの多くは、部屋の中に「PS(パイプシャフト)」という名前でスペースを設けて通されています。
最上階の方だけは人の流した水の音は聞こえづらいですが、それ以外の階の方は、必ず家の中を、水が流れて行っているというワケです。
住戸内を通る排水たて管は、何も対策しないと「水が流れてる」とはっきりわかる程度、結構音が聞こえます。
ですから、快適性を上げるには、排水たて管に遮音対策を施すのですが、築年数が古い物件になってくると、建設時にまったく遮音対策が施されていない物件も多数あるので、ご自身での対処が必要です。
スケルトンリフォームは、配管がむき出しになるため、遮音対策をするいいタイミングです。
ところが、排水たて管には上階からの水が流れて通ること、それが意外と室内によく聞こえてくることを考えたことも無かった!というリフォーム設計者の方も結構いるようです。
キッチンや洗面室など「別に、水が流れる音が聞こえてきても、気にならないだろうから」ということで、遮音は必要なしと施主さんが判断される場合は別ですけどね。
もし、対策をしていない排水たて管の近くにベッドルームやリビングダイニングなどがあると、自分の生活時間とは異なった時間でも「シャラシャラシャラ・・・」と、流水音が結構聞こえてしまい、「ビジネスホテルかっ!」と言いたくなるほど、気になることもあるかもしれません。
一度内装壁を作ってしまうと、解体する日まで手が出せませんので、少しの手間と費用で対策されることを私はオススメしています。
では排水たて管の遮音対策はどういったことをすればいいのか・・・は、次回の記事で書きますね。
中古マンションをフルスケルトンリフォームされる方は、ぜひ「排水たて管」の遮音対策を確認し、必要に応じて対策することをお勧めしてます。
内装壁を解体・復旧するタイミングでしか、手を付けられないからです。
具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられます。
1.排水たて管の周りにグラスウールを巻く
2.その周りをさらに遮音シートで巻く
3.排水たて管の周りを石膏ボードを二重にして囲む(PSだけボードを二重にして貼る)
これらの遮音対策を施しても、上階からの排水流水音は聞こえてくることがありますが、これはもう、共同住宅ならではの、致し方ない出来事。
でも、何も対策しないときの流水音は結構響きますから、やっぱりないよりは、やったほうがマシになるとお考えください。
初めて聞く言葉もあって「??」かもしれませんので、ここからは解説です。
1ですが、「グラスウール」(略してGW)とはガラス繊維のことで、建築では主に「吸音材」「保温材」として使われています。ここでは、主に吸音目的ですね。
色は黄色いのですが、ガラス繊維が飛び散りにくいように、通常は周りにアルミシートを覆います。
この手法は、意外と昔に建てられたマンションでも使われていて、写真の物件は築25年くらい(昭和60年築くらい)でしたが、グラスウールが巻かれていました。(写真中央左の2本の配管)
私が現場を見ている印象では、築25年くらいの物件だとGWは巻かれていることも多く、それ以上前の物件だと、配管が剥き出し=対策なしなことが多い印象。
(築25年未満でも、無いことがありますので、事前にリフォーム会社に確認してもらってくださいね!)
2ですが、これは、1のGWだけでは吸音しきれなかった音を「跳ね返す」ようなイメージで、GWの周りに、さらに金属(鉛)練りこんだ「遮音シート」なる質量が重いシートを巻きつけます。
この1・2が、排水たて管自体に施す対策。
1だけだと「やらないよりはやったほうがいい」、2までやると「及第点」とお考えください。
3についてですが、この2つは、排水たて管を覆う(仕切る)スペースである「パイプシャフト(PS)」の間仕切り壁に施す対策です。
文字通りPSの石膏ボードを2枚にすることで、1・2の対策だけでは抑えきれない音を室内に響きにくくします。
PSが寝室に面しない場合は、「別に音が聞こえてもいいじゃない」ということで、PS壁の遮音対策は行わないこともあります。(PSの位置は間取り図に書いてあります)
※この15年〜10年以内に建てられた分譲マンションだと、多くの場合1・2は施されていると思います。
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『解説書かれても、やっぱりややこしー!』
・・・と思いますよね。なかなか、実物を見てみないと、なんだかわかりにくいと思います。
ですので、リフォーム会社に、このように指定してみるといいと思います。
【今の新築マンションでは当たり前なレベルで指定】
1・2を指定
『排水たて管に、グラスウールと遮音シートを巻いてください』
【今の新築マンションでもちょっと配慮が効いてるレベルで指定】
1・2に加えて3を指定
『洋室とリビングに面するPSの壁は、石膏ボードを2重にしてください』
場合によってはリフォーム業者さんの反応が「?よくわかんないんですけど?」なことがあるかもしれません。
その場合は、その反応も、ひとつの参考にしてみてください。
マンション設計に関する知識経験が、あまり豊富ではない方とお見受けします。
勉強して設計に盛り込んでさえいただければ、それでもいいんですけどね。
どの対策も、材料・手間がかかりますから、多少のコストアップにはなってしまいます。(何十万も取られるってことはないでしょうけど)
ただ、これらの対策が施されていないような築年数が古い物件は、物件価格もそれなりに抑えられると思いますので、その分少しだけリフォーム費用を上げて、性能を高めて住むというのはテクニックのひとつ。
ちなみに、私がいるさくら事務所にも、このようなリフォームに関する仕様のアドバイスや工事中のチェックをお受けしています。
リフォーム会社とのやり取りの「セカンドオピニオン」「アドバイザー」をご希望の場合は、お問い合わせください。
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