2012年11月6日火曜日

新たな国や地域まで手を伸ばす場合、どのような点に気をつければいいのでしょうか?

順調に推移している国なり地域なりでの「成功の理由」や「勝ちパターン」の「真実」を、自分たちの間でシッカリと腑に落ちるまで分析・評価して落とし込むことですね。もちろん、商品やサービスが良かったというのが最大の理由なのでしょうが、表面的なことではなくもっと本質的なことまで捉えられるかどうかがポイントです。また、次に狙っているエリアの国民性や文化・風習といった前提条件が大きく違っていれば、同じパターンを繰り返しても通用しにくくなるので、できるだけ似通ったエリアを選ぶことも大事でしょう。

 たとえば、マレーシアに出たときは、言語や香りに対する嗜好はインドネシアと似ており、生活様式はシンガポールに似ているので比較的スムーズにコピーすることができました。フィリピンの場合は沢山の島を網羅する流通機能はインドネシアが参考になるが、香りなどの嗜好性は違う。一方、中国進出では、香港・台湾を参考にしました。中国系の民族の考え方や反応は、物理的に離れた地域でも近いものがあります。

 このように、似た地域や共通点の多い国について整理しておくことは、事業拡大が順調に進んだ結果、エリア統合の必要性が出てきたときにも役に立ちます。よくあるミスは、国境なんてものは人間があとで決めたものなのに(笑)、距離が近いというだけで民族や個性の違う国やエリアをひとつのブロックとしてまとめてしまうことですかね。金融業なら物理的距離や制度で分割統治できるのでしょうが、マンダムは生活消費財のメーカーですから、生活者の行動パターンを基準に国を見ていくべきだと思います。もちろん、国境で切り分けたのには何か意味があるのでしょうから、その理由というか歴史的背景を考えて、共通化の参考にできるのなら有用です。

 以前から「1万ドルクラブ(国民1人当たりのGDPが1万ドルに達する経済力を持つようになった新興国)」に入れば先進国の仲間入りであり、消費行動が大きく変化するとされてきました。そう言った意味ではGDPや所得水準もグルーピングの基準にはなるでしょう。

 所得が低いうちは、生活を「充足」するためのマーケットになりますが、ある一定の水準を超えると、生活を「充実」させる商品を求めるようになる。高度成長期の日本と今の日本とを比べてみても分かると思いますが、充足マーケットでは"いい物"をつくれば売れますが、充実マーケットになると"いい物"というだけでは不十分。ワクワクするような面白さなど、付加価値が求められます。こうなると、商品開発やプロモーションの手法も変えていかねば売れません。

 あとは、タイミングも大切ですね。とくに経済発展著しい国新興国では、数カ月違えばマーケットが大きく変化しています。また、政治が不安定な国の場合では、法律など規制が急に変わり、昨日までOKだったことが今日はNGということがあるし、その逆もあります。

 以前インドネシアは、テレビが国営放送だけになり、企業はCMを自由に打てなくなった時期がありました。不利な条件に思えるかもしれませんが、資本力はなくても強い流通網を持っていたマンダムにとっては、またとないチャンスとなったのです。大資本が資本の論理で戦う土俵に乗らずに勝負ができましたから。

 その間に地道な営業と販促活動を展開しておきましたから、一般放送やCMが解禁になったとたんに、爆発的なヒットに結び付けることができました。そして、その後にマーケットのキープレイヤーと認知されるまでになったのです。つまり政策の変更は、逆風にもなれば追い風にもなるということです。

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