2013年1月28日月曜日

マレー半島西側の海「マラッカ海峡」。長さ900キロメートルのこの狭い海峡を通過する船は年間9万隻と通行量がとても多いです。そして近年ではスエズ運河から来るヨーロッパの船、ペルシア湾岸からの石油輸送船の東アジアへのルートとしても重要されています。
しかし、昔から問題だったのが「海賊」です。数年前、ヨーロッパの保険組合は「保険対象としては戦争地域に準ずる危険度がある」と宣言しています。
中世の時代からこの海を支配しようとしたイギリスやオランダ、ポルトガルなどの船が海賊被害に遭ってきました。現代でも97年のアジア通貨危機以降、多い年で年間80件、一時は世界の海賊行為の4割以上がマラッカ海峡で発生していると言われていました。マラッカ海峡は狭く、小さな島々が何千とあり、多くの河川が注ぎ込んでおり、海賊が隠れたり逃走したりするのに適しているそうです。
しかし、長年続いた「マラッカ海峡の海賊」も近年は国際海事局(IMB)の主導により、 インドネシア、マレーシア、シンガポールが協力して監視体制が強化されたため、劇的に減少しています。そして昨年、ついに海賊行為ほぼゼロを達成し、マラッカ海峡の海賊は抑え込まれ、国際海事局の報告でも、マラッカ海峡の海賊の脅威はほぼゼロになっていると評価しています。現在、西アジアから輸入される原油と天然ガスの8割、そして国際貿易貨物の3割がマラッカ海峡を通過しています。
この世界的に重要な海の平和を守ることがマレーシアの指名なのかもしれません。
ほぼ赤道直下で年中常夏のマレーシア。最近はマレーシア全域でさらなる酷暑が続き、野火が多発する中、マレーシア全域の大気汚染状況が急激に悪化しているそうです。これはヘイズの影響で、国内19か所の都市で大気状況が悪化しているようです。現在のこの乾燥した高温の気候は、フィリピンで発生した熱帯性暴風雨とアンダマン海で発達した低気圧帯が大量の降雨を引き起こし、結果としてマレーシア域内の大気中の水分が奪われたためと言われています。
衛星写真では136箇所で野火が観測されたそうです。たしかに最近は雨が少なく、気温は毎日35℃前後となっております。さらに、辺りが霞んで見えることもしばしば。
このような高温・乾燥・炎天下でも顔と手首、足首から先しか露出しない民族衣装で外を歩くイスラム教徒の女性、そして元気一杯で外で遊ぶマレーボーイ。
エアコンの効いた車内から見ていると、とてもたくましく思います。
アメリカの経済雑誌「フォーブス」が選ぶ国連における最も有力な女性トップ10の1人にマレーシア人女性が初めてランキングされました。
これは「世界で最も有力な女性トップ100」というランキングで、先例のないレベルで組織の権力を掌握していることが選考の条件とされています。
選ばれたこのマレーシア人女性は、年間50億米ドルの予算を管理している国連平和構築支援事務所の副事務局長で、主任務は世界各国の紛争地帯での数千以上の平和維持活動です。このマレーシア人女性は、支援資金の拠出が遅いことで悪名高かった3億4000万米ドルを保有する国連平和構築基金を、わずか2年間で柔軟に現場の要望に対応する基金に改革したことで高い評価を受けています。
さらに彼女は一昨年まで、難民高等弁務官補佐として11カ国の難民保護活動に従事しておりました。

生産シフト先としてのマレーシアをどう評価する?

マレーシアに在留していたという「ひいき目」があるのかもしれませんが、総合的に判断して、マレーシアは製造業の生産シフト先として、優れた投資環境を有していると思います。むしろ周辺諸国に比べて、優れた点も少なくありません。

共通語の流通 マレー系、中国系、インド系と多民族国家であるマレーシアは、公用語であるマレー語以外にも、英語、中国語が広く使われています。マレー語はインドネシア語と同じです。よって、マレーシア人は、多くの国・地域の人々と、ほぼネイティブな会話が可能です。

近代的な法体系 イギリスの植民地であったことから、一般的に「Common Law」と呼ばれる法律体系が確立している。多くの発展途上国では、外国企業、外国人に不利な法律&運用であるのに対し、マレーシアの法律体系は非常に公正なものです。

整備された金融システム また、もう1つのイギリス植民地の影響ともいえるのが、しっかりした金融システムです。国内金融機関の提供している金融サービスは国際水準にあると思います。どこかの国のように、外国送金への規制などはありません。

流動性の高い労働力 労働力の問題についても、さまざまな対策が採られているようです。東マレーシア(ボルネオ島側の領土)*や周辺諸国からの労働力の「輸入」が促進されています。1つ面白い話があります。マレーシアの公共バス運転手の大多数はインドネシア人です。一方、シンガポールのバス運転手の多くはマレーシア人です。それぞれ、自国より収入の良い国に出稼ぎに行っています。公共機関の運転手が外国人の出稼ぎというのは、ちょっと日本では考えられない現象です。

マレーシアというのは、東南アジアの中でもユニークな面を有しています。通常、発展途上国は国内の南北問題(都市部 vs.地方の収入格差)を抱えています。もちろん、マレーシアでも収入格差はあるのですが、他の発展途上国と比べると、その差は小さいものです。マレーシアではかなりの田舎に行っても、各家に自家用車として、PROTON、もしくはPERODUA*を見かけることが多くあります。他の国——タイ、インドネシア、フィリピンでは絶対に見ることのできない光景です。

プロドゥア(マレー語: Perodua )

プロドゥア(マレー語: Perodua )は、ダイハツ工業とマレーシア資本との合弁会社で、スモールカーを専門に製造・販売する自動車メーカーである。スランゴール州に本社を構える。

第2の国産車メーカー
1993年にプロトンに続く第二の国産車メーカーとしてPerusahaan Otomobil Kedua、通称プロドゥア社が設立された。このときの出資比率はUMW Corporation(38%)、ダイハツ工業(20%)、MBM Resources(20%)、PNB Equity Resources Corporation(10%)、三井物産(7%)、ダイハツ・マレーシア(5%)である。
2001年、新たにプロドゥア(49%)、ダイハツ工業(41%)、三井物産(10%)の出資で、車体製造会社とエンジン製造会社を統括する持株会社プロドゥア・オート・コーポレーションが設立され、製造部門はダイハツが子会社化している。

今後の展開
元々はプロドゥアをスモールカー専門とすることで、やや大きめの車種を扱うプロトンとの棲み分けを図っていたが、2005年には同じセグメントに属する車種が両社から相次いで発売され(プロトン・サヴィとプロドゥア・マイヴィ)、直接競合することとなった。この勝負はプロドゥアの圧勝となり、その結果2006年にはついにプロトンを抜いてマレーシア市場最大手に躍り出た。
プロトン同様、政府の保護政策の恩恵を受けられる国内市場への依存度が高く、イギリスなど14ヶ国にも輸出しているが年3,000台程度の規模に留まっている。今後は輸出をさらに拡大する方針でインドネシアへの進出が計画されている。

プロトン(Proton )

プロトン(Proton )はマレーシアの自動車メーカー。スランゴール州スバン・ジャヤおよびシャー・アラムに本社を置く。名称はマレー語のPerusahaan Otomobil Nasionalの略。1980年代に当時の首相マハティールの国産車構想の元、1983年に政府のバックアップによって設立された。イギリスの著名なスポーツカーメーカー・ロータスを傘下に持つ。
当初は三菱自動車工業と資本/技術面で緊密に提携していたが、業績の向上に伴いシトロエン・AXなど三菱車以外をベースにした車種の生産も開始、次第に独自色を強めた。そして1990年代後期にイギリスのロータス・グループ・インターナショナル社を傘下に収めて商品開発力を強化、現在の生産車種の大半は自主開発車となっている。
また1980年代後半から輸出拡大に力を入れ、特に旧宗主国であるイギリス・隣国シンガポールでは早くから低価格を武器に成功を収めた。現在では北米等を除く世界の大半の国と地域で販売されている。1990年代から2000年代前半はマレーシア経済の急成長もあって繁栄を謳歌し、ロータス・MVアグスタという英伊の名門スポーツカー・モーターサイクル企業を買収、英国サッカークラブのメインスポンサーになるほどであった。
しかしその後、マレーシア国内においてプロトン車のシェアは低下を続けた。2002年にはマレーシアの乗用車市場の60%を押さえていたが、2005年には30%に半減、さらにAFTAにより輸入車の関税は今後5%に引き下げられることが決まっており、更なる窮地に立たされる可能性が危惧されている。この不振はダイハツと提携し軽自動車ベースの大衆車を生産するプロドゥアの躍進、「Gen-2」などの自主開発車の不評が原因となっている。この苦境から脱するためフォルクスワーゲンなどとの提携話も進行していたが、結局決裂している。
2007年と2008年に相次いで投入した「ペルソナ」と2代目「サガ」の販売は好調で、プロトンの業績は持ち直している。2009年には「イグゾラ」を投入し、MPV需要の取り込みを図る。
2010年3月、ロータス・エンジニアリング及びイタルデザイン・ジウジアーロと共同開発した小型プラグインハイブリッドカー「エマス」 (EMAS) コンセプトをジュネーヴモーターショーで公開した。発表にはプロトンのアドバイザーを務めるマハティール元首相も立ち会った。
2012年1月16日、筆頭株主であった政府系投資会社カザナ・ナショナルが、保有するプロトン株42.7%をDRB-ハイコムに売却すると発表した。新たな筆頭株主となるDRB-ハイコムは輸出市場に注力する方針を表明している

日本におけるプロトンでは、パーツ販売やモータースポーツ活動を行っているキャロッセはモータースポーツのベース車両としてサトリアネオに注目し、日本への輸入を計画。2011年の東京オートサロンにサトリアネオのR3コンセプトとラリーコンセプトを参考出品し、同年夏頃から日本での販売を開始した。ただし、モータースポーツのベース車両ということもあり、日本仕様のトランスミッションはMTのみで、ABSは未装備である。
翌2012年の東京オートサロンではサトリアネオの他に、サトリアネオをベースに製作した「アルティガ」コンセプトと「サガ」R3コンセプトを参考出品した。

マレーシア国産自動車

マレーシアには国産車として、三菱自動車と技術提携を受けて出来た自動車会社プロトンがありますが、新しくダイハツ工業とマレーシア政府の合弁会社で設立された第二号の自動車会社プロドゥアが誕生しました。

国産車の質の向上に向けて -マレーシア自動車産業技術指導者育成-

 2006年7月にマレーシア側が自動車分野の大幅な輸入関税引き下げに合意し、日本・マレーシア経済連携協定(EPA)が締結されたことから、日本側は同分野への協力・支援を目的に、プログラムA〜Fまで10の日本マレーシア自動車産業協力事業(MAJAICO)(注)を5年間にわたり官民をあげて実施することになりました。

 JICA横浜では、日産が実施するMAJAICO B「技術者教育制度構築支援」に協力し、人的資源省傘下の職業訓練施設ADTEC(上級技術訓練センター)職員を対象とした本邦研修を5回にわたり実施しています。これは、自動車製造技能者(マスタートレーナー)を養成するための教育システム構築の為の研修であり、毎回5〜6名の研修員が来日し、約4週間に渡りトレーニングを受けています。MAJAICO Bでは、2011年6月までの5年間で自動車製造に関わる171講座のノウハウをマレーシア側に移転することになっていますが、日本での研修はその一部を担っています。これまで第4回までが修了し、23名の研修員を送りだしてきました。

【マレーシアが抱える課題】
 マレーシアには主に国産車、日本車、ヨーロッパ車が流通していますが、輸入関税引き下げに伴い、外国製の車との競争がより激しくなる為、今後は国産車の質の改善を更に図っていく必要があります。若者をターゲットとして職業訓練を行うADTECはその鍵を握る組織でもありますが、職員は自動車の製造や組み立て技術について、技術経験・現場経験に乏しく、生産現場において必要とされる知識・技能の理解が十分でないのが現状です。産業界に役立つ人材を輩出する為にも、実際の製造過程、使用機材の操作方法を理解し、指導するスキルの向上が急務となっています。
 そのような背景から、本研修では、日産の協力によりプレス、溶接、塗装、プラスチック成形、組立、メンテナンス等の技術訓練・講義を行い、能力強化を図っています。

【トレーニング現場で】
 工場内に併設されたトレーニング施設では、スポット溶接を行う研修員を目にしました。目つきは真剣そのものです。自分の作業が終わるたびに「オー」と感嘆の声が聞こえていました。言葉では何気なく分かったと感じていた内容・知識でも、実際に実践してみると難しさを実感したようです。生産現場で使用する機材のポイントを肌で感じ取った研修員。自身の身に蓄えた知識を、マレーシアの労働者に伝えていくことが、今後の彼らの責務です。
 工場内で自動車の製造過程を学び知識を蓄える研修員。「日本の工場設備の素晴しさに感銘を受けたが、同時に日本の労働マナーにも感銘を受けた。自動車の発展には、知識や設備だけでなく、時間管理やマナー、チームワークが重要だと学んだ。是非自国でも導入していきたい」と語るその顔は、満足感とやる気に満ちた様子でした。

<備考>
(注)MAJAICO:Malaysia-Japan Automotive Industry Cooperation(日本—マレーシア自動車産業協力事業)

マレーシアの自動車産業

 東南アジアで3番目に大きいマレーシア自動車市場。2010年には過去最高の販売台数60万台を記録した。このうち、国産車メーカーのPROTON社とPerodua社の合計シェアは過半数を超える。2011年3月に日産自動車との技術提携の開始を発表したPROTON社の戦略を探る。
 赤道に近いマレーシアは、マレー半島において北側がタイ、南側がシンガポールに接している。一方、東地域ではボルネオ島でインドネシアと隣り合っている。総面積は33万km2、総人口は2756万5821人(2010年の国勢調査)。つまり、日本の約9割の広さの国土に、約2割の人口がいる計算となる。首都のクアラルンプール周辺の都市圏には700万人が暮らす。
 主力産業は、パーム油および石油、天然ガスの生産。天然ゴムとスズも生産するが、近年は合成ゴムの普及や競争の激化で生産は伸びていない。
シェア1、2位は国産車メーカー
 自動車の生産も多い。東南アジアではタイ、インドネシアが年間70万台規模の市場を形成しているが、マレーシアも2010年には過去最高の60万5156台の販売台数を記録した(図)。これに伴い、国内自動車生産台数も56万7715台で過去最高となった。
 乗用車は54万3594台で、内訳は通常の乗用車が41万4539台、MPV(多目的車)が10万7714台、4輪駆動車とSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)が1万5416台、Window Van(小型バン)が5925台。一方、商用車は合計6万1562台で、最も多いのはピックアップトラックの4万414台。
以下、『日経Automotive Technology』2011年5月号に掲載
図 マレーシアの自動車販売台数推移
2010年に総販売台数が60万台を超え、2005年の55万台を抜いて過去最高を記録した。(出典:Malaysian Automotive Association)
 
 

格安航空会社

マレーシア
エアアジア http://www.airasia.com/
エアアジア X http://www.airasiax.com/
ファイアフライ http://www.fireflyz.com.my/


シンガポール
シルクエアー http://www.silkair.com/
ジェットスター・アジア航空 http://www.jetstar.com/3k/
タイガー・エアウェイズ http://www.tigerairways.com/
スクート http://www.flyscoot.com/


中国
春秋航空 http://www.china-sss.com/


日本
ピーチ・アビエーション http://www.flypeach.com/
エアアジア・ジャパン http://www.airasia.com/
ジェットスター・ジャパン http://www.jetstar.com/
春秋航空日本 http://www.springairlines.com/JP/JP_index 2013年から成田を拠点に就航予定
下記の3社は新興航空会社ではあるが、価格、サービス等の面からLCCに含めない場合も多い。
スカイマーク http://www.skymark.co.jp/
AIRDO http://www.airdo.jp/
スカイネットアジア航空(ソラシドエア) http://www.skynetasia.co.jp/

格安航空のビジネスモデル

格安航空会社は、規模や出身国の文化、企業理念といった背景によって各社ごとに多少の違いがあるが、ほとんどが以下のようなコスト削減手法を採用することで従来より低価格の運賃でも安定した運航を可能にしている。


運航コストの低減
タラップでイージージェットのエアバスA320型機に搭乗する乗客
運航機種を1機種程度に統一し、可能な限り、単一機種やその中での派生型(胴体延長型・胴体短縮型など)程度に機種を絞り込む
航空機メーカーから特定機種を大量に一括購入契約、または金融機関を通じたリース契約にすることで、機体コストを抑える
パイロットの操縦資格と訓練コストを最小にする/客室乗務員の訓練コストを最小にする
整備の共通化によって、保守部品と保守機材、メンテナンス要員の訓練コストを最小にする
既存の航空会社が乗り入れている混雑した大空港をできるだけ使用せず、大都市周辺の混雑していない地方の中小空港(第2次空港/Secondary Airport)に乗り入れる
ハブ&スポーク方式ではなく、ポイント・ツゥ・ポイント方式の旅客輸送方式を採る
多頻度・定時運航によって航空機を有効活用し空港駐機料を最小にする
ボーディングブリッジを使わずにタラップを使用しての搭乗、いわゆる「沖止め」を行なうことで施設使用料を安価に抑える
設備を簡素化した格安航空会社専用ターミナルを利用する
機内清掃は乗務員自身も行い地上要員数を最小で済ませる
整備設備を自社で持たず、整備を他社に委託する


人件費の節減
飛行訓練に対するコストを削減するために、すでに乗務資格を取得している運航乗務員を中途採用する
乗務員を含めて社員の給与や待遇に掛かるコストを抑える
制服を有償配布とする他、既存の大手航空会社では無償で与えられる靴やバッグなどの各種備品を有償配布とする
社員向け無償/割引航空券の廃止や、他社との社員向け無償/割引航空券の提携を行わない
客室乗務員の訓練を有償に、もしくは訓練期間中を無給とする


機内サービスの簡略化
機内サービスの簡略化は「ノーフリル」とも呼ばれる。
機内食や飲料は有料販売にするか、簡素化する
預かり手荷物の無償枠を下げ、有料化を増やす
機内シートには掃除しやすい本革もしくは合成革張りを使用する
座席指定を廃止し自由席とする/座席位置により価格差を設ける/座席指定を有料化する
毛布や枕などを有償化する
座席ごとのビデオや音楽放送、機内誌、新聞、雑誌などの機内エンターテインメントを省く
座席の前後間のスペースを詰める(ハイデンシティ)ことで座席数を増やす
座席クラスをエコノミークラスに統一する


航空券販売コストの低減
乗客自身がインターネット予約やE-チケットによって直接予約することで航空券販売コストを低減する。基本的には旅行代理店を使わず、その分の販売手数料を省く
マイレージサービスのような旅客向けのアライアンスには加入しない格安航空会社が比較的多い
購入時期を問わずキャンセル料100%=キャンセル不可


路線
格安航空会社のほとんどが、低消費燃料率で信頼性の高い中型ジェット旅客機を用いたポイント・ツゥ・ポイント方式での短距離や短中距離の路線を運航している。


旅客運賃以外の収益確保
航空機にアドカラー塗装をしたり、機内に広告を掲出することにより広告主(スポンサー)から広告収入を得る
オリジナルグッズや免税品(国際線)などの機内販売を積極的に行う
手荷物の有料化によって貨物搭載量の増量が期待できる


顧客層
従来型の航空会社が主要な顧客層として営業活動を行っている大企業社員の業務旅行需要や、旅行代理店などが企画・集客するパックツアーによる団体旅行とは正反対の、個人による観光・帰省旅行や、価格に敏感な中小企業の業務出張需要などを主な顧客ターゲットとしている。


顧客の満足
格安航空会社のコスト低減を重視した旅客便の運航では、機内サービスは必要最低限なものだけ提供され、離発着時間に余裕がないので気象条件の悪化や軽微な故障などでも多くの便の運航時刻が影響を受ける。また、乗り継ぎ便への配慮もなされない。それでも格安航空会社を繰り返し利用する旅客は多く、彼らはそういったサービス内容でも低料金であることで満足し、割り切っていると理解されている。

安全性に限っては国内のLCCと既存の大手航空会社において相違があるわけではないので、安全面でのリスク評価に航空運賃は無関係となる。

アジア、格安航空会社のマーケットごとの状況

格安航空会社の歴史は比較的浅いものの、1990年代以降に東南アジアにおいては各国政府による積極的な航空自由化が推し進められている上に、急激な経済成長を背景にした所得の向上に伴い航空機の利用者数が急増しているマレーシアやタイ、インドネシアや、南西アジアの大国であるインドを中心に急成長している。
これらの地域においては、マレーシアのエアアジアやインドのエア・デカン、インドネシアのライオン・エアを代表に、独立系の格安航空会社も多いものの、既存の大手航空会社が格安航空会社の子会社をもつケースも多く、シンガポール航空がタイガー・エアウェイズを、タイ国際航空がノック・エアを、カンタス航空がジェットスター・アジアを設立し、これらを成長著しい東南アジア地域内及び中華人民共和国南部をはじめとした短距離国際線に投入するなど、その対応を強めている。
しかし、この波に対応できなかったマレーシア航空は、マレーシア政府によって赤字続きの国内路線をエアアジアに移管させられた他、インドネシアのガルーダ・インドネシア航空やフィリピンのフィリピン航空などの他の既存の大手航空会社(その多くが国営、もしくは半官半民の国策企業である)も、国内や近距離国際線における競争激化が進む中で慢性的な赤字経営が続くものの、抜本的な経営改革が進まず苦慮している。
その一方、これまで国内における航空会社間の競争が激化していたにもかかわらず、格安航空会社が存在していなかった中華人民共和国では、2004年に行われた航空業規制緩和を機に、初めての民間資本系格安航空会社の春秋航空が発足した。同じく格安航空会社が存在していなかった大韓民国においても、済州を本拠地とした新興格安航空会社の済州航空が営業を開始し、大韓航空自身も格安航空会社のジンエアーを設立した。
しかし、結果的に採算が取れずに運航を停止したものも多く、2006年には、ボーイング747-400で香港-ロンドン間という長距離国際線を運航する格安航空会社であるオアシス香港航空が運航を開始し、その新しいビジネスモデルの成否に注目が集まっていたが、燃料価格の高騰で経営状況が悪化し2008年4月に運航を停止した。他にも、タイのワン・トゥー・ゴー航空やインドネシアのアダム航空が死亡事故を起こした末に運航を停止した(後に、ワン・トゥー・ゴー航空は運航再開)。2010年3月28日には、経営不振が指摘されていたビバ・マカオがマカオ政府から財政支援を打ち切られ、運送事業許可を取り消された。

格安航空会社の台頭

格安航空会社の運賃に対応できなくなった既存の大手航空会社の乗客の多くがこれらの格安航空会社に流れたことや、価格競争の激化によって既存の大手航空会社のシェアは下がり、2001年9月に発生したアメリカ同時多発テロ後の国際航空旅客の一時的な減少や、2003年3月に開戦したイラク戦争以降の原油価格の高騰などにより経営状況は悪化した。2000年代に入るとスイス航空やサベナ航空、ユナイテッド航空やヴァリグ・ブラジル航空などの、かつてのIATAカルテル下では繁栄を謳歌していた既存の大手航空会社が相次いで経営破綻、倒産し、そのうちのいくつかは姿を消すこととなった。
デルタ航空やユナイテッド航空、タイ国際航空やシンガポール航空、スカンジナビア航空やルフトハンザ・ドイツ航空などの既存の大手航空会社が、格安航空会社のビジネスモデルを部分的に取り入れた子会社の格安航空会社を相次いで設立した。格安チャーター便専門会社による定期運航の格安航空会社への相次ぐ業態変更や、オアシス香港航空のような長距離国際線を格安運賃で運航する格安航空会社や、シルバージェットのような長距離国際線のビジネスクラスを格安運賃で提供する格安航空会社の登場など、航空ビジネスにおいて格安航空会社の存在は重要かつ無視のできないものとなっているだけでなく、航空業界の勢力図を塗り替えるほどの大きな影響を与えている。

「格安航空会社」の誕生

フレデリック・レイカーによる会社設立以降、長年の間アフィニティ・チャーター便を運航していたレイカー航空が、これまでの「企業本位」ともいえる不自然な状況を打破すべく、既存の大手航空会社の割引運賃を大幅に下回る格安な運賃により、「スカイトレイン」のブランド名で1977年にロンドン(ガトウィック)-ニューヨーク(ニューアーク)線などの大西洋横断路線に参入した。
レイカー航空は、瞬く間に格安運賃を求める多くの利用者(その多くは大学生などの若者のバックパッカーを中心とした個人客であった)から支持を受けて、イベリア航空やアリタリア航空、サベナ・ベルギー航空などの、「IATAカルテル」の恩恵を受けて割高な国際航空運賃を維持していた既存の大手航空会社を押しのけ、1981年には大西洋横断路線において6位のシェアを獲得した。
対岸のアメリカでも、1978年にジミー・カーター政権によって施行された航空規制緩和(新規航空会社の設立や路線開設が事実上自由化された)の影響を受けて、1981年にドナルド・バーによって設立され、既存の大手航空会社の割引運賃を上回る格安な運賃で大西洋横断路線やアメリカ国内線に就航したピープル・エキスプレス航空や、それに先立つ1971年に設立され、航空規制緩和を受けて急速にその規模を拡大していたエア・フロリダが、格安航空会社のはしりとして脚光を浴びた。
間もなく、大西洋横断路線を主軸にしていた格安航空会社は、パンアメリカン航空やトランスワールド航空、ブリティッシュ・エアウェイズなどの大西洋横断路線を主要な収益源の1つとして運航していた既存の大手航空会社やIATAの意を汲んだイギリス、アメリカ両国政府の強い圧力、航空事故などを受け倒産した。
レイカー航空の倒産は、同じイギリスのリチャード・ブランソンによるヴァージンアトランティック航空設立に大きな影響を与えた。

2013年1月21日月曜日

カナダ永住権 PNP・州政府技術者移民制度

PNP制度について
 
PNPは、カナダ政府に州が推薦する永住権制度で、州内経済事情の需要を満たす移住申請
者が対象となります。PNP審査は、政府への永住権申請に比べ迅速(審査期間・3〜6ケ月)
に処理されると共に、政府の永住権申請資格がない人でも発給対象となります。
 


PNP(Provincial Nominee Program) 州政府・技術者移民制度
■PNP永住権制度を導入している州政府
BC州、アルバータ州、ニューファンドランド州、サスカチュワン州、ラブラドルとプリンスエドワー
ド州、ケベック州、マニトバ州、ノバスコシア州など。
PNP永住権制度は州移民法の規定に定められ、内容は州別に独自設定されています。

○ブリティッシュ・コロンビア州のPNP制度 ※年間1000人の推薦枠雇用中心型
雇用主が適切なカナダ人の人材が得られない場合に適用。雇用主の推薦が必要で、雇用主
が適用を申請します。職業リストの指定はありませんが、BC州の産業発展に貢献できる職種
・人材が対象となり、職種によって優先権があります。例えば、バイオテクノロジ−、高度先端
技術、航空宇宙技術、大学教授・研究者、医療技術者・看護師、商業熟練者などですが、職
種は社会情勢、雇用情勢などによって随時変更されます。
ブリティッシュ・コロンビア州/PNP制度ガイド

<期間限定エントリー制度>
2008年〜2011年8月までの期間、申請対象条件が緩和。BC州にて9ケ月以上、旅行・観光・
ホスピタリティ・飲食・運送産業などで就労中で、同一雇用主の下、継続してフルタイム雇用
の約束が取れる人が対象となります。


○ノバ・スコシア州のPNP制度

2002年8月実施。経営者・マネージャー、技術者・熟練ワーカー向けなどの制度があります。
ノバ・スコシア移民局/Nova Scotia Nominee Program
<技術者向け>
州内で不足している分野に該当するスキルドワーカーが対象。18歳以上で、州内該当企業の
永続的な雇用保証などによって、州指名認定証を取得する必要があります。
手続きにかかる費用は5500Cドル、内1700Cドルは払い戻し不可。
<経営者向け>
2002年8月実施。25〜60歳までの高校卒業以上の学歴を有し、事業マネージメントの経歴を
有する人が対象。加えて、30万Cドル以上の純資産証明が必要となり、内約13万Cドルは州
政府へ預託。永住権を取得できなかった場合は全額返金されます。
また、永住権取得後は州指定企業から希望の会社を選び、6ケ月間、管理職として勤務する
義務があり、6ケ月間で2万カナダドルの給与が支払われます。そのは就職、起業などの自由
な就労が可能。原則として州内居住が求められますが、他州への転居も認められます。
手続きは、各種書類を州政府に提出後、5日間の現地視察と面接などを経て審査。通過者に
は州指名認定証が発行され、発行日から180日以内に永住権を申請。

○ケベック州のPNP制度
カナダ査証編を参照

○サスカチュワン州のPNP制度
州による特定職業リストの経験者が該当し、移住希望者が申請書を作成。ポイント制度が導入
され、職業熟練度、各種条件によって合格ポイント数が設定されています。雇用主推薦不要。
また、州内の公立大学または公立カレッジを卒業し、州内の専攻関連分野に就職する場合は、
有利な条件となります。

○アルバータ州のPNP制度 ※年間400名の推薦枠
アルバータ州の産業発展に貢献できる職種の専門技術者(臨時労働者も含む)が対象。事前
に州PNPにより承認された職種であることと、雇用主により推薦された候補者であることが必
要。州PNPの認定をうけた移住申請者は、カナダ高等弁務官事務所、在外カナダ公館に移民
査証取得候補者として推薦され、カナダ政府移民法の該当条件の下で審査されます。

○マニトバ州のPNP制度
申請者主導型。州内の公立大学または公立カレッジを卒業し、州内の専攻関連分野に就職す
る場合は、有利な条件となります。

ニュージーランド永住権 技能者カテゴリー

能者カテゴリー要旨

技能者カテゴリーのポイントスコア
○永住権・技能者カテゴリー
Skilled Migrant Category
2003年12月17日、旧制度が廃止され新制度が
施行。新制度移行は、ニュージーランドが必要
とするスキルを備えた人材の確保が目的。
また2010年7月、新ポイントスコアが実施開始。

○公式ガイド
ニュージーランド移民局
<大使館への資料請求>

Self-Assessment Guide For Redidence in NZ
というパンフレットを配布。
ニュージーランド大使館


○申請登録/EOI
申請希望者は、初めに申請登録(Expression
of Interest)を行います。
登録できるのは、55歳以下で健康上の問題が
なく、2年以内に受験した「IELTS」英語力試験
の合計が6.5以上の人。
IELTS公式サイト

○ポイントスコア・セレクション
◆申請登録した人の中から100ポイント以上を
取得できる人が次段階の審査候補として保管
され、原則的に2週間毎に行われるセレクション
によって高得点者から選択されます。
各セレクションでの選択者人数は、残数・登録
数・登録者レベルにより毎回異なります。
<実際の必要点数>
ポイント点数の引き上げによって、現実的には
140点以上の獲得が必要となっています。

◆選択されなかった登録者リストは3ケ月間保
留され、次回のセレクション対象となりますが、
同期間内に選択されなかった場合は登録抹消
となります。
◆選択された人には、永住権および就労居住
査証の案内が送付されます。

○関連機関
New Zealand Qualifications Authority
国立資格審査局。海外で取得された資格を、
国内で認可するか否かを判断する機関。








■ポイントスコア ※2011年8月改変

5つのカテゴリーが設定されています。

○年令
◆20−29歳=30点
◆30−39歳=25点
◆40−44歳=20点
◆45−49歳=10点
◆50−55歳=5点

○雇用保証 Skilled employment
◆現在NZで1年以上雇用されている=60点
◆現在NZで1年未満雇用されている。または
雇用オファーがある=50点
<ボーナスポイント>
◆発展分野・人材不足分野での雇用=10点
◆オークランド地区以外での雇用=10点
◆配偶者またはパートナーの雇用・雇用オファ
ーがある=20点

○職務経験 Relevant work experience
◆2年=10点
◆4年=15点
◆6年=20点
◆8年=25点
◆10年=30点
※週30時間のフルタイム。
※週30時間以下のパートタイムの場合は就労
時間をフルタイム時間数に充当して期間算定。
<ボーナスポイント>
◆NZでの就労経験1年=5点
◆NZでの就労経験2年=10点
◆NZでの就労経験3年以上=15点
◆発展分野、人材不足分野でのNZでの就労
経験2〜5年=10点
◆発展分野、人材不足分野でのNZでの就労
経験6年以上=15点

○資格・学歴 Qualifications
◆専門学校、短期大学卒業資格=40点
◆4年制大学卒業資格=50点
◆大学院卒業資格=60点
<ボーナスポイント>
◆NZで2年間就学後、修士以上を取得=15点
◆NZで2年間就学後、学士を取得=10点
◆NZで1年間就学後、修士以上を取得=10点

○家族環境
◆NZに家族が居住=10点


オーストラリア永住権 技術独立移住査証

オーストラリア技術独立査証は代表的な永住査証の一つで2005年7月よりインターネット申請が実施。
対象年令は申請時に18歳以上50歳未満(2012年7月、45歳未満から引き上げ)。ポイントテストで予備
審査基準点数を取得することが必要。
<オーストラリア移民局公式ガイド>
The General Skilled Migration Program (GSM) 
2012年7月改正 新GSMガイド

○2012年7月、大幅な改変が実施。
規定ポイント到達後、段階的なステップが加わることでハードルは高くなり、実質的に永住権の別制
度「雇用主指名査証」を優先させる意図があります。6種類のサブクラスは3種類に整理されました。
<サブクラス>
◆189/skilled independent  ※subclasses 885、175から変更。
◆190/skilled nominated  ※subclasses 886、176から変更。
◆489/skilled regional  ※subclasses 487、475から変更。

○申請手順
■登録

規定ポイントを満たしている人は、EOI/Expression of Interest(申請表明)オンラインフォームに必要
事項を記入し登録。申請者の職業が「Skiled Occupation List」に載っていること。規定職種での実務
経験が申請の24ケ月以内に12ケ月以上あること。保持している職業、学術資格がオーストラリア専
門機関による査定に合格していることなども必要です。 
SOL公式ガイド  ANZSCO公式ガイド 
■選抜
データは2年間移民局に保管され、EOI登録者の中から職業やスキルを考慮し、ポイント点数が高い
順に候補者が選抜されます。新制度最初のセレクションは2013年1月、以降、定期的に実施予定。
■本審査
通過者は移民局から連絡(査証申請許可通知)があり、本審査が行われます。



技術独立移住査証のポイントテスト (基準点数・内容は変動します)

★予備審査基準点数=60点(2012.7)
オーストラリア移民局/ポイントガイド

○年令評価(登録時)
◆18-24歳=25点
◆25-32歳=30点
◆33-39歳=25点
◆40-44歳=15点
◆45-49歳=0点


○英語評価
IELTS4項目(聞き取り・読む・書く・面接会話)
の点数またはOETで評価。IELTS有効期間は
24ケ月。

◆IELTS8ポイント/OET・A=20点
◆IELTS7ポイント/OET・B=10点
◆IELTS6ポイント/OET・B=0点


○国外実務経験評価
オーストラリア国外での就労経験(10年以内)
◆5年以上=5点
◆8年以上=10点
◆10年以上=15点



○国内実務経験評価
オーストラリア国内での就労経験(10年以内)
◆3年以上=5点
◆5年以上=10点
◆8年以上=15点
◆10年以上=20点


○学位評価

◆オーストラリアを含む国外の認定専門学校
学位=10点
◆4年制大学の学士・修士=15点
◆博士号=20点

○ボーナスポイント
◆オーストラリアでの学位取得=5点
◆NAATIなどの認定語学資格=5点
◆オーストラリア地方都市での就学=5点
◆配偶者が申請最低条件を満たす=5点
◆プロフェッショナルイヤー=5点
移民局/プロフェッショナルイヤースタディ 
<サブクラス190のみ>
◆州または地方政府の指名=5点
<サブクラス489のみ>
◆州・地方政府の指名、対象家族の後援=10点


関連情報


○夫婦申請

夫婦および内縁関係のカップル2人で申請する場合は、どちらか一方が合格点に達すれば、両名に永
住査証が発給されます。


○IELTSの受験

2006年より90日間の再受験制限が撤廃され、何度でも自由な受験が可能。


○開業医のSOLリスト追加

2004年6月より実施。該当する医師への永住権発給数目安は年間約1000人。

○オーストラリアの通訳・翻訳資格「NAATI」
National Accreditation Authority forTranslators and Interpreters
オーストラリア連邦政府および州政府の共同出資による独立組織。現在オーストラリアでは移民局を
はじめとする政府に提出する公式な翻訳や、国際的な会議における通訳はNAATIの公認翻訳家また
は通訳者でないとできません。


○2011年7月の改変内容

ニュージーランドの制度と似た段階審査が導入。最初の予備審査に通過したのみが次の本申請に進
むことができるというもの。職業リスト(SOL)に載っている職種を指名して申請することになりました。

スペイン ロングステイ

○査証免除
シェンゲン協定による滞在制限について
EU国を中心としたシェンゲン協定加盟国では滞在制限を共通化。
スペインを含めた加盟国地域の滞在は<6ケ月以内90日間>に制限されています。
■スペイン大使館
東京都港区六本木1−3−29 tel 3583-8531
■スペイン大使館・領事部
tel 03-3583-8533  fax 03-3582-8627

○査証関連機関
スペイン外務省
スペイン内務省
スペイン警察
スペイン法務省
バラカルド(ビスカヤ地方)移民局
■労働許可
スペイン労働省
スペイン労働省 移民局

○スペイン査証について
スペインの査証規定は、予告もなく1年に何度も変わることも珍しくないために、最新情報は大使館な
どで確認することが必要です。また2003年秋の法改正によって就労規定の緩和と違反罰則強化が図
られています。

○滞在資格変更

査証免除、査証所持に関わらず、入国後の滞在資格変更は原則的に認められていません。

スペインのリタイアメント査証

○就労査証
スペインで働くには、日本で就労査証を取得して入国後、現地にて就労用居住許可証を取得すること
が必要。雇用される場合の就労査証発給には、申請職種が該当地域において労力不足であること、
EU国籍者が同様のポストに就職を希望していないこと、雇用主が社会保険加入を保証することなど
が必要。 日本人雇用の必要性を説明した正当な理由書の提出も必要となり、この理由書が最も重要
視される傾向にあります。尚、日本人の就職先は多くはないものの、日本食ブームが続いているため
日本レストランへの就職は好調。
<取得手順>
1>先ず雇用主が採用通知書と採用理由書を添えて地方労働当局(Direccion Provincial de Trabajo)
へ提出し、受付書類(Oferta de Trabajo para Trabajadores Extranjeros)をもらいます。
2>被雇用者はこの受付書類などを揃え、通常は在日スペイン大使館へ就労査証を申請。本人の他、
代理人でも可能ですが委任状などの証明書類が必要です。通常4ケ月半以内に審査結果が通知され、
期間内に回答がない場合は不許可。また希望者にはマドリッドの裁判所に控訴するための証明書が
発行されます。審査が通過した場合は2ケ月以内に本人が出頭し、査証を受領。
3>就労査証にてスペイン入国後、就労用の居住許可証を取得。申請に必要な書類は就労査証発給
時に全て返却されます。また、居住許可証発行まで40日〜数ケ月かかるため、就労査証にて入国後、
雇用主が社会保険の加入手続きを取った時点で法的に働く事が可能となっています。
<申請書類>
・査証申請書と写真(4.5x3.5)4枚 ・パスポートとコピー1通
・無犯罪証明書またはスペイン警察発行の証明書の原本とコピー1通
・健康診断書(大使館指定用紙)とコピー ・労働許可申請受理書(受理日から3ケ月以内のもの)
・連絡先を記載したメモ ・返信用定形封筒2通 ・査証手数料無料
■駐在員用の就労・家族査証の発給所要期間
2007年4月、査証発給の所要期間が短縮(申請から70日以内)される措置が実施されたものの、日
系企業は対象外の環境。現地日系企業団体は同様の措置を求めて要請していく方針。

■不法就労

不法就労の取り締まりは厳しく、発覚すると罰金または強制退去となります。

○居住許可証(Autorizacion de trabajo y residencia)
3ケ月を超えて滞在する場合は、入国後1ケ月以内に、居住地区を管轄する警察署にて居住許可証
の申請が必要。居住許可証は滞在資格別にいくつかの種類があります。
■就労用・居住許可証(ペルミソ・デ・トラバホ)
就労用居住許可証はいくつかの種類に分けられ、b・B・CはCuenta Propiaと呼ばれる企業就職用。
失業保険受給の場合は自動更新されます。
<bタイプ>通常、初回取得時はb査証となり特定の職種・地域に限定されます。1年のみ有効。
<Bタイプ>bの更新用。職種・地域の制限なし。2年有効。
<Cタイプ>Bの更新用。職種・地域の制限なし。2年有効。
<D〜Fタイプ>自営用Cuenta Ajena、永住用など。
<申請書類>
・申請書と就労査証取得済のパスポート、写真4枚
・無犯罪証明書・健康診断書(就労査証取得時に返却されたものを再提出)
・雇用契約書(指定用紙)など雇用関係書類
・雇用先の税務登録番号カードのコピー
・雇用先の会社概要と仕事内容を証明するレター
・住居の賃貸契約書
<更新>
失効の1ケ月前に申請。申請書類は、パスポートと写真3枚、居住許可証、労働継続を証明する雇用
主のレター、社会保険支払い証明(TC1. TC2)など。
■同居家族用・居住許可証
労働・居住許可証所持者の家族が同居する場合は、家族用の居住許可証の取得が必要。
家族同行で渡航する場合と後で呼寄せる場合は申請方法は異なります。
■学生用・居住許可証
居住許可証に代わる<学生証 Tarjeta de estudiante>の取得が必要。現地で学生証を取得するた
めの必要書類は学生査証発給時に返却されます。

○学生査証
90日を超える通学には学生査証が必要。日本人の場合、発給無料。郵送申請不可。
■短期学生査証/Cタイプ
90日〜180日までの通学・研究が対象。滞在期間は通学コースとほぼ同じになりますので、自動的
に180日間の滞在が可能になるわけではありません。在日大使館での本人申請が必要ですが、委任
状所持の代理人理申請も可。発給は申請から所要6週間。滞在延長は不可。延長したい場合は日本
に帰国しての再申請となります。

<申請書類>
◆申請書、写真4枚、パスポートとコピー
◆公立または私立の認可校の入学登録証明書(通学期間・授業時間数明記)の原本とコピー。
◆滞在費証明(A〜Eのいずれか一点)
A/月額1710ユーロ以上(宿泊費用含む)の滞在費と航空券購入費の残高がある預金残高証明書。
B/学生で親の扶養家族の場合は親名義の預金残高証明書(親子関係を証明できる戸籍謄本また
は健康保険証のコピーも提出)
C/雇用されている会社からの派遣は、渡航目的、期間、学校名、住所、渡航費・生活費の会社負
担を明記した英文保証書。
D/スペインの居住者が現地における勉学期間中の扶養と住居を保証する旨を記した公正証書。
E/スペイン、あるいは外国の公的、私的機関からの滞在費給付証明書。
◆宿泊証明(滞在中の宿泊先が用意されていることを証明するもの)
◆滞在期間をカバーする海外旅行保険加入証明書
◆返信用封筒(査証発給許可の通知用)
◆昼間連絡のとれる電話番号を書いたメモ。

■長期学生査証/Dタイプ

180日を超える長期の通学・研究が対象。在日大使館にて本人の出頭による申請と受領が必要。
郵送手続き不可。発給は所要2〜3ケ月。査証発給通知日から90日以内の入国が必要です。
<申請書類>
上記・短期査証用の申請書類に加え、健康診断書(発行日から1ケ月以内のもの。原本とコピー1通、
大使館指定様式使用)、無犯罪証明書などが必要となります。
<学生用滞在許可証の取得>
入国後1ケ月以内に所管の警察署にて学生用滞在許可証(Tarjeta de Estudiante)の取得が必要。
<滞在延長・査証の再取得>
条件を満たせば滞在延長可能。転校や期限満了の場合は、現地で学生査証を再取得する必要があ
ります。必要書類は申請書(警察署で配布)、パスポートコピー2通、学生ビザ、写真3枚、銀行残高
証明書、前回申請した学校の卒業証明書と新申請する学校の入学証明書とコピー、発給料5ユーロ。
■留学相談先
スペイン大使館・文化部


○永住権
合法的な5年以上の継続滞在実績を有する人に申請資格が与えられますが、就労用労働許可証の
場合は、Cタイプ取得後5年を経ると永住権の申請資格が得られます。また永住権は5年毎の更新
が必要。永住権を取得すると、自営や就職に関する制限はなく自由な就労が認められます。

○ポルトガルへの主要陸路国境地点
ポルトガル国境地点は、特定日を除き手続きは迅速スムーズで何の問題もありません。
トゥーイ/ベリン/フエンテス・デ・オニョロ/バレンシア・デ・アルカンタラ/バダホス/アヤモンテ

2013年1月10日木曜日

節税と資産フライトの真実、教えます 富裕層のシンガポール移住は損か得か

 お年始回りで若いトレーダーやベンチャー経営者たちが、わが家に飲みに集まった。三菱商事の金属部門がシンガポールに移転する昨年末の記事を読んだ連中たちだ。お屠蘇気分で「シンガポールに移住したら本当に得するのかどうか」との議論になった。

シンガポールは国まるごとデューティフリーのようなもの

 30代の彼らは、ベンチャー精神豊かで海外経験も豊富なIT関係者、ソーラー発電等の自然エネルギー、さらにはコモディティなどを扱う連中である。
彼らの立場からすると日本の社会保険料はいくら払っても、自分たちには応分の年金は戻ってこないから、「日本にいても馬鹿らしい」というのが、共通した持論である。

 しかし、話をよく聞いてみると社会保険制度だけでなく、日本の税制の不備についても100%理解している。だから、「自分はもらえて当然」と考えている団塊の世代よりも、よほど冷静に考えている真面目な連中である。したがって私も、今回のテーマをあまり煽ることのないように客観的事実だけを説明することにした。

 そこでまず、初めに日本とシンガポール両国の税制を比較してみた。シンガポールの法人税は最大17%(実効税率は10%以下)で、日本の法人税は40%超と世界一高い水準といってよい。接待交際費などは原則、経費計上が可能で、住居費についても経費計上できる。

 一方、個人の所得税率では日本が最高約40%(プラス住民税10%で合計50%)に対し、シンガポールは最高20%(住民税はゼロ)だ。さらに、相続税・贈与税はなく、資産運用益に係るキャピタルゲインやインカムゲインに対する課税もゼロである。まあ、重税感に苦しんでいるわれわれからすると、「国中がデューティフリーショップ」のようだから、うらやましいかぎりだ。

 何をやっても、この15年間のシンガポールはうまくやってきた。というのも2000年まではシンガポールの法人税はまだ26%であった。香港(16.5%)と比べても明らかに高かった。しかし、01年には25.5%、02年24.5%、03年22%、05年20%、07年18%、10年17%と、しだいに低く誘導していった。意外である。初めから優遇税制を餌にして企業誘致をアピールしてきたわけではなかったのだ。

 これだけのメリットがあれば、法人も個人も考え込んでしまうというものだ。日本の政治や経済が停滞していることに加え、若い世代は失業問題や税金問題、そして年金問題に疑問を持っている。だから世界屈指のビジネスインフラや合理的な税制システムが整ったシンガポールへ引っ越ししようかな、と思うのは当然である。私だって、若いときなら、とっくに移住していたかもしれない。

 現在、シンガポールの日本人は2万4000人ぐらいいるとされている。ちなみにシンガポール人口は現在約500万人程度で、外国人はそのうち約30%。日本人比率はたった、0.5%しかいないことになる(外人比率でもたった1.7%である)。

 メーカーの出身者によると、シンガポールがモノづくりには適さないようになってマレーシアやインドネシアに転出する人も多い、という。だが、日本からシンガポールへの移住者はこれからが本番になりそうだ。

 いまや、シンガポールは世界でも有数の先進的ソフトパワ—国家に成長した。積極的な外資の誘致努力で、経済成長が高く、ついに一人あたりのGDPでも07年には日本を追い抜いてしまった。主なデータは以下の通りである。

 1)  ビジネスのしやすさランキング世界1位(12年、世界銀行発表)

 2)  貿易円滑化指数世界1位(11年、世界界経済フォーラム)

 3)  今後、最重要な金融センターランク世界1位(11年、Z/Yen英国グループ)

 4)  世界で最も住みやすい都市ランキング世界1位(12年、ECAインターナショナル)

 5)  国際競争力レポート「政治への国民の信頼」世界1位(12年、世界経済フォーラム)

 6)  国際競争力レポート1人当たり名目GDP(11年)アジア1位

 (12年、シンガポール通商産業省)

 いやはや、大したものである。

シンガポールの金融サービスはピカイチ

 日本にいると、一般庶民でも税制のメリットが少ないのは誰だって知っている。
税金の少ない国に移住したら、税金の浮いた分で何でも好きなことができそうだ。旅行もよし、趣味もスポーツもマイホームも、新車だって何でも買える可能性が広がるから、シンガポールに移住した方が人生は楽しくなるだろう。

 東日本大震災の時に、日本の若者たちは身を挺して被災地に駆けつけてボランティアをしたが、自分たちの力だけではできないことも多く、脱力感を持った。仮に特別復興税制が迅速に上手く機能したなら、もっと早く復興が進み被災地向けの寄付や支援だって増えただろうと、私は考えた。

 そもそも、日本にいると閉塞感のために「真綿で首を絞められる」ような気分になるのはなぜだろうか?

 大手企業は十分儲けを出しているのに、昔ならいざ知らず、今はサラリーマンには、そのおこぼれは回ってこないのだ。

 日本でサラリーマンをしていても、税金は徹底的に源泉徴収で絞り取られる。年末調整で少し戻ってきて、喜んでいるのが関の山だ。 世界でこれだけ真面目に税金を納めている国民は私の知る限り見たことがない。

 一方で、反社会勢力をはじめ、大企業や農業従事者の一部のように、税金をほとんど払わなくても当たり前だと思っている輩が跋扈する社会制度を放置している国家も珍しい。いずれ消費税率の改正で、この点は改善されると信じたいものだ。

 資本主義国家だから仕方がないと、諦めるのが一般の庶民の悲しい性(さが)である。だが一方で、現時点では日本では浮かび上れるチャンスは皆無に近いが、シンガポールではそうでもない、と気がつき始めた賢明な連中も徐々に増えてきた。

がんじがらめになっている日本の金融

 世界中から資産家・富裕層が集まる国シンガポールには、世界を代表する数多くの大手金融機関が居を構え、個人・法人を対象に、プライベートバンク、保険、債券、投資ファンドなど、何でもありの世界だ。ただし、お金持ちなら何でもできるが、貧乏なクラスにはやっぱり厳しいことは言うまでもない。

 投資商品のバリエーションや運用実績でもシンガポールは世界最高レベルだ。日本国内のサービスとは比較にならない。日本の証券マンは会社によく電話をしてくるが、世界の金融の実態を知らない。

 何でも金融庁の指導があるらしく「あれもできない、これも駄目」と言う。だから、申し訳ないが会社に来ないでほしいとお願いする始末だ。これも昔の証券マンの成功体験の繰り返しで、具体的な提案もなしに証券会社の用意した(それも多分、海外ファンドがつくったリテール用の)資料を持ってきて、自分で判断して下さいと繰り返すだけの営業である。

 なぜ、もっと金融のプライベートバンカーが日本に育たないのかが理解できない。驚くことは、メールによる連絡さえできないことが多いのだ。必要なら持ってくるかFAXを流すといってくる。

 アドバイスをするならモニター画面を見ながら合理的なデータや分析結果を報告するべきなのに、なぜか謝りながら会社の冊子を置いていくのである。

 良く聞いてみると、日本の金融の世界は金融庁のがんじがらめのルールに支配されているとのことだった。世界の潮流に遅れている日本の金融環境で金融資産の有効利用をすすめているのに、リーマン以降の証券市場で株価が上がっていないのは主要国では日本市場だけといってもよいほどである。

 一方、シンガポールは居住環境、成長性、法体制、治安、立地など総合的なバランスで見ても、昔から金持ちが集まるスイスや香港よりも便利になったらしい。今や資産保全・資産形成を行なうのに最も適した国に感じられるのは、私だけではないはずだ。

 シンガポールの中心からチャンギ国際空港までは20分で到着する。街の中心のアパートを借りれば、アセアン諸国のどこに行くにも大変便利。しかも1時間から3時間もあればタイ、ミャンマー、ラオス、ベトナム、カンボジア、インドネシアと、どこでもすぐに到着する。空港は24時間稼働だ。世界一のサービス充実度を誇る上に、週5000便以上の定期フライトが運行されていて、日本への直行便も毎日就航しており6〜7時間で到着する。

 港湾も歴史的に貿易拠点として繁栄してきた。現在もアセアンにおける立地条件を生かしてアジアにおける物流ハブを提供している。その重要な役割を担っているのが太平洋とインド洋を結ぶマラッカ海峡である。

 世界トップクラスのコンテナ取扱量を誇っているが、港湾業務のIT化をいち早く導入しており、着岸から離岸まで12時間以内という作業効率の高さを誇っている。世界中の物流企業の支点がシンガポールに移転したために、今後ともアジア市場の物流のセンターとしての役割はますます重要になってくるかもしれない。

 とはいえ、実は、シンガポール政庁は移住希望者が増えてきたので、永住権やビザ発給基準を次々と厳しくしている。現地に行くと中国からの投資家(旅行者も含めて)が殺到しているようにみえる。

 一定額以上の財産保有や国内銀行への預入条件を満たせば永住権が発給される金融投資スキームも12年4月で廃止された。今後は会社を設立して永住ビザを取得する外国人(大陸からの中国人)が増えると予見している。

 シンガポールに法人を設立するのは超簡単

 では、シンガポールに現地法人を設立するためには何をすれば良いのか?
順序を追って説明しよう。シンガポールには会社設立の代行業者は(現地の公認会計士でも税理士でも)よりどりみどりである。

 ただ日本の企業が現地法人を設立する場合には日本のメガバンク等の紹介で業者を選択したほうが良いだろう。言葉の問題もあるし、シンガポール独特のルールもあるので初心者の方には現地に長く滞在している日本人コンサルタントを通じて会社設立する方が無難だ。

 日本でも現地に詳しい公認会計士や税理士に相談しながら進めることが前提になることは論を待たないが、まず初めに決めなければならないのは会社の名前である。会社設立業務は以下のとおりだ。

 1)  会社名(商号)の決定は名前の重複を調査して、決定する。

 2)  必要書類(定款)の作成:資本金額、事業内容を決定、株主、取締役等を選定する。

 3)  商号確認:会計企業規制庁(ACRA)に会社名予約申請を行う。

 4)  会社登録申請:   会計企業規制庁(ACRA)に会社登記申請を行う。

 5)  銀行口座開設:会社名義での銀行口座開設手続き(DBSとHSBC)を行う。
  口座開設については、日常会話ができる人なら、何とか対応は可能だ。以上がたった一日で終了するから、日本とは大違いだ。

「明るい北朝鮮」と呼ばれるシンガポール

 シンガポールは治安が良くて市内のどこを見てもきれいだが、ガムを捨てても唾を吐いても罰金を払わなければならないのは有名である。たばこを吸う場所は屋外にしかないので愛煙家にとっては困った国家である。だが、嫌煙権が確立されているので、どこに行ってもたばこで嫌な思いをすることは一切ない。

 リークアンユー元首相が街を歩いていて偶然、街に捨てられたチューインガムを踏みつけたことからリー氏はチューインガムの販売そのものを禁止してしまったエピソードがある。街にポスターや落書きは一切ない。だから街の佇まいがすっきりしている。

 治安面では有名な話だが、アメリカ人の18歳の少年がいたずらで車にスプレーで落書きをしたことにより、シンガポールの少年法でむち打ち刑になった事件があった。当時のクリントン大統領は嘆願書を出したが、シンガポール政局は一切無視してむち打ち刑(4回)を遠慮なく行った。その意味では徹底した管理社会であるから「明るい北朝鮮」とも呼ばれている。

 シンガポールにも四季はあるという日本人がいる。ただし、シンガポールの四季は3つしかないと彼らは言う。良く聞くと「Hot、Hotter、Hottest」だといって笑っている。平均気温は26〜27℃、最高気温は32〜33℃程度であるうえ、海からの風が爽やかなので「ガーデン・シティ」といわれ、日本の夏より過ごしやすい。

 また、年間降雨量は2000〜2500mmと日本(1500〜2000mm)より多いがスコールなので、短時間(数分〜数時間)の降雨で終わるのが一般的だ。むしろ雨が降ることで涼しくなり過ごしやすい。最近の日本は震災などの天災や原発問題があるので心配が増えているが、シンガポールには天災リスクが低く原発もないので環境面でも安心である。

 リー・クアンユー氏は1965年に建国して以来、日本をお手本にしてシンガポールの発展を目指してきた。従って日本文化への関心は高く、親日家の多い国だ。今や若い人の間では日本のアニメやJ-Pops、ファッションが好まれている。日本の駐在員が多いことから日本食が他の外国よりもおいしくいただけるし日本のスーパーマーケットが早くから進出してきたことも日本びいきを増やした原因だ。

 また、教育環境が優れているからシンガポールに移住した駐在員たちは子供の教育をシンガポールで受けさせてやりたいと思っている。英語教育と中国語教育を受けさせながら日本語学校にも通わせるので国際人に育てるにはもっとも良い環境だといえよう。

 アメリカの投資家であるジム・ロジャーズ氏は、07年に家族と共にシンガポールに移住した。21世紀は中国を中心に回るから、目的の一つは子供たちに中国語教育を与えることだったといっている。

駐在員が帰りたくない国のナンバーワン

 もう一つ驚く事実は、シンガポールには2年間の兵役制度があり、しかも防衛予算が世界でNo2だということだ。もちろん、それは人口1人あたりの予算での話だが、1位はイスラエルで3位はロシアだ。その次に教育予算に力を入れている。教育予算が多いので欧米の医師免許を取ったシンガポール人が多く、医療水準は日本と同程度のレベルにあるとされる。

 私自身はこれまで100カ国をまわってきたが、食事の面では安くてうまいシンガポール料理だけでなく、中華料理、インド料理、マレー料理といった各民族の伝統料理を、「ホーカーズ」と呼ばれる屋台から高級店まで、様々なスタイルで楽しんでいる。

 国際都市であることからフレンチ、イタリアンなど、世界各国の料理で見つからないものはない。それゆえシンガポールに住んでまず飽きることはないのだ。駐在員の奥さんたちは例外なく帰国の話が出た時に「帰りたくない」というらしい。仕事は旦那で自分はゴルフ、麻雀、グルメ、広いコンドミニアムの家事は女中さん任せだから当然でしょうな。

 これだけ、移住する条件がそろっていれば、これからは日本の企業だけではなく、個人事業主も「節税」プラス「アセアン市場開拓」のために移住者が増えるのは確実である。ただ、世の中にこれほど良い情報ばかりが溢れていること自体が不自然な気もする。

 もういちど、シンガポールと日本の主な個人税制の比較をもう一度おさらいしてみたい。

 個人人所得税=    最大20%に対し、日本は最大40%

 国外源泉所得=   非課税に対し、日本は課税対象

 住民税=非課税に対し、日本は10%+4000円

 相続税=非課税に対し、日本は最大50%

 贈与税=非課税に対し、日本は最大50%

 キャピタルゲイン税=非課税に対し、日本は原則20%

 イインカムゲイン税=非課税に対し、日本は原則20%

 シンガポールでは日本同様、「基礎控除」「配偶者控除」など、さまざまな人的控除が認められているため、税負担はさらに抑えられるのだ。

 以上を経済合理性だけで判断すれば、シンガポールに投資法人を設立して自身の資産形成を行なうことは、まさに一石で何鳥にもなる合理的な選択といえるだろう。

損益分岐点はおそらく年俸1億円以上か

 さて、わが家に来た若手経営者たちの結論は以下のとおりとなった。

 経営者として、確かにシンガポールに個人事業主として会社を移転させる価値はありそうだ。だが、金融や貿易取引などでASEANを攻める場合には意味があっても、節税のためだけに、シンガポールに会社ごと移転することはあまり意味がないのではないか、との結論だ。

 結局は、大金持ちのための税制優遇であり、中小零細企業の社長がシンガポールに行っても大したことはない。そもそも、世の中にそんなうまい話があるわけはないし、長続きはしないとの結論である。

 三菱商事のように、会社ごと移転する際に、サラリーマンとして現地に駐在するならば住民税が不要になるが所得税(14%)を払わされるならば、例えば600万円の給与所得者ではシンガポールの税制では約34万円(控除含まず)ほどだ。

 一方、日本では所得税は20%で約35万円に住民税(10%)が約39万円として合計74万円である。これなら差額はたった40万円だから、600万円くらいの報酬をもらっている給与所得者にはコスト倒れで逆にリスクがあるだけでメリットは無い。

 直観的には、1800万円以上の給与所得層は所得税が33%(プラス住民税10%)の所得層なら、税金の差額が日本の492万円に対してシンガポールなら約17%で約221万円(特別控除は含まず)となり、271万円の節税が可能となるから多少はメリットが出てくるが、これも経費倒れになるだろう。

 なお、年俸1億円となると、この場合は日本の所得税が40%で約3452万円、住民税が933万円だから合計4385万円となる。一方シンガポールでは最高でも20%だから約1845万円である。その差額は2540万円となり、これならシンガポールに移住する経済合理性はありそうだ。

 若手経営者たちの意見によると、国税の眼を盗んで節税をする暇があれば正々堂々と日本で税金を払ってベンチャー事業を推進する方が、話は早い。

 ただし、企業規模が大きくなり、個人の年俸が1億円以上の実力になったときには、海外投資を積極的に推進して、日本国に利益送金を実行する方が国益に資するとの結論である。

 いわば、損益分岐点は年俸で1億円以上ということだ。

 大企業がこすからいことばかり考えているような世の中なのに、日本の若手経営者たちはしっかりした考え方をしているものだ、と正月から驚いた次第である。

 今回も少々長かったかもしれないが、多少は皆さんの参考になっただろうか?