天皇陛下は先日「ビデオメッセージ」で現在のお務めに対する「お気持ち」を表明されました。もし天皇陛下の生前退位が実現した場合には、年号が変わることになるでしょう。年号が変わると、どのような経済効果が考えられ、どういった銘柄に注目が集まるのでしょうか?
■天皇陛下の生前退位報道で日経平均先物が急騰
「天皇陛下、生前退位のご意志」とNHKがスクープしたのが7月13日でした。夕方6時55分過ぎにテレビスーパーによる速報を打ち、直後の7時のニュースでトップニュースとして詳しく報道しました。
報道後の7時16分、シカゴ日経平均先物(シカゴ・マーカンタイル取引所で取引されている日経平均の先物。シカゴ日経平均先物が安いか高いかで、その日の日経平均の方向性をつかむ事ができるとされています)は1万6350円から1万6480円程度まで一時急騰しました。
ただ、1分後には完全に元のレベルに戻り、証券用語で言う「往って来い(いってこい)」となりました。これは、ニュースなどのヘッドラインで自動売買が発動するように仕掛けているアルゴリズムが、どこかのニュースのヘッドラインの「天皇」「退位」等のキーワードに誤反応して作動したのではないかという見方がされています。
実際のところは判りませんが、天皇陛下の退位は、元号が変わり印刷物等で特需が発生するほか、新しい元号をお祝いするムードが高まるため株式市場では買い材料と見られています。
実際に昭和から平成に変更されたときの状況を振り返ってみましょう。
■昭和天皇陛下崩御では株式市場は急騰
昭和天皇崩御は1989年1月7日土曜日の早朝でした。
翌営業日の1月9日月曜日の日経平均は、天皇陛下崩御の自粛明け後の経済波及効果を期待して、469円高の30678円と急騰、さらに翌10日も328円高、11日137円高、12日変わらず、13日155円高と1週間の上げ幅は1088円高、率にして3.6%も上げました。
天皇陛下のニュースがこれだけ市場に影響を与えることを考えると、ヘッジファンド(銀行や年金基金などの機関投資家や富裕層が投資する金融商品。とても複雑な仕組みで運用しており、どんな状況でもとにかく利益を出すことを目指している)が、「天皇」「退位」というキーワードに対して自動的に買い注文ど出すよう仕掛けていても違和感はないことがわかっていただけるのではないかと思います。
昭和天皇崩御の記者会見から2日間、テレビCMは自粛となりました。歌番組、ドラマ、クイズ番組などのエンターテイメント系の番組はすべて放送中止となり東日本大震災後と同じような状況でした。
■「昭和」が終わって、売れたもの
こうした自粛ムードが影響し、レンタル・ビデオ店はどこも大繁盛。普段の4〜5倍の貸し出しだったようです。
株式市場の祝賀ムードを牽引したのは、元号変更による特需が見込まれる印刷、紙パルプ、インクなどの元号変更関連銘柄でした。
たとえば、今回のNHK報道翌日に大きく買われた銘柄では、オフセット印刷用写真製版大手の光陽社<7946>の25.0%高や光村印刷<7916>8.0%高などの印刷株が目立ちました。
これは、両社が1989年から1990年の平成の元号変更時に大相場となり、光陽社は1990年に4135円、光村印刷は3050円という歴史的な高値をつけたことからの連想で買われたのでしょう。
1989年から1990年はバブルのピークでもあり、この2銘柄に限らず、多くの銘柄が同時期に歴史的な高値を付けているとも言えているのですが……。
■NHKスクープ後に特需期待で印刷株急騰
今回もNHKがスクープした翌営業日である7月14日に買われたのはこういった銘柄でした。
光陽社、光村印刷以外でも、カワセコンピュータサプライ<7851>8.9%高、野崎印刷紙業<7919>5.6%高、図書印刷<7913>4.9%高、大日本印刷<7912>4.4%高、凸版<7911>2%高などの印刷関連会社が目立ちました。インクでは、DIC<4631>が2.4%高としっかりでした。
それ以降でも、元号変更関連と思われ動いた銘柄には、印刷機械関連の東京機械製作所<6335>、日本写真印刷<7915>、共同印刷<7914>などもありました。
■いつでも一歩先を考える習慣を
株式市場ではこのように過去のイベントで動いた銘柄を覚えておいたり、
あらたなイベント時に動く銘柄をあらかじめ想定しておいたりと、経験や学習、連想で収益チャンスは広がります。
いつでも一歩先を考える習慣を身につけるようにしたいものですね。
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