2012年11月20日火曜日

マレーシア利回り第一 資産運用 貴金属など投資活発

 ダディアナ・タン・ミアン・リーさん(38)は2009年に10年勤めた通信会社を辞め、ジェネバ・マレーシアでコンサルタントの仕事に就いた。最大24%の年利が手にできるといって、顧客に金への投資を勧める仕事だ。

 タンさんの両親も同社の顧客だ。タンさんは「母親は銀行の定期預金では年間3%の利子しかつかないとよく話していた」と語った。しかし今、その収入が途絶える危機にひんしている。マレーシア10+ 件当局は10月、ジェネバなど4社を、違法な投資スキームを運営している疑いがあるとして強制捜査した。

 ◆違法スキーム横行

 マレーシアでは銀行預金の金利を上回る利回りを求める動きが活発化し、多岐にわたる代替投資先の魅力が増している。そうしたなか、マレーシア10+ 件証券委員会は11年に25の無認可の投資商品を特定。前年の13からほぼ倍増した。

 証券委員会のスジャータ・セカール・ナイク氏は9月に「このような商品への投資を考えている人は多い。社会と市場の発展に追随しており、提供されるスキームの種類は増えている」と話した。

 ジェネバは10月1日にマレーシア10+ 件警察、国内取引・消費省、登記庁、バンク・ネガラ(中央銀行)の強制捜査を受けた。当局は国民に、違法行為の被害者にならないよう投資には注意するよう警告した。その4日後には、ページェントリー・ゴールド、シーザー・ゴールド、ワールドワイド・ファー・イーストなどの金投資会社にも強制捜査が入った。

 ゼティ中銀総裁は先月末に記者団に、すべての捜査をできるだけ早く完了させると述べた。「不安に感じている投資家が多くいることはわかっている。早期解決に向けて、迅速に処理する方針だ」と語った。

 高利回りを求める動きは、投資と預金の動きから示唆される。09年の世界的な景気後退(リセッション)を受けて、中銀が主要政策金利を過去最低の2%に引き下げた後、名目国内総生産(GDP)の伸びが加速するにもかかわらず、10年初頭に預金の伸び率は減速した。

 中央銀行と証券委員会のデータによると、マレーシアのユニット型投資信託の純資産の伸び率は、7年のうち5年で銀行預金の伸び率を2倍以上上回っている。

 多くの政策立案者の頭には米国のサブプライムローン危機の教訓が残っており、長期間にわたって低金利政策を続けることが金融リスクを生むとの懸念が広がっている。こうしたことにより、世界経済の低迷がマレーシア経済の成長を妨げる恐れがあるにもかかわらず、ゼティ総裁が利下げに踏み切れない原因になっているのかもしれない。

 中銀は主要政策金利を11年5月に3%に引き上げてから据え置きを継続。MIDFアマナ・インベストメント・バンクのチーフエコノミスト、アンソニー・ダス氏は「低金利環境下では、預金者と投資家は他の投資先を探し続ける。このことは中銀が利下げを行うかどうか検討する際に、考慮する要素の一つ」という。今年最後だった8日の政策決定会合でも9会合連続での据え置きを決めた。

 ◆ヤシ、幹細胞、燕の巣

 ユナイテッド・オーバーシーズ銀行のエコノミスト、ホ・ウェイチェン氏は「投資家は高利回りの資産を求めるので、低い政策金利は預金の伸びにマイナスの影響を与えるが、マレーシアの現在の金利は、物価上昇率を考えれば低すぎる水準ではない」と指摘。同氏はアジアで不動産価格が上昇しているのは資本流入と強いファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)も関係しており、低金利だけが原因ではないと分析している。

 印刷業を営むチュー・チン・タイさん(50)も銀行預金よりも高い利回りを求めて投資を行っている一人だ。いまの投資先は油ヤシのプランテーションに投資を行うプレンティフル・ゴールド=クラスだ。08年から5万リンギット(約130万円)を注ぎ込み、年間8%以上のリターンを手にしているという。さらにチューさんは幹細胞貯蔵施設への投資計画策定にも協力している。この計画では立ち上げから5年間の固定年利が8%になると見積もっている。

 チューさんは「この投資先を選んだのは、利回りが高いから。このスキームでは理論上、リターンに上限はない」と述べた。またマレーシアで投資することのできるベンチャービジネスには、高級食材の燕(つばめ)の巣を作るアナツバメを育てる事業などもあると語った。

0 件のコメント:

コメントを投稿