水をガブガブ飲み過ぎると「水中毒」になることがあります。疲労感、頭痛、めまい、ケイレンなどが現れ、重症だと亡くなることもある怖い病気です。水を大量摂取すると、なぜ水中毒になるのでしょうか?
幻聴や妄想で水を大量摂取
精神科医の吉田勝明さん(横浜相原病院院長)によると、「精神科の患者さんに水中毒が多いため、私たち精神科医にとって水中毒の知識は必須です。向精神薬の副作用でのどが渇くので水を摂ることもありますが、統合失調症の患者さんが『水を飲め』と幻聴を聞いたり、『水を飲まないと死んでしまう』という妄想で水を大量摂取するケースが少なくありません」
水の大量摂取を禁止されても、隠れて蛇口に口をつけて飲んだり、精神科の保護室ではトイレの水をすくって飲むこともあるそうです。
熱中症予防や健康法でも水を過剰摂取
「精神疾患がなくても、夏の熱中症予防や『水を飲んで体をきれいにする』といった健康法でも水を過剰に摂取して水中毒になることがあります」(吉田さん)
毒性がない水なのに、なぜ大量に飲むと水中毒になるのでしょうか?
「水を1日に3L以上飲むと体内の水分が過剰になり、血液のナトリウム濃度が低くなる低ナトリウム血症になるのです。そのため浸透圧で水分が脳細胞内に移動してむくみを引き起こし、頭痛、錯乱、昏迷などの症状が出ると考えられています」(吉田さん)
重症化すると死亡することも
血液中のナトリウムイオン濃度は通常、135~145mEq/l程度ですが、濃度が低下すると次のような症状が現れます(mEq/lはイオン濃度の単位)。
<ナトリウムイオン濃度が低下すると…>
・130mEq/l=軽度の疲労感
・120mEq/l=頭痛、嘔吐、精神症状
・110mEq/l=性格変化、ケイレン、昏睡
・100mEq/l=呼吸困難などで死亡
なお、水中毒の治療には、塩(塩化ナトリウム)を補充する必要がありますが、急に補充すると脳を損傷することがあるので、時間をかけて補充します。
スポーツドリンクや経口補水液を
熱中症予防には水分補給が欠かせませんが、どうしたらいいのでしょうか。
「水だけを摂取するから低ナトリウム血症になるのです。ナトリウム(塩分)を含むスポーツドリンクや経口補水液で水分補給をすれば何の問題もありません」(吉田さん)
「熱中症予防に水分補給」といったときの水分とは、水やお茶だけではなく、スポーツドリンクや経口補水液もあわせて摂取することを覚えておいてください。
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