2017年3月13日月曜日

不動産の儲けの仕組みを知る

知って得する原価の秘密 

マンション用地を買って、マンション建築を建設会社へ発注し、マンション販売を住宅販売会社へ委託する不動産会社、俗にいうマンションデベロッパーの原価や収支構造がどうなっているかご存知ですか?

マンションはあなたにとって、人生で一番高い買い物です。だから、あなたが、マンション購入代金として支払うお金のうち、一体どのくらいが原価にそしてどのくらいが利益となっているのかを、知っておきたいと思いませんか?また、少しでも安く買いたいのが人情です。経費のどの部分が住宅価格を抑えるのに効いてくるのかは、特に知っておきたいところです。

そこで、今回は、あまり一般には公開されないマンション事業の収支について見ていくことにしましょう。


分譲マンションの原価は他の商品にくらべて高い 

収支の内訳は以下の図のとおりです。

マンション収支の構造


マンションの総売り上げを100としたときの用地費は32、建築費は48になります。つまり、原価率は80パーセントにも達します。マンションは高原価率商品と言わざるを得ません。因みに、私たちの身近な商品の原価率をみてみると、化粧品は40パーセント、ハンバーガーは60パーセント、本が37パーセントです。こうした商品と較べてみると、マンションの原価率がいかに高いかが分ります。

64がひとつの目安です 

マンションの原価にあたるのは建築費と用地費で、だいたい、建築費6に対して用地費は4という割合(64)がひとつの目安になります。ただし、地価の高い都心部では、建築費:用地費=55となり用地費の割合が高くなります。逆に地価の安い郊外なら建築費:用地費=73になり、用地費の割合がさがります。

一方、建築費は都心も郊外もあまり変わりませんので、用地費の分だけ都心のほうが、物件価格が高くなるというわけです。


用地費と建築費の内訳は?

用地費には、土地代だけではなく、土地購入時の仲介手数料、既存建物の取り壊し費用、支払い利息(土地代金は借り入れた資金で支払うのが一般的)、税金、登記費用などが含まれています。

また、建築費には、建物の建築費以外に、設計管理費、電波障害費、近隣対策費、下水道工事費などの公共負担金がかかります。建築費の目安としては、1住戸70平米あたりで約1,830万円程度かかります。

設計管理費は、工事費の額によって料率が違ってきます。2億円の工事費であれば6.96パーセント、5億円であれば5.95パーセント、10億円であれば5.69パーセント、20億円であれば5.00パーセントとされていますが、実際には23パーセント程度安くなるのが、普通のようです。

電波障害費は、1キロメートル四方に高層建築物がひとつもない地域で7階建マンションを建てる場合、工事費は約14,60万円かかります。

近隣対策費というのは、工事に反対する近隣住民にたいして慰謝料的性格もので、1軒につき10万円程度となります。加えて日影補償費としてマンションが建つことによって新たに発生する日影1時間につき、10万円〜20万円の支払いがなされています。

 

用地費、建築費に削減余地はあるのか? 

また、建築費も借入資金によって支払われますので、支払い利息が発生します。ただし、最近の厳しい経済情勢のなかでは、銀行は中堅の不動産会社に対しての融資は、3億円程度しか実行しないため、用地取得費を賄うのが精いっぱいで、建築費については2億円程度の手元資金で賄わなければならず、従来のように全てを借入でマンション事業を展開することが、難しい状況のようです。手元資金がある程度ないと、マンションデベロッパーはやっていけないご時世のようです。

こうして見てくると、用地費、建築費の削減余地はあまりないことが分ります。無理に削減しようとすると、構造面で不安が生じますし、設備・仕様面でも貧相になりかねません。

削減するなら販売経費、その内訳は? 

総売り上げから原価を差し引くと、残りが粗利ということになります。粗利は一般的には20パーセントがひとつの目安とされています。そして、粗利の中でも、相当なウエイトを占めるのが販売経費です。その内訳を見てみましょう。

販売経費は総売り上げを100とした場合10程度の比率になります。こちらの経費には、販売手数料やチラシ・パンフレット・DM通信費などの販促ツール費用、新聞・雑誌・インターネットなどへの広告宣伝費用、モデルルーム・販売センターの建築費などが含まれます。

一部の大手不動産会社を除けば、多くの不動産会社は、販売部隊を社内におかずに、専門の会社へ委託していますので、この経費は削減の対象にはなりにくいものだと考えられます。


販売経費に含まれるものとは 

販促ツール費・広告宣伝費・モデルルーム建築費などの広告・宣伝費の目安は、総売り上げ額の34パーセントというのが一般的です。また、モデルルームの建築費は借地代も含めて1,500万円〜3,500万円程度とされています。

広告宣伝費が総売り上げの34パーセントとすると、販売戸数が30戸程度の小規模マンションの広告・宣伝費は200戸以上の大規模・タワーマンションに比べれば、計算上6分の1以下になってしまいます。

 

モデルルームをつくらない小規模マンションと
つくる大規模マンション 

そのため、小規模マンションはモデルルームをつくらず、キッチンなどの設備の一部をサンプルとして展示するサンプル・ルームにとどめたり、新聞・雑誌などのマスメディア広告をやめて、地元中心の集客に重点をおいたポスティングにシフトしたりして、広告宣伝費を縮減します。もちろん派手なパンフレットなどもつくらず、販促ツールも可能な限り簡素化します。

反面、大規模マンションは有名な映画俳優をイメージキャラクターにたてて大々的なCMを展開したり、巨大な販売センターをつくりプロモーションビデオを流したり、数種類にも及ぶパンフレット類を豪華な化粧箱に入れて見学者に渡したりします。

こうして見てくると、小規模マンションの広告宣伝や販促ツール、モデルルームが地味な理由はある程度納得できるのではないでしょうか。


大規模マンションの広告・宣伝費による、
買い手と売り手のジレンマ 

一方、大規模マンションの派手なアプローチは、大量の集客をしなければ、全住戸を完売することが難しいという理由によるものといえるでしょう。

ですが、広告・宣伝費は物件価格に転嫁されているものであることは間違いありません。買う側の立場としては、少しでも安く売ってもらいたい、そのために、この広告宣伝費を出来る限り切り詰めて欲しいと思います。

一方、売る側の立場としては、切り詰めれば販売がうまくいかなくなるというジレンマがあります。この二律背反の命題をどう現実的に処理していくかが、不動産会社のマーケティング力となるのです。適切な購買ターゲット設定、売れ筋を押さえた価格設定、ターゲットに好まれる商品企画、短期間で効率よく売りさばく販売企画が、分譲マンションをてがける不動産会社の能力のみせどころとなるのです。


華美すぎないマンションは、販売経費エコマンション 

そうした点からみて、大規模マンションにもかかわらず、販売センターが簡素で、モデルルームやパンフレットなどの販促ツールも華美過ぎないマンションは、販売経費を効率化し、極力価格を抑えようとしているひとつの表れと解釈できるでしょう。

また、青田売りで即日完売する物件は、価格設定が安すぎたことの証ともされます。概ねマンションが完成するまでに、全ての住戸が完売するペースでのマーケティングが理想とされています。もし、あなたが検討中のマンションで、完成まじかで売り出し住戸の残戸数があと数戸、というマンションは買って納得の物件といえるでしょう。

 

マンションビジネスは案外儲からない? 

それでは、不動産会社の利益はどのくらいか、というと、粗利20パーセントの中から、販売経費を除き、更に諸経費を除きますから、結果として利益率は810パーセント程度になってしまいます。他の業界で身近なところでは、ファミリーレストランで10パーセント、コンビニで9.5パーセントですから、マンション事業とほぼ同じ水準の利益率であることが分ります。

過当競争にある飲食、サービス業界とほぼ同じ利益率というのは、決して高いとはいえません。ただ、総売り上げで比較すると、ファミリーレストランの年間売上は14,400万円、利益1,440万円、コンビニは年間売上21,600万円、利益2,160万円です。かたや総戸数100戸・平均価格4,000万円のマンションの売り上げは40億円とケタが違います。


分譲マンション事業は、ハイリスク・ハイリターンビジネス 

したがって、完成までに完売すれば、4億円の利益確保につながりますが、そこにいたるまでには、1.5年間を費やしますので、年間の利益に換算すると、2.6億円となります。他の事業と較べれば、利益絶対額は圧倒的に多いわけです。ただし総戸数の10パーセント、つまり最後の10戸が売れなければ、利益確保にはいたりません。しかも、最後に残る不人気住戸の販売は難易度が高く、販売期間が長期化すると販売経費が当初想定したより多くかかり、利益圧迫につながります。また、値下げして売ろうとすれば、それも利益減少につながるのです。

このように、分譲マンション事業はハイリスク、ハイリターンなビジネスというわけです。特に地価が右肩上がりで、不動産の投資が積極的だった1990年初頭までは、売れ行きリスクも少なく、結構儲かった時期もあったかもしれませんが、現在のように、不動産価格が低下し、需要も減退する市場においては、意外に儲からない、というのが実態かもしれません。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿