国内携帯大手3社の電話料金を巡る菅義偉官房長官の発言で一番損するのは結局、大手キャリアの一角として来秋に新規参入する楽天ではないか-。市場参加者の間でこんな見方が浮上している。
菅氏は21日の講演で国内通信業界には競争原理が働いておらず、まだ4割の値下げ余地があると言及。27日の定例会見でも「料金が不透明、OECD諸国の2倍程度との報告がある」などとあらためて指摘した。総務省は競争促進も狙い楽天に事業参入の認可を与えており、同社は6000億円規模を投じて自前の通信網を構築してサービスを開始する計画だ。
立花証券の鎌田重俊企業調査部長は、菅氏の発言を受け大手キャリアによる料金引き下げ競争が始まれば、「楽天はそれよりも低い価格でサービスを提供しないと勝ち目がない」と分析。「黒字化に時間がかかり、事業として成り立たないなら、辞めるということになる可能性はゼロではない」とみる。
菅氏の21日の発言を受けNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループの株価は急落したが、その後は菅氏の発言の真意や競争の行方を見極めようとの見方などから方向感に欠ける動きとなっている。
ソフトバンクでさえ時間
鎌田氏は菅氏が直接、講演で発言したことについて「唐突とも言えるタイミングで、値下げ幅も業界を驚かせた」と指摘。役人が根回しを重ねたうえで値下げを促す従来のやり方ではスピードが遅すぎ、「それでは待ってられないということなのだろう」と述べた。
一方、ITジャーナリストの石川温氏は、大手キャリアが実際にどのようなタイミングで値下げするかどうかは別として、楽天の市場参入によるインパクトも限定的と分析する。
石川氏は、ソフトバンクでさえホワイトプランや人気の「iPhone(アイフォーン)」販売の強化でようやく競争を生み出したが、「楽天はネットワークも端末も貧弱。現時点で他社は脅威に感じていないのではないか」とみている。
菅発言を受け野田聖子総務相は23日に開いた情報通信審議会に、将来を見据えた電気通信事業の競争ルールの在り方を議論し、2019年12月をめどに最終答申をまとめるよう諮問した。情通審の内山田竹志会長(トヨタ自動車会長)は会見で「方向性や結論ありきでなく利便性など、幅広く検討していきたい」と述べた。
菅氏は27日の会見で楽天について、既に現在の大手キャリアの半分程度の料金設定で参入する計画を公表していると指摘した。一方、楽天の百野研太郎最高執行責任者(COO)は、今後、独自に採用する新技術により低コストで自前の通信網を構築する方針を明らかにしている。
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