2013年1月28日月曜日

格安航空のビジネスモデル

格安航空会社は、規模や出身国の文化、企業理念といった背景によって各社ごとに多少の違いがあるが、ほとんどが以下のようなコスト削減手法を採用することで従来より低価格の運賃でも安定した運航を可能にしている。


運航コストの低減
タラップでイージージェットのエアバスA320型機に搭乗する乗客
運航機種を1機種程度に統一し、可能な限り、単一機種やその中での派生型(胴体延長型・胴体短縮型など)程度に機種を絞り込む
航空機メーカーから特定機種を大量に一括購入契約、または金融機関を通じたリース契約にすることで、機体コストを抑える
パイロットの操縦資格と訓練コストを最小にする/客室乗務員の訓練コストを最小にする
整備の共通化によって、保守部品と保守機材、メンテナンス要員の訓練コストを最小にする
既存の航空会社が乗り入れている混雑した大空港をできるだけ使用せず、大都市周辺の混雑していない地方の中小空港(第2次空港/Secondary Airport)に乗り入れる
ハブ&スポーク方式ではなく、ポイント・ツゥ・ポイント方式の旅客輸送方式を採る
多頻度・定時運航によって航空機を有効活用し空港駐機料を最小にする
ボーディングブリッジを使わずにタラップを使用しての搭乗、いわゆる「沖止め」を行なうことで施設使用料を安価に抑える
設備を簡素化した格安航空会社専用ターミナルを利用する
機内清掃は乗務員自身も行い地上要員数を最小で済ませる
整備設備を自社で持たず、整備を他社に委託する


人件費の節減
飛行訓練に対するコストを削減するために、すでに乗務資格を取得している運航乗務員を中途採用する
乗務員を含めて社員の給与や待遇に掛かるコストを抑える
制服を有償配布とする他、既存の大手航空会社では無償で与えられる靴やバッグなどの各種備品を有償配布とする
社員向け無償/割引航空券の廃止や、他社との社員向け無償/割引航空券の提携を行わない
客室乗務員の訓練を有償に、もしくは訓練期間中を無給とする


機内サービスの簡略化
機内サービスの簡略化は「ノーフリル」とも呼ばれる。
機内食や飲料は有料販売にするか、簡素化する
預かり手荷物の無償枠を下げ、有料化を増やす
機内シートには掃除しやすい本革もしくは合成革張りを使用する
座席指定を廃止し自由席とする/座席位置により価格差を設ける/座席指定を有料化する
毛布や枕などを有償化する
座席ごとのビデオや音楽放送、機内誌、新聞、雑誌などの機内エンターテインメントを省く
座席の前後間のスペースを詰める(ハイデンシティ)ことで座席数を増やす
座席クラスをエコノミークラスに統一する


航空券販売コストの低減
乗客自身がインターネット予約やE-チケットによって直接予約することで航空券販売コストを低減する。基本的には旅行代理店を使わず、その分の販売手数料を省く
マイレージサービスのような旅客向けのアライアンスには加入しない格安航空会社が比較的多い
購入時期を問わずキャンセル料100%=キャンセル不可


路線
格安航空会社のほとんどが、低消費燃料率で信頼性の高い中型ジェット旅客機を用いたポイント・ツゥ・ポイント方式での短距離や短中距離の路線を運航している。


旅客運賃以外の収益確保
航空機にアドカラー塗装をしたり、機内に広告を掲出することにより広告主(スポンサー)から広告収入を得る
オリジナルグッズや免税品(国際線)などの機内販売を積極的に行う
手荷物の有料化によって貨物搭載量の増量が期待できる


顧客層
従来型の航空会社が主要な顧客層として営業活動を行っている大企業社員の業務旅行需要や、旅行代理店などが企画・集客するパックツアーによる団体旅行とは正反対の、個人による観光・帰省旅行や、価格に敏感な中小企業の業務出張需要などを主な顧客ターゲットとしている。


顧客の満足
格安航空会社のコスト低減を重視した旅客便の運航では、機内サービスは必要最低限なものだけ提供され、離発着時間に余裕がないので気象条件の悪化や軽微な故障などでも多くの便の運航時刻が影響を受ける。また、乗り継ぎ便への配慮もなされない。それでも格安航空会社を繰り返し利用する旅客は多く、彼らはそういったサービス内容でも低料金であることで満足し、割り切っていると理解されている。

安全性に限っては国内のLCCと既存の大手航空会社において相違があるわけではないので、安全面でのリスク評価に航空運賃は無関係となる。

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