2013年1月28日月曜日

国産車の質の向上に向けて -マレーシア自動車産業技術指導者育成-

 2006年7月にマレーシア側が自動車分野の大幅な輸入関税引き下げに合意し、日本・マレーシア経済連携協定(EPA)が締結されたことから、日本側は同分野への協力・支援を目的に、プログラムA〜Fまで10の日本マレーシア自動車産業協力事業(MAJAICO)(注)を5年間にわたり官民をあげて実施することになりました。

 JICA横浜では、日産が実施するMAJAICO B「技術者教育制度構築支援」に協力し、人的資源省傘下の職業訓練施設ADTEC(上級技術訓練センター)職員を対象とした本邦研修を5回にわたり実施しています。これは、自動車製造技能者(マスタートレーナー)を養成するための教育システム構築の為の研修であり、毎回5〜6名の研修員が来日し、約4週間に渡りトレーニングを受けています。MAJAICO Bでは、2011年6月までの5年間で自動車製造に関わる171講座のノウハウをマレーシア側に移転することになっていますが、日本での研修はその一部を担っています。これまで第4回までが修了し、23名の研修員を送りだしてきました。

【マレーシアが抱える課題】
 マレーシアには主に国産車、日本車、ヨーロッパ車が流通していますが、輸入関税引き下げに伴い、外国製の車との競争がより激しくなる為、今後は国産車の質の改善を更に図っていく必要があります。若者をターゲットとして職業訓練を行うADTECはその鍵を握る組織でもありますが、職員は自動車の製造や組み立て技術について、技術経験・現場経験に乏しく、生産現場において必要とされる知識・技能の理解が十分でないのが現状です。産業界に役立つ人材を輩出する為にも、実際の製造過程、使用機材の操作方法を理解し、指導するスキルの向上が急務となっています。
 そのような背景から、本研修では、日産の協力によりプレス、溶接、塗装、プラスチック成形、組立、メンテナンス等の技術訓練・講義を行い、能力強化を図っています。

【トレーニング現場で】
 工場内に併設されたトレーニング施設では、スポット溶接を行う研修員を目にしました。目つきは真剣そのものです。自分の作業が終わるたびに「オー」と感嘆の声が聞こえていました。言葉では何気なく分かったと感じていた内容・知識でも、実際に実践してみると難しさを実感したようです。生産現場で使用する機材のポイントを肌で感じ取った研修員。自身の身に蓄えた知識を、マレーシアの労働者に伝えていくことが、今後の彼らの責務です。
 工場内で自動車の製造過程を学び知識を蓄える研修員。「日本の工場設備の素晴しさに感銘を受けたが、同時に日本の労働マナーにも感銘を受けた。自動車の発展には、知識や設備だけでなく、時間管理やマナー、チームワークが重要だと学んだ。是非自国でも導入していきたい」と語るその顔は、満足感とやる気に満ちた様子でした。

<備考>
(注)MAJAICO:Malaysia-Japan Automotive Industry Cooperation(日本—マレーシア自動車産業協力事業)

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